悠久の時を手にするため皇帝の力はここに集うーー「アニマギアDE 04」2022.07発売

STORY アニマギアの世界観

EPISODE 30

エピックギガマキナの猛攻、その窮地からムサシを救った光の砲撃。
射手の名をデュアライズギラフォルテ。
自らコジロウと名乗ったそのアニマギアは、どうやらムサシとは既知の仲らしい。

EPISODE DE30

近距離・長距離問わず射撃をメインとした戦いを得意とするコジロウは、息つく間もなく戦局に介入した。

コジロウ「助太刀するぜムサシちゃん!」
ムサシ「お前だったか、コジロウ!助太刀は有り難いがしかし!ちゃん付けされるほど仲良くなった覚えはない......ッ」
コジロウ「またそれかよツレないぜ兄弟!ま、俺のコト忘れたのならもう一回仲良くなっちまえばいいのよ!!」

キャンサイファー「ギアティクス社の掃除屋まで出てきたとなると、こちらもギアを上げていかねばなるまい......」
ゴクラウド「ダッハハハハ!!面白ェ、新顔もまとめて相手してやらぁ!!」

マコトはムサシが記憶をなくす以前のムサシを未だによく知らない。
どんな戦いを経験してきたのか、話で聞かされたことはある。
しかしどうしても、今のムサシと話に聞いただけの昔のムサシがうまく結びつかなかった。
まるで靄がかかっているような、そんな気分だった。

だから、昔の彼を知る者が現れると、その靄が少しずつ晴れていくような気がする。
また一つ、ムサシのことが理解できるのだと思うと嬉しくなった。

キャンサイファー「脆弱な第三世代共、ワシら直々にここで終わらせてくれる」

言いながら、ギガマキナがコジロウに対してハサミを振りかざした。
激突する瞬間、コジロウの腕に装備された小型機関銃が放たれ軌道が逸らされる。
結果としてコジロウは最小限の動きで攻撃をやりすごして見せた。

コジロウ「ッハハ。第二世代相手なら同じ第二世代っしょ、アップデートした俺の活躍お見逃しなくって奴だ。
なんならムサシちゃんはゆっくり休んでな」
ムサシ「生憎(あいにく)俺は、言われっぱなしやられっぱなしで黙っていられるほど出来たアニマギアではない......
あまり舐めてくれるなよ......!!」

ギガマキナがムサシを攻撃すれば、コジロウがカバーに入る。
逆にコジロウが狙われれば、その隙を突いてムサシが敵を攻撃する。
二対一という数的有利を最高効率でこなしていく二人の姿はまるで踊っているようにも見えた。

マコト「すごい......息がぴったりだ......!」
コジロウ「お、キミが新しい兄弟の相棒のマコトっちだな?お噂かねがね聞いてるぜ。
弟が世話になってる、礼を言うっしょ」
ムサシ「だから!弟になった覚えはない!!」

憎まれ口を叩くムサシだったが、マコトには彼がどこか喜んでいるように思える。
自分の知らない相棒の姿を見るのは新鮮で、マコト自身も嬉しくなっていた。

ゴクラウド「叩きの最中にゴチャゴチャと!!テメーら真剣に戦いやがれ!!」
ムサシ「こちらは徹頭徹尾、朝から晩まで真剣だエピックギガマキナ!!貴様も俺を愚弄するなら容赦せんぞッ!!」
マコト「あ、ムサシ!?」

ゴクラウドの声に煽られたムサシは、感情が昂ぶったのか先に見せた野性的な戦い方にシフトしていた。
単身飛びだし、ギガマキナに真っ正面からぶつかりに行く。
コジロウとの連携は放棄してしまったようだ。

驚くべきは、マコトの指示やコジロウのフォローを必要とせず、いまはほぼ互角に渡り合っているところだ。
一人では敵わなかったはずなのに、先ほどよりも動き自体は洗練されているのだ。

コジロウ「あー、まずいな?報告は聞いてたけど、ちと“混ざって”るっしょ、アレ」
マコト「混ざってる......って?」
コジロウ「マコトっちは知らないんだっけか。ムサシちゃんを改修するのに、
前の機体のパーツとは別に、他の機体の部品も使ってるのよ」

先の検査で、ムサシの潜在意識にその他の機体の意識が入り込んでいることが分かったらしい。
それに伴って機体の調整が行われたが、日に日にその“他者の意識”が蝕むようにムサシの精神を侵しているのだという。

マコト「そんな......その意識を消すことは出来ないの......!?」

コジロウ「いや、そもそも消す必要はないんだマコトっち。ムサシちゃんがそいつと真正面から向き合うことが出来れば、ムサシちゃん自身のチカラの底上げに繋がるんだとさ。
そのための調整だったんだが、あの様子を見るとどうやらまだ調整するには早かったっしょ」

なにせ、マコトにも分かるくらい戦い方がめちゃくちゃだ。
強いには強いが、あれでは先に体の方にガタがくる。

コジロウ「ああだめだ、見ちゃいらんねぇ。
オニーサン、ちょっと興奮した弟止めに行ってくるわ。デカブツの相手もしてこなきゃあな」
マコト「——ちょっと待って!」
コジロウ「......あん?どうした、マコトっち」

戦場に戻ろうとしたコジロウを、マコトは呼び止めざるを得なかった。
ムサシの中に眠る『他者の意識』、その正体にある予感があるからだ。

マコト「ムサシに部品が使われてるっていう、別のアニマギア......名前、知ってるかな」

初めてムサシと出会ったときの感覚。
背後から刺されたかのような衝撃。
デュアライズカブト型、というだけではない既視感。
まるで亡霊に出会ったみたいな、寂しさと懐かしさが入り交じった、あの感覚の、その答えが——。

コジロウ「獣甲屋にいたデュアライズカブト型の機体だよ。ムラマサって奴さ」

——いま、マコトの中で確信に変わったのだった。

コジロウ「じゃあ行くっしょ、もし良かったら俺にも指示頼むぜマコトっち!」

ムラマサ。
「獣甲屋にいた」という言葉だけで、兄に捨てられた後のムラマサがどんな道を辿っていったのか想像に難くない。
だが、何の因果か彼の意志はいま自分の相棒に宿っている。

マコト「——わかった!ムサシを頼むよ、コジロウ!」
コジロウ「......おうさ!」

ムサシの荒々しさは度を超していく一方だ。
いまや言葉を発することすらなく、雄叫びのような怒号をまき散らしながら戦っている。
暴走、といえばそうなのだろう。 ムサシの自我が機能しているとは到底思えない。

だが、彼の中にムラマサが本当に生きているのであれば。
そして、ムラマサとムサシの過去に何かがあったのならば。

必ず、彼は克服する。
その信頼が、いまの自分達にはある。

マコト「ギガマキナの動きは読めなくても、ムサシの動きなら全部分かってる......
ムサシが敵についていけるなら、ムサシの動きにこちらがあわせれば......!」

だから、いま自分に出せる全力をぶつけることにした。
敵だけじゃなく、ムサシにも。

マコト「コジロウ!ムサシが構えたら敵の反対側に回り込んで!!」
コジロウ「なるほど、了解だ!」

コジロウのレスポンスも悪くなく、自分の想像通りに動いてくれていた。
さすがムサシと兄弟機を名乗るだけはある。
まるでコジロウとも昔から共に戦ってきたような安心感があった。

ムサシ「うお、おおおおおがあああああああああああッ!」
キャンサイファー「ぬ、ぐう......!」
ゴクラウド「こらえろジジイ!マジでシャクだがこの姿のオイラ達は最強だろ!?」
コジロウ「最強、最強ね!サルカニちゃんには申し訳ないが、俺達はもっと強い奴を山ほど知ってるっしょ!」

エピックギガマキナと二体のアニマギアが互角に渡り合っている。
このまま行けば、勝利への活路が開かれるかも知れない。
敵がツインクロスアップシステムを発動した時の絶望感はどこにもなかった。

が、その時だ。

マコト「こ、こんなときに......通信......キョウからだ!」

マコトの携帯端末に、キョウからの着信がある。
恐らく彼らもこちらに近付いているのだろう、という予測で通信を開くと。

マコト「キョウ!いまキャンサイファーとゴクラウドが、」
???『——マコトくんね!?』

マコトの言葉を遮って飛び出してきたのは予想だにしていなかった声だった。
聞き覚えのある女性の声。

間違いない、アズナ=オウガスト=キリエだ。

マコト「あ、アズナさん!?どうしてキョウの端末から......」
アズナ『こまかい説明はあと!!今すぐムサシくん達を連れてそこから逃げて!!』

随分と切迫した様子でアズナがまくし立てた。

マコト「に、逃げるったって、いまムサシとコジロウが敵を」
アズナ『違う、そうじゃないの!“彼らは敵じゃなかった”!!言ったでしょ、ムサシくん“達”を連れて逃げて、って!!』

ゴクラウドとキャンサイファーも共に連れて、早急にその場から離脱して。
あまりにも唐突で意味不明な彼女の要望が、マコトを混乱させるのに、そう時間はかからなかった。

アニマギアDEロゴ

TO BE CONTINUED...

EPISODE 29

ゴクラウド「やいジジイ!アンタが『逃亡後は別行動で二度と会わない』って言い出したんだぜ!?
それがどうしてオイラの前に現れやがったんだ!!」

現れた黒い蟹のアニマギア・アシッドキャンサイファーの姿を見るなり、
モンキーゴクラウドは詰め寄りながら激昂している。
マコトには近寄りがたい空気だ。ムサシをハンドサインで下がらせて、こっそりと剣を回収させる。
その回収を咎める様子もなく、ゴクラウドはキャンサイファーへ怒りを向けることに夢中だった。
先程まで戦いを楽しんでいた余裕など忘れてしまっているようだ。
まるで瞬間湯沸かし器である。
どうやら事前に聞いていた二体の仲が悪いという話は真実らしい。

キャンサイファー「“逃亡後は”の。お前さん、見たところ囲まれておったようだが?
これでは逃亡後とは言えんだろ、逃亡中だ逃亡中」
ゴクラウド「屁理屈はやめてもらおうか!今からこのカブトムシクンぶっ倒して雲隠れって算段だったんだよ!!」
キャンサイファー「アホ猿は相変わらずうるっさいのぉ......」
ゴクラウド「こっ、ち、の、セ、リ、フ、だ!!」

口論の激しさに忘れてしまっていたが、いまのやりとりを聞いてマコトは我に返った。
......そうだ。
キャンサイファーの言うとおり、彼らはいままさに“逃亡中”のはずだ。
だとすれば足りないものがある。

マコト「キョウやガオーがいない......捜索隊をまいてきたのか!?」
キャンサイファー「ああ、あの童どもか......まったくしぶとい奴らよ、ワシの行く先もバレておるわ。
そう時間を待たずここに到着するだろうよ」

まぁ、水中を移動出来ない分、時間はかかるだろうが。
キャンサイファーのその言葉を受けて、ゴクラウドは嘲りながら相手を罵倒した。

ゴクラウド「ダッハハ!ジジイもオイラのことバカにできねーじゃねえの!アンタもさっさと逃げたらどうだ!?」
キャンサイファー「だから、逃げてきただろうに。目的地にはもう到着したことだしの」

は?......と、その場に居る全員が揃って疑問符を口にした。
そして直後、マコトは恐ろしい事実に思い至る。
キャンサイファーが目的地に到着した、それはつまり。

キャンサイファー「......“ワシの目的地は貴様だ”と言ったのだ、ゴクラウド」
マコト「まずい——」
ゴクラウド「あ、ジジイまさか......やめろ!!その手はオイラ使いたくねえ!!」

モンキーゴクラウド。
アシッドキャンサイファー。
この二体の共通点は、IAAとギアティクス社で共同開発された実験機体だ。
それは果たして、なんの実験だっただろうか。
思い出すという行為すら必要ない、なぜなら“敵”は“二体”いる。

マコト「——“ツインクロスアップ”だ!!構えてムサシ!!」
ムサシ「ッ!了解した!!」
キャンサイファー「いま一度、ひとつになろうぞゴクラウド!!」
ゴクラウド「やめろぉおおおおお——ッ!!」

然して、マコトの考えはまたも現実の光景となる。
キャンサイファーの体がバラバラに分解され、ゴクラウドの体に引き寄せられていく。
呼応するように、ゴクラウドの体が変形。
それに伴って、強烈な電磁波が一帯を青白く染めた。

EPISODE DE29

電光がおさまる。
先程まで光の中心に居た二体のアニマギアが、一体の巨大なシルエットへと変貌していた。
両腕に黒いハサミを有する、大猿のアニマギアだ。

マコト「あれは......本当にツインクロスアップ、なの......!?」

現在、正式に採用されているツインクロスアップシステムと大きく異なるのは、
二体のアニマギアが高い割合で合体している、ということだろう。
パーツ単位での追加装備とはワケが違う。
恐らく以前確認されたと聞いていた合体エンペラーギア・ユニコーンライギアスの技術をベースにしているからだ。

ゴクラウド「やいジジイ......アンタ、オイラを利用しやがったな......」
キャンサイファー「まぁそう邪険にするな、ワシだってこの力は本意ではない——
なんなら、ヌシに全ての追っ手をなすりつけてワシは一人逃げるつもりだった」

ゴクラウド「くそったれ......!」
キャンサイファー「つもりだった、のだ。聞け......ヌシは此奴らを蹴散らしたい。ワシはワシで逃げおおせたい。
これらの状況を打破して目的を達成するには、こうするのが一番だとは思わんか?」
ゴクラウド「......こうなっちまったもんは仕方ねえ。きっちりカタをつけて、その後は本当にお別れさせてもらうぞジジイ」
キャンサイファー「応ともよ」

大きな口から、二体のアニマギアの声が聞こえてきたことにも驚きを禁じ得なかった。
お互いに喋ることが出来るといえばムサシとギロのツインクロスアップだが、それとは性質がまるで異なっているようだ。

ムサシ「二つの意識が融合することなく、一体のアニマギアに共存しているのか!」
キャンサイファー「然(しか)り、だ。“我ら”が名は『エピックギガマキナ』——
これこそが、IAAとギアティクス社によって生み出された原初のツインクロスアップというわけよ。不愉快極まりないが、これはこれで便利なモノぞ」
ゴクラウド「自慢は終わったかジジイ!ならさっさと終わらせるぜ!?」

エピックギガマキナを自称したその大猿は、唐突に恐るべき速度でまっすぐムサシに突っ込んでくる。
ムサシはそれを真正面から受け止めようと二つの剣を交差させて構えた。

ゴクラウド「ダッハハハハ!!」

それを見切ったのか、敵がその巨体をムサシの小さな懐に滑り込ませる。
直後、ムサシを巻き込みながら高く跳んだ。
アッパー攻撃だ。

マコト「そんな!?」

その脚から生み出される跳躍力は、先ほどゴクラウド単体で見せたそれとは比にならない。
太陽を背に降りてくる巨体が、間髪入れずに上空からムサシの体に右のハサミをぶちこんだ。
周囲の小石がはじけ飛び、クレーターが生み出される。

ムサシ「があああああああッ!!」
マコト「予備動作がまったくない......動きが読めない!!」

マコトの行動予測は相手の僅かな予備動作を、人並み外れた動体視力と洞察力で導き出す技術だ。
アニマギアにしろ人間にしろ、自分の考えで行動している以上は次の行動に移る際は必ずその兆しが動きになって現れる。

しかし、ギガマキナは行動から行動への予備動作がまったくなかった。
見えづらい、読みづらいなどという次元を超えている。
予備動作そのものが存在していないのだ。

その証拠に、大猿は再びマコトの観察眼をかいくぐって動きの読めない攻撃をムサシにぶちかました。

ムサシ「ぐッ......う!!」
マコト「ムサシ!」
キャンサイファー「キョウとかいう童よりも目に自信があるらしいが、
ワシらのこの姿にその予測は通用しないと考えた方が良い」

敵の猛攻は続く。
一度体勢が崩れたムサシには為す術がない。

ゴクラウド「まったく、気持ち悪ィんだよこのスイッチングって奴はよォ!」
マコト「スイッチング......!?」
キャンサイファー「ワシらは体の支配権を共有しておる。
内部のシステムが常に戦闘状況を監視し、互いの思考を比較検討するのだ」

そして、ゴクラウドとキャンサイファーの思考の内、システムが最適とした行動を自動的に反映させる。
行動の最終決定に自分達の意思が介在しないのだとギガマキナは説明した。

ゴクラウド「オイラ達からすりゃ体が勝手に動くみてえなもんなんだよ!
だからジジイとの合体は気持ちが悪くて仕方がねえええ!ああああむしゃくしゃする!!」

怒りを口にしながらも攻撃の手が休まることはない。
本当に体と思考が別々で動いているんだ、とマコトは理解する。

マコト「ボクの力が......通用しない......なんて......一体どうすれば......ッ」
キャンサイファー「こうなっては指示もクソもないな。さあゴクラウド、ワシらの安寧のために終わらせようぞ」
ゴクラウド「ああ、ああ!まったくもって同意だ、異議無し、大賛成だ!
悪いがカブトムシクン、ここで沈んで貰うぞッ!!!!」

ハサミで掴まれたムサシの体が、上空に投げ飛ばされた。
今度こそおしまいだ。

......ボクはまた、大切な友達を失うのか。

走馬灯のように脳裏によぎるのは、白いデュアライズカブト。
兄の相棒でありながら、親友のように過ごしたムラマサの姿だ。

マコト「ごめん、ムサシ......!」

マコトが己の無力さに絶望しかけた、その時だ。

キャンサイファー「むうっ!?」

図太い光の束が飛来し、ムサシを追って跳躍した大猿の脇を掠めた。
体勢が崩れたギガマキナは、追撃を諦めて着地。
すぐさま、光の束が放たれたであろう方向へと構えた。

ゴクラウド「誰だッ!!」
???「——謝るのは早計ってもんだぜ、少年」

アニマギアDEロゴ

TO BE CONTINUED...

EPISODE 28

マコトとムサシが、モンキーゴクラウドの捜索隊と共に辿り着いたのは、巨大な湖のほとりだった。
山の麓に位置するこの湖畔は、周囲が砂利と呼ぶには大きすぎる小石が敷き詰められている。
マコト達は壮絶な追跡の末、遂にゴクラウドを追い詰めることが出来た。
ゴクラウドの背には湖。
そこから半円状に、ムサシを含めて十体のアニマギアが取り囲んでいる。
取り囲んではいる、が——

ゴクラウド「ダッハハハァ!どうしたどうした、もうバテたってぇのかい!!オイラはまだピンピンしてっぜ!?」

——しかし、どうしてもこれ以上近付けない。お世辞にも戦いやすい足場とは言えないが、理由は別にある。
モンキーゴクラウドは近接特化のアニマギアだ。
黄色いニックカウルで構成された長い腕。
尻尾を変形させた棍(こん)。
そして俊敏な動きを可能とする優秀な体幹とバネが、こちらの攻撃をことごとく無効化する。
近接攻撃はもちろんのこと、遠距離攻撃ですら避けることなく棍を使って弾き返してしまう。
その豪胆さに、マコトは歯がみしながらその実力の高さを思い知った。

マコト「どうしても近付けない......!」

並のアニマギアであれば取り囲んだ時点で勝ちは確定していたはずだ。
しかし、ゴクラウドは十対一の数的有利を覆すほどの力を備えている。

マコト「これが“第二世代”アニマギアの力、なのか!?」

モンキーゴクラウドとアシッドキャンサイファーは、
いま流通している第一世代と第三世代のアニマギアとは違うと聞かされていた。

彼らはデュアライズカブトD(ダッシュ)やガレオストライカーDよりも前に開発されている。
そして、ツインクロスアップシステムを搭載していながら、その設計は表立って流通することのなかった、
幻と呼ばれる第二世代がベースになっているらしい。
第二世代はその全てが戦闘に特化され研究・開発を重ねられているため、
よりピーキーな調整が施されているということだ。
第二世代と第三世代の特徴がハイブリッドされた、いわば二・五世代といったところだろう。

捜索隊員「くそ!ギガラプト、連続砲撃で距離を詰めろ!」
ゴクラウド「そうこなくっちゃあな!お相手させてもらおうじゃねえの!!」

しびれを切らした捜索隊員の一人が、バディのバスターギガラプトに指示を飛ばす。
その声にあわせたギガラプトが、キャノンからいくつかの弾を吐き出しながら前へ出た。
数で勝っているならば力で圧倒できると踏んでのことだろうが、マコトとムサシはすぐに危険を察知する。

ムサシ「ダメだ!いま前に出たらやられるぞ!」
マコト「仕方ない!ムサシ、ボクらも続こう!ギガラプトの後方から走って!!」
ムサシ「やむを得ん......ッ!」
マコト「タイミングは——」
ムサシ「——みなまで言うな!大丈夫だ!」

有り難い。
戦闘中ではあるが、そのムサシの反応に嬉しさがこみ上げてきた。
訓練の成果といえばそれまでだが、多くを語らずともこちらの意図を汲んでくれる彼の存在が誇らしくなる。
そしてまさにマコトの意図通りの動きをムサシがしてみせた。

ムサシ「御免ッ!!」

自身の砲撃がゴクラウドの棍によって打ち返され、被弾しよろけるギガラプト。
恐竜の背後から頭を飛び越えるようにムサシが跳躍する。
完璧なタイミング。
このまま一撃を喰らわせる流れ、かに思えた。

ゴクラウド「味方を盾にするのは頂けねえなあ!?
統率の取れた部隊気取りなんだろうが無駄!まったくの無駄だぜ!!」

ゴクラウドもまた完璧といえるタイミングで同時に跳躍している。
ムサシよりも高くだ。
即座にムサシは視線を上に。剣を構えて攻撃に備えた。
猿が棍を振り下ろす。

ゴクラウド「てめぇええらのその曲がった根性、オイラが叩き直してやんよォ!!」
ムサシ「ぐ......ッ!!」

EPISODE DE28

ゴクラウド「ダッハハ!まー良くツいてくるじゃねえのカブトムシクン!!」
ムサシ「が、ああ、あああああ!!」

ムサシが無理矢理ゴクラウドの棍を押し返す。
しかし反動で片方の剣を取り落とした。

マコト「ムサシ!?」

いつものムサシであれば得物を落とすなど考えられないことだ。
力任せに剣を振るえば武器を落とすこともありえるだろうが、
本来の彼は剣を落とさぬよう、繊細な技術で最大限の力を発揮しているはずだ。

......それほどまでにゴクラウドのパワーが凄まじいのか、あるいは。

マコトの思考が逡巡するなか、二体のアニマギアが着地する。
どちらもすぐさま動き出せる体勢だ。ゴクラウドはムサシに目もくれず、隊列が乱れた周囲のアニマギアへと襲いかかる。

ゴクラウド「ホォオオアタァアアーッ!!」
マコト「止めて、ムサシ!!」
ムサシ「む、う......ッ!!」

ムサシがゴクラウドを追い回すが、その甲斐むなしく。

ゴクラウド「次、次次、次次つぎつぎィ!!」

突如生まれた動きに対応しきれずにうろたえたアニマギア達は、
ゴクラウドに不意を突かれる形で次々と無力化されていった。

捜索隊員「こ、こんなことがあっていいのか......どれもABFの精鋭機体だぞ!?」
マコト「無茶苦茶だ......!」
ムサシ「————ぉ、おおお、ぉおおおおおおッ!!」

ムサシが声を荒げながら、あろうことかその場に剣を捨ててゴクラウドに殴りかかった。

——“やっぱり”。

マコトは先程から覚えていた違和感を異常として確信した。
ムサシの様子が明らかにおかしいのだ。
受け答えはまともだし、指示にも正しい反応を返してくる。
しかし。

ゴクラウド「これでオイラとサシだぜぇカブトムシクン!」
ムサシ「貴様はッッ!!俺が止めるッッ!!」
マコト「落ち着いてムサシ!どうしちゃったんだよ!」

なにか想定外のことが起きるたびに荒々しい様を露わにしていた。
まるで熱に浮かされたように——内なる何かに突き動かされるように。 普段の冷静さがどこにも見当たらない。

ムサシ「ぐ、うッ......俺にも、分からん!だが、“衝動”が抑えられない......!!」
マコト「まずは剣を持って!一度体勢を立て直そう!」
ムサシ「う、り、了解......!」
ゴクラウド「おっと!」

ゴクラウドが跳躍し、宙で翻りながらムサシの背後へと降り立つ。
棍を再び尻尾へと戻すと、退路を断つといわんばかりに両手を拡げて見せた。

ゴクラウド「そいつはさせねェぜ!
折角あったまってきたところだ、漢(おとこ)ならステゴロタイマンといこうじゃあねェの!!」
マコト「来る、ムサシッ!」

問答無用でゴクラウドが殴りかかった。
敵の右拳に対して、こちらもまた右拳で応じる。
圧されつつも吹き飛ばされずに済んだのは、対ゴクラウドを想定して事前に機体の調整をしてもらったおかげだろう。

ムサシ「くそ、やるしかない!!」

ムサシが強引に向こうのペースに引き摺り込まれるのを肌で感じた。
長腕から繰り出されるムサシのリーチ外からの連撃に、なんとか対応していくムサシだったが、やはり分は悪い。

マコト「そんな......!」

言わずもがな、マコトはムサシの徒手空拳による戦闘を見たことがなかった。
訓練では常に剣を使ってきた。
例外があるとしてもギロとのツインクロスアップのみである。
ゆえに、この状況でいかに戦えば良いのかという手札が、マコトの脳内に存在していない。

マコト(ダメだダメだ、考えろ......!)

出来ないからといって、考えることを放棄した時点でこちらの負けが確定する。
いまでこそなんとか対応出来ているが、機体性能でゴリ押しされたらそれこそどうしようもない。
ならば今は考えることだけだ。

どうすれば良い。
どうすればこの状況を好転——いや、“逆転”することが出来るだろうか。

重要なのはゴクラウドの気を逸らすことだ。
ムサシが剣を持つことさえ出来れば、あの長いリーチに対して不利を取らずに済む。
ならば一つあるにはある、が。

マコト(......まるで現実的じゃない)

いまここに、誰か第三者が乱入することがあればそれだけで良い。
ムサシは必ずその隙を突いて武器を取りに走ってくれるはずだ。
だが部隊は全滅。ここに来るまでに他の隊員達もやられている。
応援を期待するというのは高望みが過ぎるだろう。

???「生きとるか、アホ猿!」

————応援、であれば。
マコトの期待は、希望とは真逆のベクトルで現実となる。

マコト「あれ、は......!?」

この状況を予期したわけではない。
だが紛うとなき乱入者が、状況に介入せんと湖の水面から現れたのだ。
叫びとともに着地した黒い影は、マコトにも見覚えのある姿だ。

ゴクラウド「ぁあ!?今更何しに来やがったジジイ!!」
ムサシ「アシッド......キャンサイファー......!!」

キョウ達が追っていたはずの、もう一体の実験機体。
黒い蟹型アニマギアが、水飛沫とともにゴクラウドの元へと駆け付けた。

アニマギアDEロゴ

TO BE CONTINUED...

EPISODE 27

突然現れた赤い乱入者を前に、キャンサイファーは思考の中で己の勝利条件を整理していた。
分かりやすく思い浮かぶのは三つだ。

まず一つ、この場にいる全員を行動不能に陥らせる。
キャンサイファーが追われる身である以上、これが一番単純だ。

捜索隊と銘打たれたABFの面々は閉所に誘い込んで各個撃破という形で難を逃れたし、
ガオーとかいう白い獅子型アニマギアだけ相手にするのであればそれほど問題が無かったようにも思える。
現に今まさにガオーを撃破する寸前まで行ったのだ。
各個撃破を繰り返し、追う者がいなくなればひとまず身を隠す時間が出来るだろう。

が、事情が変わったいまとなってはそのシンプルが難しい。

キャンサイファー(......理由もまた単純よの)

ドラギアスの参戦がこの条件の突破を難しくしている。
いくらキャンサイファーが研究所で実験漬けの生活を送り、世情に疎い状態が続いていたとはいえ、
ドラギアスゼノフレイムについての話は嫌でも耳に入ってきていた。
素性、性能、ABFに入隊してからの活躍等、ウワサの枚挙に暇がない。

そして、目の前に現れたドラギアスは聞いていた話以上に厄介者だとすぐに分かった。
酸の泡を一瞬にして揮発させるほどの火力を持っているとなると、
ここから先、彼らを相手に有利な状況で戦えるとは思わない方が良いだろう。

キャンサイファー(ならば、この条件は達成困難として捨て置く)

次に二つ、逃げること。
これはあまり現実的ではない。
ドラギアスはもちろんのこと、ガオーの機動力も決して侮ることは出来ない。

足場の悪い樹海でなら多脚を用いる自分の方が器用に動けるだろうが、
逃走するからにはいつまでも樹海で足踏みしている訳にもいかないだろう。
いずれひらけた土地に出るはずだ。

そうなれば必ず奴らは自分に追いついてくる、と。
敵ながら信頼にも似た確信があった。

キャンサイファー(ならばこれも却下......となれば)

最後に三つ。
“敵の目標を自分から別の存在にすげ替える”。
要は敵の目をそらすことが出来れば、自分の安全を確保出来るという案だ。

話としては二つ目の逃げるに近いが、単純に逃走を続けるのとは違って目的地がある分、ルートの選定が可能になる。
当て所なく彷徨うよりもずっと“勝率”が高い。

キャンサイファー(決まったな)

——この思考を廻(めぐ)らせるまでに要した時間は実に1.8秒。
ドラギアスが現れたと理解した瞬間から、彼がガオーやキョウと会話している間に思考は完了している。

ガオー「助かったぜドラギアス!」
ドラギアス「我が最初から捜索隊に加わっていれば話が早かったんだがな......
まったく、上の連中の腰の重さと来たら......」

だから、即行動に移した。
奴らが言葉を交わし終える前に、キャンサイファーは再度、酸の泡を砲筒から吐き出す。
その泡は敵本体ではなく、敵の周囲の木々をまとめて薙ぎ倒した。

キョウ「ガオー!ドラギアス!キャンサイファーが動くぞ、気をつけろ!!」

流石にそれで止まる敵達ではないし、期待もしていなかった。
だが狙い通りだ。
一瞬、ガオー達の視線を遮り道中に障害物を発生させたことで隙が生まれたのだ。

ガオー「あっ!にゃろ、待ちやがれ!」
キャンサイファー「ホホ、標的の前で談笑するヌシらが間抜けなだけよ」
ドラギアス「逃がすものかッ」

キャンサイファーは目標を確認する。
目標とは、一体のアニマギアの位置情報だ。
自分と同じく研究用に開発され、実験漬けの日々を共に過ごした
“憎き”兄弟機・モンキーゴクラウドとは、積まれているシステムがゆえ常に互いの位置情報を共有する関係だ。

やむにやまれぬ事情で脱走する際は一時協力したものの、犬猿の仲ならぬ猿蟹の仲といったところで、
互いに反りが合わず最終的に殆ど言葉を交わすことをしなくなった。
一言で済ませば不仲と呼べる間柄だからこそ、いまはとことん利用させて貰う。

キャンサイファー(此奴らの狙いはワシだけにあらずよ。
あのやかましい猿めの所まで辿り着ければ良い働きをしてくれるだろうて......!!)

幸い位置はそう遠くない。
脱走以後、思い思いの方向へとバラバラに逃げたキャンサイファーとゴクラウドだったが、
どうやら皮肉にも思考は似ていたらしい。
大方、ゴクラウドも自分と同じように捜索隊に追われている最中なのだろう。
忙しなく位置情報が更新される度に、不思議と向こうも自分に近づいているようだった。

キョウ「くっそ、キャンサイファーやっぱり疾いな......!
悪いけどこの視界じゃオレが見える範囲は早々に離脱されちゃいそうだ!
ドラギアス、悪いけどガオーの指示頼めるか!?」
ドラギアス「任された!我の位置は訓練用の端末で常に確認出来るだろう!あとで追いついてこいッ!」
キョウ「分かった!!サンキュー!!」

EPISODE DE27

キャンサイファーは内心でほくそ笑んだ。
先に潰した捜索隊の面々と同じく、アニマギアとオペレーターの分断に成功したからだ。
こうなれば奴らの戦闘は途端に効率が落ちる。

キャンサイファー「一人で戦うことも出来ぬ愚か者共にワシを捕まえられるかね」
ドラギアス「せいぜい粋がっていろ!我が来たからには貴様の未来は暗いぞ!」
キャンサイファー「ほっほ、有象無象がよう吠える吠える」
ドラギアス「......ッ」

確かにドラギアスは強い。

だがこうして逃げながらも煽ることで少しでも勝率を上げていくことは可能だ。
話に聞くドラギアスであれば、しびれを切らして冷静さを置き去るタイミングは必ず来るだろう。

キャンサイファー(そうなればいくら元エンペラーギアといえど、易々とワシを捕まえることなどできるものかよ)

キャンサイファーの策略はゆっくりだが確実に敵を蝕んでいる。
その証拠に、ドラギアス達の語気はすでに平静時のそれとは違い荒ぶり始めていた。

ドラギアス「ガオー!百も承知だろうがここは可燃物に囲まれている!我の特性が炎である以上、
ところかまわず炎を使うわけにはいかん!」
ガオー「お、おお!?あ、そうか、燃えちまうもんな山!!」
ドラギアス「貴様という奴は......!とにかく近接戦が鍵だ、死ぬ気で食らいつくぞ!!」
ガオー「応よ!!」

キャンサイファーは血の気が多い輩が心の底から嫌いだ。
冷静なくして強さなし。
激情の炎は内に秘めるからこそより強く燃えさかり、力を与えるのだ。
だというのに、それを理解していない者達はなにかと感情を昂ぶらせ、強い言葉を使い威嚇する。

弱い犬ほどよく吠える。
だからこそ、自分は常に狡猾であろうと考えた。
冷たく、静かに見極めれば、吠える犬共に負けることなどあり得ないのだから。

キャンサイファーは進行方向とは逆、後方に向けて砲を展開。
牽制代わりに、ドラギアスへと向かって酸の泡を射出した。
自分の読み通り熱に浮かされたか、ドラギアスの判断が一瞬遅れていた。
当たる。

ガオー「危ねえ、ドラギアス!」
ドラギアス「むうっ!?」

ガオーがドラギアスに突撃し、無理矢理こちらの攻撃範囲から抜け出させている。
その様子を見たキャンサイファーは「ほう」と感嘆の声を上げていた。
子供っぽい性格のように見受けられたが、存外に周囲に気を配る度量があるのだろうか。

キャンサイファー「面白い......が、距離は稼がせてもらうぞ童(わっぱ)ども!」

黒い蟹は足を止めることなく、複雑に動き回りながらも目標へと向かって突き進む。
全ては自分が生き残るために、ゴクラウドのもとへと駆けていた。

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 26

???「ワシの所まで辿り着けたのはオヌシらだけか」
ガオー「ちょこまかと逃げ回りやがって......!」

街から遠く離れた山奥。
木々が乱立するここはまさに樹海だ。
天草キョウとガオーの目線の先には、数日間にわたって捜索を続けていたアニマギアがいる。
赤いボーンフレームに黒いニックカウルを纏い、それと気付かなければ踏みつけてしまいそうなほど平たい身体。
両腕に鋭いはさみを持つ蟹のアニマギア——アシッドキャンサイファーだ。

キョウ「追い詰めたぞ......キャンサイファー!」
キャンサイファー「ホッホ。オヌシ相手に追い詰められるものかね。ワシの酸をかいくぐってここまで来た......
それは素直に評価しよう。オヌシらを相応の実力者と認めるよ」

しかしな、とキャンサイファーは言葉を切って舐めるようにこちらを見つめてくる。

キャンサイファー「生まれてこの方、繰り返される実験に浸った退屈な時間を過ごしてきたこの身。
が、童(わっぱ)に後れを取るほど、このキャンサイファー鈍(なま)ってはおらんぞ」
ガオー「なんだと!?」

このアニマギアは、ギアティクス社のラボで長い月日をかけ生み出された実験機体だ。
ツインクロスアップシステムの根幹を作り上げるために研究・開発された機体だが、
どういうワケか暴走アクターの手引きにより施設から脱走したのだ。

その能力の危険さ故に、ここに来るまでに大規模な捜索隊が編成され、キョウもその一員として彼を追い続けていた。
しかし、キャンサイファーのもとへとこうして辿り着いたのはキョウとガオーだけである。

キャンサイファー「ちと視界が悪いな......どれ」

目の前の蟹が、背負った砲台から散弾銃のように無数の泡を勢いよく吐き出す。
無論、ここが森林である以上それらの泡がキョウ達に届くことはない。
すべてが枝葉や木の幹、地面に命中する。

キョウ「......ッ」

泡が命中した障害物。
そのどれもが煙を噴き、表面がドロドロに溶けていく。
捜索隊がろくに近付けず、キャンサイファーがいままで逃げおおせた危険な能力の正体だ。

酸の泡。

キャンサイファーの体内で精製されるそれは、物体の表面を溶かす程度で、芯まで届くほど強力なものではない。
だが、ブラッドステッカーにあたればタダではすまない。
ブラッドステッカーを溶かされてしまえば、アニマギアは瞬く間に機能を停止するからだ。
なみいる捜索隊をかいくぐるには、十分すぎる性能といえるだろう。

キャンサイファー「ここでオヌシらも倒してしまえば、後続隊の足止めにもなろうよ——」

改めて、酸が放出される。
繰り返し酸のダメージを受けた蟹の周囲の木々が、まとめて派手に倒れ伏した。

キャンサイファー「——討たせて貰うぞ、童」
ガオー「コッチの台詞だ!大人しく捕まって貰うぜ!」
キョウ「障害物が消えた!来るぞガオーッ!!先に伝えた作戦で切り返せ!」

やみくもに捜索していたわけではない。
キャンサイファーとの一対一での戦いを想定していたキョウは、すでに対策を講じて相棒へと作戦を伝えていた。

キョウ「......“見え”た!ブースター展開、右方向80度から全力でぶっ飛ばせ!」

キョウが見たのは、キャンサイファーの予備動作だ。
既に何度か酸の砲撃を目にしていたキョウは、わずかながら砲撃がくる手前の雰囲気が分かるようになっていた。
これにより、予備動作から方向と距離を瞬時に見破り、
酸が撃たれると同時にガオーを安全な方向へと走らせることが可能となった。

ガオー「うおおおおおおッッ!!」

予測は成功の結果に変わって目の前に展開された。

酸の泡をくぐり抜けるように、ガオーはキョウの指示通り右前方へと飛び出す。
直後、ブースターを再点火。
半ば無理矢理、鋭利な角度をブースターによる方向転換で曲がりきった。
ガオーがキャンサイファーに肉薄する。

EPISODE DE26

キョウ「......要はマコトの見よう見まねだけど、うまくいったな......!」

この三ヶ月、伊達に訓練をしていたわけではない。
共に訓練に参加していた晄マコトの成長はめざましいものだったが、自分だって成長した実感がある。
他でもないマコトの特技を、隣でずっと見ていたのだ。

マコトのように計算に基づいた動きは出来なくとも、敵の攻撃を予測して対策を打つくらいであれば、
キョウにもなんとか出来るようになっていた。

キャンサイファー「おっと危ない危ない」
ガオー「な、おめっ!?」

ガオーの爪による攻撃があたる寸前、キャンサイファーが軽い身のこなしで後方へと避けた。
複雑な軌道を描きながら何度も跳躍し、詰める前の間合いへと戻されてしまう。

キャンサイファー「あっさり見切るとは思ったよりもやりおるな」
ガオー「こらー!逃げんじゃねえー!」

キャンサイファーが捕まらなかった第二の理由が“これ”だ。
多脚から生み出される跳躍力は、そのまま機動力に直結している。
すなわち、見た目以上に素早いのである。
シンプルな理由だが、シンプルゆえに対応が難しい。
攻守バランスの取れた素晴らしい機体だ。

ョウ「さすがコノエさんの置き土産......スゲー機体設計したなぁ......」

キャンサイファーはIAAとギアティクス社の共同開発によって生まれたが、
その設計に三梨コノエも大きく関わっていたらしい。

ガオー「感心してる場合かよ、キョウ!」
キョウ「いっけね、悪いガオー!でもこれで状況が少し変わったな!」
キャンサイファー「ほう......なるほど、移動を誘ったか」

黒蟹の言うとおり、これもまた狙いの一つだった。
キャンサイファーの移動を誘ったことにより、ガオーとの間合いに木々の障害物を挟むことに成功したのだ。

キャンサイファー「しかし同じ事!樹木程度、ワシの酸が何度でも溶かしてくれる!」
キョウ「ガオー、わかってるな!」
ガオー「おうよ!」

宣言通りキャンサイファーは砲筒から酸を吐き出した。
酸が当たり根元が溶かされた木々が倒れていく。
その瞬間、ガオーは木々の枝から枝へ飛び移りながら移動していた。

キョウ「狙い目はここだ、キャンサイファー!お前が障害物を排除するなら、排除される途中でそいつを利用する!!」
キャンサイファー「むうっ!!」

酸を放出している間、キャンサイファーは移動を封じられる。
事前に聞かされていた情報通りだ。

ガオー「喰らえぇえええッ!!」

蟹の真上に到達したガオーは、そのまま直下へ跳ぶ。

キャンサイファー「ワシが動けないと踏んだか。甘く見られたものだな、だからオヌシらは童なのだよ」
キョウ「......まずい!!」

なおも酸を撃ち続けているキャンサイファーが、ハサミを地面に突き立てる。
身体ごと砲口を無理矢理上へと向けていった。

キャンサイファー「移動は出来ずとも、体勢を変える程度ワケないわ!」

万事休す。
軌道を変えた酸の泡の奔流が、いままさにガオーを飲み込まんとしていた。

だが。

ガオー「うわっちぃーーッ!」
キャンサイファー「!?」
キョウ「この炎......まさかっ」

酸の泡が、上空から降り注いだ炎によって焼き尽くされていた。
その中心から、キョウが炎を見た瞬間期待した姿が出現する。

ドラギアス「......やれやれ。まったくもって世話の焼ける生徒共だ」

炎を纏ったドラギアスゼノフレイムが、ガオーを見つめていた。

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 25

フォックス「それで。あのドラギアスの元で学んでみて何か得るものはあったかな——ミスターマコト」

ギアティクス社の応接室。
そこでマコトは、IAA会長でありギアティクス社現社長のフォックスロアーと向かい合って座っている。
訓練の中間報告は直々にフォックスロアーが聞く形を取り続けており、
こんな風に彼と一対一で話すのはこれが初めてではない。
だから、今では大分緊張することなく彼と話すことが出来るようになっていた。

マコト「......こう言っちゃなんですけど、ボクがABFの皆さんやIAAの特殊部隊みたいに
戦えるように成長したかという意味では、まったくそんなことはないと思います」
フォックス「ふむ。しかし先日話を聞いたときは何かを掴んだ様子ではなかったかね」
マコト「それは、はい。なんとなくボクが目指すべき戦い方......みたいなものは、出来た気がしました」
フォックス「ほお、なるほど」

マコトが訓練生としてABFへの出向を始めて、実に三ヶ月。
当初は母に心配されつつも、兄の所属するIAA絡みの話だと分かると快く送り出してくれた。
保護者がいる、ということで納得してくれたのだと思う。
しかしマコトは兄との確執は話していなかったから、後ろめたい気持ちを抱えながらの三ヶ月となった。
昼は学校に通い、放課後になればドラギアスの元でキョウと共に訓練に励んだ。
訓練期間として定められたのは四ヶ月。
この生活も残り一ヶ月で終わると思うと、大変だった毎日もあっという間だったことを実感する。

マコト「あと一ヶ月......“教官”のもとでもっと強くなれるよう、頑張ります」
フォックス「それは重畳(ちょうじょう)なことだ。だが一つ訂正させて貰おうか、ミスター」

フォックスロアーがテーブルの上に置かれていた端末を操作すると、二体のアニマギアの写真が表示される。

EPISODE DE25

マコト「これは?」
フォックス「“脱走”したアニマギアさ」
マコト「......脱走」

アニマギアが、脱走。
その言葉にとても良い印象は抱かない。
一瞬にして、張り詰めた剣呑(けんのん)な空気がマコトと会長の間に漂う。

フォックス「そう。彼らは元々、どちらもIAAとギアティクス社が協同で研究・開発していた実験用アニマギアなのだよ」

会長曰く。
第三世代に搭載するツインクロスアップシステムは彼らが雛形となっているらしい。
ユニコーンライギアスの研究、そしてユナイトペンギオスの開発経験を経て、
『完全に異なる意識を持った二体のアニマギアの融合』をテーマに設計された二体のアニマギアなのだ、と。
名をそれぞれ、黄をモンキーゴクラウド。
黒をアシッドキャンサイファーと呼ぶ。

フォックス「訂正と言ったね。ミスターマコト、キミには訓練の最終工程として実地任務にあたってもらうことになった」
マコト「任務......ですか」
フォックス「状況が変わってしまってね。三日前、このアニマギア達がギアティクス社のラボから脱走してしまった。侵入した暴走アクターの手引きによってね」
マコト「た、大変な話じゃないですか!」

フォックスから聞かされた話はまさに寝耳に水だった。
確かに、マコトがギアティクス社に訪れる機会は少ない。
自分がここで起きる事象に疎いのはある程度仕方の無いことのように思える。
それにしても、今日ビルに入るときだって緊急事態のような空気はまったくなかったのだ。
実験機体の脱走にくわえて暴走アクターの侵入など、
平常運転が難しいどころか全国区の報道にのっていてもおかしくない。

フォックス「報道規制を敷かせて貰っている。自分でやっておいてなんだが、
ギアティクス社はいま社長交代で色々と不安定な時期だ。世間の目にマイナス面をさらすことは得策じゃない」
マコト「にしたって......」

脱走の経緯が不明にしろ、放っておけば大事件に繋がりかねない。
会社のメンツを保つために情報を遮断するなどあって良いことなのだろうか。

フォックス「大人の事情、という奴だよ。キミが歳を重ねればいずれ理解するだろう」
マコト「............それで、このアニマギア達を捕まえてこいと」
フォックス「話が早くて助かるよ。すでにABF、IAA特殊部隊ともに捕獲作戦を展開している。
キミにはその手伝いをして貰いたい」
マコト「キョウも、そこにいるんですか」
フォックス「その通りだ」
マコト「やっぱり......」

実を言うと、最初からそんな気はしていた。
昨日と一昨日、ドラギアスの訓練にキョウとガオーが現れなかったのだ。
ドラギアスがそれを責める様子もなかった。
キョウ達がいなくともマコトとムサシの訓練に集中していたことからも、
ドラギアスは事情を知っていたのだと容易に想像がつく。

フォックス「彼は耳が早い。脱走の事実を聞きつけてすぐさま作戦への参加に志願したよ」
マコト「そう、ですか」

まったく、キョウらしいといえばキョウらしい。
自分になにも告げずに決めたのは多分、いや間違いなく。

マコト(——ボクがまだ弱いからだ)

彼のことだ、マコトを面倒な事情に巻き込むまいと黙って行ったのだろう。
だが、その事実はマコトの胸に暗い影を落とす。
いくら口で仲間と言っても、彼がマコトの実力を認めていないと言外に伝えられた気がした。
いや、仲間であるまえに友達だから、と彼は言うのかも知れない。
それでも。

マコト(......悔しいな)
フォックス「それで、引き受けてくれるかな。なに、まだキミらは子供だ。なにも最前線に立て、と言うわけではないよ。あくまで捜索部隊のサポートを通じて現場の空気を学んで欲しいのだよ」
マコト「わかりました」
フォックス「......おや、意外にも即答だね」
マコト「ボクもアイツに負けてられないって、そう思ったんです。ムサシもきっと納得してくれると思います」

件のムサシはいま、隣にいない。
ギアティクス社のラボで調整中だった。
この三ヶ月の訓練で、ムサシのAIに変化が起きていたからだ。反応速度や動体視力の向上が見られており、
それにフルに対応出来るよう機体のチューニングを施しているのである。

マコト「それで、キョウはどこにいるんですか」
フォックス「ああいや、すまない。語弊があったようだ。二体のアニマギアは一緒に行動しているわけではないのだよ」

なにぶん、すこぶる仲の悪いアニマギア達でね。
フォックスはそんな風に続けた。

フォックス「ミスターキョウにはアシッドキャンサイファーの方を追ってもらっている。
キミは彼とは別行動を取ってくれ」
マコト「!」

つまり、マコトはムサシと共にモンキーゴクラウドを追う、ということだ。
この三ヶ月、任務の際にはマコトの傍らにずっとキョウがいた。
ガオーに指示するキョウを見て学ぶことは多かったし、
自分がへましそうになった時にはサポートして貰うことも多々あった。

フォックス「もう一度、聞くとしよう。ミスターマコト、モンキーゴクラウドの捜索部隊に合流し、サポートに回って貰うことは出来るだろうか。これは強制ではない、あくまで訓練の最終工程としてプランを提案しているだけだ」

一人で行くことが不安であるならば、引き続き残りの一ヶ月ドラギアスの元で学ぶが良い。
その言葉に、マコトは逡巡する間もなく改めて即答する。

マコト「やります。やらせてください」

キョウに認めさせるために。
兄に認めさせるために。

自分が強くなったことを証明しなければ、マコトはこれ以上先に進める気がしない。

そう、考えた。

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 24

マコトの視線の先で、ドラギアスの全身が紅蓮に包まれる。
紅蓮とは炎だ。
燃えさかる炎に確かな熱を感じながら、ドラギアスの言葉を耳にする。

ドラギアス「インスティンクトオーバーライド——アウェイクイングッ!」

火竜の叫びに呼応するように、先に奪われていたドラギアスの槍が炎の中へと吸い込まれていく。
そこから起きた事象は“孵化”だった。
炎というタマゴの殻を突き破り、四肢が飛び出す。
次いで長い尾に、大きな羽。
最後に、炎を全て吹き飛ばして全身が露わになった。

EPISODE DE24

ドラギアス「アドバンスフォルム:ビーストモード!」

四つ脚で大地を掴み立つ、炎と見紛う赤き竜が顕現する。

ムサシ「なんだあれはッ!?」
マコト「教官も“変形”したんだ......!」

変形機構を有するアニマギアで、マコトが真っ先に思いつくのは
兄・タスクのパートナーであるトランスマンティレイドだった。
彼らに敗北して以来、マコトはアニマギアを取り巻く事情に少しずつ詳しくなっていた。
しかし、彼の付け焼き刃のような知識の中では、変形可能なアニマギアはとても数が少ない。

そのことが妙に気になって、理由を紅葉ヤマト博士に聞いたことがある。
曰く。

ヤマト『——アニマギアの性質上、二脚型と四脚型を両立させるのは構造的には難しくない。厄介なのは中身なんだ』

動物としての本能を再現するプログラムを、二脚用と四脚用のそれぞれを一つの機体に搭載する必要があるらしい。
そして互いのプログラムが干渉して誤作動を起こさないように、
管理するシステムを組むことが一筋縄ではいかないのだという。

だからこそ、過去に流通してから今なお活躍する『ヴァリアブルシャーク』シリーズが、
形は違えど傑作変形アニマギアと評される由縁でもあるのだ。
......他にも、幻の機体とされるガレオストライカーシリーズがあるらしいのだが、
マコトはそれ以上の情報を持ち合わせてはいない。

そしていま。
変形機構を有するアニマギアが目の前に二体も在る。
ケルベロガルギアス、そしてドラギアスゼノフレイム。
トランスマンティレイドの存在といい、アニマギア技術のめざましい進歩を否応なしにマコトは理解した。

——などと、感心している場合ではない。
二体のアニマギアの様相は先ほどとまるで逆転している。
四脚のガルギアスが二脚へ。
二脚のドラギアスが四脚へとそれぞれ姿を変えた今、戦いは文字通り加速していたのだ。

マコト(目で......追い切れない......!)

互いに全力。
変形前までに見せていた動きはほんの準備運動だった......といわんばかりに、二つの影が激しく交差を繰り返す。

ガルギアス「クク......ハハ、ハハハ!!速い速い!面白いじゃないの、ダンナ!」
ドラギアス「こんな速度(もの)で満足されては困るな!!」

変形したドラギアスの戦闘スタイルはマコトの知るそれとまったく違う。
これまでは研鑽された技術でスマートに圧倒する戦い方だったが、いまでは獣の如きパワープレイを的に押しつける、
本能に任せた荒々しい戦闘を繰り広げていた。

ムサシ「しかし、強い......ッ」
マコト「うん......!」

動きの精細さで言えば明らかに以前より劣っているものの、それを凌駕する力でガルギアスに食らい付いていた。

対するガルギアスは、ドラギアスの猛攻をすれすれでかわしていた。
的確にドラギアスの動きを見切り、必要最低限の動きだけで回避する。
その様は狂気じみていると同時、まるで踊っているようにも見えた。

ドラギアス「貰ったッ!!」
ガルギアス「——クク」

あまりに激しい攻防。
その応酬の最中で、ドラギアスは敵が見せた一瞬の隙を見逃さない。
尾による渾身の薙ぎ払いが、敵の脇腹を確実に捉えた——はずだった。

マコト「びくとも、しない......!?」

傍目から見ていた分には、ドラギアスの一撃は並のアニマギアならひとたまりもないように思える。
ボーンフレームごと破壊されかねない強烈な一撃だったはずだ。

ガルギアス「並のアニマギアなら、な......!」

敵は吹っ飛ばされるどころか、まともに受けたその攻撃を受けきり、
挙げ句にドラギアスの尾を脇に抱え込んでガシリと掴んでいた。

ガルギアス「テンション上がってきた、って感じだよダンナ......今度は俺の番だなァ!」
ドラギアス「ぬ、うッ!?」

ガルギアスは重心をぐっと下げて、その場で旋回を始める。

ガルギアス「ぶっ飛べ............!!」

そして遠心力のGを利用し、ドラギアスという標的を勢いよく投げ飛ばした。
ジャイアント・スイングだ。

ドラギアス「があッ!!」

火竜が激突したのは、先の戦いで狙撃手が潜んでいたフードトラックだ。
とてつもない衝撃がトラックをひしゃげさせ、そのまま車体が真横に倒れ込む。
轟音と土煙が街中に広がった。

マコト「教官......っ」
キョウ「いや、まだだ。ドラギアスは折れてない!」

土煙の中から一閃の赤い光が高く飛翔している。
キョウの言ったとおり、ドラギアスはすぐさま体勢を立て直したのだ。

ドラギアス「いまのは......効いたぞ......エンペラーギア......!!」
ガルギアス「元気そうでなによりだ、そうでなくちゃなァ!」

ドラギアスがガルギアスに向かって上空から一直線に急降下する。
敵に飛翔能力はない。
ゆえに、改めて重心を下げて待ち構える。
真正面からドラギアスの突進を受け止めるつもり——否、それ以上だ。

マコト「——」

マコトは思わず息を止めてしまう。
彼の目には確かに、ガルギアスがドラギアスの攻撃に合わせてカウンターを狙っているように見えていた。
彼らの戦いの未来までは見通せない。
素人目には互いの力量に差はないからだ。
このまま続けても、どちらかが倒れる結末をどうしても想像出来なかった。

ガルギアス「——了解」
ドラギアス「......ッ」

そして。
マコトが想像出来なかった結末は、この場の誰もが予想だにしない形で訪れる。

ドラギアス「貴様、なんのつもりだ」

ドラギアスがガルギアスの目前で急停止したのだ。
ガルギアスもまた、構えを解いて静かに一歩下がっている。

ドラギアス「何故この状況で殺気を消した......!!」
ガルギアス「クク......悪いな。“ご主人サマ”からお叱りの通信だ」

紫色のエンペラーギアは、程なくして元の四脚形態へと変形。
今のいままで激しい戦いをしていたとは思えないほど、彼はあっさりとドラギアスに背を向けた。

ガルギアス「元々、任務自体は終わっているもんでね。いやはや、俺としたことがつい熱くなっちまったよ」
ドラギアス「逃げるのか......!」
ガルギアス「そう取られても仕方ねえ。とにかく、帰投命令が出された以上は従うしかない」

敵の豹変した態度に、ドラギアスは激昂を隠そうともせず声を荒げる。

ドラギアス「貴様の事情など知ったことか!エンペラーギアの貴様を逃がすつもりはないと言ったはずだ!」
ガルギアス「だが、俺を終わらせるほどの力はアンタにはないだろ、力は互角なんだからよ。なぁダンナ」
ドラギアス「......!」

やれやれ、とガルギアスは頭(かぶり)を振って軽いため息をつく。

ガルギアス「未練がましくて情けねえことを言うが。この勝負、一旦預けさせてもらうぜ」

そう言い残して、エンペラーギアは夕陽に向かって跳躍する。
姿を消したのもまた、一瞬であった。

ドラギアス「天草キョウ、晄マコト。直帰と言ったが撤回だ——」

火竜は戦いの熱を振り払うように、元の姿へと回帰して続ける。

ドラギアス「——本部に戻って報告する必要がある。獣甲屋の復活だ、とな」

アニマギアDEロゴ

TO BE CONTINUED...

EPISODE 23

キョウは冷静であろうとするも、動揺を隠しきれていなかった。

——エンペラーギア。
獣甲屋によって開発された、アニマギアを超えた究極のアニマギア達の総称だ。
通常のアニマギアと決定的に違う点は、空想上の生き物——幻獣のデータによって作られている機体達ということだろう。

堕天使・フォールンジオギアス。
海竜・リヴァイアカイギアス。
不死鳥・フェニックスネオギアス。
白虎・バイフーゴウギアス。
一角獣・ユニコーンライギアス。

そして火竜・ブレイズドラギアス。
ドラギアスゼノフレイムとして生まれ変わる前の彼もまた、獣甲屋に属する皇帝機の一体だった。
これらはかつて、フェニックスネオギアスを除いたすべてが、天草キョウと仲間達によって討ち倒され、
獣甲屋も鳴りを潜めた......かに思えた。

しかしいま、新たなエンペラーギアを名乗る者がいる。
ケルベロガルギアスだ。
目を疑い、耳を疑ったキョウだったが、ドラギアスゼノとの一騎打ちで互角に立ち回る様をみて確信する。

あの実力からして、エンペラーギアを自称することが何を意味するのか分からぬ手合いではないだろう。
だとすれば。

キョウ「本当に新手のエンペラーギア、なんだな......!」

キョウの脳裏に浮かぶのは一人の男。
テロ事件の後、行方をくらませた獣甲屋の首魁・黒田ショウマである。
新たなエンペラーギアの出現は、否応なしに彼の存在を意識させた。

ドラギアス「やはり......ッ!」

ガルギアスと戦っているドラギアスが、確信めいた声で続ける。

ドラギアス「アクターを改造し暴走させているのは貴様ら獣甲屋だった、というワケだ!」
キョウ「......!!」
マコト「獣甲屋だって!?」

マコトが驚くのも無理はない。
数ヶ月前のテロ事件が未遂に終わって以来『黒田ショウマを捕まえることは出来なかったが、獣甲屋は消滅した』
......というのが世間一般の考えである。

ガルギアス「へぇ......?面白いじゃねェか、なぜそう思う?」

ドラギアスは答える。
暴走アクターの戦闘練度が上がっていくにつれ、ドラギアスの頭には常にその可能性が付きまとっていた、と。
キョウもその意見には同意せざるをえない。
一連の事件が、獣甲屋の手口に酷似していることは気になっていたのだ。

ドラギアス「加えて、初めての事例となる『二体一組で行動する暴走アクター』の出現!
一連のアクター事件は獣甲屋の実験で、今回は実験のステージが移った......
そして貴様はそれを観測しに来たのではないか!?」

ドラギアスの槍が、ガルギアスの右方を貫かんと刃を走らせた。
しかし、ガルギアスの右肩にある頭部が刃に噛み付きそれを止める。

ガルギアス「ククク......どうやら噂通り、腕っ節だけで頭の回転はそんなに良くないらしい」
ドラギアス「なんだとッ」
ガルギアス「ダンナにとってその方が都合が良いんだろうけどなァ、まるで的外れで腹がよじれちまうね」

言いながら、ガルギアスの中央の口内が赤く煌(きら)めいた。
そのまま勢いよく火炎を吐き出す。

ドラギアス「く......ッ」

ドラギアスの判断は冷静だった。
槍を手放し、後方へと跳びながら間合いを稼ぎ、胸部から同じく火炎を放出。
相殺する。

ガルギアス「やるねぇ......少しは見直してやるよ。だけどな」

敵の右の頭部が、くわえていた槍をぞんざいに投げ捨てた。

ガルギアス「ダンナ。悪いが暴走アクターに“俺達”は一切関わっちゃあいねえんだよ」
ドラギアス「信じてたまるか!この街に巣くう疫病神の言葉など!」
ガルギアス「興奮すると聞く耳持たなくなる所は、記録で読んだ昔のアンタと全然変わらないらしい——まぁ良いだろう」

“それでこそドラギアスだ”。
ガルギアスはどこか感心したような面持ちで続ける。

ガルギアス「ガキ共連れて作戦ごっこしてるのを見て、最初は失望したんだぜ。
エンペラーギアだったころと比べて腑抜けちまったもんだってな」

だが、こうして僅かながら戦ってみてよく分かった。

ガルギアス「ダンナがABFに鞍替えしようがなんだろうが、根っこの部分は何一つ変わっちゃあいねえ。
記録を読んで俺がシビれたドラギアスって野郎は死んでなかったみたいだ」
ドラギアス「......どういうことだ」
ガルギアス「戦闘センスの塊で、敵をみちゃまっすぐに殲滅するような問答無用の武人——それがダンナなんだな」

だから。
ガルギアスが一度言葉を句切る。
すると、四足歩行型だった紫色のエンペラーギアが、みるみる内に変形を繰り返し。

マコト「人型に......変わった......!?」
キョウ「変形するのか、アイツ!」

見事に二足歩行の姿へと
ガルギアス「だから、ここからは全力だ、ブレイズドラギアス......いや、今はドラギアスゼノフレイムだったかね。
“当初の任務”からは随分と脱線しちまったが、アンタともう少しだけ遊ばせてくれや」
ドラギアス「そも、エンペラーギアである貴様を我が放っておくハズがない——見せてみろ、貴様の全力とやらッ!」

EPISODE DE23

二体の拳が激突すると、周囲に衝撃波が生まれた。
風を感じながらキョウは確信する。

キョウ(見られるのか......ドラギアスの本気が......!)

戦いの場で不謹慎ではあるが、ワクワクする自分を無視できなかった。
かつてドラギアスがギアバトルの大会に乱入してきた以来、彼の本気を見ることはなかったからだ。
確かに、訓練や任務の際ドラギアスが手を抜くことはなかった。
しかし手を抜かないことと本気で戦うことはまるで意味が違う。

ドラギアス「貴様らは少し離れていろ、ケガをしたくなければな!」
キョウ「行こうマコト、ドラギアスの言うとおりだ」
マコト「わ、わかった!ガオー、ムサシ、ボクの肩に乗って!」
ガオー「あいよ!」
ムサシ「了解した」

マコト達を先導して、キョウは言われたとおり安全圏まで避難する。
だが。
キョウもマコトも、ガオーもムサシも、決してドラギアスとガルギアスの戦いから目を逸らそうとはしなかった。

ドラギアス「————ッ!!」

槍を失ったものの、ドラギアスの勢いは止まっていない。
むしろ武器がない分、より肉薄した状態で巧みな体術による連撃を繰り出している。

ガルギアス「............ッッ」

対するガルギアスもドラギアスの目にも留まらぬ連撃に完全についていっているところから察するに、
とんでもない実力の持ち主だ。
一撃一撃が重い上に、隙あらば炎による攻撃を交えて、自分の間合いを決して崩そうとしない。

マコト「すごい......!」
キョウ「ああ、まるで別次元だ」

両者互いに相棒を持たない機体ゆえに、戦闘にまつわる思考や行動はすべて一人で判断しているはずだ。
ガオーと自分、そしてムサシとマコトのように役割分担をしていない分、思考・即行動が可能なのだろう。
しかし思考回路に求められる処理速度も尋常ではない。
本気を出したドラギアスやエンペラーギア相手に、“今の自分達”がどこまで歯が立つのだろうか。

強くならなければならない。
強く在らなければならない。
この場にいる誰もが、彼らの戦いを見て同じ事を考えていることだろう。

ドラギアス「流石は皇帝機......一筋縄ではいかんな」
ガルギアス「ククッ!ダンナに認めて貰えるのはこそばゆいな!」
ドラギアス「しかし、我が本気はまだこんなものではない!!」

拮抗していた両者の戦いが動く。
ドラギアスの言う本気は、果たして勝利の天秤を傾けるに足るものだろうか。

ドラギアス「しかと見届けよ、忌まわしき獣甲屋——その呪縛から解き放たれし、我が新たな力をッ!!」

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 22

大小様々なショッピングセンターが建ち並ぶ商業区画。
市民の避難を済ませた街に普段通りの活気はない。
あるのは、戦いの熱気。

ドラギアス『鬱陶しい狙撃手を見つけたぞ白獅子!貴様から七時の方向、フードトラックの屋根に敵影、距離二百!』
キョウ『了解!ガオー、急速旋回——狙撃に注意しろよッ』
ガオー『おうさ!』

喧騒の代わりに響き渡るのは、狙撃ライフルから放たれる銃撃音と、刃がぶつかり合う金属音。
そして、戦う者達が無線で交える、雄叫びのような指令と応答だ。
ドラギアスの元でトレーニングを始めてから二ヶ月......これは遊びでも訓練でもない。
暴走アクターを相手取った、正真正銘の真剣勝負が繰り広げられていた。

マコト「すごい......ドラギアス教官、戦いながら狙撃手の位置を特定したんだ......ボクらは避けるだけで精一杯だったのに」

現状を整理しよう。
敵は狙撃ライフルを用いる緑色の機体と、槍を構えた紫色の機体の二体だ。
槍を使う敵に対するは同じく槍を使うドラギアス。
もう一方、狙撃する敵に向かうはガオー。
ムサシとマコトは度重なる狙撃を回避するうちに、どちらの敵からも離れた位置の物陰へと追いやられていた。
だが、このまま黙っているマコトとムサシではない。

マコト「ムサシ、ボクらは近接アクターがガオーに近づけないように教官をカバーしよう!
ギロから借りたシザーブースター、残量まだある!?」

ムサシが背中に装備したギロのパーツを確認して頷く。
この物陰に隠れるまでに相当消耗させられたが、まだエネルギーは残されていた。

ムサシ「全力稼働一回分といったところだな」
マコト「充分だ、行くよムサシ!タイミング合わせて!」

ムサシが駆け出す頃には、既にガオーが遠距離アクターに噛み付こうと肉薄している。
敵はライフルを横に構え獅子の口元に押し込んで攻撃を阻止したが、見るからにガオーの方に余裕がある。
このまま行けば遠距離アクターを撃破することは難くないだろう。
しかし。

ドラギアス『しまった......ッ!』

遠距離アクターとバディを組んでいる近接アクターも、味方の旗色が悪いと見たのだろう。
蛇のようにしなやか、かつ俊敏な動きでドラギアスの脇をするりと抜けて見せた。
近接アクターが全速力でガオーの元へと駆けていく。ドラギアスは完全に虚を突かれた形で出遅れてしまった。

ムサシ「うおおおおッ!!」

だがそこに、先に駆けていたムサシが近接アクターの横っ腹へと抱きつく形で突っ込んだ。

マコト「いまだ!」

マコトの声にタイミングを合わせたムサシがブースターを全開にし、超速で低空飛行。
そのままビルの外壁に激突する。

ガオー『よし、こっちのスナイパー野郎は無力化したぜ!』
キョウ『ナイスガオー!マコトもうまくいったな!!』
マコト「まだだよ......ッ」

無線からガオーの勝利報告とキョウの賞賛が飛んできたが、嬉しさよりも先にマコトの眼は次の危機を察知していた。

マコト「右に跳んで、ムサシ!」

土煙の奥からアクターの槍の矛先が先程までムサシがいた場所に飛んできた。
すんでの所でそれを回避したムサシは、機転を利かせて空を切った槍の柄を掴み取る。

ムサシ「ぐ、がっ!?」
マコト「そんな......!」

直後、アクターの右拳がムサシの左頬に衝突した。
アクターはマコトの目にも留まらぬ速さで、躊躇なく槍を手放し拳で殴りかかっていたのだ。

ムサシ「この程度の拳......ッ」

ムサシは怯むことなく、即座にその場で剣を抜いた。
間合い的に斬ることは難しいと見えたが——

ムサシ「——なにも問題はない!」

柄の底を思い切りアクターの腹部に叩きつける。
再び、アクターが壁へと激突。
そのままぐったりと動かなくなっていた。機能停止だ。

マコト「終わった......んだよね......?」
ムサシ「敵機体、完全に沈黙。起き上がる気配もない」
マコト「そっか......お疲れムサシ」
ムサシ「マコトも、ナイスオペレーティング」
ドラギアス『全員、一度集合してくれ』

機能が止まったアクター達をキョウやマコトが回収し、ドラギアスの指示に従って彼の元へと集合する。

ドラギアス「まずは上出来だ、と言わせて貰おう。
訓練を始めてから何度目かの実戦だったが、今回が一番動きが良かった」
マコト「ありがとうございます......じゃなかった。ありがとう、教官」
ドラギアス「ああ、特にマコト。あの状況で我のカバーに入ってもらったのは助かった」

ドラギアスに褒められるが、最後の最後にムサシが攻撃を受けたことにマコトは納得がいっていない。
自分の判断が早ければ、あの一撃は食らわずにすんだはずだった。

ドラギアス「そう自分を卑下するな。二ヶ月前に比べれば格段に強くなっている。マコト以上に情けないのは我の方だ。
まさかこの我が遅れを取るとは......」
キョウ「ああそうだ、あれ疑問だったんだよ。なんであの時、ドラギアスがアクター相手に抜かれたんだ?」
ドラギアス「問題はそれだ」

回収されたアクターを眺めながら、ドラギアスは俯きざまに続ける。

ドラギアス「このアクター達......バディを組んでいたことといい、妙に戦闘慣れしていた。
明らかに今まで相手してきた暴走アクターと質が異なる」
ムサシ「確かに。いや、正確には少し前から戦闘が激化していたように思う」
ガオー「......アクターが成長してきた、ってことか?」

皆の言うとおり、暴走アクターはその強さを段々と増してきている実感がある。
自分達がドラギアスのもとで成長するにつれて、敵も一緒にレベルアップしているような感覚......
まるでRPGの敵キャラクターのようだ。

ドラギアス「我の勘だが、恐らく暴走アクター同士で戦闘データを共有・蓄積しているのだろうな。
ABFの戦術がいくつか模倣されていたように思う」
キョウ「ますますキナ臭いな......ホントに、一体黒幕は何考えてるんだか」

連続する暴走アクター事件の黒幕。
それが一体何者なのか、そして目的がなんなのかはいまだに手がかりすら掴めていない。
だが、こうして戦術がアップデートされている以上、
なにかしらの意図を持ってアクター達が暴走させられているのは間違いなかった。

ドラギアス「本部により詳しく調査して貰う必要があるだろうな。
マコト、今回の件は貴様が一番俯瞰して戦場を分析していたはずだ。
あとで本部から話を聞かれるだろうが、いつも通り普通に話してくれれば良い」
マコト「りょ、了解......っ」

IAAの特殊部隊見習い、というABFとは違った立場ではあるものの、
マコトはこれまでにも何度かドラギアスに報告を任されたことがある。
最初は『たかが小学生の報告』と面倒がっていたABF本部の人間だったが、
いまではマコトが見聞きした情報は重宝がられるようになっていた。
いまでも『たかが小学生の報告』と感じているのはマコト自身であることから、
時折こうして報告を任されるといまだに緊張してしまう。

ドラギアス「キョウ。今回の戦い、終盤でガオーの動きが少し鈍っていた。メンテナンスしてやれ」
ガオー「いやいや、オレは全然大丈夫だけど」
キョウ「確かに、ちょっと反応悪かったんだよな。分かった」
ガオー「ええー......」

ドラギアス「ムサシも一撃貰っていただろう。よく診て貰うように」
ムサシ「承知した」
ドラギアス「それでは本日の訓練はここまでとする。現地解散だ、気をつけて帰れよ」
マコト&キョウ「了解!」

ドラギアスに向かって敬礼をする。
戦いは終わった......次の特訓スケジュールまではまだ日がある。
今日の疲れを癒やすために、マコト達はまっすぐ帰路につこうとしたが......。

???「いんやァ、このまま帰るのはどうかと思うがね」

機器馴染みのない声が、どこからともなく聞こえてくる。
その声の主の姿をいち早く発見したのはムサシだ。

ムサシ「......!?マコト、頭の上だ!」
マコト「え......ええぇ!?うわ、なんだ!?」

いつの間にか、マコトの頭の上に一体のアニマギアが乗っていた。
慌てて振り払うと、こともなげにその機体は肩、腕を経由して地面に着地する。
三つの頭を持つ、紫色の獣型。
どのカタログでも見たことがない機体だ。

EPISODE DE22

ガルギアス「俺はエンペラーギア、ケルベロガルギアス」
ドラギアス「エンペラーギア、だと!?」
キョウ「そんな......そんなことって......!」

驚くキョウとドラギアス、状況が飲み込めていないマコトとムサシ、そしてガオー。
エンペラーギアという馴染みのない言葉に首を傾げる間もなく、
彼らの戸惑いに対してガルギアスと名乗ったアニマギアが「ククク」と笑いながら言葉を続けた。

ガルギアス「驚くのは無理もねえだろうが、まずは俺の話を聞いてくんな......お前さん達の戦い、見学させて貰ったけどよ。どうにもドラギアスのダンナにムカッ腹がたってしょうがねえんだよ。なァ——」

ガルギアスの声色が低く変質する。
それは、怒りの色を帯びた重たい声だった。

ガルギアス「——“元”エンペラーギアなんだろ、アンタ。俺とサシで戦わねえか、ドラギアスのダンナ」

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 21

フラッペ「お待ちしておりました」
ドラギアス「......アンタか。何の用だ」

暴走アクターの事件をあらかた片付けた後、ドラギアスは自身が所属するABFの詰め所へと帰投していた。
そこで待っていたのはラビドルフラペール——フラッペだ。
対暴走アクターを想定とした合同訓練を提案してきたIAAのアニマギアである。
IAAといえば、最近ギアティクス社がIAAに買収されたとの小耳に挟んだが、
任務と戦闘以外のことはからっきしのドラギアスにはあまり興味がない話だ。

フラッペとは合同訓練の計画を打ち合わせる際に顔を合わせている。
しかしながら、彼女が戦うことを想定せずに設計されたアニマギアだからだろうか、
どうにも苦手な相手というのが彼女への第一印象だった。

ドラギアス「——訓練生の教育係?我がか」
フラッペ「ええ。ABFに入隊させるわけではなく、こちらの特殊部隊名義の訓練生という形なんですが。
実地研修をかねてドラギアス様に是非と」
ドラギアス「ッハ、ならばIAAで面倒を見ればいいだろうよ。ABFの新入隊員に任せる仕事でもあるまい」

ドラギアスはABFの中では新米にあたる。
というよりも、試用期間と表現した方がより正確だ。

フラッペ「IAAの部隊はプライド高くって......排他的なんです。飛び入りの訓練生なんて認めないって方達ばかり。
それにアナタなら実力は申し分ないでしょう」
ドラギアス「排他的、か。そういう意味ではこちらもそう変わらないのではないな」

“この身体”になる前は獣甲屋のエンペラーギアとして活動していたこともあり、
FBSが完全に取り除かれたとはいえ警戒されているのは間違いないだろう。
自分としては周りに馴染もうだとかは考えていないが、奇異の目を向けてくる輩がいる限りどうにも居心地が悪い。

ドラギアス「そういった者達がいる限り、我が誰かの面倒を見るのは避けたいというのが本心だ。
少なくとも我が実績で奴らを黙らせるまではな」
フラッペ「お優しいんですね」
ドラギアス「......は?」
フラッペ「だってそうでしょう?自分が面倒を見たらその人に迷惑がかかるから、って。そう聞こえますよ」

ああ、そうだ。
このアニマギアのこういう“他者の優しさを信奉している”ところがむず痒くなるのだ、自分は。

フラッペ「まあ、そこらへんは大丈夫だと思います。間違いなくアナタについて偏見なく理解してくれる方々ですので」
ドラギアス「......わかった。我の負けだ」

彼女に対する苦手意識の原因を再確認したところで、ドラギアスは“訓練生”とやらの面倒を見ることを渋々承諾した。
どう取り繕っても良いように取られてしまうのは想像に難くない。
独り相撲を取ったあげく向こうの要求をのむくらいならば、
さっさと降参した方がいくらか無駄に時間を浪費せずに済むというものだ。

フラッペ「ご快諾いただきありがとうございます。では、こちらの場所で訓練生がお待ちです——」

EPISODE DE21

ドラギアス「......うっ」

フラッペに指定された場所はABF私有地にある屋外の訓練所だったが、
ドラギアスはそこに訪れるなり訓練を引き受けたことを秒で後悔した。
ただでさえ頻発する暴走アクター事件で忙しいこの時分に訓練生などと、
一体どんな殊勝な輩が現れるのだろうと少しでも興味を持った己が憎らしい。

ドラギアス「どうしてよりにもよってその訓練生が貴様らなのだ!!」

目の前に、天草キョウとガオー、そしてムサシがいる。
ムサシと直接面識はないが、キョウとガオーのコンビよりも大分親しみを感じる佇まいだ。
そしてもう一人、知らない少年がいたが、察するにムサシの相棒といったところだろう。

ガオー「よぉ、久しぶりだな」
キョウ「ソウヤ兄ちゃんにやられたって聞いたけど元気そうじゃないか」
ドラギアス「ああクソ、会話が通じぬ......どうして貴様らが、と我は聞いているのだぞ」

会話が通じないと自分が言えたことではないのは百も承知である。
かつての自分はこれよりももっと厄介者だったと知っているからだ。
獣甲屋によって搭載されていたFBSにより、本来のドラギアスの性格は完全に上書きされていたのだ。
凶悪かつ、粗暴で上品さや礼儀のかけらもなかった......奪われていたのだ。
いまでこそFBSを完全に取り除き、更正したとも言えるドラギアスにとって、
獣甲屋に良いように使われていた時のことは思い出したくない過去である。

ドラギアス「あまり馴れ馴れしくしてくれるな」
ガオー「そう言われても、お前の事情考えると......なぁ?」
ドラギアス「貴様らに哀れまれると本当に情けなくなる、やめてくれ」
キョウ「いや、なにも同情してるわけじゃないけど......もう昔のお前とは違うってのは本当なんだろ?」
ドラギアス「たしかにそうなんだが......っ。むう、ああ言えばこう言う......」

本当に、調子が狂う。
以前の暴走気味だった自分を知るキョウ達は、まさしく再会したくない存在の筆頭だったというのに。
こんなにも当たり前に自分が受け入れられている事実はありがたいと思う反面、
まだ嬉しさよりも気まずさの方が上回る。

ムサシ「急な話ですまない。色々と忙しい中だろうに、時間を取ってくれたこと感謝する」
ドラギアス「......まだ言葉が通じそうな奴がいて安心したよ。ムサシだな」
ムサシ「いかにも。よろしく頼む」

ムサシが差し出した手を、躊躇なく握り返した。
やはり、ムサシからは自分にとても近しい何かを感じる。
その光景を見ていた少年が、タイミングを見計らっていたのか慌ててぺこりとお辞儀をした。

マコト「は、初めまして。晄マコトっていいます」
ドラギアス「うむ。貴様はムサシの相棒ということで間違いないか」
マコト「そう、です。よろしくお願いします、その、ドラギアスゼノフレイム......さん」
ドラギアス「馴れ馴れしくするなとは言ったが、そう堅くなられても困る。ドラギアスでいいし、敬語もやめてくれ」
マコト「わかりま——わかった、です」

戸惑うマコトを前に、ドラギアスは心の中で深く頷いた。
自分が想像していた訓練生像に非常に近しい。
礼節をわきまえたムサシの態度にも好感が持てる。
それに比べて——

ガオー「で、訓練ってのは具体的に何するんだよ」
キョウ「またお前と戦えばいいのか?」

——うむ、やはり。
話が早すぎてこいつらはフラッペ以上に苦手だ。
だが一度は引き受けた仕事である。
相手が誰であろうと任務を全うするのが筋というものだろう。

ドラギアス「組み手というのも考えたが、我が任されたのはあくまで貴様らの実地研修だ。
まずは詰め所に行って無線を受け取るが良い」

だから、不機嫌を胸の奥にしまい込む。
自分がいま出来ることは、彼らを一人前の戦士として育てることだけだ。

マコト「実地研修って、ABFの?」
ドラギアス「ああ。貴様らはIAA特殊部隊所属ということになっているらしいが、我の下で経験を積むというのならばABFのやり方に沿って貰う。まずは地道にパトロールといこうではないか」
ムサシ「なるほど」

ガオー「え!戦わねえのか!?」
ドラギアス「戦闘力という点にのみ絞っていえば貴様ら二体はもう充分だろうよ」
ガオー「......へへへ、褒められると照れるな」
ドラギアス「勘違いするな、褒めてなどいるものか。
現場から現場へ移動する我々ABFはただ強ければ良いというわけではないのだぞ」

必要なのは状況に合わせた戦術構築。
市民の避難における誘導方法。
そしてなによりチームワークだ。

キョウ「へえ、色々考えてるんだな」
ドラギアス「あまりなめるなよ。これでもABFの一番槍を自負している」
キョウ「なめてないって。ただお前の口からチームワークって言葉が出てくるなんて意外だなーって」
ドラギアス「......フン」

本当にやりづらい。
かといって、キョウの言うことを否定しようとも思わなかった。
捨て去りたいはずのドラギアスの過去を知る者、知らない者。
誰であろうが、変革したこれからの自分を見せていくしかない。
独りよがりの武人はもういないのだと。

ドラギアス「なにをボサッと突っ立っている!さっさと無線を回収してこい!」

武力しか取り柄がなかった自分が挑む、過去との戦いはまだ始まったばかりだった。

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 20

戦闘が終わると、再起動した相棒達を労るマコトとキョウを尻目に、
タスクとフォックスロアーは早々にその場から姿を消した。
どうやら近々IAAの特殊部隊とABFの合同訓練があるらしく、その顔合わせで席を外すことになったそうだ。
結局、兄とまともに言葉を交わしたのは決着の時だけだった。

マコト「......逃げることだけを考えて、か」
ムサシ「気にしすぎるな、マコト。キミが本当に晄タスクの言うような人間だったのなら、
そもそもこの場に立っているはずがない。
自分と向き合うと決めたからこそ、マコトは兄と戦うことが出来たんだ。もっと自信を持て」
マコト「そう、だね。ありがと、ムサシ」

以前の自分なら、兄に言われたまま塞ぎ込んでいたかも知れない。
だが相棒の言うとおり、晄マコトはここにいる。

マコト「でも、兄さんが言ってたことにも一理ある」

自分には攻めの姿勢が足りないと気付かされた。
相手の攻撃を避ければ反撃出来る、という受動的な考えをいずれ捨てなければいけないと、
他でもない兄に教えて貰えたのだ。

マコト「ボク、もっと強くなりたい......強くなるよ......!」
キョウ「その意気だ、マコト!オレも今回、色々と思い知らされたからな......一緒に強くなろうぜ!」

うん、とマコトは力強く頷いた。
仲間の言葉がこれほどまでに強く自分の背中を支えてくれているのだと思うと、自然と笑みがこぼれていた。

アズナ「面白いね、キミたち」

審判として一部始終を見届けていたアズナが、試合中の冷静な雰囲気とは打って変わって明るい語調で声をかけてきた。

アズナ「特にキミ、マコトくん。あの“カタブツ”タスクくんに弟がいるなんて話、聞いたことなかったから驚いたなー。
どれどれ......うん、こうしてみるとよく似てるねぇ。ウケる」

アズナの顔が“ずい”、とマコトの顔の至近距離まで近づいてくる。
あまりの近さに思わず目を背けてしまった。

マコト「あ、あの......」
アズナ「あは、かわいー。ああいやいや、こんなことしてる場合じゃないんだった——ね、キミたちさ」
キョウ「はい?」

彼女はキョウとマコトの顔を交互に見て何度か頷くと、なにか確信を持った声で勢いよく言い放った。

アズナ「強くなりたいならさ、ウチらの仕事手伝ってみない?」
ガオー「へ!?」
ムサシ「......とんでもないこと言い出すな」

EPISODE DE20

本人達よりも冷静な反応をするアニマギアに、アズナは苦笑いを浮かべながらも続ける。

アズナ「暴走アクターの事件はまだ起きてるし、
獣甲屋のテロ以降アニマギア絡みの事件は増える一方なのは知ってるっしょ?
ぜんぶ鎮圧するには人手が足りないんだよね。そこでキミたちの腕を見込んで手伝って貰えないかなーって」

確かに、彼女の言うことはもっともだ。
ABFだけではカバーしきれないほど、いま世の中に事件は溢れかえっている。

アズナ「ギアティクス社は正式にIAAの傘下に入ったワケだし、あたしたちが協力するのも良いと思うんだ。
ぶっちゃけ子供だと思って侮ってたんだけど、いまの戦いっぷり見てたらその不安もぶっ飛んだし」

マコト「......ボクたち、負けたよね?」
キョウ「うん、それも完璧に」
アズナ「あのバトルオタクに勝とうなんて結構難しいんだから気にしない気にしない。
でもちゃんと良い動きは見れたし、タスクくん相手にビビってなかったっしょ」

大丈夫、これでも見る目には自信あるんだから、と。
自慢げに胸を張るアズナを前に、マコトとキョウは互いに見合わせた。

キョウ「どうだ、マコト。やってみる気、ある?」
マコト「うん。強くなりたい、って言ったけど具体的な方法とか考えてなかったし......良い機会だと思う」
アズナ「なら決まりねっ!」

アズナが二人の手を取って同時に握手する。
これから先、どんな事件がマコト達を待ち受けているのだろうか。
そして、その事件を経て自分は成長することが出来るだろうか。

マコト(......大丈夫。ボクには仲間がいる......強くなって、みせる)

願わくば、兄に認められるような男になろう。
不安と期待が入り交じる複雑な心境ながらも、決意を新たにするのだった。

 

空を舞う赤い影がある。
その影は、眼下の街を俯瞰しながらゆっくりと旋回していた。

???「——また事件、か」

街の方から騒々しい空気を感じ取ると、すぐさま通信が入ってきた。

オペレーター『ABF各位に伝達。C地区でアクターが暴れているとの通報あり。現場付近の隊員は速やかに対応されたし』
???「ふん」

予想したとおりの内容に、影はノータイムで急降下を始める。

???「その事件、このドラギアスが一番槍を務めよう——」

彼の者の名はドラギアスゼノフレイム。
かつて獣甲屋の手先として暗躍したエンペラーギアは今......。

ドラギアス「——いざ参るッ!」

......街の平和を守るために、事件の渦中へと舞い降りようとしていた。

EPISODE DE20

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 19

人型へと変形したレイドランスの動きは速かった。
先ほど弾き飛ばしたガオーのもとへと、一足飛びに距離を詰めてみせる。
ガオーはまだ体勢を立て直し切れていない。

ガオー「な、に......ぐがっ!?」

レイドランスはガオーの背を踏みつけ、身動きを取れなくしてから片方の翼を乱暴に掴み上げる。

キョウ「一体何を......!?」
タスク「その翼、暴走アクターから剥ぎ取ったモノらしいな——やれ、レイドランス」
レイドランス「イエス、マスター」

そのまま、レイドランスは刈り取るようにガオーの翼を引き剥がした。

ガオー「ぁああああああああああああああッ!!」
キョウ「ガオー!!」

カスタマイズに対する待機状態が整っていない環境で、あれほどの大きさのパーツを無理に引き剥がすのは危険だ。
特にツインクロスアップをしている場合、ブラッドステッカーの出力が通常よりも大きくなっているため、

タスク「大型のパーツをいきなり外せば動力が不安定になり、強制シャットダウンを引き起こす——
暴走アクターのデータが残っているかも知れないからな。これは回収させてもらう」

その言葉の通り、ガオーはがっくりとうなだれて動かなくなってしまう。

タスク「......まずは一体」
ムサシ「貴様......ッ!!」
マコト「ちょっと待ってよ、ルール違反じゃないか!?」
タスク「甘い。お前が言っているのはボーンフレームの破壊についての禁則事項なんだろうが——」

端的に言えば、ツインクロスアップシステムはニックカウルに追加のカスタマイズを行えるシステムだ、と彼は続ける。

タスク「——これはボーンフレームの破壊には抵触しない。そうだろう、キリエさん」

問われたアズナは、黙って首を縦に振った。
ジャッジを務める彼女がそういうのであれば、いくらこちらが納得できなかろうがそれに従うしかない。
ならば。

マコト「行ってムサシ、ギロ......!全力でサポートするッ!」
ムサシ&ギロ「応ッッ!!」

闘争心に火をつける。
いまは相手が兄だろうがなんだろうが関係ない。
苦手意識をすべて吹き飛ばすほどの“熱”がマコト達を駆り立てた。
レイドランスに負けず劣らずの瞬足で、ムサシは“敵”に肉薄する。
息もつかせぬ身のこなしで、そのまま左の大剣を振り下ろした。

レイドランス「見えております」

地を這う衝撃。
その僅か上空へと、レイドランスは軽やかに跳んで見せる。
避けられていた。

EPISODE DE19

マコト「来る......!ムサシ、剣を起点に左へ避けて!!」

反応が良い。
ムサシは突き刺した大剣で言われるがまま器用に地面を弾いて左方へと回避行動を取る。
そしてマコトが観た通り、先程までムサシがいた場所でレイドランスの鎌が空を切った......かに思えた。

ムサシ「な......っ!?」
ギロ「こいつぁ......!!」

いつの間にか後ろに回り込んでいたレイドランスが、避けた先で今一度鎌を振るう。
肩のアーマーをあてるように防御するが、そのまま弾き飛ばされてしまった。

マコト「そんな......どうして......!」
タスク「......所詮、お前のチカラはそんなものだ、マコト」

レイドランスの猛攻は、途切れることなくムサシを痛めつけていた。
その度にマコトは見切り、指示を飛ばす。
だが、どうしても攻撃を避けきれない。
読み切ることが、出来なかった。

そんな光景の裏で、兄は眉間に深くしわを刻みつけながら続ける。

タスク「新型とはいえ、デュアライズカブト型の限界は見えている。ムラマサの事を思い出して郷愁にでも駆られたか?」
マコト「......ッ!」
キョウ「ムラマサのことを......知っているのか......!?」
タスク「お前には関係がないことだ、天草キョウ。そしてマコト、お前にも関係のないこと......だっただろう」
マコト「でも兄さん......ムラマサは、兄さんのことを......!!」

タスク「......くどい。終わらせろレイドランス、何を遊んでいる」
レイドランス「イエス、マスター」

もういい、と言わんばかりに放たれたタスクの一言で、レイドランスは動きを変えた。
両の鎌を一度しまい、その場で大きく踏み込んでみせる。

マコト「まずい!ムサシ、直進で来るよ!!」
タスク「お前の読みは“遅すぎる”んだ、マコト。お前が観ている未来は永遠に訪れない」

奇しくもタスクの言葉通りに展開は運ばれた。
一見、確かにまっすぐ敵はムサシへと突進している。
ムサシはそれに対応しようと剣を盾代わりに正面へと構えたが——、

マコト「そんな!?」

——身体を捻る、バスケットボール選手が相手を抜く時に使うような足さばき。
ムサシの身体に寄り添い、踊るように回転して見せて、背後から必殺の一撃が放たれた。

ムサシ「ぐああああああああッ!!!!」

EPISODE DE19

タスク「......二体目。思ったよりも時間がかかったな。次はもっと早くしろ、レイドランス」
レイドランス「申し訳ありません。全力でお応え致します」

マコトの相棒は、吹き飛ばされ落下した先でぴくりとも動かなくなっている。
あまりにもあっけない幕切れであった。

マコト「ムサシ......ギロ......!!」
タスク「兄から忠告してやる。お前のその目は、怯えた草食動物のそれとなんら変わりはない」
マコト「......!!」
タスク「逃げることだけを考えて、生き残ることしか考えていないお前だからこそ手に入れた“つまらない能力”だ——」

——攻めることを放棄した相手に後れを取るほど、俺とレイドランスは鈍(なまくら)じゃあない。
タスクの冷たい言葉と視線が、マコトの胸を八つ裂きにしていた。

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 18

キョウ「お前と本格的にタッグ組むのはなんだかんだ初めてだな、マコト」
マコト「そうだね......天草の足を引っ張らないようにしなきゃ」

ガオー「心配いらねーだろ!な!」
ムサシ「ああ。マコトにはキョウの技術に追いつけるセンスがある。
ましてや2対1で、加えてイーグとギロの協力もあるんだ。
多勢に無勢とはあまり気は進まないが、あれだけ大口を叩かれたんだ。俺達も全力で行く」

キョウ「頼んだぜ、みんな!」

EPISODE DE18

タスク「——準備は出来たようだな」

模擬戦場の向こう側で、タスクとレイドランスがこちらを見つめている。
その奥ではIAAの会長フォックスロアーと、その秘書アズナが状況を静観していた。

タスク「では、始めますよ会長」
フォックス「ああ、存分に暴れてくれたまえ」

アズナ「——それでは、これよりツインクロスアップシステムのデータ収集を目的とした、模擬戦を開始します!
当ギアバトルはアニマギアの緊急停止、もしくはどちらかの降参によって勝敗を決するモノです!
ボーンフレームの破壊、マスターへの直接攻撃は禁止となります!」

以上のことを踏まえ両者前へ。
アズナの言葉に従い、ムサシとガオー、そしてレイドランスが中央へと足を進める。
先のタスクによる“処理宣言”で、両陣営すでに一触即発の張り詰めた空気を纏っていた。

アズナ「——始めッ!」

先に動いたのはガオーだ。
戦闘開始の合図と同時、ブースター全開で体当たりをかます。
レイドランスはこれを受けた。
カマキリが地面を滑るように大きく後方へと弾き飛ばされる。

キョウ「先手必勝だガオー!畳みかけろ!」
ガオー「当然、そーするつもりだ......ぜッ!」

獅子は高く飛翔し、頭部のブラスターから弾を連射する。
そのまま突っ込んだ。対暴走アクター戦で見せた急降下からの突進である。
レイドランスはこれらの攻撃を、避けることなくすべて迎え入れた。
無数の弾と突進を真正面からまともに喰らう。

ガオー「口ほどにもねえな!」
キョウ「......っ!?いや、ガオー!距離を取れ!!」

ガオーのレスポンスは早い。
言われたとおり、レイドランスとすれ違うように急旋回しムサシの元へと戻って見せる。

ガオー「なんだあいつ......効いてねぇのか!?」

獅子の渾身の突進は一撃目よりも遙かに重かったはずだ。
しかしレイドランスは銃弾や突進をものともせず、その場からぴくりとも動くことなく佇んでいた。
傷一つ負っていない。

タスク「......口ほどにもないな」
レイドランス「まったくもってマスターの仰る通りで」
ガオー「ぐンぬぬぬぬぬぬ」

マコト「あの多脚が上からの衝撃を全部逃がしてるんだ......」
キョウ「マコト、分かるのか!?」

うん、とマコトは頷いてみせる。
彼の目はレイドランスが攻撃を受けるその一部始終を捉えていた。
弾を受ける一瞬一瞬、そして突進を受ける刹那に、レイドランスの多脚が複雑に動作していたのだ。
いま思えば、あの動作はすべての攻撃に対するクッションの役割をしていたのだろう。

マコト「折角二人で戦ってるんだ、同時に攻撃を仕掛けないとまともなダメージは与えられないよ......!ムサシ、ギロ!ガオーの攻撃に合わせて挟み撃ちして!」
ギロ「合点承知!いくぜダチ公!」
ムサシ「了解した!」
キョウ「聞いてたなガオー!こっちが先行してマコト達を誘導するぞ!」
ガオー「あいよ!!」

ガオーは大きく弧を描きながら旋回し、レイドランスの右方から前爪による攻撃を仕掛けた。
そのスピードに置いてかれまいと、ムサシも背中のブースターを点火する。
直線的な動きを繰り返し、稲妻のような軌道で肉薄した。
両の剣はすでに抜いている。

タスク「......ふん。指示は事前に伝えたとおりだ。“タイミング”は自分で判断できるな」
レイドランス「お任せ下さい」

ギロ「タイミングどんぴしゃだ!スカした野郎をぶっ飛ばすぜガオー、ムサシ!!」

だから、と言うように。
レイドランスを挟んだ両側から、ガオーとムサシの渾身の一撃が放たれる。
しかし。

キョウ「これでもダメなのか!?」
レイドランス「惜しかった、と賞賛の言葉をお贈りしましょう」

レイドランスは完璧に両の攻撃を受けきっていた。
二つの鎌を器用に構え、ガオーとムサシの攻撃を完全に無力化したのだ。

マコト「——危ない!いますぐ後退するんだ!!」

マコトの指示が飛んだ、その直後。
驚いたことに、レイドランスは一瞬にしてその姿を変えてみせる。

EPISODE DE18

人型への変形——からの、両腕の刃から生まれる衝撃がガオーを吹き飛ばした。

ガオー「ぐあああッ!?」
キョウ「ガオー!!」
ムサシ「く......っ」

かろうじて、ムサシはその攻撃をすんでの所で避けている。
マコトとムサシの連携合ってこその回避だった。

タスク「なるほど、悪くない目をしている。それがお前の武器か、マコト」

攻撃と回避の一部始終を見ていたタスクは、どうやらマコトが観察力に優れていることをすぐに看破したようだった。

タスク「しかし。暴走アクターを倒した腕前と聞いたときは少し驚いたが......タネを見てみれば大したことはないな」
ムサシ「なんだと......!?」

タスク「レイドランス。あいつらに教えてやれ。素人の戦いが俺達プロには通用しないのだと」
レイドランス「かしこまりました、マスター」

ここからが本当の彼らのステージなのだと言わんばかりに、タスクとレイドランスの纏う空気が一変する。
マコトはその空気に圧し負けないように、彼らの動きを見逃すまいと目をこらすのがやっとだった。

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 17

アズナ「失礼致します」
フォックス「来たね、ミスアズナ。そしてミスタータスク」

フォックスロアーが柔和な笑みを浮かべて来訪者を迎え入れる。
アズナの後ろに控えていた白い制服の青年・晄タスクはその名を呼ばれると背筋を伸ばし、
無駄のない所作で敬礼して見せた。

タスク「晄タスク、ただいま要請に従い出頭致しました」

EPISODE DE17

マコトは一瞬、この場に来たことを後悔した。
しかし、兄と向き合わねば自分は先に進めない気がする。
だからこそ自ら志願したし、迷いながらも兄に声をかけた。

マコト「兄......さん......」

兄はマコトを一瞥すると、眉根をわずかにひそめて「本当に来たのか」と呟くように吐き捨てた。
一気に身体が萎縮するのを感じる。

フォックス「まぁそう邪険にしてあげないでくれ。
先に報告書を読んだが、どうやらキミの弟もミスターキョウと同じく暴走アクターを沈静化させた実力者らしい。
さすがは“無敗伝説”の弟といったところかな」
タスク「は。......マコトが、ですか」

にわかには信じられない、という言葉をタスクが飲み込んだと気付いたのは兄弟ゆえだろう。
彼とはそういう男だ。
弟であるマコトを、かつて一度として認めたことはないのだ。

フォックス「そこで、だ。どうだろうか、一度彼らと手合わせをして貰えないだろうか」
タスク「理由を聞かねば承服しかねます」
フォックス「まずひとつ。キミを呼んだのは、
暴走アクターを討ったミスターキョウと戦って貰いたかったのが元々の理由となる」

次に。
フォックスロアーは言いながらタスクの前へと歩を進めた。

フォックス「なぜ戦って貰いたかったのか、という所だが。
なにぶん、我々IAAは来日して日が浅い。
今起きている暴走アクターの事件に疎いと言うことだ。
そこで、事件解決の鍵となったツインクロスアップのデータを詳細に取りたいのだよ」

タスク「ならば、弟は必要ないはずです」
フォックス「それはどうだろうか。
ミスターマコトもまた、初めてのカスタマイズながらツインクロスアップを以て暴走する強敵を倒した......
つまり、それほどまでにツインクロスアップというシステムが優秀と言うことではないかね」

タスク「それは......」

フォックス「サンプルは多いに越したことはない。加えて、彼がキミの弟だというのならば、
その戦術を読むに長けているのではないかと僕は踏んだ。
ミスターマコトの癖を掴むことで、彼を今後起きうる事態鎮圧の戦力として成長させる良い機会じゃあないか」

マコト「ぼ、ボクを戦力に、ですか!?」
フォックス「そこまで驚くことでもないはずだ。キミだってその覚悟でここまでついてきたのだろう?」

それを言われてしまうと、マコトは何も言い返せない。
すべてフォックスロアーの言うとおりだからだ。
ここで前に踏み出さねばならないと、覚悟を決めたからここにいる。

タスク「......分かりました。やりましょう」
フォックス「助かるよ。それではまずは本命だったミスターキョウから——」
タスク「——いえ。その必要はありません」

フォックスロアーの言葉を遮ってタスクが放った言葉に、一同耳を疑った。

タスク「まとめて“処理”します。データ収集というのならば、一体一体相手にするよりそっちの方がずっと速い。
効率は上げた方が良いでしょう」
フォックス「ほう!それは面白い!」
キョウ「まとめてって!ガオーとムサシを同時に相手するってことか!?」
ムサシ「随分となめられたものだ」

タスク「......聞こえなかったのか?相手をするなんて俺は言っていない。処理する、と宣言したんだ」
ガオー「なにをう!?」

タスク「キミ達がツインクロスアップシステムを活用しようと、
二体ごとき並のアニマギアが俺達の相手になるはずもない......出ろ、レイドランス」
???「トランスマンティレイド、ここに」

タスクの懐から現れた一体のアニマギアが、ガオーとムサシの前に躍り出る。
緑色のカマキリ型アニマギアだ。

EPISODE DE17

タスク「話は聞いていたな」
レイドランス「もちろんです。ワタクシならば、マスターの要望に100パーセント応えることが出来るでしょう」
タスク「それでいい......ならば、場所を変えようか、“ビギナー”達」
マコト「............兄さん......ッ」

タスクの冷たい眼光が、マコトの怯えたような弱々しい瞳を貫くように捉えている。
これから本当に兄と戦うのだと実感して、額に冷たい汗がにじんだ。

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 16

マコトの話を聞いたアズナは、驚きながらもマコトの同行を認めてくれた。
直後、アズナの傍らに、フラッペとは違うアニマギアが現れ、元気良く手をマコト達に振って見せる。
黒い兎型の機体。
フラッペと共にアイドルユニット『ビタースイーツ』として活躍する、コラーテことラビドルショコラーテだ。

コラーテ「それでは、ここから先はわたしが案内しますね!」

EPISODE DE16

コラーテはIAAの受付嬢としても働いているらしく、これから別の人を呼びに行くというアズナとフラッペの代わりに、
ギアティクス社の社長室へと皆を案内するらしい。

コラーテ「“あの”タスクさんの弟さんですか。言われてみれば似ているような気がしますね!特に目元が似てます!」
マコト「あ、ありがとう......?」
コラーテ「いえいえ!こちらこそ、弊会の実力者であるタスクさんの弟さんに会えて光栄です!」

マコトは、IAAの要職に就く人物の弟だった。
そんな“告白”に衝撃を受けた一同だったが、コラーテだけはその緊張をものともせず軽い足取りで先を歩いていた。

キョウ「そうか......晄って苗字」
マコト「うん......?」
キョウ「聞き覚えがあるなとは思ってたけど、
昔ギアバトル大会でめちゃめちゃ強かった人がいたって話を耳にしたことがあったんだ」

公式戦で一度も負けたことない選手がいた、と。

キョウ「その人がマコトの兄ちゃんなのか?」
マコト「......そうだよ。ごめん、いままで黙ってて」
キョウ「謝ることなんかねーって!話さなかったのは理由があったんだろうし、
オレもマコトに話してなかったこと、あったし」

今度ゆっくり話そう、と彼は打ち切って。
コラーテに先導されるまま、続きを話すことはなかった。
気まずい空気ではない。
キョウはちゃんとマコトの意思をくみ取ってくれていることが分かって、それがとても有り難いと思えた。

コラーテ「はいりまーす!」

そんな折り、ギアティクス社の社屋最上階に位置する社長室の前に一行が到着する。
コラーテが深々とお辞儀をすると、自動ドアになっている社長室の扉が機械的な音を立てながら左右に開いた。

その奥に、先程までいたアズナと同じ制服を着た一人の男性がいる。

腰まで届く銀髪を襟足でまとめた、端正な顔立ちをした青年だ。
一目で日本人でないことがわかった。
ニュースで顔を見たこともある。
その能力の高さゆえに、史上最年少でIAAの会長となった人物。
フォックスロアー=ナンバーライトという男が、そこにいた。

EPISODE DE16

フォックス「やぁ、来たね」

流暢な日本語で話す彼に面を喰らったが、それよりも気になる点がある。
フォックスが社長席に座っていることだ。

ヤマト「......来客にしては随分と横柄な態度じゃないか」
フォックス「ん?ああ、もう“来客じゃない”からね。先ほど“ギアティクス社は我々IAAが正式に買い取った”
......抜き打ち調査ついでにポスト交代というわけだ。数ヶ月前から社長とは話を進めていたんだよ」

ヤマト「なんだって!?そんな」
フォックス「そんな無茶苦茶な......か。それは我々の台詞だよ、ドクターヤマト」

決して威圧的な態度、というワケではないが、フォックスはその佇まいだけでこちらを黙らせる迫力があった。

フォックス「獣甲屋による度重なるテロ行為を許し、それを解決した英雄はまだ年端もいかない子供だろう?
重大な事件に子供を巻き込んだ上、エンペラーギアの開発にアナタが関わっていたという事実もある......
それこそ無茶苦茶、という奴ではないかな?」

キミもそう思うだろう、英雄ミスターキョウ。

フォックスの鋭い視線がキョウに向けられている。

キョウ「......オレは、巻き込まれたとは思っていません。オレの意思でやったことです」
フォックス「それは立派なことだ。世界を代表して礼を言うよ、ミスターキョウ。本当にありがとう」
キョウ「......」

それで。
フォックスはキョウに向かって下げた頭をなおして話を続ける。

フォックス「いまや世界中で親しまれているアニマギア達のことを考えてみてくれ。
和を乱すエンペラーギアの開発に関わっていた人間を雇い、
内外で獣甲屋と関わっていたギアティクス社を放っておけると思うだろうか?」

答えは否、だ。

フォックス「我々IAAが直接介入するのも止むなしだよ」

IAAの言い分は正論だが、一方的な側面でしか語っていない。
ギアティクス社がなければ、獣甲屋のテロを未遂に終わらせることは叶わなかったはずだ。

フォックス「なに、大きな人事改革を行うつもりはない。
我々はギアティクス社が保有するエンペラーギアのデータを使い、今後の発展と平和のために役立てる。
同時にギアティクス社内部の調査も進めさせていただく。
組織のイメージ回復に努めると約束しようじゃないか」

ヤマト「......私を呼びつけたのはそれが目的か」
フォックス「オフコース。社長命令だ、あなたは僕の要請に従う義務がある。なに、悪いようにはしないさ。
聞いていないかな、危害を加えるつもりはないと」

会長の口調は厳しいものではあったが、浮かべた柔らかな笑顔に嘘はなさそうだ。
状況改善のために大きく事態を動かそうという意思が伝わってくる。
そこにあるのは、厳しさというよりも優しさだ。

ヤマト「......、わかりました」

会長の表情を観てヤマトは納得したのだろう。
彼は心の中で区切りをつけたように、敬語をもってフォックスロアーの座る社長席へと歩み寄って見せた。

フォックス「ありがとう、ドクターヤマト。あなたの協力で、アニマギアが更なる発展を遂げるだろう。
それと......ミスターキョウ。それにミスターマコトだったね」
キョウ&マコト「はい」
フォックス「キミ達に会わせたい人物がいる......ああ、ちょうど着いたようだ」

会長の言葉にあわせるように、社長室の扉が再び開かれる。
そこに現れたのは秘書のアズナ。
そして彼女の傍らに、白い制服を着た青年がいた。

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 15

ヤマト「IAAの監視下だって......!?」
アズナ「いやぁ、あたしとしたことが失敗失敗。事前に伝えておけばよかったですねぇ」

EPISODE DE15

状況が飲み込めていない一同をよそに、アズナは軽い口調とともに頬をかいてはにかんでみせた。
決して笑えるような空気ではないが、彼女はまるで意に介していない様子である。
IAAはギアティクス社の上位組織だ。

国際アニマギア連合協会の出現に面食らったマコトだったが、彼女が言った
「ギアティクス社を監視下に置く」という言葉の不穏さは十分に理解できた。
IAAが持つ権力の強さは、アニマギアに疎いマコトでも知っている。

???「アズナさん」

固まってしまった場の空気を晴らすように、アズナの肩口から白いアニマギアが現れた。
兎型の可憐なアニマギアだった。

???「抜き打ち調査なんだから事前に伝えてなくていいんですよ」
アズナ「ああそっかそっか、ありがとフラッペ」

EPISODE DE15

キョウ「あれってビタースイーツのラビドルフラペールか!?」
マコト「ほんとだ......」
フラッペ「みなさん初めまして。IAAの会長秘書......の秘書を務めております、フラッペと申します」

学校で何度も話題に上がっていたし、テレビや雑誌でも見たことがある姿だ。
間違いなく、アニマギアアイドルユニット『ビタースイーツ』のフラッペことラビドルフラペールがそこにいる。

アズナ「まぁ驚くよねぇ。彼女はアイドル兼あたしの秘書って感じで。
そうそう、あたしはあたしでビタースイーツのマネージャーもやってるんだ」
キョウ「んな無茶苦茶な......」
マコト「ちょっとボク、頭痛くなってきた......」
ヤマト「......私は胃が痛くなってきたな」
突然つめこまれた情報があまりに多かったせいか、三者三様に色々と限界を迎えそうだった。

フラッペ「ほら、アズナさん。皆様状況に追いつけていない様子ですよ。ドヤ顔してないで令状出して下さい」
アズナ「はっ、そうだったそうだった」

フラッペに促され、アズナは懐から1枚の紙を取り出してこちらに差し出してくる。

アズナ「ほい、これ令状です。“会長”もすでに到着しているので、
紅葉ヤマト博士と天草キョウくんはひとまずこのビルの社長室の方に来て下さいね~」
キョウ「お、オレもですか!?」
アズナ「獣甲屋のテロ行為、その顛末について詳しい人物が現状日本にキミしかいないんだよね」

マコト「天草が......獣甲屋について詳しいって、どういう......!?」
キョウ「......」

飛び出してきた新たな情報は、これまでの情報のなによりもマコトに衝撃を与えた。
確かに、彼は只者ではないとは思っていた。
SNSで人気のインフルエンサー、ギアバトル大会の出場資格を持つほどのランカー。
しかし、それ程の肩書きを持っていると分かっていても「おかしい」と思う場面がなかったわけではない。
突然の戦闘になっても、落ち着き払った態度。
戦闘の最中にカスタマイズを求められても、対応出来る異様な手さばきの速さ。

キョウ「......黙ってて悪かった、マコト。今度ゆっくり話すよ」
マコト「い、良いんだ、無理しなくて。ボクも黙ってること、たくさんあるし......」

しかしながら。
友達だと思っていたのに、だとか。
仲間だと思っていたのに、だとか。
そんなマイナスの感情はどこにも持ち合わせていなかった。

キョウのバックボーンを教えて貰っていなかった事実がショックだったのではない、とすぐに気が付いた。
むしろ、憧れさえ感じる。
この少年の隣に立つに相応しい男になれるだろうか、と。
場に似つかわしくない感情を抱いたことが恥ずかしくなって、マコトは頭を数回左右に振って見せた。
冷静にならなければいけない。

ヤマト「どうしても、キョウくんもいかなきゃダメなのか」
フラッペ「その場に居合わせた三梨コノエさんや、
チームの中心人物だった飛騨ソウヤさんは現在海外出張中とお伺いしております」
アズナ「天草キョウくんに白羽の矢が立つのは当然、ってことね」

ヤマト「獣甲屋の残党調査のため、彼らに海外派遣を要請したのはIAAと聞いていたが......?」
アズナ「そこはそれ、タイミング悪かったって話で納得してくれません?」
ヤマト「......むう」

フラッペ「......また。監視下に置くとは言いましたが、
今回の調査は主に獣甲屋に関する情報収集の側面が大きいとお考え下さい。
危害を加えるようなことは一切ございませんので、ご安心を」

キョウ「どうやら......行くしかなさそう、ですね」
マコト「あの」

マコトは右手を遠慮がちに挙げて見せる。

マコト「ボクも行っていいですか」

キョウ「へっ!?なに言ってんだマコト!こんな面倒ごとに自分から首突っ込むなんて!」
アズナ「大事な話だから、あんまり部外者入れたくないんだ。ごめんね、ボク」
マコト「部外者じゃ......ありません......」
フラッペ「......アズナさん!彼、もしかして......!」
アズナ「はい?」

場が騒然とする中、マコトはこの場にいる殆どの者が予想のつかない言葉を紡ぎ出す。
マコト「ボクの兄は、IAAの対アニマギア犯罪特殊部隊隊長、晄タスクです......!」

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 14

マコトとキョウがギアティクス社へと呼び出されたのは、マコトが暴走アクターと戦ってから一週間後のことだった。
応接間に通されたマコト達の前に、ギロとイーグも居合わせている。
どうやら自分と同じく彼らにも声がかけられたらしい。

EPISODE DE14

そんな自分達を招集した人物、二足歩行アニマギアの権威である紅葉ヤマト博士が、マコト達の前に姿を見せた。

ヤマト「やぁみんな、よく来てくれたね」

サクラの父親でもあるという彼は、かつてはモミジテクニクスという研究所を起ち上げていたのだが、
元々働いていたギアティクス社に技術顧問という形で戻ってきたのだという。

ヤマト「キミが晄マコトくんか。初めまして」
マコト「はっ、初めまして......っ」

深々とお辞儀をすると、ヤマトが困り笑いを浮かべて「あんまりかしこまらないで」とマコトを諭した。

キョウ「それで博士、今日はどうしてオレ達を?」
マコト「天草が呼ばれるならまだしも、ボクまで声がかかるなんて......」
ヤマト「ああ、それなんだがね。暴走アクターの事件にキミ達が巻き込まれたと聞いたんだ」

ヤマトの言うとおり、キョウとマコトは立て続けにそれぞれが暴走アクターと戦った。
だが、それが今回二人が呼ばれた理由になぜ繋がるのか、まだマコト達はそれを理解できていない。

ヤマト「キミ達がこの短期間で二体もの暴走アクターと出会ったことを、単なる偶然で片付けるにはどうもキナ臭くてね」
ギロ「ちょっと待てよ、野郎が俺様達を“あえて狙ってきた”とでも?」
ヤマト「ああ、そうだ」

これを見てくれ、とヤマトが取り出したのは機能停止したアニマギアだ。
ただのアニマギアではない。
イーグ「彼らは......」
ヤマト「そうだ」

EPISODE DE14

紛れもなく、キョウとマコトがそれぞれ刃を交えた二体の暴走アクターだった。
続けて、ヤマトは携帯端末を取り出してアクターの隣に添えてみせる。
画面に表示されているのは黒地に緑色の英字の羅列だ。

ヤマト「この二体にリプログラミングされたソースコードを解析したところ、
気になる記述が見つかった。ここを見てくれ」

一文だけ赤くハイライトされた箇所を指さす。
“priority target = third gen animagear;”

ヤマト「これら二体のアクターのどちらも、共通してこの記述が書き込まれている。
“第3世代アニマギアを標的とする”......とね」
キョウ「ガオー達が......」
ヤマト「一体何処の誰がどういう理由で、遠回りにアクターを改造してまで第3世代を狙い撃っているのか......
そこまでは分からない。しかし明確な目的がある、というのは間違いないんだ」

マコト達の知らないところで、すでに他の第3世代アニマギアが被害を受けたという報告もあるとヤマトは続けた。

ヤマト「今回キミ達を呼び出したのは、このことを伝えたかったからなんだ。
特にムサシ——デュアライズカブトダッシュは、一般に流通していない特殊なアニマギアだ」
マコト「......なるほど......」

アクターを改造した誰かの目的で、明確になっているのは「第3世代アニマギアを襲う」ということだけだ。
しかしそこに別の目的があったとしてもおかしくはない。
木を隠すなら森......本当の標的を隠すために、あえて広い定義にしている可能性もある。
そして現状、その本当の標的の可能性が一番高いのは間違いなくムサシだ。

ヤマト「あくまで憶測でしかないがね。人一倍気をつけるに越したことはないだろう」
マコト「ありがとうございます」
ガオー「オレ達も気をつけねえとな!!」
キョウ「ああ、気を引き締めていこう!」

イーグとギロも頷いて同調する。
この先なにが起こるのか、マコトには想像もつかない。
しかしこの仲間達がいれば、困難にも立ち向かえるような気がした。

マコト(......あれ?いまボク、“仲間”って......)

ただの友達ではない、と彼らをマコトが認めていたことに改めて気付かされる。
そしてそれが、一方的な感情ではないことも不思議と確信していた。
あえて一人でいることを選んでいた以前のマコトでは、決して辿り着けなかった心境だった。

???「あのー、盛り上がってるところ悪いんですけどぉ、ちょっとお邪魔しますねー」

聞き慣れない声に、応接間にいた全員が驚きながら扉の方に視線を投げた。
そこには、白い制服に身を包んだ赤いロングヘアの女性が立っている。

???「紅葉ヤマト博士に、天草キョウくんですかね?いまちょうど、お二人を探してた所でしてぇ」
ヤマト「......見ない顔だが、その制服には覚えがある。IAA......国際アニマギア連合協会の人間か」
???「やだ、あたしったら名乗る前に用件から入っちゃった、ウケる」

女性は一度、深々とお辞儀して、改めて一同に名を名乗った。

アズナ「大変失礼しました。あたしはアズナ=オウガスト=キリエ。
役職としてはキョーシュクながらIAAの会長秘書を務めさせてもらってまーす」

ヤマト「会長秘書......?IAAで、しかも上層部の人間がどうしてこんな所に」

アズナ「あれ?聞いてませんでした?今日からここ、ギアティクス社はIAAの監視下に置かれますよー、ってハナシ」

あ、言ってなかったか......と。
あまりにも軽い口調で、アズナと自称した女性はとんでもないことを言ってのけた。

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 13

ペンギオスA「時間稼ぎはオレらに任せナ!!」
ペンギオスB「噴水だろうが水中ならお手のもんだ!ペンギンパワーでぶっ飛ばしてやるゼ!」

街中にいた二体のペンギオスが、マコトがカスタマイズするまでの時間稼ぎを申し出てくれていた。
頼もしいと思いながらも、しかし彼らに礼を言う余裕がマコトにはない。
ギロとムサシにアドバイスを貰いながら、必死にカスタマイズを試行錯誤していたからだ。

ギロ「いいかマコト!ツインクロスアップのキモは長所と長所の掛け合わせだ!
ムサシをベースにするなら、ムサシの長所を潰さないようにな!」
ムサシ「逆に言えば、俺の足りないところをギロのパーツで補って欲しい」
マコト「ムサシの......長所......足りないところ......!」

マコトが考えるムサシの長所は『接近戦特化の体捌き』と『指令に対する反応速度の速さ』にある。
そのどちらもが互いに補完し合っているし、先日のガオーDEが射撃を苦手としていたことからも、
接近戦特化を崩すのは得策ではないだろう。
ならば彼の短所とは——。

マコト「——そうか!」
ギロ「閃いたか!あのクソッタレをぶっ飛ばすカスタマイズッ!」
マコト「でも、ギロのことかなりバラバラにしちゃうかも......」
ギロ「気にすんなよ!俺様は信頼するダチの相棒であるマコトも同じだけ信じてる!
野郎に勝てるならこの身体、好きに使ってやってくれ!」
マコト「......ありがとう!」

マコトの手が、ムサシとギロのパーツを複雑に組み合わせていく。
手慣れたキョウとは違い、決して早くはない......だが、カスタマイズは確実に彼の考える“正解”へと進んでいった。

マコト「出来た、ムサシDE(ダブルエッジ)......だ......!」

完成したカスタマイズは、まるでムサシがギロを纏うように仕上げられていた。
胸部にはギロの頭部が配置され、まさに一心同体といった風体だ。

EPISODE DE13

ギロ「好きに使えとは言ったが......“顔”に“顔”とはすげーセンスだ。考えたな」
マコト「ご、ごめん」
ギロ「バカ、褒めてんだよ。これなら俺様のパーツの使い方を直にレクチャーできるってもんだ!」
ムサシ「ああ。それに仲間と一緒に戦う安心感がある」
マコト「い、行けそうかな......!?」
ムサシ「無論だ。最初から飛ばしていくぞ、いけるなギロ!」
ギロ「ったりめぇよ!!」

ムサシは噴水へと跳び込み、再び水の戦場へと躍り出る。
つい今し方、ペンギオス達を無力化したアクターの対応は素早かった。
跳び込んでくる瞬間を待っていた、と言わんばかりに両腕に備わった銃口をムサシへと向けたのだ。

その銃が撃ち出したのは空気。
拳大の泡が、砲弾と呼ぶに相応しい速度をもってムサシに迫っていく。

ギロ「ビビるこたねえぞムサシ!思い切り左腕を突き出せ!」
ムサシ「応ッ」

左腕にはギロの尻尾を応用した爪がある。
その爪が、真っ正面から空気砲弾を突き破った。

マコト「次の弾が来そうだよ!回り込みながら接近戦に持ち込むんだ!!」
ムサシ「——!マコトの声が、鮮明に聞こえる......それにこれは!?」

指示に従いながらも、ムサシは驚きを声に出さずにはいられなかった。
カスタマイズ前までは何も聞こえなかった水中で、はっきりと相棒の声が届いていたのだ。
加えて、水中で確保された機動性。
背中に装備されたギロのハサミがブースターとなり、水の抵抗をものともせずアクターのもとへとムサシを運んでいる。

ギロ「なるほど、考えたなマコト!ムサシの短所を補う......つまり水中での機動性確保と感覚器官の強化!」
マコト「ブースターが上手く動いて良かった......!それに、水陸両用のアームズギロテッカーなら、
水中でも声が聞こえるくらいの優秀なセンサーを積んでると思ったんだ!」

これなら自分の声が水中でも問題なく届く。
カスタマイズが狙い通りの性能を発揮してくれたことに、マコトは小さくガッツポーズをしていた。
しかしその喜びを抑え込んで、戦闘に集中する。
敵に次の動きが生まれていたからだ。

マコト「相手も接近戦に切り替えようとしてるッ!上から回り込まれるよ!!」
ギロ「野郎が下見せてくれるってんなら願ったり叶ったりだ!ムサシ!“俺様のヒゲはよく斬れる”ぜぇ......!?」
ムサシ「ならば、斬ってしまおうか!!」

いままさに回り込まれる、そのすれ違いざま。
ムサシはブースターを使い縦に回転しながら、右腕の刃をアクターに叩き込んだ。
その刃がアクターを両断してみせる。
決着は、誰の目にも明らかだった。

EPISODE DE13

——それから程なくして。
ギロとムサシを元の状態に戻し終わったあたりで、ABFの隊員が現場に駆け付けてきた。
事情を説明すると、民間人が避難せずに事態に介入したことに対する軽い説教と、
それ以上の感謝の言葉を贈られマコトは解放された。

ギロ「すげーカスタマイズと指示だったぜ、マコト!ムサシ、良い相棒見つけたな!」
ムサシ「ああ。俺もマコトの成長を感じられて誇らしいよ」
マコト「ありがとう......でも、もうちょっと練習しなきゃね」

今回、破壊こそ免れたが二体のペンギオスが暴走アクターによって重傷を負った。
マコトのカスタマイズ完了がもっと速ければ、被害が抑えられたかも知れないと考えると、
素直に喜ぶことに抵抗がある。

ギロ「そう堅いこと考えるなよ。マコトの活躍で被害は最小限になったのは疑いようもねえ事実だぜ?
もっと胸張れ、胸!」
マコト「う、うん」
ギロ「それじゃ、俺様は事後処理とかあっからよ!
ここでお別れだが、また会えるの楽しみにしてるぜムサシ、マコト!」
ムサシ「お勤めご苦労様だな。俺もギロと会うのを楽しみにしている」
マコト「またね、ギロ。今回は本当にありがとう」

ギロと別れを告げるマコトとムサシ。
共に戦った仲間の背を見送りながら、更なる成長のために鍛錬を決意するマコトであった。

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 12

戦いと呼ぶには、それはあまりに一方的な展開だった。
突如マコト達の前に現れた赤いアクターは、水中で身動きが取れないムサシを執拗なまでに痛めつけている。

——事の発端は、マコトが学校から帰宅するときのいつも通りのルーティンからだった。
母に頼まれた夕飯の買い出しの最中のことである。
商業施設の広場にある噴水に腰掛けた瞬間、隣に座ったムサシが何者かに引きずり込まれてしまったのだ。
それが、いまムサシを攻撃している暴走アクターだ。

EPISODE DE12

マコト「ムサシ!右から来るよ!!」
ムサシ「......ッ!!」

マコトの指示も空しく、予見したとおりアクターの刺すような突進がムサシを右側から吹っ飛ばす。

マコト「ダメだ......やっぱり聞こえてない......ボクの声が届いてないんだ......!」

戦場は声が届きづらい水中。
加えてここは絶えず水流が生まれている噴水だ。
いくら声を張り上げようとも、ムサシに指示が届かなければマコトの洞察力は活きないだろう。

マコト「せめて水から上がって来られれば......ッ」

それが中々難しいことを、マコトはよく理解している。
ムサシも同じ事を考えているというのは、動きを見ればなんとなく察することが可能だ。
しかし、アクターがそうさせない。
ムサシを水底に縛り付けるように、巧妙な立ち回りでこちらに不利を押しつけていた。

???「俺様に任せなッ!」
マコト「!?」

マコトの顔の横を、小さな赤い影が掠めていく。
アニマギア、であった。
その赤いアニマギアは勢いよく水に跳び込むと、真っ先にアクターへと体当たりする。
さすがに予想外の乱入だったのか、アクターはなにも対応出来ずにそのまま水中で吹き飛ばされた。

目にも留まらぬ速さで水中を移動する赤いアニマギアの姿をハッキリと捉えるのは難しい。
だが、それがどうやら味方であるらしいことはすぐにわかった。

水中で動けなくなっていたムサシを引っ張り上げ、陸へと連れ出したのだ。

EPISODE DE12

マコト「ムサシ!大丈夫!?」
ムサシ「ああ、なんとか......ギロ、助かったよ」

ギロと呼ばれた赤いアニマギアがムサシの知り合いだったと分かり、ホッと胸をなで下ろした。

ギロ「よォムサシ、あぶねーところだったな!そっちはウワサのマコトだな?よろしく頼むぜ!」
ムサシ「ギロは元プロのギアバトル選手だよ。第3世代へのアップグレードにあわせてABFに転属したアニマギアだ」
ギロ「そうそう。んで、街のアクターや民間人から通報があってな?近くにいた俺様が緊急出動してきたってぇワケさ」
マコト「そうだったんだ......ありがとう、ギロ」

ギロ「礼には及ばねえっての!ムサシとは昔っからのダチなんだよ。
記憶がなくなってからもそれは変わんねーって感じでさ。ダチ公助けるのは当たり前!だろ?」

ギロは得意げに胸を張って言う。
その小さな姿が、マコトにはとても大きく頼もしく見えた。

ギロ「しかしまずったな......あの暴走アクター、どうやらこの俺様より強ぇらしい。
壊すつもりで突っ込んだってのにピンピンしてやがる」

確かに、暴走アクターは健在だ。
不気味に輝く眼光が、噴水の水底からジッと機会を覗っているようだった。

ギロ「いけねぇ、アイツの使ってるニックカウルは俺様と同じアームズギロテッカー型だ」
ムサシ「このまま黙ってたら奴も陸に上がって来かねない......か」
マコト「そんな......街がめちゃくちゃになっちゃうよ......!」

ギロ「民間人の避難はペンギオス達が誘導して殆ど済ませてある。マコトもムサシを連れてさっさと逃げな」
マコト「ぎ、ギロはどうするの?」
ギロ「俺様は戦う」

問うた相手は、一切の逡巡する隙もなく宣言していた。

ギロ「なに、じき応援が来るさ。それまで一人で耐えるくらいワケねえよ」
マコト「——そんなのダメだよ!」
ギロ「......マコト?」

ムサシ「ああ、彼の言う通りだ」
ギロ「でも、お前らじゃ歯に立たなかったじゃねえか!大人しく避難してろ!」
マコト「確かに、ボクらだけじゃあのアクターに勝てなかったよ。
でも、それはボクらが逃げて良い理由にはならない......と思う」

先日のキョウ達の戦いがフラッシュバックする。
あの光景を見て、自分は果たして何を思ったのか。
否、それよりもっと前から、マコトは何を考えていただろう。

ギロ「思うって......マコト、本当は戦うのが恐いんじゃねえのか」
マコト「恐いよ、とても恐い——」

ムサシと出会って、自分はどう変わりたいと決意した?
忘れやしない......忘れてなるものか。

マコト「——でも、恐がってるだけじゃ何も変わらないんだ!」

だから、戦う。
これはアクターとの戦いであると同時に、自分との戦いなのだとマコトは確信した。

ギロ「本気、って眼してるぜ。いい顔じゃねえか、マコト」
ムサシ「自慢の相棒なんだ、俺からも頼む」
ギロ「......だはは!ダチにもそう言われちゃ断れねえやな!いっちょやったるか!」
マコト「ありがとう、ギロ!キミが一緒なら、ボクもきっと上手くサポートして見せる!」

ギロ「一緒、一緒ね。なら俺様に良い考えがある」
マコト「良い考え......?」
ギロ「俺様もムサシも第3世代だ。俺様達一人ずつで敵わねえなら、二人一緒になっちまえばいい......ッ」
ムサシ「なるほど」

ギロの提案が何を指しているのか、マコトにはすぐに分かった。
第3世代同士の特徴で、二人一緒になると言えばさすがのマコトでも察しが付く。

マコト「......ツインクロスアップ、だね」

果たして、カスタマイズ経験の無い自分が、未知数のシステムを使いこなせるのだろうか。
だが、やるしかない。
腹を括ったからにはやり遂げてみせると、マコトは拳を強く握りしめた。

マコト「二人とも、ボクに力を貸して......っ」

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 11

マコト「ちょっと待って天草!」

キョウが素早い手さばきでガオーのカスタマイズを進める中、マコトはその光景の異様さに声をかけざるを得なかった。

アニマギアの基本は骨格のボーンフレーム、外装のニックカウル、
そしてエネルギー源となるブラッドステッカーの三つから成り立っているのは周知の事実だ。
そして、ブラッドステッカーはニックカウルに、ニックカウルはボーンフレームに装着すると相場が決まっている。
しかし。

マコト「どうしてニックカウルの上からニックカウルを付けてるんだ!?数が多すぎるよ!」

もちろん例外は存在する。
他のアニマギアのニックカウルを、そのまま上からかぶせるように装着することはカスタマイズの定石だ。
しかしそのカスタマイズにも限界はある。
ボーンフレームやニックカウルの接続が多くなる程その制御は難しくなり、
度を過ぎればアニマギアのシステムを破壊することに繋がりかねないからだ。

キョウ「そうか、第3世代の特徴を知らないんだな」
マコト「特徴......?」
ムサシ「俺達第3世代の一部の機体には、ペンギオスを代表とする合体アニマギアの技術が転用されている。
アニマギア同士のニックカウルを複雑に組み合わせることが可能になっているんだ」
キョウ「そう!それがツインクロスアップシステム——」

EPISODE DE11

キョウ「——出来た!ガオーDE(ダブルエッジ)!!」

キョウの手の中から、カスタマイズが施されたガオーの姿が露わになる。
基本となるガレオストライカーの素体はそのままに、
イーグの武装や、アクターから剥ぎ取られた翼が見事に装着されていた。

キョウ「行けそうか、ガオー!」
ガオー「ああ、問題ないぜ!力がどんどん沸いてくる......かえって身体が軽いくらいだ!」
キョウ「良い感じだな!それじゃあ、攻守交代と行こうかッ」

ガオーは力強く頷くと、そのままに思い切り地を蹴る。
背中のブースターが点火し、その勢いを活かしながら翼が空気を掴むように羽ばたいた。
空を、駆けている。

ガオー「さっきはよくもやってくれたな!今度はこっちが空から攻める番だ!」

イーグから借り受けた銃口が燦めいた。
敵のアクターの武器がマシンガンだとすれば、こちらはマグナムだろうか。
大きな破裂音と共に撃ち出された弾が、アクターのニックカウルを一部破壊している。

ガオー「ど真ん中とはいかねえか......ッ」
キョウ「ただでさえ慣れない遠距離攻撃だし、いまは空を飛んでるんだ!無理せず接近戦で行こう!」
ガオー「了解!それなら得意分野だぜ!」

上空のガオーが、地上のアクターに向かって急降下を開始する。
しかし、右前腕を前に突きだし飛来する白獅子を前に黙っているアクターではなかった。
アクターの両腕から、再び無数の火球が吐き出される。

ガオー「そんな炎がオレに効くかよ————ッ!」

ガオーは迫る炎をものともせずに突っ込んだ。
獅子の爪が、ことごとく火炎を斬り裂いていく。

マコト「すごい......!」
ガオー「うおおおおおおおおりゃあああああああああッ!!」

EPISODE DE11

ガオーの一撃が、暴走したアクターを戦闘不能に陥らせる。
その場でくずおれたアクターは、もはやピクリとも動く気配はない。

............グナ、ブレイカー......

そんな折に、誰かが何かを呟いたことに気が付いて、マコトは声がした方向に目線をやる。
呟いたのは恐らく天草キョウだ。
ガオーを見つめたキョウが笑顔のまま拳を握りしめ、瞳には少しだけ涙が浮かんでいるように見えた。

ガオー「やったぜ!」
キョウ「ナイスファイトだった、ガオー!」

ガオーの元へと駆け寄ったキョウの顔に、先程までの表情は微塵も浮かんでいない。
多分、また自分が知る由のない事情を抱えているのだろう、とマコトはそれ以上深く踏み込まなかった。

キョウ「イーグもサンキュー!」
イーグ「ツインクロスアップが上手くいってなによりだ、天草少年。おっと、かたじけない」

キョウの手がすばやくガオーのカスタマイズを解除し、イーグの身体を復元する。
自分もあんな風にムサシをカスタマイズする日が来るのだろうか、とマコトは注意深くキョウの手元を観察していた。

キョウ「マコト、ムサシ。悪かったな、折角の休日だったってのに」
ガオー「あれ?なんかしでかしたのかキョウ?」
キョウ「お前が勝手に迷子になるからだよ!」
ガオー「あ!そうか!悪い!悪かった!」

マコト「まぁまぁ......無事でよかったよ。ね、ムサシ?」
ムサシ「ああ。それに、おかげでこの街の異常にも気が付けたことだしな」

ムサシの言う「異常」というのは無論、いまそこに倒れているアクターの暴走のことだろう。

ムサシ「この先、どんな暴走アクターが現れるか分からない。我々も気をつけよう、マコト」
マコト「そうだね......今回は天草がいてくれたからなんとかなったけど......」
ムサシ「マコトなら切り抜けられるさ」
マコト「......ありがと」

彼から寄せられる信頼が、どこかこそばゆく感じると同時。
......自分も、誰かを守るために強くならなければならないんだ。
そんな覚悟が、マコトの心に知らずの内に刻まれていた。

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 10

マコト「暴走......なんだって?」
イーグ「A.C.T-ER(アクター)である、晄少年。
【Anything Crowds TroopER】の略称で、彼らはギアティクス社が開発した汎用アニマギアだ。一般には流通していない」

どうやら獣甲屋の事件を受け、ギアティクス社がペンギオス同様に街の警備目的で開発・配備したらしい。
首魁である黒田という男の行方が捕まっていない以上、世間にこういった試みが生まれるのは自明と言えるだろう。

イーグ「本来であれば彼らは非常時以外ニックカウルを纏わず、通報役に徹している。
しかし最近、街のアクターが不当に捕獲された挙げ句、ニックカウルを装着した状態でプログラムをいじられ、
街のアニマギアを襲う事件が起きるようになった」

キョウ「それがあの暴走アクターって奴さ。話には聞いていたけど、オレも実際に見るのは初めてだよ......!」
マコト「そうだったんだ......あ!あのアクター、飛び上がるよ!」

マコトの言うとおり、ガオーと肉弾戦を繰り広げていたアクターが、翼を大きく拡げて空を舞った。
直後、器用に翼の角度を調節しながら空中でとまってみせると、そのまま両腕を構えた。
射撃だ。
機関銃の要領で無数の火球を吐き出してくる。
連なった火炎が、まるで一束のレーザービームのようにガオーに狙いを定めていた。

キョウ「ガオー、相手の火力が異常だ!一度距離を取ろう、戻ってこれるか!?」
ガオー「......ッ!」

キョウの指示に対するガオーの反応は素早かった。
火炎弾の猛攻をかいくぐり、キョウの元へとガオーが戻ってくる。
射程距離外と判断したのか、アクターはあっさりと攻撃を中止した。
降りてくる気配はない。

マコト「いまなら逃げられるかも知れないけど......放っておくワケにはいかないよね」
ムサシ「その通りだ、マコト。しかし制空権を取られたままではどうしようも——」
イーグ「——私が行こう」
キョウ「イーグ!?」

イーグ「驚くことはあるまい。見たところ、あのアクターは私の同胞のニックカウルを纏っているようだしな。
目には目を、翼には翼をだ」
キョウ「見たならわかるだろ、あいつの火力が!違法な改造をしてるかも知れない相手に、1対1は危険すぎる!」

イーグ「なにも勝とうとは思わないさ。無理をするつもりもない。
ただ、奴を地上に引きずり込めばあとは少年達がなんとかしてくれるだろう?」

だから征く。
恐れる様子を一切見せることなく、イーグは飛び立った。
二体のアニマギアが、宙での邂逅を果たす。

EPISODE DE10

アクター「——」
イーグ「近くで見ると随分と大きい。使われているパーツが多いとは思っていたが、なるほど。
制御している中身(システム)からして“私達とは違う”な......だが臆してなるものかッ!」

腰の銃から弾をばらまきながら、イーグは鋭い爪で相手につかみかかった。
牽制しつつの突進に、しかしアクターは難なく対応してみせる。
アクターがその場で一回転し、翼の質量で遠慮無く弾ごとイーグをぶん殴った。
まるで曲芸だ。
しかし、ただ殴られるイーグではなかった。

イーグ「掴んだぞ......!」

殴ってきた相手の翼を、しっかりとイーグが掴んでいる。
二対の翼がもつれるように絡み合ったまま、バランスを失ったイーグ達が真っ逆さまに地上へと墜ちていく。

キョウ「イーグ!」
マコト「そんな......!」

イーグがアクターの両肩に備わっていた翼を根元から引きちぎった。
直後に二体は地上に激突。数回、イーグが跳ねながらキョウ達の足下へと転がってくる。

ガオー「無茶はしないんじゃなかったのかよ!」
イーグ「すま、ない......だが、奴の翼は、奪ってきたぞ......!」

墜落してなお、彼は敵の翼を離していなかった。
その翼を見て、隣のキョウが小さく頷く。

キョウ「イーグ、悪いけどもう少しだけ力を貸してくれるか?」
マコト「そんな!無理だよ天草、これ以上戦わせちゃいけない!」

イーグのダメージは決して小さくない。
マコトの素人目に見ても、イーグがこれ以上戦うのは無理だとすぐに分かった。

キョウ「イーグが戦えないのはオレにも分かってる。だから少しだけって言ったんだ」
マコト「それって、どういう......」

キョウは、イーグの身体を両手のひらで掬い上げて続ける。

キョウ「貸してくれないか、イーグのニックカウルを!」
イーグ「私のニックカウル......そうか、天草少年、キミは......!」
キョウ「ああ!イーグが奪ってきてくれたこの翼と、あと少しのニックカウルがあれば出来る——」

マコトはキョウの瞳に宿る光を見た。
傷付いた友を想う、激しく燃える炎のような光を。

EPISODE DE10

キョウ「——ガオー!」
ガオー「おう!“アレ”を試すんだな!」
キョウ「ああ、やるぞ............“ツインクロスアップ”だ!」

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 09

——ギアバトルも良いけど、アニマギアに慣れるにはまず遊ぶところから。
そんなキョウの誘いで、マコトはムサシと共に商店街へ繰り出していた。

キョウ「どうしたマコト、なんか緊張してない?」
マコト「あ、い、いや、うん、ごめん、してる、緊張」

同級生に誘われたことは何度かあっても、誘いに乗る経験が皆無だったマコトが緊張するのは無理からぬことだ。
こうして素直に「緊張している」と伝えられていることすら奇跡に近い。
自分で自分を褒めたい気分だった。

マコト「ごめん、こういうの慣れてなくって」
キョウ「気にすんなって。これから慣れていけば良いんだから」
マコト「天草......」

これから、という言葉が妙にこそばゆくて、どんな表情をすれば良いか分からない。
彼はまるで当たり前のように、これから先も共に時間を過ごそうと提案している。
そして驚くべきコトに、マコトはそれが恐いとも嫌だとも思っていなかった。
緊張はするだろうが、自分が彼と一緒にいる光景が容易に想像出来た。
いままでの自分とは大違いだ。

ムサシ「そういえばキョウ。ガオーはどこに行ったんだ?」
キョウ「うん?あれ!?」

マコトの肩の上に座っていたムサシがガオーの不在に気付くと、
キョウはマフラーやポケットの中を慌てた様子で確認した。

キョウ「あっちゃー、またか......」
マコト「また?」
キョウ「うん、また。最近ガオーと一緒に遊びに出ると、テンション上がって勝手にどっかいっちゃうんだよな......」
ムサシ「迷子、ってことか」
マコト「た、大変じゃないか!早く探しに行かないと!」

キョウ「ごめん、手伝ってくれるか?」
マコト「もちろんだよ!ね、ムサシ!」
ムサシ「ああ、そうだな」

それではまずどこから探そうか。
マコト達が今まで歩いてきた道を戻ろうとした、その矢先だった。
上空から一体のアニマギアが飛来して、キョウの右手に留まった。

キョウ「イーグ!」
イーグ「久しぶりだな、天草少年。そちらの少年は初めましてかな?」
マコト「あ、初めまして......晄マコト、です」
キョウ「マコトは最近ムサシの新しい相棒になったんだ。マコト、こいつはイーグ。
ギアバトル大会の常連でスポンサーも付いてる実力者だよ。最近第3世代にアップグレードしたんだ」

EPISODE DE09

イーグ「そうか、ムサシの相棒に......よろしく頼む」
マコト「こちらこそ」
イーグ「うむ。ところでガオーの姿が見えないようだが?」
キョウ「そうだった、そうなんだよ!聞いてくれるか!?」

イーグに事情を説明すると、彼は「なるほど」と強く頷いた。

イーグ「わかった、私も協力しよう。上空からなら効率もよかろう」
ムサシ「ならば俺がイーグと共に行く。飛んでいる最中は下が見づらいだろうからな。運んで貰っても大丈夫か?」
イーグ「問題ない。ならば早速捜索開始だ」

イーグの足が、ムサシを器用に掴んだ。
バランスを崩さないか、飛びづらくないのか、など様々な心配がマコトの脳裏を掠めたが、いらぬ心配だったようだ。
何食わぬ顔で、イーグは見事にムサシと共に軽やかに飛んで見せた。

キョウ「助かるよ、二人とも!」
マコト「ムサシ、気をつけてね」
ムサシ「マコトもな」

ムサシとイーグが高く上空へと舞い上がる。それを見届けたマコト達は、二手に分かれてそれぞれが捜索を始めた。

——それから程なくして。
マコトの元に、イーグと共にムサシが降りてくる。
どうやら早々にガオーを発見したようだ。
そのまま二人の案内で移動しつつ、マコトは携帯でキョウへと連絡を取った。

キョウ『ちょうど近くにいるから先に迎えに行ってる!』
イーグ「気を付けろ、天草少年!どうやらガオーは厄介者に絡まれているようだぞ......!」
マコト「厄介者......!?」
キョウ『......わかった、サンキュー!』

イーグの一言に不安を覚えたマコトは、一目散に目的地へと向かって行った。
辿り着いた先は、とある路地裏の一角だ。
そこには、先に到着していたキョウの背中。
その奥には——

マコト「な、なんだあれ!アニマギア......なの!?」

——人型に組まれたボーンフレーム、そして絡み合うように装着されたニックカウル。
見た目には確かにアニマギアだ。それが、ガオーと無言で刃を交えていた。
しかし、あんな機体はカタログでもテレビでも見たことがない。

EPISODE DE09

キョウ「暴走した“アクター”だ......!」

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 08

サクラ「まいりました!」

サクラギアとムサシのギアバトルが決着したあと、彼女はマコトに笑顔でそう告げた。
言葉の印象とは裏腹に、サクラはどこか吹っ切れたような表情だった。

サクラ「ムサシもマコトくんも凄かったよ。本当に息ぴったり」
キョウ「特にマコトには驚かされっぱなしだぜ!どうやったらあんな指示が出せるようになるんだ?」
マコト「あいや、ボクは別に、特別なことなんて......」

自分で意識してなにか特殊なスキルを発動した覚えはない。
ただ、マコトの感覚が危険を察すると敏感に反応しているだけなのだ。

サクラ「ムサシもちゃんとマコトくんの指示についていけてたわよね。
下手すれば指示の意図が読めずに途惑っちゃうかもしれないけど、うん。
一瞬の判断のキレは“あの頃”にも引けを取ってないと思う」

ムサシ「......むう」

EPISODE DE08

マコト「あの。やっぱり、紅葉さんとムサシは元々相棒......だったんですか?」
サクラ「そうだよ。ムサシは思い出せないみたいなんだけどね」
ムサシ「......それに関しては、本当に申し訳ないと思っている」

サクラ「だ、か、ら。ムサシは自分の記憶について罪悪感を覚える必要ないって何度も言ったでしょ」
マコト「紅葉さん......」

ムサシの相棒の話だ、あまり口を挟むべきではない。
だけど、マコトはムサシが過去を取り戻したがっていることを知っている。
そう簡単に割り切れない問題だと感じるのは、彼がムサシと自分を重ねているからだろうか。
過去は、まるで呪いのように自分を縛り付ける存在だと言うことを、マコトはよく知っていた。

サクラ「もちろん、ムサシが過去にこだわることを私は否定しないよ。私だって色々あったし、今でも悩むことはある。でも“過去”を窮屈に感じるくらいなら、同じくらい“今”を楽しまなきゃ——違う?」

その言葉に、今度こそマコトは口をつぐんだ。
まるでサクラの言うことが間違っているかのように感じていたが、それはどうやら違うと気付いて自分を恥じたからだ。

サクラもキョウも、ムサシと付き合いが長い。ゆえに、ムサシが過去に囚われていることを、
自分以上に知っているのは当然のことだ。

EPISODE DE08

だからこそ、彼女はムサシのことを第一に考えて話しているのだろう。

サクラ「というわけで!マコトくん!」
マコト「......はい?」
サクラ「急なお願いで申し訳ないんだけど、キミにムサシを預けたいの......“今”の相棒として」
マコト「へっ!?」

本当に急なお願いで三度(みたび)言葉を詰まらせる。
てっきり、このままムサシはサクラの元に戻り、自分とはお別れするものだとばかり思っていた。
だからこそ、サクラから直々にこういう話をされるとは夢にも思っていなかったのだ。

サクラ「キミ達のコンビネーションを見て確信した。いまのムサシにはマコトくんが必要だと感じたの。
私との関係じゃ越えられなかったムサシの壁みたいなものを、キミなら乗り越えてくれるんじゃないか、って」

マコト「ボクが、ですか」
サクラ「うん。マコトくんみたいな才能ある人に出会えてムサシは幸せだと思うよ。どう、ムサシ?」
ムサシ「俺は......」

ムサシは一瞬俯いたあと、何かを決意したように強く頷いて続けた。

ムサシ「ああ、俺はマコトと出会えて良かったと思えている。まだ、一緒にいたいと強く感じている。
マコトが良ければ、これからも相棒として共に歩んで欲しい」
マコト「ムサシ......」

でも、と続けるか。
よろしく、と続けるか。
ここは大きな分岐点だと思った。

——マコトはアニマギアが苦手だった。 そう思うようになったきっかけは兄の影響が強い。
だが、これまでムサシと過ごした一週間ほどの時間は、マコトにとってかけがえのないものだと感じる。 自分にギアバトルの才能があるかどうかは分からない。
強さを求めた結果、自分が兄のように変わらないか......それがどうしても恐ろしい。

マコト(......だけど)

サクラの言うとおり、過去に縛られるだけではいけない。
自分がなぜアニマギアに苦手意識を持っていたか......それよりも。
どうすればこれからアニマギアと——ムサシと向き合っていけるかを考えていく方が、よほど有意義なはずだ。

だから。

マコト「ボクの方から、お願いするべきでした」
サクラ&ムサシ「え?」
マコト「そのお話、よろこんで引き受けさせて頂きます。ボクも、ムサシと一緒にいたい」

改めて、マコトは正直な自分の気持ちを伝える。
するとムサシはマコトが差し出した手に飛び乗って言った。

ムサシ「——よろしく、マコト」
ガオー「へへっ......決まりだな!」

これから、マコトの生活は少しずつ変わっていくだろう。
アニマギアと共に歩む道が、少年の前に拓かれていた。

マコト「......あはは。まずは、母さんに報告しなきゃね」

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 07

サクラとサクラギアの動きが同期していたのは最初の間だけで、
バトルが始まってみれば彼女の“本体”はその場で立ち止まっていた。
その分、サクラギアは活き活きとフィールドを駆け回り、ムサシを翻弄している。

EPISODE DE07

マコト「ね、ねぇ!天草!あの、紅葉さんとサクラギアってどういう......!?」
キョウ「ああ、サクラ姉ちゃんはアンドロイドなんだよ。戦うときだけサクラギアと意識を同調(シンクロ)させるんだ」
マコト「アンドロイドぉ......!?」

出てくる言葉ひとつひとつの衝撃に、脳の処理がまったく追いつかない。
どこからどう見ても人間にしか見えないあの彼女が、よもやその正体がアンドロイドであるとは誰が想像できようか。

キョウ「そんなことより!ほら、戦いに集中しないとムサシがやられちゃうぜ!」
マコト「ううっ、どうしてボクが......!」

なし崩し的に始まったギアバトルに、マコトは未だ乗り切れない所が多かった。
そも、サクラの言っていた「試させて欲しい」という言葉の真意も読み切れない。
一体彼女はこのギアバトルを通してマコトの何を見極めようとしているのだろうか。

マコト「っ!危ない!ムサシ、紅葉さんが後ろに回り込んでくる!!」
サクラ「!?」

マコトの指示通り、サクラギアが正面から高速旋回しながらムサシの背後に回り込んだ。
ムサシがそれを迎撃する。

キョウ「いまの指示は!?」
サクラ「どうしてわかったの......!」

キョウとサクラが驚いたのは、その指示のタイミングだろう。
マコトからムサシへ飛んだ指示は、サクラギアが旋回を始める前に出された物である。

マコト「どうして、と聞かれても......」

感覚でしか答えられないが、マコトにはハッキリとサクラギアの次の動作が分かった気がしたのだ。

マコト「と、とにかく!ムサシ、相手の動きはボクが見る!対処はキミに任せるよ!」
ムサシ「かたじけない——ならば、こちらのペースに引きずり込むッ」

相手の動きに合わせていたムサシが、ついに自ら手札を切った。
移動速度はサクラギアに分があるものの、マコトの先読みも合わさったことで余裕が生まれたからだ。

サクラ「動きが読まれるなら、こっちにも考えがあるわ!」

サクラギアのブラッドステッカーが、一瞬強い輝きを放つ。

サクラ「ブラッドステッカーの熱エネルギーを変換する!読んでもどうしようもない攻撃なら、どうする!?」

直後、右腕に装着された剣先から雷が生まれた。
流石に読み切れないし、サクラの言うとおり読んでも光の速度ばかりはどうしようもない。
だが。

ムサシ「電撃ならば地に逃がすまで......!」

対応はマコトの判断を待たずにムサシが既に済ませていた。
電光を受け止めるようにフィールドに一振り剣を突き刺し、ムサシは剣から急速離脱する。
結果、サクラギアの攻撃がムサシに届くことはなかった。

マコト「——そうか、“剣を避雷針にした”んだ!」
キョウ「やるなムサシ!」

サクラ「......!」
マコト「ッ、相手の出力が落ちてわずかに動きが鈍ってる!いまなら行けるよ、ムサシ!」
ムサシ「応!!」

ムサシがまっすぐサクラギアへと疾走する。
途中、避雷針にした剣をしっかりと拾い、その勢いのまま横に薙ぐ動きで構えて見せた。
サクラギアとムサシの武器が甲高い音とともに激突する。

EPISODE DE07

サクラ「なんの、これしき......まだまだこれからよっ」
ムサシ「いや、俺達の勝ちだ」

ムサシが剣を捨て、直接その手でサクラギアの刃を上から押さえつける。
ムサシの独断とも言える行動から生まれたその光景に、マコトは驚いた。
どうして自分が思った戦術が、言葉にせずとも伝わるのだろう。
不思議な感覚に包まれながらも、マコトは声を張り上げずにはいられなかった。

マコト「行けーーーーーーッ!!」

押さえつけた剣の上から、ムサシはもう片方の手を添える。
そのままサクラギアの腕を掴み、武器ごと彼女をぶん投げた。

サクラ「きゃあっ!?」

——背負い投げだった。
二体のアニマギアの動きが完全に止まる。
そして数瞬の静寂のあと、ムサシはサクラギアを引っ張り上げた。
宣言通り、マコトとムサシの勝利でギアバトルが決着したのだ。

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 06

キョウやガオーと共闘して次の日曜日。
マコト達はギアティクス社に訪れていた。

キョウ「ようこそ、ギアティクス社へ!」
マコト「......受付顔パスだなんて、ホントにすごいんだね、天草は」

もとより、SNSを始めとしてギアバトルの大会などでもキョウは活躍を続けていたし、
同級生から羨望のまなざしを向けられていたのはマコトも知っていた。
しかしこうして大きな会社の大きなロビーで物怖じせず自然体でいられる彼を見て、そのすごさを改めて体感した気分だ。
そのことも相まって、マコトは自分の場違いっぷりに今すぐ帰りたくなっている。

ムサシ「......むう」

ムサシはムサシで“家出”した手前、落ち着かない様子で辺りを見回していた。
お互い居心地の悪さを感じているという意味では非常にコンビらしい立ち振る舞いだ。

キョウ「それじゃ、まずはラボに行こう」
マコト「ラボ?」
キョウ「言ったろ、会わせたい人がいるって。ここの研究室で待ち合わせてるんだ」

そのまま、キョウの案内でエレベーターに乗り込んだ。
ギアティクス社の社屋となっているビルは高層ビルと言って差し支えない高さだが、
どうやら地下にも施設は及んでいるようだ。
地下五階の表示で止まったエレベーターから降りると、無機質な壁や天井で囲まれた廊下が複雑に絡み合う空間に出た。

キョウ「こっちだ」
マコト「ま、待ってよ!」

先行するキョウに慌てて追いついた。
一人になったら間違いなく迷子になる自信がある。

キョウ「着いた着いた。入るぞ、マコト」

そして、いくつかの曲がり角を過ぎたあと、キョウはとある部屋へと足を踏み入れた。
何に使うのかよく分からない機械や計器が並ぶ部屋の中央に、白衣を着た少女がにこやかに立っている。
桜色の髪が特徴的な少女だった。

キョウ「サクラ姉ちゃん!連れてきたよ!」
サクラ「キョウくん、いらっしゃい。その子がウワサの?」
キョウ「そうそう、クラスメイトの晄マコト!」
マコト「あ、えと。こん、にちは......」

綺麗な人だな、と思った。
あまり自分の周りにいるようなタイプではないがゆえに、変に緊張してしまう。

キョウ「マコト、こちら紅葉サクラ姉ちゃん。いまはギアティクス社でアニマギアの研究員してるんだ」
サクラ「もう、研究員“助手”だってば——それはそうと、初めましてマコトくん。紅葉サクラです、よろしく」
マコト「こちらこそ、よろしく、おねがいします」
サクラ「急に呼び出しちゃってごめんね」
マコト「いえいえ......あ、でも、ボクに用事って一体......?」
サクラ「それはねー......ふふ」

聞かれたサクラは不敵な笑みを浮かべて、静かに問い詰めるような声で続けた。
妙なすごみがある。

サクラ「ムサシ?いるのは分かってるのよ?」
ムサシ「......紅葉、サクラ」

観念したのか、直前にマコトの懐に隠れていたムサシが顔を見せる。
サクラがムサシを両手で持ち上げるのに時間はかからなかった。

サクラ「家出だなんて!みんなに心配かけちゃダメだよ!」
ムサシ「す、すまな、」
サクラ「それにフルネームで呼ぶだなんて他人行儀!そもそもね——」

そのまま、サクラは説教モードに入った様子で、
いままでムサシが“家出”してからどんなに大変だったかをまくし立て始めた。

キョウ「サクラ姉ちゃんがあんなに怒ってるところ、初めて見た」
マコト「......は、はは......」

戦闘の時はあんなに頼もしかったムサシもしおらしくしてサクラの話を聞いている。

サクラ「——だから、もう勝手に姿を消さない!約束できる?」
ムサシ「わ、わかった、約束する」
サクラ「まったく、ほんとに......心配、したんだからね」
ムサシ「......すまなかった」

ヒートアップしていたサクラも、どうやら全て吐き出して落ち着いたらしい。
元の柔和な顔に戻ると、ムサシの頭部を優しく撫でていた。

マコト「あ、それじゃ、ボクはこれで......」

ムサシは“家”に戻った。
これでマコトの役割も、アニマギアと共に過ごす日々も終わりだ。
少しばかりの寂しさを覚えたが、なにもムサシに一生会えないわけでもないだろう。
いままでの生活に戻るだけだ......そんな複雑な気持ちを抱えながら、
きびすを返そうとしたマコトを引き留めたのはサクラだった。

サクラ「あ!ちょっと待って!」
マコト「え?」
サクラ「いまのはムサシへの話だっただけで、マコトくんを呼んだ理由は他にあるの」
マコト「そう、なんですか」
サクラ「——場所、変えよっか」

彼女の誘導で、マコト達は改めてエレベーターに乗り込み、更に地下へと進んだ。
辿り着いたフロアは、体育館のような広大なスペース。
そしてそのスペースの用途に、マコトはすぐに気が付いた。

マコト「ここ、は」

思わず息を呑む。
テレビや雑誌でも似たような構成の施設を目にしたことがあったからだ。
観客席こそないが、間違いない。
ここはギアバトルのために作られた施設だろう。

マコト「どうしてこんなところにボクを......?」
サクラ「キョウくんからね、教えてもらったの——」

サクラは堂々とした足取りで、自分達とは反対側の陣地へと進んでいく。
これではまるで、彼女とマコトがいまから戦うかのような......。

サクラ「——マコトくんとムサシが、ギアバトルで凄いコンビネーションをやって見せたんだ、って」
マコト「ぼぼ、ボクが!?」
キョウ「そうだよ!マコトの戦いはとてもギアバトル初心者だなんて思えなかった!」
マコト「ええ......っ?」
サクラ「それでね、ちょっと試させて欲しいんだ——」

意を決した表情で、サクラは白衣を脱ぎ捨て、
うなじの辺りから何かを取りだしたかと思えばそれをそっと地面に“立たせ”た。
見れば、見たことのない型のアニマギアがそこにいる。

EPISODE DE06

しかもあろうことか、

マコト「あれ!?も、紅葉さんと......まったくおなじ動き!?」

紅葉サクラと正体不明のアニマギアの動作が完全に同期している。
ラジオ体操の要領でストレッチを始めた彼女の身振り手振りが、そのままアニマギアの動きに繋がっていた。

サクラ「——よし、こっちは準備完了!ムサシ!マコトくん!いまから私......サクラギアとギアバトルよ!」

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 05

青年「——ぱ、パワー負けしてるのか!?ありえねえだろ!!」
キョウ「出力不足だってことに気付けなかったなら、まだまだ三流だぜお兄さん達!」
青年の仲間A「出力不足だぁ?」
青年の仲間B「あっ!見ろ!」

ガオーの攻撃がすんなりと三体を退けることができた原因をマコトも察した。

——アニマギアのエネルギー源はブラッドステッカーに受ける太陽光だ。
そしてアーミーD達は夕陽によって出来た影の中にいる。
対照的に、ガオーとムサシは影まで踏み込んでいない。
つまり彼らは、攻撃を受け流しながら陽の当たるポジションをキープしつつ、
敵だけを影の中へ誘導していたということだ。

青年「だが、アニマギアは夜間行動が出来るようにエネルギーを蓄えられるんだぞ!?
こんなに早く出力に差が出るわけねえ!」
キョウ「当然だよ、お兄さん達はアーミーDの消耗に気付かず攻撃しろの一点張り——
それじゃアーミーDが可哀想だよ。もう“ギリギリ”なんじゃないかな」

キョウは続ける。
アーミーDは試作品ゆえに会話機能をオミットしてある。
しかし心がないわけでも、疲労を感じないわけでもない。

キョウ「声によるコミュニケーションが取れない分、より一層相棒とは心を通わせなきゃな!」
青年「ぐ......っ」
マコト「すごい......!」
キョウ「ほら、お前も!ムサシはマコトの指示を待ってる!」
マコト「え!?あ、うん!」

形勢を塗り替えたガオーの攻撃と、キョウの激励。
そして指示を出さなければならないという状況が、マコトの視界をクリアにする。
影に入って出力が落ちたそれぞれのアーミーDは、統率がまるでとれていなかった。
つまりは。

マコト「相手がばらけてる......そのまま行くんだムサシ!!一体ずつ確実に攻撃できる!日陰に踏み込め!」
ムサシ「——任せろッ!」

決して言葉が多かったワケではない。
しかし、ムサシはマコトの思い描いたルートが見えているかのように、
一体また一体とエネルギーが切れかけている敵を無力化していった。

だが、青年のアーミーDだけは違う。
仲間が次々と倒されようと、踏み込む姿勢のまま冷静にムサシを迎え撃とうとしていた。
したたかに獲物を狙う獣のようだ。

マコト「気をつけて、相手はまだ諦めてない!」
ムサシ「おうとも!」

しかし獣はこちらも同じこと。
ムサシは突進するルートからその場でしなやかに跳躍する。
半身を捻るように身を翻しながら、敵の頭上を越えて見せたのだ。
これも、マコトが瞬時に思い描いた光景——まるで、本当に心が通じ合ったみたいだった。

EPISODE DE05

マコト「行け......!」

背後から体当たりをかますと、アーミーDが地面に勢いよく突っ伏した。
続けざまに、ムサシが剣を振りかぶる。

ムサシ「これで最後だ!」

そのまま剣を振り下ろした瞬間。

青年「やめろ......!!」

青年の叫びが、ムサシはピタリと動かなくなった。
アーミーDを斬りつけるまであと数ミリの所で剣が静止している。

青年「オレ達の......負けだ......やめてくれ......」

先程までの勢いを失った青年達の言葉に偽りはなさそうだった。
それをムサシもガオーも察したのか、大人しくマコト達のほうへと戻ってくる。

青年「次は負けねえ......行くぞ、お前ら」
青年の仲間A&B「お、おう......!」

倒れたアーミーDを回収して、青年達はそのままマコト達の前から去って行った。

キョウ「あの人達、もっと強くなるな」
マコト「......そう、なの?」
ガオー「ああ、オレもそう思う!でもそれはお前も同じだと思うぜ、マコト!」
マコト「ボクが?」

自分がギアバトルで強くなるなんて、考えたこともなかった。

マコト「ボク、は......」

でも、それは自分が恐れていたことではなかっただろうか。
力を求めた兄の背中を追うことが、なによりも恐かったはずだ。
確かにムサシと心が通った瞬間、自分はいままでにない高揚感を得ていた。
しかし、いままでの自分とこれからの自分を簡単に割り切れるほど、マコトの思考回路は単純に出来ていない。

あまりにも、抱えている物が大きすぎる。

ムサシ「......いまはあまり思い詰めるな、マコト。ナイスファイトだった」
マコト「............うん、ありがとうムサシ」
キョウ「?」

こちらを気遣ったムサシの言葉に、少しだけ気分を持ち直す。
キョウは不思議そうな顔をしていたが、そう誰彼構わず話すようなことでもない。
今は“友達”のムサシが理解してくれるだけでいい、そう思った。

ガオー「そーれーよーりーもー!探したぜムサシ!」
ムサシ「......むぅ」

EPISODE DE05

マコト「探してた?ムサシを?」
キョウ「そうだった、ギアバトルに夢中になって本題を忘れてたよ」

キョウは「こほん」とわざとらしく咳払いをして、改まったように姿勢を正した。

キョウ「オレ達、ギアティクス社の依頼で“行方不明のムサシ”を探してたんだ」
マコト「なるほど、天草がムサシを知っていたのはそういう......」

つまり今回、青年達に絡まれている所にキョウがやって来たのは偶然でも何でもない。
ムサシの動向を掴んだ彼らがマコトに辿り着き、話す機会を覗っていた......ということだろう。

キョウ「ちょうどいい、マコトも同行してくれないか?」
マコト「ボクも?」
キョウ「ああ。いまのムサシとのコンビネーションを見たらその方が良いかなって。会わせたい人がいるんだ」

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 04

夕陽が街に影を落とす中、現れた天草キョウは何気ない足取りで近づいてくる。
大人三人を相手に、まるで緊張していないようだ。

キョウ「や!マコトがギアバトルなんてびっくりしたよ」
マコト「天草!どうしてキミがこんな所に......!」
キョウ「細かい事は気にすんなって!それより今はあいつら倒さないとまずいだろ?」

キョウがマコトの肩を軽く叩くと、彼の懐からアニマギアが一体、ひょこりと顔を見せた。
そのまま勢いよく飛び出すと、キョウの手のひらに乗り移る。

キョウ「行けるな、ガオー!」
ガオー「おう!任せとけ!」

EPISODE DE04

青年の仲間A「あ、あ、あま、天草キョウとガオーD(ダッシュ)!?」
青年の仲間B「オイオイ、ギアバトルのトップランカーじゃねえか!やべえって!」

青年「なにビビってんだよ、一人増えたところでこっちは三人!
むしろあの天草キョウを倒せばオレ達の名も上がるってもんだぜ......!」

青年の言葉で士気が上がったのか、二人もどこか浮ついた表情で首を縦に振る。
そして、三人組は一斉にカスタマイズされたアーミーDを繰り出した。

同時にマコトのもとからムサシが、キョウのもとからガオーがそれぞれ出撃していく。
かけ声も無く、三対二のギアバトルが始まっていた。

EPISODE DE04

青年「アタマを潰せばあとは素人だけだ!畳んじまえ!」
青年の仲間A&B「おう!!」

先行したのは青年のアーミーDだ。
驚異的なスピードで接近する先はガオー。
まずは主力を潰そうという魂胆らしい。

ただ、黙ってそれを受けるガオーではなかった。

ガオー「アタマ潰せば、か。冷静な判断だが、そいつはお前らも同じだよな......!」

ガオーの牙がアーミーDの剣に喰らいつく。
勢いで勝っているのは間違いなく白獅子だ。

青年「こっちは三人だって言ってるだろうが!」

ガオーの背後から、二体のアーミーDが追撃を狙っていた。
しかしその追撃が許されることはない。

ムサシ「こちらは二人だが......俺は二刀流だ」

青い甲虫の両の剣が、二体の攻撃を同時に受けている。

青年の仲間A「バケモンかよ!やべーのはガオーDだけじゃねえのか!?」
青年の仲間B「流石第三世代の中でも幻と呼ばれるアニマギア......」
青年「だからビビってんじゃねえ!第三世代はこっちも同じなんだよ!!」

キョウ「確かに。どこで手に入れたかは知らないけど、アーミーDも立派な第三世代だ。
ガオー達と渡り合えるだけの実力はあると思うよ」
マコト「そうなの!?じゃあやっぱり三対二って相当な不利なんじゃ......!」
キョウ「でも、それだけじゃオレとガオーはおろか、“マコトとムサシ”にだって勝てないぜ。
三対一だろうがそれは変わらないさ!」
マコト「天草、キミはムサシを知ってるのか......!?いや、それよりも——」

曲がりなりにもチームを組んで戦い慣れている青年達が、
ギアバトルを経験したことないマコトに勝てないと豪語するキョウの話がまったく理解できない。

青年「——トップランカーならともかく、素人に俺らが勝てねえってのは納得いかねえなァ!!」

それは当然、敵も同じだ。
キョウの言葉は単純に彼らをヒートアップさせている。

青年の仲間A「おらおらおら!オレらのどこが弱いってぇ!?」
青年の仲間B「そっちのアニマギアはどっちも防戦一方じゃねえか!」

彼らの言うとおり、明らかに攻撃の激しさが加速していた。
ガオーもムサシも攻撃を捌くばかりで、どちらも反撃する隙がないように見える。

マコト「ムサシ......!」
キョウ「不安そうな顔をするなよマコト。ムサシの目は死んじゃいないだろ?」
マコト「そんなこといったって、天草!」
キョウ「言って分からないなら実際にやるしかないよな......ガオー!」

ガオー「おっ、そろそろ良いのか!?」
キョウ「ガオーもムサシも“あったまってる”ころだ、目に物見せてやれ!」
ガオー「了解ッ」

一転攻勢とはまさにこのこと。
キョウに応えたガオーの攻撃が、三体のアーミーDをまとめて押し返した。
虚を突かれた三人組が、目を丸くして戦況を見つめている。
言葉を失っていた。

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 03

マコトとムサシの出会いから一週間の時が流れた。
なし崩し的に家へと連れ帰ったは良いものの、
同級生はおろか親にも未だマコトがアニマギアと共に生活していることを明かしていない。
アニマギアが原因で兄が家を出て行ったことから、どことなく後ろめたさを感じていたからだ。

そのことについて、ムサシがマコトに問うてきたのは、ある日の帰り道のことだった。

ムサシ「マコトも親御さんも、そんなにアニマギアや兄上が苦手なのか」
マコト「いや......母さん達は兄さんと連絡は取ってるし、応援もしてるみたいなんだけどさ」
ムサシ「ならば構わないじゃないか、いまからカミングアウトしても」

マコト「どうしてムサシは、そんなにボクのこと気にかけるんだよ。
キミが幻のアニマギアだっていうなら、表沙汰になると色々面倒なんじゃないの?」
ムサシ「ああいや、うむ。理由は単純なんだ。何かをあらためようという気持ちになるのは“過去を持つ者”の特権だろう?俺には何かを悔いるような過ちも、何かを誇るような栄光も残っていないからな......」

残っているのはムサシという名前だけだ、と。
マコトの肩の上から語りかける彼は締めくくった。

ムサシには記憶が無い。
どうやらムサシはデュアライズカブトDとしてロールアウトする前は、別の機体として活動していたらしい。
大きな事故に巻き込まれたことが原因で記憶を失った、と開発者に話を聞かされたのだという。

EPISODE DE03

ショックを受けたムサシは自棄(やけ)気味に研究所を飛び出した。
失ってしまった過去を、取り戻せるかも知れないと信じて。

ムサシ「だから、マコトには向き合って欲しいんだ......というのは、俺のワガママなのかも知れないがな」
マコト「ムサシ......」

この話を引き合いに出されると、マコトはめっぽう弱い。
自分は色々な物から目を背けて生きてきたという負い目がある。
だからこそ、自分自身と真正面から向き合うムサシのことが、時々眩しくてたまらないのだ。

マコト「......わかったよ。まずは母さん達に話してみる」

その眩しさから逃げたくない、と思った。
彼との出会いが、マコトの中の何かを変えてくれるような気がしていたから。

マコト「ゆ、勇気が出たら......だけど」
ムサシ「決断をするのも勇気だ、マコト。一歩を踏み出そうと思えたキミのことを、俺は友として誇らしく思う」
マコト「ボクとムサシが......友......」

不意に聞かされたその言葉に、マコトは内心で強い衝撃を受けていた。
なにもいままでまったく友達がいなかったというわけではない。
しかし、ムサシの言う「友」という言葉は、今まで聞かされた同じ言葉よりも重く、そして暖かく感じたのだ。

マコト「うん、がんばって、みる」
ムサシ「応援させてもらおう」

だから、マコトはムサシが本当に誇れるような自分になりたいと思った。
まだ家族や同級生に話す勇気は出そうにない。
だが、ムサシと過ごしたこの一週間で自分にとって何か大きな変化が起き始めたのは、疑いようもない事実だった。

マコト「——あれ、あの人、どっかでみたことあるような......」

五十メートルほど先に、三つの人影があった。
どれも背丈はマコトの倍ほどあり、真ん中の人物に至っては一度会ったことがある。
あ、と気付いて引き返そうとする前に、その人物が声をかけてきた。

青年「探したぜ、がきんちょ」

忘れもしない、一週間前にアーミーDをけしかけてきた金髪の青年だ。

マコト「ななな、何の用ですか」
青年「んなもん、デュアライズカブトDを頂きに来たに決まってんだろうが」

わかりきった返答に身体が硬直する。
どうにかしてこの場を切り抜けられないか、マコトが高速で頭を回転させ始めた。
その矢先だ。

ムサシ「フン、先日情けない悲鳴をあげたのをもう忘れたのか?どうやらもう一度斬ってやる必要があるらしい」
マコト「ムサシ!」

肩からムサシが青年を挑発したのだ。
それを諫めて声を上げるが、すでに手遅れだった。

青年「なめたクチきけるのもいまのうちだ!おい!」

青年が声をかけると、青年の脇にいた似たような格好をした二人がずい、と身をマコトに寄せてくる。

青年「もともとオレらは三人で組んでんだ!今度は容赦しねえ!」

三人はにやつきながら、それぞれがアニマギアを繰り出してくる。
どれも同じ型——デュアライズカブトDのアーミータイプだ。

EPISODE DE03

マコト「どうしよう、ムサシ......さすがに分が悪いよ......!」
ムサシ「一人じゃ敵わなかったから三人で、というワケか。呆れて物も言えないな」
青年「いまさら怖じ気づいたって遅え、テメーはどんな手使ってでも持ち帰ってやる!」
ムサシ「このムサシが挑まれた勝負に背を向けるとでも......?面白い!」
マコト「ムサシってば......!」

マコトの制止もむなしく、ムサシが剣を抜く。
しかし、一触即発の空気に異を唱える声が、マコトの背後から聞こえてきた。

???「その勝負、ちょっと待った!オレもまぜてもらうぜ!」

その声の主は、マコトも見知った顔だ——。

マコト「キミは......!」

——クラスメイトの天草キョウが、笑みを浮かべて立っていた。

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TO BE CONTINUED...

EPISODE 02

青年「行け、アーミーD(ダッシュ)」

青年の肩から、緑色のアニマギアが河川敷の砂利へと飛び降りる。
アーミーDと呼ばれたそのアニマギアは、どうやらマコトの傍らにいる青いデュアライズカブトと同型機のようだ。

EPISODE DE02

マコト「な、なにするつもり、ですか」
青年「ァあ?アニマギアが二体揃ってんだぜ、ギアバトルに決まってんだろーが!」

そんな、と抗議の声を上げる間もなく青年は青いアニマギアにアーミーDをけしかける。
右腕の刃が、棒立ちを続ける無抵抗の青いアニマギアを弾き飛ばした。

青年「なんだ、てんで歯ごたえねーじゃん!第三世代の名が泣いてるぜ!!」
マコト「第三世代......?」
青年「かーっ!なにも知らねーでそんなレアモン使ってんのかよ!!」

いいか、と彼は続ける。

青年「お前が使ってるその青いアニマギアはな!最新鋭の技術が詰まった第三世代と呼ばれるアニマギア!
その中でも一般市場には出回ってねぇ、カタログだけに掲載される幻の超絶レアもの......
その名もデュアライズカブトD(ダッシュ)ッ!」

マコト「幻......このアニマギアが......」
青年「どこで手に入れたか知らねえが、出会えて幸運だぜ!大人しくオレのもんになっちまいなァ!!」

青年の指示で、アーミーDは容赦なくデュアライズカブトに追撃を加える。

青年「最新鋭機を使いこなせねえガキより、オレみたいな強い男こそお前のマスターに相応しいんだよ!」
マコト「......!」

彼は勘違いしているようだが、そもそもこの青いアニマギアはマコトの持ち物でなければ相棒でもない。
まったくの無関係だ。
しかしマコトがそれを青年に明かすことはない。
弱者が強者に虐げられて良いなんて話、あってたまるものか。

マコト「......どうして......」

自分みたいな子供相手に、大人げなくカツアゲしようとする青年に腹が立っているのは確かだ。
しかし、それ以上に腹が立つのは。

マコト「......立ってよ......っ」

反撃もせず、されるがままになっているデュアライズカブトの方だ。

マコト「最新鋭機なんだろ......!?」

彼が技術の粋(すい)を集めて作り上げられているというのならば、彼は相応の力を持っているはずだ。

マコト「戦えるんじゃ、ないのかよ!」

だと言うのに、彼は立ち上がることすらしない。
アーミーDの容赦ない攻撃が、ひたすらデュアライズカブトを痛めつけていた。

マコト「戦ってよ......もう嫌なんだ......“キミ”が傷付くのは......ッ」
デュアライズカブト「......キ......ミ......?この、声、は......」

マコトの声に反応したのか、デュアライズカブトに僅かな動きが生まれた。
ボロボロになった彼の身体が、びくりと跳ねるようにのけぞった。

EPISODE DE02

そんな彼の姿が、マコトが目をそらし続けていた記憶に重なって見える。
脳裏に蘇るのは、兄の記憶だ。

マコト「立ってよ、頼むから——」

かつて、力を求めたが故に相棒を捨て、家族を捨て飛び出した兄の姿がフラッシュバックする。

青年「これでおしまいだ!やれ、アーミーD!!」

そして、マコトは。

マコト「——立て、“ムラマサ”ァアアアアアア!!!!」

アニマギアを苦手とする理由を作った兄の、かつての相棒の名を、知らずの内に叫んでいた。

瞬間、マコトの怒りが届いた。
マコトがムラマサと呼んだデュライズカブトの眼に強い輝きが宿ったのだ。
直後、完全にデュアライズカブトを捉えていたはずのアーミーDの攻撃は虚空を切った。
この場の誰もが気付かぬうちに、青い甲虫は敵の背後に回り込んでいる。

青年「なにィ!?」
デュアライズカブト「——ッ」

そのままアーミーDへと斬りかかった。
すんでの所で敵はその攻撃を刃で受け止める。
鍔迫り合いになったが、優勢なのはデュアライズカブトの方だった。
徐々に押し込んでいく。

青年「見て分かるくらいボロボロの状態なんだぞ!?あいつのどこにそんな馬鹿力が......!」

デュアライズカブト「少年......!」
マコト「え、ぼ、ボク!?」

デュアライズカブト「キミの言う“ムラマサが何者かは知らない”し、俺は断じてそのムラマサなどではない——」

EPISODE DE02

ムサシ「——我が名はムサシ......二刀を自在に操る、誇り高き侍の名だッ!!」

押し斬った。
ムサシと名乗った彼の攻撃は、敵のアーミーDを遙か遠くへと吹き飛ばしたのだ。

青年「うわああああ!?オレの、オレのアーミーDがぁああああ!?お前ら覚えておけよぉーーーーーーッ!!!!」

相棒を飛ばされた青年は、情けない捨て台詞を残して猛ダッシュでマコト達の前から去って行った。
彼のことはすぐに忘れるかも知れないが、マコトはこの出会いのことをこの先ずっと覚えている確信があった。

自分が戦ったわけではないのに、マコトの息が上がっていたからだ。
興奮、していたのだろう。

マコト「これが......ギアバトル......」
ムサシ「......キミの名を、聞かせてくれないか」

いままさに、目の前で敵を倒したムサシが自分の名を聞いている。
なぜ聞かれたのかは分からないが、彼の声に応えなければいけない——そんな気がした。

マコト「ボクは......ボクは、晄マコト、です」
ムサシ「マコトか。良い名だ」

マコトとムサシ。
二人の出会いが、新たな物語を紡いでいく。
この先に、世界を巻き込む大きな運命が待ち受けていることを、彼らはまだ知る由もない。

アニマギアDEロゴ

TO BE CONTINUED...

EPISODE 01

それが目に入ってきたのは、本当に偶然だった。
河川敷を歩いている最中、何かに導かれるように泳がせた視線の先に、それはいた。
たまたま、アニマギアがたった一人で座り込んでいるのを、見つけてしまったのだ。

EPISODE DE01

——時間は少し遡る。
とある小学校の放課後。
六年生の教室......その窓際で、残った何人かの生徒が他愛のない話題で盛り上がっていた。

女子生徒「ねぇねぇ、ビタースイーツの新曲聞いた?」
男子生徒「えー、うーん、聞いてない」
女子生徒「まじ?普段からあんなにアニマギアの話してるのに?」
男子生徒「アニマギアっていったらギアバトルだろやっぱ!
なんてったってウチのクラスにはキョウがいるんだぜ!?な、キョウ!」

男子生徒の呼びかけに応える声はない。
同級生の天草キョウは、不在のようだった。
荷物がないところを見ると、もうすでに帰路についているらしい。

男子生徒「なぁんだ、いねーのかー。熱いギアバトル論を交わそうと思ってたのに」
女子生徒「アニマギアといえばギアバトルなんてちょっと遅れてない?
天草くんだって元々アニマギアの写真で有名になったのに」
男子生徒「ぐ......それを言われると弱い......むむむ」
女子生徒「ねー!晄くんもそう思うでしょー?」

話を振られたのは、教室最後尾の扉側にある座席で、本を読んでいた晄マコト(ひかりまこと)だ。
マコトは一瞬、自分に話を振られたことに気が付かず反応が遅れてしまった。

マコト「え、ボク?」
男子生徒「あっ、だめだマコトは......!」
女子生徒「へ?なにかまずかった?」
マコト「なにもまずくないよ。ごめん、家の手伝いあるからそろそろ帰らなきゃ」

そう言って、マコトは本を机にしまい立ち上がる。
荷物をまとめて、なるべく平静を装いながら教室を後にした。

マコト「......またやっちゃったな」

マコトには苦手な物が二つある。
一つは人付き合いだ。

昔はそんなことなかったはずなのに、気付けば一人で過ごすのが当たり前になってしまった。

誰かに嫌われてるわけでもない。
その証拠に、同級生は頻繁にマコトに話しかけてくれるし、マコトも話しかけられれば人並みに受け答えは出来る。
冗談を言って笑い合うことだって、その気になれば出来るはずだ。

ただ、なにかに誘われたり、誰かの話の途中に振られてしまうとどうしてもダメだ。
他人の輪の中に入る、ということがどうしても出来ない。
大人数でいると、マコト一人だけが孤立してしまう......そんな漠然とした恐怖があった。

もう一つは——

女子生徒「......変なの。どうしたんだろ」
男子生徒「マコトにアニマギアの話はNGなんだよ......」

廊下に漏れ聞こえてきた同級生の言うとおり、マコトはアニマギアに苦手意識を持っていた。
少し前まで世間を騒がせていた獣甲屋というテロリストが、
アニマギアを使って大規模な犯罪を企てていたのも理由の一つだ。

マコト「うん。ボクは、いいかな」

仮にアニマギアに自分がのめりこんでいたとしたら、もう少しこの性格も変わっていただろうか、と考えることもあった。
だが、アニマギアが人の手に余る力を持っているのは事実だ。
力があれば、人はそれを使いたくなってしまう。

それが善行だろうと悪行だろうと、力を望めば先に待つのは破滅だと“マコトは身をもって知っている”。
だからこそ、マコトはアニマギアに向き合おうとしなかった。

しかし、その時は突然訪れた。

校門を出て、いつもの通学路。
マコトは直帰ではなく、朝に母から頼まれた買い物をするべくスーパーへの道を選んだ。
河川敷を通った先にある橋を渡り、駅へと続く大通りを行く道だ。

その道中、河川敷が中頃にさしかかったあたりで、視界の端に気になる物が映る。
誘われるように視線が動いた。
川沿いに座り込む、本当に小さな影。通常では目に留まりようもない“それ”が、マコトにはハッキリと見えた。

マコト「アニマ......ギア......だよな」

なら、関わることはない。
あれが野良アニマギアにせよ、相棒がいるアニマギアにせよ、関わったら面倒なことになる予感があった。
だからマコトは見なかったことにした......つもりだった。

マコト「——ああ、もう!」

自分の知らない感情に突き動かされた彼は、気付かないうちに河川敷を駆け下りていたのだ。 あえて理由を考えるならば、思い当たるものがないわけでは、ない。

座り込んでいる青いアニマギアが、かつてマコトの兄が捨てた相棒と同型だったからだ
そのアニマギアの名は——

マコト「デュアライズカブト......ッ!」

名を呼ばれたと思ったのか、青いデュアライズカブトが立ち上がる。
そして、マコトを静かに見つめていた。

EPISODE DE01

蛇に睨まれた蛙とでも言おうか。
避けていたはずのアニマギアに自分から近づいたと思えば、
そのアニマギアに見つめられることでマコトの思考は完全に停止した。

???「おいおいおい、随分レアなアニマギア連れてるじゃんキミィ?」
マコト「はい?」

だからこそ。
先ほどの教室で本を読んでいたときのように。
背後から現れた第三者にかけられた声が自分に向けられた物だと、マコトは一瞬気付くことができなかった。

マコトの背後に立っていたのは、黒い革ジャケットに同色の革パンツというパンキッシュな格好をした青年だった。
肩まで掛かる金髪をさらりとかきあげて、青年は続ける。

青年「ガキのくせにそんなレアモン使ってンのかよ。気に食わねえからオレがそのアニマギア、貰ってやるよ」

アニマギアDEロゴ

TO BE CONTINUED...

EPISODE 63

キョウ「......ガオー、ムサシ......」

眠るように目を閉じたサクラを傍らに、キョウとコノエは爆発する施設を眺めていた。
宵闇の中、街灯もない山奥で爆発から上がる炎の明かりだけが彼らを照らしている。

EPISODE 63

コノエ「キョウ君。いま通信が入ったわ——日本中に拡がっていたイデアギアス達は、全てその機能を停止したみたい」

“彼ら”がやってくれたのよ、と。
コノエの優しい声が静かに勝利を告げた。
しかし待ち人は来ない。
爆発が終わっても、相棒達が彼らの前に姿を現すことはなかった。

キョウ「......」

キョウは泣かない。
友であるバイスとシュバルツを倒した日から、キョウは泣くことをやめた。
誰かを守るために、何かを失う覚悟はあの時すでに終わらせたのだ。

だからこそ、相棒が戻ってこない今も、泣いてはダメだと必死に言い聞かせている。
決して涙は見せまいと強く握りしめた拳が、ひどく痛んだ。

——それから、一ヶ月の時が過ぎた。

世間は徐々に日常を取り戻している。
獣甲屋を発端とするイデアギアスによるテロ行為は、多くのアニマギア達の尽力により、
その目的を達成することなく終わりを迎えたのだ。
レオスを始めとする戦いを終えたアニマギア達は、復帰調整のためにいまだラボに預けられたままになっている。

当初はアニマギアを用いた大規模なテロ行為により、アニマギアそのものへのバッシングが大きくなっていた。
しかし、事件解決の立役者として同じくアニマギア達がただならぬ貢献をしたことから、
いまでは集中していた批判も収束しつつある。

また、首謀者である黒田ショウマは行方をくらまし、依然として捜索が続いていた。
同時に、破壊された海洋拠点と山岳拠点は、ギアティクス社とABFによる解体作業がいまも行われている。

そして、天草キョウは。

キョウ「——サクラ姉ちゃんっ!」

モミジテクニクスに呼ばれたキョウは、勢いよく研究室の扉を開けた。
まるで病室のように様変わりしていた部屋の中では、ヤマトとコノエ、そしてソウヤがベッドを囲んでいる。
空いたスペースにキョウが滑り込むと、ちょうど一人の少女が目を覚ます所だった。
紅葉サクラが、ゆっくりと瞼を開けてこちらを見た。

EPISODE 63

彼女はキョウに気が付くと、寝ぼけたような声とともに柔らかく微笑んだ。

サクラ「......おはよ、キョウくん」
キョウ「......っ、うん、おはよう、サクラ姉ちゃん......!」

キョウがゆっくり手を差し伸べると、サクラはか細い力でキョウの手を握ってくれた。
恐る恐る握り返す。
暖かなぬくもりが、じんわりと伝わってくるのが分かった。

サクラ「ごめんね......辛い思い、たくさんさせちゃった」
キョウ「いいんだ、いいんだよ......!本当によかった、目が覚めて......!」

ヤマト「キョウくん」

ヤマトは呼びかけながらキョウの肩に手を置くと、「ありがとう」の言葉と共に頭を下げた。

ヤマト「キミ達のおかげで、サクラを黒田から取り戻せた......本当に、ありがとう」
キョウ「いえ......そんな......」

ヤマト「どうか謙遜しないで欲しい。サクラギアにコンバートされた意識を移すのに手間取りはしたが、
こうしていま娘が笑えているのは本当にキミ達のおかげなんだ」

ソウヤ「僕もキョウを誇らしく思うよ。だから、胸を張るんだ」
キョウ「ソウヤ兄ちゃん......」

コノエ「そうだ、キョウ君。サクラちゃんとの再会に水を差すようで悪いんだけどね。もう一つ見せたい物があるのよ」
キョウ「......見せたい物、ですか?」
コノエ「来て」

言われるまま、コノエの先導で皆が部屋を移動する。
道中に言葉はなく、ヤマトもソウヤもサクラも笑みを浮かべていた。
どうやらこの先に何が待っているのか知らないのはキョウだけのようだ。

コノエ「獣甲屋の拠点の解体作業が大分進んでね。色々と“発掘”されてきたのよ。エンペラーギアのテストパーツだとか、デミナーガスの量産ラインだとか、本当に色々——」

キョウ「へぇ......?」
サクラ「ピンときてないでしょ、キョウくん」

サクラが“にしし”と茶目っ気のある表情で笑っていた。
本当にサクラが帰ってきたことを実感する。
しかし彼女の言うとおり、キョウにはコノエが見せたい物についてまったく想像がついていなかった。

そして、いまいちキョウが要領を得ないまま、一行は廊下を進む。
突き当たりにある部屋の前まで来たところで、コノエは扉へと手をかけた。

コノエ「——それでね。ようやく回収できて、ようやく修復できたのよ......“ガレオストライカー”達が」
ヤマト「ムサシはまだ調整中だが、彼と同じように復元できる予定だ」

扉を開けると、部屋の奥には子供用の勉強机が置いてあった。
とても研究所の備品には見えなかったが、その上で一体のアニマギアが楽しそうにあそんでいるのが分かった。
それらが、彼のために用意されたものだとすぐに思い至る。

キョウが声を失うほど驚いたのは、そのあそんでいるアニマギアの姿だった。
勉強机の上で遊んでいたのが、新しいニックカウルを付けた白い獅子のアニマギアだったからだ。

キョウ「ガオー......なのか......?」

自分が呼ばれたらしいことを察すると、机の上の“ガレオストライカー”は元気に手を挙げてみせた。

ガレオストライカー「よ!!お前がオレの相棒って奴か!話は聞いてたぜ!」

EPISODE 63

ガオーの口ぶりにしては違和感がある。
キョウを見た獅子の口ぶりは、まるで初対面のそれだったからだ。

コノエ「......残念ながら、オメガギアスのエンペラーカウルがガオーに与えた負担は決して小さくなかった。
完全に元通りとは行かなかったの」
ヤマト「しかし、回収したオメガレオギアスのパーツを解析して、
ようやく“ガオーとしての意識”を司るデータだけはサルベージ出来た。
ボーンフレームはそのまま使っているものの、
記憶の復元とまでは至らなかったんだ......すまない。しかし」

彼は紛れもなくガオーそのものだよ、と。
そう告げられた瞬間、恐る恐る獅子を見つめるキョウの手に、“ガオー”が軽い足取りで乗ってきた。

ガオー「......なんだ?“キョウ”、泣いてんのか?」
キョウ「っ!!」

言われて、キョウは自分が涙を流していることに気が付いた。
泣いちゃダメだと、あんなに思っていたのに。

自分の名前を彼が呼んだ途端、涙が止まらなくなっていた。

ガオー「......あれ、おかしいな。まだお前の名前は聞いてないはずなんだけど......悪い、
なんか頭の中がごちゃごちゃしてて......」
キョウ「ガオー!!」
ガオー「な、なんだよ!急に大きな声出すなって!」

キョウ「そうだよ、オレの名前は天草キョウ!お前の相棒なんだ!」

ガオー「お、おお!?そうか、キョウ!んで俺の名前はガオーってことだよな!?」
キョウ「うん......うん......!」
ガオー「それじゃ、これからよろしく頼むぜキョウ!お前とは仲良くやっていける気がする!」
キョウ「ああ、オレ達ならなれるよ、最高の相棒(バディ)に——」

キョウは涙を拭って、ガオーを肩に乗せた。
その光景を、この場にいる皆が微笑んで見つめている。

......戦いは終わった。
この世界には、まだ解決しなければならないことが山程ある。
生きている限り、数多の困難が壁となってキョウやガオーに立ちはだかるだろう。

それでも、相棒と一緒ならきっと乗り越えられる。
人とアニマギアが共に未来へと歩み続ける限り、無限の可能性が広がっているのだから。

キョウ「——これからもよろしくな、ガオー!」

≪ANIMAGEAR : BEAT OF STEEL≫
END.

EPISODE 62

ガオー「......終わった、んだよな」
ムサシ「そうだろうな。少なくとも、この場での戦いは」

意識の共有から解放された後、目の前にはブラッドステッカーの輝きが失われたフォールンジオギアスがある。
眠るように、機能停止していた。

ムサシ「同じ道を歩めると思っていたんだが」
ガオー「フォールンが自分で選んだ結末だ。それに——」

轟音とともに熱が来た。
施設のあちこちが、破壊と炎の渦に飲まれていく。

ムサシ「爆発が始まった、か」
ガオー「——終わらせなきゃならねえことは他にある」
ムサシ「?どうした、なにかするのか。厳しいかもしれんが、脱出するなら急いだ方がいいだろう」
ガオー「......」

ガオーは、先程までサクラが繋がれていた装置に手をかけて続けた。

ガオー「......バカみてぇに強くて、バカみてぇに頑固だったフォールンがこの結末を選んだんだよな」

なら。

ガオー「オレ達の力を使えば、分かってくれる奴は“山ほど”いると思ってよ」
ムサシ「......っ!そうか!」

流石、ムサシは察しが良かった。
伊達にギアブラストで記憶を共有していない。
いま自分がやろうとしていることを全て理解してくれた上で、彼もまたガオーと同じく装置に手をかける。

ガオー「ああ。......悪いけど、付き合ってくれるか?」
ムサシ「言っただろう、サクラの未来のためなら俺はなんだってやるさ。それよりもガオー、お前の方こそ良いのか」

外でキョウが待っているだろう、と。
ムサシが諭すような語調で聞いてくる。
ガオーは少し考えて、それでも迷うことなく頷いた。

ガオー「なにも相棒やめるってわけじゃーねえんだ。キョウなら分かってくれるさ」

それに。

ガオー「キョウやサクラの未来をオレ達が拓けるんだぜ?それって最高だろ」
ムサシ「......はは!まったく、お前には驚かされることばかりだよ。ああそうだ、その通りだ」
ガオー「——そしたら始めようか」
ムサシ「ああ。俺達の、最後の仕事だ」

ガオーとムサシは揃って、装置に備わっているアニマギアとの接続部に触れた。

ガオー&ムサシ「つ——」

これは、イデアギアス達への命令を伝える装置だ。

ガオー&ムサシ「——た——」

ならば、ギアブラストを発動したムサシとガオーの言葉を。決意を。想いを。

ガオー&ムサシ「——わ——」

“彼女達”に届けることが出来ない、はずがない。

ガオー&ムサシ「——れぇええええええええええええええッッ!!」

EPISODE 62

——“伝われ”。
たった一言、そのシンプルなメッセージと共に。
ガオーとムサシは、内に秘めたエネルギーをすべてギアブラストへの出力に転換する。

直後、崩れた天井が瓦礫となり、彼らの頭上へと降り注いだ。

 

——もう、何時間彼らは戦っているのだろう。
沈みゆく夕陽が、戦場となった街の影を濃くしていく。
アニマギア達による決死の水際作戦が功を奏し、いまや屋外に人間の影はない。
出動していた警察や自衛隊がイデアギアスと人間が相対するリスクを理解し、
早急な対応で避難誘導に注力してくれたおかげだ。
大きな街で、小さなアニマギアが世界の命運を賭けて戦う。
その様は、彼らのサイズからは考えられないほど巨大な戦火と熱気で街を覆い尽くしていた。
アニマギアとバディを組んでいたABF職員もまた、屋内からの遠隔指示のみに集中している。

隊員A「アニマギア達の消耗が激しい......!」
隊員B「もうこの防衛ラインも限界かっ」

窓越しにみる、アニマギア達が張った最終防衛ライン。
市民達が匿われたギアティクス社に大波の如く押し寄せるイデアギアスの大群は、
いまにもその壁を突き破らんとしていた。

隊員A「完全に包囲されている......だが諦めるな!相棒が身体張ってるんだ、俺達が先に心を折るわけにはいかん!」
隊員B「一般市民の安全確保を最優先!ギアティクス社のありったけの装備をここにもってこい!!」

補給物資は見込めないま、籠城作戦にも限界が来ている。

隊員A「——まずい!!」

絶望的な状況の中、ついに何体かのイデアギアスがアニマギア達の壁を突き破り、
ギアティクス社の入り口を破壊してしまった。

EPISODE 62

高速で飛行するイデアギアスの群れが最初に目に付けたのは、最前線で待機していたABF隊員達だ。

隊員B「ここまで、か......!」

こうなればもう止める手段はない。
施設内に控えていたアニマギア達が敵をせき止めようとするも、
エンペラーギアの力を持つイデアギアスは容易く彼らを薙ぎ払っていく。

そして、防衛戦をくぐり抜けたイデアギアスの一体が、隊員に取り付こうとした。
その時だ。

隊員A「とま............った............?」

突如、敵の動きが一斉に止まっていた。 まるで、時間ごと凍り付いたかのようだ。
見れば、イデアギアス達が黄金の輝きに包まれている。

隊員B「この輝きは......」

ABF隊員はおろか、イデアギアスと対峙していた誰もが知る由もない。
その輝きが、ガオーとムサシによるギアブラストの共鳴によるものだと。

隊員A「終わったのか......?」

動力を完全にカットしたイデアギアスのブラッドステッカーは黒く染まり、次々とその場に倒れていく。
ギアティクス社に——街に、数瞬の静寂が訪れた後。

隊員B「終わったんだ......天草キョウ達が勝ったんだ!!」

堰を切ったように、歓喜の声が湧き上がった。
街の上空には、金色に輝く満月が浮かんでいる。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 61

三体分のギアブラストの黄金色の輝きが霞むほどまばゆい、潔白の空間が拡がっている。

フォールン「ここは......!?」

先程まで、自分は確かに戦っていたはずだ。
自爆装置の警告音が鳴り響く拠点の中で、生死を賭して。
しかしいまはどうだ。
ガオーとムサシの様子が変わったと思いきや、いつの間にかこの空間に引きずり込まれている。

フォールンジオギアスという自己とオメガレオギアス、そしてデュアライズカブト。
ただ、三体のアニマギアが在るだけの空間。
他にはなにもない。

EPISODE 61

フォールンは焦り、武器を構えようとする。
ここが何処だろうが、目の前の敵は殲滅あるのみだ。
自分は命じられた通りに動く人形で構わない。
そう在らなければ——

ムサシ「——黒田の夢は叶えられない、か」
フォールン「!?」

思考が読まれていると感じたのは錯覚だろうか。
......いや、どうやら気のせいじゃないらしい。

ガオー「いや、どうやら気のせいじゃないらしい」
フォールン「な......!?」
ムサシ「どうやら、俺達三人の思考が共有されているようだ。ギアブラストの共鳴のようなものだろうか」

馬鹿げている、が。
信じるしかない。
いまの彼らの言葉は全て、口にされる前に思考へと流れてきた。
これもオメガレオギアスとしての能力なのだろうか。

そして同時に理解する。

フォールン「......戦う気がないのか、キミ達は」

改めて聞くまでもなく、この二人から闘気が消えていた。
つい先程まで言葉と刃を交わしていた相手とは思えないほど、ガオーもムサシも殺気をひそめたのだ。

理由もわかる。

フォールン「ここが繋げられた思考回路の中だというのならば、
実体はいまも施設の中にいるはず......か。確かに、戦っても仕方ない」

だが。

フォールン「この空間に何を求める。私に何を求めている。我々の間にあるのは互いの正義の衝突のみ。
キミ達と交わす言葉に、戦い以外のものなど私は持ち合わせていない」
ガオー「言葉なんか必要ねえだろ」
フォールン「な......これは......」

最初に、ムサシの記憶が流れ込んでくる。
紅葉サクラと歩んできたこれまでの道標。
彼女が悩み、沈んでいる時、ムサシは不器用ながらも彼女に寄り添っていた。
サクラがキョウに出会うと、暗かった表情が花開くように希望へと満ちていくのが分かる。
そして、サクラがさらわれた後。
ムサシは禁じられたFBSという力に手を伸ばさざるを得なかった
——その決意と覚悟が、まるで自分の感情のように伝わってくる。

フォールン「やめろ......」

次に流れ込んできたのはガオーの記憶だ。
天草キョウと出会い、今日に至るまでの数多の出来事が、脳内でフラッシュバックするように現れては消えていく。

驚いたのは、戦いよりはむしろ日常の記憶がガオーに強く刻まれていることだ。
生き物を愛し、SNSを楽しみ、アニマギアに熱くなる相棒との思い出。
そんなキラキラと輝く日常に、戦いの記憶が暗い影を落としていた。

フォールン「やめろ......ッ!」

二人の記憶は、どれも自分の物ではない。
当たり前の話ではあるが、しかしフォールンはそれを下らないと斬り捨てられなかった。
これは。
この記憶は。
まるで、自分のことを見透かしているような、そんな感覚があるからだ。

フォールン「私の——」

このままではいけない。
二人の記憶が、呼び水のようにフォールンの閉ざしていた記憶を呼び起こしてしまう。
ガオーとムサシに、自分の記憶を。

フォールン「——“僕”の頭の中を見るなぁあああああッ!!!!」

意識すればするほど、記憶はとめどなく溢れてくる。
......黒田ショウマは天草キョウとよく似ていた。
生き物を慈しみ、しかし誰からも愛を受け取れなかった幼少の黒田ショウマと過ごした、あの頃の思い出。
キョウが光ならば、黒田は影だ。

......フォールンはムサシとよく似ていた。
紅葉ヤマトやアカネと出会い、対等に話せる友が出来た後。
病によって命を落とした友人を想うあまり、蛇の道へと進んだ黒田。
自分はムサシのように彼の隣にいた。
そして彼が力を求めたから。
その力になろうとこの身を捧げ、皇帝機(いまのじぶん)へと変わる決意を固めたのだ。
ムサシは、自分と同じだ。

ムサシ「......誰しも、見られたくないものはある」
ガオー「だが、お前も戦いたくねえって思ってるのはしっかりと分かった」

五月蠅い。
私に日常を夢見ることなど許されない。
あの頃の自分はとうの昔に捨て去ったのだ。

フォールン「私に、憐憫の情を向けるな」
ガオー「哀れんじゃいねえさ。むしろ共感できることばかりだったよ」
フォールン「なんだと?」
ムサシ「お前も思ったはずだ。ここにいる誰もが、同じ物を抱えている
——しかし、その向き合い方が違ったからこそ道を違(たが)えたのだと」

何かを失う哀しみに、恐れに、絶望に。
誰もが正面から向き合っていた。そこに上も下もない。
そんなことは、二人の記憶をみた瞬間に理解していた。

ガオー「なぁ、フォールン。お前はこんなにも相棒を止めたがっているじゃねえか」
ムサシ「まだ間に合う。俺達と共に歩むべきだ......黒田は必ず止められる」
フォールン「......理解し合えというのか」

ガオー「ここまで腹を割って来たんだぜ?不可能じゃねえだろ」
フォールン「私は、キミ達のようにはいかない」
ムサシ「同じようにやろうとしなくていい。お前にはお前のやり方が必ずある」

フォールン「それでも、私は」

自分は決めたのだ。
自分の力で、相棒の夢を叶えてみせると。
誰よりも優しかった、黒田ショウマの想いに応えてみせるのだと。

フォールン「......ここでキミ達を倒そうが倒すまいが、結末は変わらない。
イデアギアスに命令を送り終えた時点で、黒田の目的達成は約束された」

それに。

フォールン「施設はもう間もなく爆発する。私はキミ達に協力しない——しかし、邪魔をすることもやめるよ」

彼らの暖かい思い出や言葉に触れてほだされたわけではない。
今更、彼らになにを変えられようか。

フォールン「キミ達の未来に賭ける想いが本物であるならば、抗ってみるが良い——私は、もう疲れた」

彼らが望む未来がやってこないことも、フォールンが爆発に巻き込まれ滅びることも、
もはや避けることなど不可能なのだ。

だから。
フォールンは静かに、自ら意識を閉じた。
黒田に与えられた自分の役目は完全に終わったのだと、そう確信していたから。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 60

ガオーとフォールンの鍔迫り合いは、思わぬ形で終わりを迎えた。
第三者の乱入——すなわち、ムサシの助太刀である。

ガオー「ムサシ!お前、サクラは良いのかよ!さっきキョウ達と......ッ」
ムサシ「......ああ、今し方すれ違ったよ。サクラは無事脱出できたようだな」
ガオー「すれ違ったって......ここはオレに任せればいい!お前はサクラのところに行ってやれ!」
ムサシ「否ッッッ!!」

ムサシが二つの刀を思い切りフォールンへとぶつける。
容易に弾かれはしたが、ムサシに気圧された敵は距離を置くように後ろへと跳んだ。

ムサシ「側に寄り添うことだけが守ることに非(あら)ず......ガオー、それはお前にも理解できるだろう!」
ガオー「ムサシ......!」

ムサシ「この先の未来ッ!サクラを守るためならば俺は喜んで戦火に身を投じよう!
ここでたとえ燃え尽き、朽ち果てようとも構わん!その覚悟で俺はここに来たッ!」
フォールン「守る、か。“あの時”の暴走アニマギアが笑わせる」

ムサシ「可笑しければ笑え!我が右手の剣は敵を斬るため!我が左手の剣は大切な者を守るため!」

距離を取ったフォールンへと青い甲虫が肉薄する。
二刀の連撃が黒い皇帝を捉えた。

ムサシ「それこそが二刀使いの務め......攻防一閃の誇りだッッ!!」
フォールン「二刀使いの務めか、なるほど」

フォールンもまた、ムサシの想いがこめられた攻撃に二刀で応じた。
施設爆破の警告音に加わるように、激しい剣戟音が施設内を席巻する。

フォールン「相棒を守ることが務めというのならば、それは私も同じ事......!」
ムサシ「なんだとッ」
フォールン「私の役目は黒田を守ることだ!彼が掲げた理想を成し遂げるためならば、私は修羅に墜ちる!
何人たりとも邪魔などさせてたまるか!」
ガオー「っへ、命令を聞くだけの人形だと思ったら、“らしい”ことも喋れるじゃねえか......!」

ガオーもムサシの連撃を補完するように攻め詰めた。

フォールン「ぐ......っ!」

EPISODE 60

ガオー「遠慮はしねえ!」

二対一の状況を恥じることなどない。
ガオーとムサシ、二人揃ってようやく互角に至るか否か——目の前の敵は“そういう次元”に身を置いているのだ。
事実、フォールンは最初こそ距離を取っていたが、いまは二体のアニマギアを相手に怯むことなく剣を交えていた。
二人で攻めて、ようやく互角。

ガオー「いや、むしろ、これは......!」
ムサシ「押されている......ッ!?」
フォールン「エンペラーギアのカウンターシステムだか試作0号機だか知らないが、所詮は紛い物——」

フォールンの曲剣がガオー達の武器を弾き飛ばした。
二人が徒手空拳になったところで、フォールンが右手をかざす。

重力操作の構えだ。
瞬間、ガオーとムサシは互いに吸い寄せられるように一塊にまとめられ、その場に力なくくずおれた。

フォールン「——もう、終わりにしよう。諦めるがいい」
ムサシ「ふざ、けるな......ッ」
ガオー「だれが、あきらめるかよ......!!」
フォールン「......なに?」

フォールンの言葉と重力に抗うように、二人は身を寄せ合いながら立ち上がる。

ムサシ「サクラの未来を......みんなの未来を、ここで諦めるワケにいくか......!」
ガオー「相棒が外で待ってるんだよ......、お前が何を想って黒田の夢を叶えたいのか知らねえが、
どっちの意地が上なのか決めようってんならとことん付き合うぜ......!」
フォールン「想い?意地?実に弱者らしい下らない考えだ。そんなもので戦いの結末が変わると思うのか」

ガオー&ムサシ「変わるッッ!!」

フォールン「ッ!?」

ガオーとムサシに異変が起きていた。
二人はいま、完全に立ち上がっている。

ガオー「想いの強さが絆に変わるッ!」

重力操作の影響を一切受けることなく、揃ってフォールンを見据えていた。

ムサシ「絆の固さが勝利を掴むッ!」

そして、僅かに二人の身体が——ニックカウルが、本来の色ではない輝きを放ち始めたのだ。

ガオー「掴んだ勝利がッ!」
ムサシ「未来をもたらすッ!」

それは、紛れもない絆の煌(きら)めき。
ガオーとムサシの想いが生んだ、黄金の如く輝くギアブラストの発現だった。

EPISODE 60

ガオー&ムサシ「お前が真の強者というなら、見せてみろ!
フォールンジオギアスという“アニマギア”の想いを——ッ!!」

その時、フォールンは気が付いた。

フォールン「......莫迦な!?」

己の身体もまた、ガオーやムサシと同じく金色の輝きを放っていることを。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 59

ガオー「もう、御免なんだよ——」

フォールンの重力操作に倒れたキョウ。
その姿を見たガオーの感情が大きく昂ぶると共に、身体からは稲妻のような光が噴き出していた。
キョウ「ガ、オー......?」
ガオー「——誰かが泣くのも......ッ」

キョウは感じた。
ガオーの怒りを。

ガオー「大切なものを失うのも......ッ!」

キョウは知った。
ガオーの苦しみを。

ガオー「そんなのは二度と御免だ!!」

キョウは受け取った。
ガオーの優しさを。

ガオー「フォールン、黒田......お前ら獣甲屋に!!」

そして、キョウは見た。
ガオーの——

ガオー「これ以上、なにも奪わせはしねェええええええッ!!」

——相棒の覚悟を。
ガオー「来いッ!“オメガギアス”!!」

ガオーがニックカウルをパージすると、オメガギアスのニックカウルがそれに応えるように自動で装着されていく。

ガオー「があああああああああああッッ!!!」

ガオーの悲痛な叫びと同時、キョウの身体に痛みが走る。
それが重力操作の押し潰しによる痛みではないことはすぐにわかった。

ガオー「オメガギアス、オレの身体はどうなったっていい......!」

コレは、ガオーの痛みだ。

ガオー「大切なものを守るためだったら......オレはなにもいらねぇ!!」

エンペラーギアのカウルと融合することで、ガオーには想像を絶する苦しみが伴っているのだ。

ガオー「そのために皇帝機を倒す......オメガギアス、カウンターシステムだとかいうお前の使命は今ここでッ!
オレが果たすッッ!!」

ガオーの叫びが、施設中に木霊(こだま)した。

ガオー「だから頼む!オメガギアス——オレに力を貸してくれ!!」

獅子の強い想いが通じたのか。
最初は透明だったオメガギアスのニックカウルは、ガオーを認めるように白色に染まっていた。
強い光が、ガオーを包み込んでいる。

黒田「オメガギアス......試作0号機だと!?ヤマトの奴、味な真似を......!」
ガオー「オメガギアスじゃねえ......ッ!」

EPISODE 59

ガオー「——オレは、“オメガレオギアス”だッッ!!」

オメガギアス——あらため、オメガレオギアスとなったガオーはキョウの元へと駆け付けた。
キョウを押さえつける重力操作の圏内に入るや否や、ガオーは背中の剣を抜いた。

ガオー「しゃら、くせえッ!」

そのまま刃が虚空を一閃する。

EPISODE 59

キョウ「......軽いっ?」
ガオー「待たせたな、キョウ!もうアイツの重力操作は恐くねえ!」
フォールン「私の重力を断ち斬ったというのか......!?」

ガオーの剣が、キョウにかかっていた重力操作を無効化したらしい。
相棒が作ったチャンスを逃す手は無かった。
キョウはそのまま、サクラを拘束する装置にサクラギアを接続する。
サクラギアのブラッドステッカーが、淡い点滅を始めた。

フォールン「すまない、黒田......」
黒田「いや......0号機はエンペラーギアのカウンターシステムだ。お前の能力を無効化するなど想定の範囲内だよ」

それに。

黒田「イデアギアスへの命令伝達はすでに終わらせてある。
あのサーバーが無効化されようとも我々の計画が脅かされることもないだろう
——なに、怯むことは無い、フォールンジオギアス」

もう一度だ。
黒田が指を鳴らすと、フォールンは間髪入れずにキョウ達を重力の塊で押さえつけた。

ガオー「そいつはもう効かねえ!」
黒田「だろうな」

ガオーが剣を振り、重力が解除されると同時。
続けざまに、黒田が指を鳴らした。重力操作が来る。

ガオー「てめぇ、なにを......っ!」
黒田「剣で能力を斬るのは結構。しかしこちらが連続でキョウくんを標的に重力操作を行うとなれば——」

ガオーが斬れば、フォールンが追撃をする。
その技の応酬に終わりは見えなかった。

加えて、ヴォルガとコノエはデミナーガスに付きっきりだ。
こちら側の支援が期待できないこの状況に、黒田は満足げに言葉を紡いだ。

黒田「——“キミはその場から決して動けない”......そうだろう?」
キョウ「......っ!ガオー、オレに構わずお前はフォールンを!」
ガオー「そんなワケに行くかよッ!言っただろ、あいつらにこれ以上なにも奪わせたくねぇんだよ!
特にキョウ、お前に何かあったら、オレは......!」

黒田「ハハハ。たかがお人形ごっこにしては大した友情劇じゃあないか。感動したよ、いい見世物だった」

黒田が手を叩きながら懐から取り出したのは、なにかのスイッチだった。

黒田「13号機、この場は任せる。計画はほどなく達成されるだろう——僕は一足お先に退場させていただくとしよう」
ガオー「逃げるのかッ!?」
黒田「人形に僕の話を理解するのは難しかったようだ。もう一度言おう、『計画』は『達成』されるのだよ。
言うなればこれは勝利宣言......仕事を終えて帰るのは実に気分が良い、それだけのことさ」

そう言って、黒田は右手のスイッチを迷うこと無く押し込んだ。
程なくして、施設全体にけたたましい警告音が響く。

『......施設の爆破が承認されました。一〇分後に当施設は破壊されます。すみやかに退去してください。
施設の爆破が承認されました。一〇分後に当施設は破壊されます。すみやかに退去してください......』

コノエ「自爆装置ですって......!?」
黒田「キミ達にかかずらっていても時間の無駄というものだ。
事後処理(あとかたづけ)を頼むぞ、フォールンジオギアス」
フォールン「了解」

キョウ「待て、黒田......ッ!」

黒田「フェニックスネオギアス」

誰の言葉に耳を傾けず、黒田は別のエンペラーギアの名を喚(よ)んだ。
すると、どこからともなく不死鳥が炎とともに彼の傍らに現れてみせる。

ネオギアス「ここに」
黒田「もう用は済んだ。行くとしようか」
ネオギアス「承った」

黒田「それでは失礼させて頂くよ——ベストを尽くしてくれたまえ、諸君」
キョウ「黒田......待て、黒田!黒田ァアアアアアアアアアア!!」

キョウの叫びも空しく、黒田はネオギアスと共に炎に包まれどこかへと消えてしまった。

キョウ「くそ......っ!ごめん、ガオー!オレ、お前に守られっぱなしだ......!」
ガオー「気にすんな!いまはアイツとの戦いに集中するぞ!」

ガオーが何度目かの重力を断ち切ると、ようやくタイミングを掴んだキョウはその場から転げるように離脱した。
これ以上フォールンに補足されないよう、複雑な軌道を描いて走り始める。

フォールン「驚いた......まだ立つのか、キミ達は」
ガオー「なんだと!?」
フォールン「施設は破壊され、計画はもう止まらない。キミ達の行為は極めて非生産的だ
——だというのに、まだ戦う理由はなんだ?」
ガオー「......黒田の野郎の言いなりになってるお前には、“まだ”分からねえだろうがッ」

自由を得たガオーは、フォールンへと急接近を図る。
剣を振りかぶると、敵もまた二つの曲剣で応じた。
鍔迫り合いだ。

EPISODE 59

ガオー「オレ達は絶望なんかしちゃいねえ!まだ未来がある、そう信じてるから戦うんだ!!」

二体のエンペラーギアが力比べをしている中、その後方では一つの状況が変化を生んでいる。

ヴォルガ「デミナーガスの無力化、完了しました——サクラさんのコンバートも完了したようです。脱出を推奨します」
コノエ「ご苦労様、ヴォルガ!」

言って、コノエが倒れたデミナーガスを回収しながらサクラの元へと急いだ。
サクラに繋がれた装置は彼女も初めて見る機械のはずだが、ヴォルガのスキャンデータのおかげなのだろう。
コノエは手際よくサクラから装置を外していく。

キョウ「コノエさん!?」
コノエ「逃げるわよ、キョウ君!戦いはまだ終わってない!」

コノエがサクラギアをポケットに入れ、サクラの身体を背負って続けた。

コノエ「ここで私達が倒れるワケにはいかないわ......!イデアギアスを止めるのよ!」
ガオー「そうだ、キョウ!お前達は行け!」
キョウ「な、なに言ってるんだガオー!お前を置いて行けってのか!?」
ガオー「コイツをここで倒さなきゃそれこそ未来はねぇ!」
キョウ「でも!」
ガオー「迷うなキョウ、オレを信じてお前は脱出するんだ!!
なぁに、フォールンなんか軽くひねってさっさと合流すっからよ!」
キョウ「............ッ」

静まりかえった山岳拠点に、警告音だけが響いていた。
立ち尽くすキョウは、拳を強く握りしめて顔を上げた。

キョウ「分かった。ガオーを信じるよ」
ガオー「それでこそオレの相棒だ」

フォールン「......一人で本当に私と渡り合えると思うのか?」
キョウ「あまりオレ達をなめるな、フォールン!」
ガオー「なにも知らねえお前にこの際だから教えてやる!」
キョウ「離ればなれになっても、相棒であることにかわりはないッ!」

ガオー&キョウ「この絆がある限り、オレ達は共に歩いて行けるッッ!!」
フォールン「戯れ言を......!!」

コノエ「時間がない!ガオー君、私達は外でアナタを待つわ!勝って、必ず......!」
ガオー「っは!お安いご用だぜ!」
ヴォルガ「あなたの決断に感謝します。ガオーさん、ご武運を」

キョウ「ガオー!」

一瞬、彼にどんな言葉をかけるべきか迷った。
色んな想いが錯綜する中、少年は覚悟を決めて拳を掲げる。
たくさんの言葉の中から、キョウが選んだのはひとつだけだった。

キョウ「......ありがとう!」
ガオー「それはコッチの台詞だ。またな、キョウ」

そのまま、二人は振り返ろうとしなかった。
最強のエンペラーギア二体の戦いの音が、キョウの背中の向こうで激化するのが分かる。

そして。

脱出の途中、最後の廊下でキョウ達とすれ違う小さな影があるのを彼らは見逃さなかった。

コノエ「いまのは......!?」
キョウ「ムサシ............ッ!!」

耳に劈く警告音の奥へと、青い二刀のアニマギアの背中が消えていく。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 58

コノエ「ヴォルガ!アナタなら戦いながらサクラちゃんの状態をスキャンできるわよね!?」
ヴォルガ「相変わらずコノエは無茶を言いますね、しかし無理ではありません。なにをお探しでしょうか」

コノエ「あの装置がイデアギアスへ指令を送るサーバーになっている以上、
物理的なアニマギアとの接続部があるはずなの!それを探して!!」
ヴォルガ「了解致しました——スキャンを開始します」

コノエの複雑な指示に従いながらも、ヴォルガはデミナーガス達の攻撃を見事にいなしていく。
敵の数が少ないとはいえ多勢に無勢に変わりはないハズだが、狼は数的不利をものともせず有利に戦いを運んでいた。

EPISODE 58

ヴォルガ「——スキャン完了。見つけました。皆さんにも情報を共有いたします」
ガオー「おおっ!?」

コノエ「ありがとうヴォルガ。キョウ君、ガオー君。
いまあなた達に転送されたデータにある通り、装置のこの部分にサクラギアの身体を接続すれば、
アルターエゴをコンバートできるはずよ!」

キョウ「サクラ姉ちゃんの意識を......」
コノエ「コンバートすれば安全にサクラちゃんの身体を装置から引き剥がせる!
イデアギアスの行動を大きく制限出来るかも知れない!」
ガオー「なるほど......分かったぜ!」
ヴォルガ「蛇の相手は私にお任せ下さい。ガオーさんはエンペラーギアに集中を」
ガオー「かたじけねぇ!」

ヴォルガの言葉と実力を信じ、ガオーはフォールンだけを見据えて突撃した。
Z(ツヴァイ)ギアモードに変形したガオーに、キョウが叫んだ。

キョウ「いくぞガオー、最初から全開だ!」
ガオー「やっぱり気が合うなキョウ!行くぜ!」

キョウ&ガオー「マグナブレイカーァアアアアアアアアアアッッ!!」

EPISODE 58

消耗がない現状で撃てる最高の一撃である渾身のマグナブレイカーを、全力でフォールンにぶち込んだ。
はず、だった。

ガオー「な、にィ......っ!?」

マグナブレイカーを構えたガオーが、肉薄したはずのフォールンの目の前で静止した。
ただ攻撃を止められただけではない。
ガオーは地面に着地することなく宙に浮かんだまま“固定”されている。

キョウ「来たか......ッ!」
コノエ「実際に目にすると恐ろしさと同時に感心せざるを得ないわね......
エンペラーギア13号機に与えられた固有能力、“重力操作”!」

ガオー「ぐっ!!」

その通りだ、と言いたげにフォールンは宙に固定したガオーを、見えない力で元いた方向へと投げ飛ばした。

フォールン「そこまで分かっているなら理解できるだろう。
キミ達の攻撃が私に届くことなく敗北する、という筋書きが」
黒田「周囲の重力を自在に操るフォールンジオギアスが一体いれば、ここの警備など手薄で結構。
せいぜい頑張ってくれたまえ」

ハハハ、と乾いた笑いで黒田は余裕の表情だ。
煽るような敵の態度に、キョウは冷静になろうとかぶりを振った。

ガオー「ど、どうする......キョウ......!」
キョウ「一度落ち着こうガオー、やみくもに突っ込んじゃ駄目だ」

撃てるマグナブレイカーはあと二回。
しかしそれだけに頼っていては、フォールンの言うとおり確実に自分達は敗北する。
そもそも通用しないのであれば、対フォールンに限っては激しい消耗を伴うマグナブレイカーは使うべきではないのかもしれない。
なんにせよ、ガオーの戦い方が接近戦中心になる以上、なにか搦め手となるような策を講じる必要があった。

ならば、いまこの状況で出来ることは一つだ。
ただ、ガオーに大きな負担を強いることになる。

キョウ「ガオー、オレを信じてくれるか」
ガオー「なに当たり前のこと言ってんだ!キョウの指示ならオレは100%信じて戦ってやるさ!」
キョウ「......ありがとう!」


罪悪感を感謝に換え、キョウはガオーに作戦を伝えた。
それは、

コノエ「......突進!?だめよ、やみくもに突っ込んじゃいけないってキョウ君も言ってたじゃない!」

単純な特攻の繰り返しだ。
何度フォールンに弾かれようと、ガオーはキョウの作戦を信じて立ち上がり続けた。

コノエ「やめさせてキョウ君!ガオー君が持たない!」
キョウ「いいや、これでいいんだ......!」

キョウは歯を食いしばりながら弾かれ続けるガオーを見つめている。
一番苦しいのはガオーだ。しかし、お互いに信頼しているからこそ活路は開く。

キョウ「見えた!ガオー、そこから二時の方向にまわって畳みかけろッッ!!」
ガオー「うおおおおおりゃああああああああああああッ!!」

黒田の前を横切るように突進するガオーに、フォールンが右手をかざしていた。

フォールン「何度やっても無駄なことだと何故理解しない!」
キョウ「そいつはどうかな......!」
黒田「——待て、13号機!」
フォールン「ッ!?」

黒田の焦りの声は間に合わなかった。
フォールンの重力操作がガオーを吹き飛ばすと同時、近くにいた黒田も共に弾き飛ばされたのだ。
狼狽したフォールンが、壁に激突した黒田へと駆け寄る。

フォールン「黒田!!」
ガオー「開(ひら)けた!!キョウ!サクラを頼む!!」
キョウ「サンキュー、ガオーッ!」

キョウがサクラギアの身体を手に飛び出した。
サクラに繋がれた装置、その背中側にアニマギアとの接続部は存在する。
そこに、サクラギアを接続しようと手を伸ばした矢先だった。

キョウ「が、ああ、あ......っ!?」
ガオー「キョウ!?」

見えない力に押し潰されるように、キョウは膝から崩れ落ちた。
見れば、フォールンがキョウに向かって手をかざしている。
重力操作でキョウを足止めしたのだと、その場にいる誰もが理解した。

黒田「間一髪、という奴だな」
フォールン「姑息な手を......ッ」
ガオー「キョウを離せ......フォールンジオギアスッ!」
フォールン「貴様らは止まれと言えば止まるのか?」

ガオー「キョウは人間だ、アニマギアじゃねえ......エンペラーギアの力を使えばどうなるかぐらい、
お前にも分かるだろう......ッ!?」
フォールン「殺しはしない、黒田の理念に反する。しかし手を緩めることはないと思え」
ガオー「話の、分からねえ、奴だ......ッ」

コノエ「......これは、一体どうなってるの!?」

遠くでコノエがなにか焦っている。
キョウも、ガオーの怒りとともに“なにか得体の知れない力”が動き始めているのを、肌で敏感に察知した。

キョウ「ガ、オー......!」
ガオー「もう御免なんだよ、こういうのは......!!」

ガオーが立ち上がると、その身体から稲光のようなエネルギーが勢いよく噴出する。

コノエ「あの光、FBSに似ている......いや、でも違う......!FBSよりも、もっと暖かい光......なんなの、あれ......きゃっ!?」

そしてガオーの光に吸い寄せられるように、コノエの服の内ポケットから何かが飛び出した。

キョウ「あれは、オメガギアスの——」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 57

いくつかの襲撃を切り抜け、キョウ達は目的地に辿り着いた。
森林に隠れるように建っていたその施設は、ドラギアスのデータから抽出した獣甲屋の拠点に違いない。
ここまで辿り着けたメンバーはもう、キョウとガレオストライカーZ、
そして三梨コノエとブレイドヴォルガの二組を残すのみとなっていた。

コノエ「ここが......」
ヴォルガ「大丈夫です、コノエ。あれだけの数のアニマギアを街へ向かわせている以上、
こっちに回している余裕は流石にないはずです」

膝を震せているコノエを勇気づけるように、肩に乗るヴォルガが激励した。

キョウ「準備はいいか、ガオー」
ガオー「いつでも行けるぜ......!」

EPISODE 57

ヴォルガ「少しお待ちを」

ヴォルガが背中の装備を展開すると同時、彼の青い瞳が強く明滅する。
暗視装置を起動した挙動だ。

ヴォルガ「——スキャン完了。この階含め、建物の中に生体反応はほぼありません。ただ一点を除いて......ですが」

暗視結果を聞けば、どうやら地下に巨大な空間があるらしい。
そこに複数のアニマギアと人間の反応——恐らく、黒田とフォールンジオギアス達だ——が、巨大な電磁エネルギーを放つ装置を囲むように立っているという。

ガオー「......なら、遠慮はいらねえな!」

そのままガオーが先行し、拠点の入り口を豪快に破壊する。
一本の長い廊下から、枝を分けるようにいくつもの部屋があり、その全ての扉が開いていた。
確かにヴォルガの言うとおり、ここには人の息遣いやアニマギアの気配はない。
不気味な静けさだけが、拠点内を支配している。

キョウ「......ここから降りられるみたいだ」
コノエ「い、行くよ、キョウ君!」

先陣を切ったのはコノエだ。
ヴォルガが周囲を警戒しながら、地下へと至る階段を降りていく。

黒田「......来たか」

巨大な装置の前で待ち受けていたのは、概ねの予想通り黒田ショウマ本人だ。
周りには数体のデミナーガスとフォールンが臨戦態勢で佇んでいる。

ガオー「っへ、護衛にしては随分と少ないじゃねーか」
黒田「ハハ......別に、13号機(フォールン)だけでも構わなかったのだがね。念には念を、という奴だ」
キョウ「御託は良い!サクラ姉ちゃんを返せ、黒田!」
黒田「ああ、このオモチャなら喜んで返すよ。“コイツ”はもう用済みだ」

黒田がなにかを投げて寄越す。
それは“かちゃん”と音を立ててキョウの足下に転がった。

EPISODE 57

キョウ「ッ、サクラ姉ちゃん!......な......!?」
コノエ「ブラッドステッカーが機能していない......これは、抜け殻......!?」

コノエの言うとおり、そこには抜け殻と化したアニマギアの姿があった。
キョウが拾い上げようと、なんの反応もない。

黒田「彼女の意識データは今、オリジンイデアギアスを稼働させるための礎(いしずえ)になっている。ご覧よ」

黒田が半身をずらすように立ち位置を直すと、奥の巨大な装置が露わになる。
そこには、思わず目を疑いたくなるような光景が広がっていた。

EPISODE 57

黒田「紅葉サクラの価値は、イデアギアスにインストールさせるアルターエゴだけではない。このアンドロイドの身体は、我が駒達へと指令を与えるサーバーとして非常に有用だったよ」
コノエ「そんな、なんてことを!!」
キョウ「黒田......、黒田ショウマ............ッッ」

頭に響くぷつんという音が、はっきりとキョウの耳に届く。
もう、感情を抑えることは出来ない。
否、する必要はないと心に決めた。

キョウ「——許さない、お前だけはッッ!!」

キョウの激昂に感化されるように、ガオーが勢いよく飛び出した。
ヴォルガもまたそれに続いていく。

黒田「まったく、この素晴らしさが理解できないとはキミもまだまだ子供だね......分からせてあげる必要があるな」

敵の黒幕が歪んだ笑みを浮かべた。
フォールンが、ガオーの動きを阻害するように激突する。

黒田「さぁ、始めようか」

これが最後の戦いだ。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 56

ABFの戦いは激化の一途を辿り、作戦室を飛び出し市内へとその火を拡げていた。
跋扈(ばっこ)するデミナーガスやソニックイーグリットファントムの侵攻を、多くのアニマギア達がせき止めている。

???「——ムゥオオオオオオオオオオッ!!」

その中に、鬼神と表現するに相応しい異形が在る。
アステリオスだ。

アステリオス「コノ街ヲ、獣甲屋ノ好キニハ、サセヌゥウウウウウッッ!!!!」

二足歩行形態へと変形した鬼神は、カタコトながらも人語を介しながら、
津波のように押し寄せる敵を次から次へと斬り伏せていく。

EPISODE 56

ムサシ「さすが歴戦の勇者......圧巻だな......!!」

ヴラド「行くぞ皆の者!あの鬼神に続くのだ!」

フォータス「みんなを護るのはボクらアニマギアだよーッ!」

バルク「アニマギアが起こした事件がここまでの規模となれば、私達も世間からのバッシングは避けられないな」

ニー「だからこそ、同じアニマギアであるあたし達がコイツらを“止めてあげなきゃ”いけない!」

EPISODE 56

それは、この場で事件に対処している全員が持つ想いの代弁だった。
いま戦っているデミナーガスも、ファントムも。決して自ら望んで事件の片棒を担いでいるわけではないハズだ。
獣甲屋——黒田ショウマという首魁がいるからこそ、彼らは蛮行を働く。
ならばそれを止めてこそ、アニマギアである自分達の持つ真意を世間に伝える事が出来るだろう。

アニマギアは決して、傷つけ合うために生まれたワケではないのだと。

ムサシ「後のことは後になってから考えろ......次の波が来るぞ!!」
ニー「なに言ってんの、あんたはもう行きなさい、ムサシ!」
ムサシ「ッ!?」

ニー「悔しいけど、サクラにはムサシが必要よ!
相棒であるあんたが、こんな所で油を売ってて良いハズないじゃないの!」
ムサシ「ニー、お前......」

ヴラド「我に構わず行くがよい二刀使い!ここはこのヴラドリリアークが引き受ける!」
ニー「あたし達の間違いでしょ!ほら、ムサシはガオー達を手伝いに行って!お願いよ......!」

ムサシ「..................かたじけない......ッ!!」

仲間達の声に背中を押されるように、ムサシは敵の波をかきわけて駆けだした。
自分の相棒を救うために、キョウ達の待つ山岳拠点へと。

 

ヤマト「モミジテクニクス、紅葉ヤマトからABFに通達!海洋拠点は飛騨ソウヤ率いる突入部隊が制圧・破壊に成功した!しかし“この”大量のイデアギアスの出所が海洋拠点との報せも入っている!
獣甲屋の計画は最終段階に移行したと考えた方が良い......ッ」

ABF作戦室は一応の平静を取り戻したが、市内に大群で押し寄せたイデアギアスが、
街の人間を標的に暴れ始めたところだ。

ヤマト「イデアギアスに取り付かれた人間がどうなってしまうのか、私にもわからない!
一般市民を守るためにはキミ達だけが頼りだ......各自、持ちこたえてくれ......!!」

幸い、市民がイデアギアスに取り込まれたという報告はまだない。
現場のABF隊員やアニマギアが頑張ってくれている証拠だ。

しかし海洋拠点から発進したイデアギアスは膨大な数に上るらしい。
この街だけではなく、本州の主要都市各地でイデアギアスの出現が確認されていた。

誰か一人でも市民が犠牲になれば、なし崩し的に“感染”が広がるだろう。
この事態を受けたIAA(国際アニマギア連合協会)の要請に従い、全国では警察組織も防衛ラインの維持に駆り出されていた。

ヤマト「正念場だ......!」

急がなければ、獣甲屋はその目的を完遂してしまう。
事態終息の鍵を握るのは、やはり黒田ショウマ本人を置いて他ならない。
海洋拠点で黒田の姿が確認出来なかったとなると、残すはもう一方の山岳拠点。

ヤマト「頼んだぞ!キョウくん、ガオー......!」

彼を止められるのは、彼しかいない。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 55

レオスの手元からジラファイアが離れていく。
アニマルモードへ変形したジラファイアは、柄にもなく焦っている様子だった。

ジラファイア「そんな......僕とレオスくん二体分のエネルギーを使ったのに......!」

彼のバスターギアモードの特徴として、ジラファイアと使用者自身のブラッドステッカーから得た二体分のエネルギーを破壊力に転じ、攻撃するシステムを採用している。
しかし、カイギアスはその攻撃を受けても傷一つ付いていなかった。

カイギアス「ヌハハッ!うぬらは見たところ陸の者でありながら水中を自由に動ける様子。ボーンフレームをアップデートしたと見える!しかし、ブラッドステッカーまでは頭が回らなかったようだな」
ハンター「......そういうことか」
ラプト「そういうことってどういうことだよ!」
ハンター「愚鈍なアニマギアでも分かるよう、我が天啓を貴様らに授ける」

当然のことながら、陸上生物をモチーフとしたアニマギアは水中での活動を想定されていない。
ブラッドステッカーもまた同様に、あくまで一定以上の光量が確保されている陸上でのエネルギー効率を計算し作られている。

ギガトプス「......というのが、ハンター殿の言葉を意訳した内容だと思われるであります」
ハンター「しかしここは【大海原(サンクチュアリ)】......ましてや【深海(ゲヘナ)】である」
カイギアス「ここまでの深度となれば、海上から届く光などたかが知れておる。その状況下で、陸の者が私のような深海特化のエンペラーギアに勝とうと考えること、そも言語道断ッ」

カイギアスが再び顎門(あぎと)を開く。
渦潮の構えだ。

ソウヤ『水流が来る!みんな、さっきの指示通りに動けるよう備えるんだ!』

渦潮がレオス達を襲ったが、この状況はもう恐くない。
全員致命的なダメージは回避できるだろう。
しかし、渦を抜け出した直後にカイギアスの追撃が来るはずだ。
ならば反撃の糸口を見つけるのは、むしろこの渦に身を任せている間だ。

ギガトプス「れ、レオス、殿!」
レオス「ギガトプス!」

渦に翻弄されながらも、ギガトプスが懸命にレオスの元へと近づいてきた。

EPISODE 55

ギガトプス「すでにソウヤ殿と、通信が使えないハンター殿には申し伝えましたが、いまこそ好機であります!」
ソウヤ『すごいよギガトプス、こんな混乱の中でよく突破口を見つけたね......!』

ギガトプスは既に反撃の糸口を見出したらしい。
ソウヤから入ってきた通信で、仲間のアニマギア全員にギガトプス考案の作戦が伝えられる。
なるほど、これなら確かに今の問題をクリアできる、が。

レオス「いいのかみんな!?下手したらここでボクら全員......」

ラプト「なに野暮なこといってんだ、それでもソウヤの相棒か!?」
ギガトプス「みんな同じ気持ちであります!ここで誰かがカイギアスを止めねば、我々に未来はありません!」
ジラファイア「はーあ、熱苦しい......なんて、僕にも意地はあるんだなー。やられっぱなしじゃ寝覚めが悪くなってしょうがないや」
ハンター「我が【運命(フォーチュン)】を貴様らに委ねるのもまた一興よな......!」

ソウヤ『キミが言ったんだ、レオス!みんなと一緒なら負けない——エンペラーギアにも勝てるって!それに、万が一キミ達に何があっても必ず僕らが助けに行く!なにがあってもだ!』
レオス「......ありがとう......!」

いままで孤独に戦ってきたレオスは、改めて仲間の大切さを噛みしめた。
この先どんな結末が待っていようと、必ずカイギアスを討つ。
絆が生んだ覚悟を胸に、レオス達は再び渦を抜け出した。

カイギアス「二度までも私の渦を攻略するか......ッ!」
レオス「ジラファイア、行くぞ!」
カイギアス「莫迦の一つ覚えとは見下げ果てたものだ、私にそのハリボテは無用の長物と知れ!」
ジラファイア「そいつはどうかなっ」

ジラファイアがバスターギアモードへと変形すると同時。
レオスの周囲に集った仲間達が次々と変形し“連結”していく。

EPISODE 55

ギガトプス「——名付けて『レオス:ヴァリアブルエクサバスター』であります!!」
カイギアス「......ヌハ、ヌハ、ヌハハハハッ!何をおっぱじめたのかと思えば、笑わせてくれる!
雑魚がいくらかたまろうと同じ事!このカイギアス、烏合の衆に後れを取るような愚王にあらずッ!!」

海竜が開口すると、奥から紫色に輝く妖しい光が漏れていた。
いままで見せていなかったが、波動砲のような機構をカイギアスが備えているのは想像に難くない。

カイギアス「貴様らの放つ光なぞ、我が光で消し炭にしてやるわ!」
レオス「みんなの絆(ひかり)、確かに受け取った......いっけええええええええッ!!!!」

レオス達が放つ光と、カイギアスが吐き出した光が衝突する。
瞬間、二つの巨大なエネルギーが衝突した余波は、周囲の海水を吹き飛ばした。
上空に吹き飛んだ海水が雨のように降り注ぐ中、一瞬だけ陽の光がレオス達を照らしてみせる。

レオス「うおおおおおおおおおッ!!!!」
カイギアス「莫迦なッッ!!??」

天が味方していた。
一瞬だけとはいえ、太陽光を取り込んだレオス達のブラッドステッカーは本来の出力を取り戻したのだ。
結果、レオス達の光はカイギアスの攻撃を飲み込むように突き進み、そして遂にカイギアスを捉えていた。

カイギアス「私が、私が海の戦いで陸の者に......ッ!」
レオス「思い知れカイギアス!お前が笑った、他者の力を借りて進む者達の強さをッ!!」

強い光が、辺り一帯を包み込んでいく。

 

ヴァリアブルエクサバスターの攻撃は、敵の海洋拠点ごとカイギアスを滅ぼしていた。
その結果を船上で見ていたソウヤの前に、アニマギア達が横たわっている。

レオス、ラプト、ギガトプス、そしてジラファイアとハンター。
ペンギオス達が回収した彼らは過剰な出力の負荷によって気絶していたが、見たところ命に別状はなさそうだった。

ソウヤ「......よくやってくれた。いまは休んでくれ、みんな......」

任務は成功した。
だが、一息つく間もなく次の報せと状況が展開されていた。

隊員A「飛騨隊長!海中からおびただしい数のアニマギア反応です!」
隊員B「あれは一体......」

見れば、海中から上空へと飛翔する虫のような群体が飛び出していく。
その姿を目視したソウヤは、自分の目を疑った。

ソウヤ「......イデアギアス!?」

そこには大量のイデアギアスが、街の方向へと侵攻を開始する光景が広がっていたのだ。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 54

レオス達が海底に向かい潜行していくと、岩に囲まれるように建てられた獣甲屋の拠点と思しき施設が見えた。
しかし任務は簡単には遂行できそうにない。
目的地まであと少し、というところでアームズギロテッカーアビスの群れが現れたのだ。

ペンギオス「奴らは任せてくれヨ!あんな奴ら合体しなくたって“へ”でもねーゼ!」

勢いよく方々に散っていったペンギオス達は、目を見張るスピードで泳いでアビスの群れに突撃した。
彼らの単体性能をレオスは見たことがなかったが、なるほど確かに小柄ながら危なげなく戦っている。
ペンギン型の面目躍如といったところだろう。

ギガトプス「前方に更なる敵性反応アリ!であります!」

ギガトプスの声に、レオス達は急停止する。
見れば、敵拠点の方向から急速に近づく影があった。

カイギアス「ヌハハハハハッ!小魚と思えばなんだ!陸の者共が雁首揃えて来おったか!」

その竜は、事前にデータを閲覧していたエンペラーギアの姿とまさしく合致する。
海竜型エンペラーギア・リヴァイアカイギアスに相違ない。

レオス「そこは通してもらうぞ、カイギアス......ッ!」
カイギアス「小魚にも劣る陸の者が吠えよるわ!うぬらのような狼藉者をここで排除するのが我が使命ッ!
ならば、然るべき処遇をうぬらに与えよう !!」

カイギアスの顎門(あぎと)が大きく開く。
すると、海流がカイギアスを中心に大きく狂いだした。

カイギアス「極刑に処すッ!!」
レオス「な......これは......ッ!?」
ラプト「やべえぞオイ!」

カイギアスの味方であるはずのアビス達すら巻き込みながら、巨大な渦潮がレオス達を襲った。
容赦ない水圧の暴力に、何体かのペンギオスが為す術なく砕かれていく。

ソウヤ『持ちこたえてくれみんな!潮の流れに逆らわずに身を任せるんだッ!』
ギガトプス「了解、で、あります!」

通信越しにソウヤの細かい指示は続く。
彼の声に従って動くと、自然と渦の中心である領域に抜け出すことが出来た。
しかしカイギアスの猛攻は続く。

カイギアス「渦を抜けようと同じこと。我が領域に踏み入った以上、うぬらはすべからく砕け散るのだ......!!」
レオス「ぐああああああああああッ!!」

巨体に似つかわしくない驚くべきスピードで、カイギアスは全身でレオスを締め上げてくる。

EPISODE 54

周りにいる仲間は、敵に攻撃しようにもレオスごと傷つけてしまいかねない状況に躊躇していた。
ただ、レオスが締め付けられていく様を静観することしか出来ない。

カイギアス「おお?血の臭いが随分と染みついているな......ヌハハ。
うぬ、その姿に至るまでいくつのアニマギアを屠ってきた?」
レオス「............!!!!」

動揺とともに、“みしり”とカイギアスの身体が食い込んでくるのが分かる。
レオスのボーンフレームが軋みの悲鳴を上げていた。

カイギアス「罪には罰を。当たり前の事よ......ゆるりと私に身を委ね、そして散れ」
レオス「ぁあああああああッ!!」

ソウヤ『耳を貸すな、レオス!』
レオス「ソウヤ......くん......ッ」
ソウヤ『キミはもう一人じゃない!罪を背負ったなら共に償えば良いんだ!前を向いて行くって一緒に決めただろ!?』

そうだ。
相棒の言葉がレオスを我に返す。

レオス「確かに......ボクは償いきれない罪を犯したかも知れない......でも!」

共に歩いてくれる仲間がいるから、ボクはまだ戦える。

レオス「うお、おおお、おおおお!」
カイギアス「っ!うぬ、まだそんな力を残して......!?」

無理矢理捻ったレオスの腕が、ガリガリと不協和音を立てながらもカイギアスの身体を掴む。

レオス「ボクは、負けない——」

そのまま、渾身の力でカイギアスを引き剥がしにかかった。

レオス「——みんなと、一緒なら......!」
カイギアス「他者の力を借りねば進めぬ者など、我が領域にて果てるが道理ッ!!」

レオスを逃がすまいと、カイギアスが締め付ける力をより一層強める。
レオスがこの状況を打破するにはもう一つ、なにかキッカケが必要だった。

???「我が愛しき【大海原(サンクチュアリ)】を穢(けが)す不届き者は貴様か」

その時、黒い影がカイギアスに体当たりする。
ヴァリアブルシャークハンターだ。
ハンターによる攻撃により、僅かにカイギアスの力が緩んだ。
その隙を突いてレオスはなんとかカイギアスから距離を取る。

レオス「あ、ありがとう......!」
ハンター「此奴には我が半身を滅ぼされているゆえ、裁きの鉄槌を下さねばならぬ。
更なる血でこの美しき海を穢すのも許せん」

半身というのは恐らく、ハンターの弟であるヴァリアブルシャークレスキューのことだろう。
レスキューが海洋拠点を発見した際、カイギアスに倒されたとの報告が入っているのをレオスは思い出した。

ハンター「生憎、貴様のような獅子のアニマギアには良き思い出は持ち合わせておらん......が、しかし——」
レオス「しかし......?」
ハンター「——貴様『色』が良いなッッ!!黒いアニマギアに悪しき者はおらぬというのが我が信条である。
我が覇道を貴様と征くのもやぶさかではないッ!」

ラプト「つまり......どういうことだ!?」
レオス「多分、助けてくれるってことだと思う」
ギガトプス「打倒カイギアスの志(こころざし)は同じということでありますな!」
ジラファイア「また別の意味で熱苦しい感じのアニマギアだねー......」

EPISODE 54

カイギアス「小癪な......雑魚がいくら集まろうと同じ事ッ」
レオス「果たしてそうかな!」

離脱、即反撃。
レオスはジラファイアに呼びかけると、眠そうな声で応じたキリンはすぐさまバスターギアモードへと変形した。
レオス「うおおおおおおお!」

バスターギアから放たれる極太のレーザーがカイギアスを捉える。
海水が蒸発し、大量の気泡がカイギアスの姿を隠した。

ラプト「やったか......!?」
カイギアス「——今のがうぬらの最大出力か?」

しかし、海竜は倒れていなかった。
泡の奥から、鋭い眼光と共に無傷のカイギアスが現れたのだ。

カイギアス「ヌハハッ!うぬらが陸で生きる以上、私の勝利は揺るがぬよ......ッ!」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 53

ソウヤはいま、二人のABF男性隊員と共にジェットボートに乗っている。
ABF本部の襲撃から抜けだし、遠洋拠点の突入に参加したのはソウヤ含めたった三人だけだ。
五十の数を超えるはずだった突入隊は見る影もなかった。
恐らく、キョウが参加した山岳拠点部隊も似たような状況だろう——否、もっと状況は酷いかも知れない。

だが、ソウヤは決して悲観していなかった。

みんなの強さを信じているからだ。
獣甲屋が自分達の間をどれだけ引き裂こうと関係ない。
一人一人が、必ず試練に打ち克ってみせることを、ソウヤは疑ってすらいなかった。

ソウヤ「僕らも気を引き締めよう......!」
ラプト「ソウヤと俺達ならやってやれないことなんてねぇ!こちとら久々の出動で気合い充分!」
ギガトプス「右に同じであります、ソウヤ殿!」
レオス「絶対に勝とう、ソウヤくん!」
ジラファイア「............僕、熱苦しいの苦手」
ラプト「何か言ったか?」
ジラファイア「いーえー、なんでもないでーす。がんばるぞー」

EPISODE 53

ラプトにギガトプス、そしてレオス。
ソウヤの相棒を務めてきた歴々のメンバーに、兵器系の始祖とも言われている伝説の
アニマギア・ギガンティックジラファイアを加えた、まさに最強の布陣がここにいる。
いままでに感じたことがないほどの心強さを胸に、ソウヤは改めて勝利を決意するのだった。

隊員A「飛騨隊長!目標地点に到達しました!」
隊員B「ここからはアニマギア達の単独行動......ですね......」
ソウヤ「そう不安そうな顔をしないでください、彼らなら大丈夫ですよ」

レスキュー部隊から報告された遠洋拠点はいまソウヤ達がいる遙か下、海底にある。
潜水装備のないソウヤ達は、海上から通信でアニマギア達をサポートするしかなかった。

ソウヤの相棒達や、隊員二人が連れてきた十体のペンギオスが次々と海へ飛び込んでいく。
ペンギオスはともかく、陸での活動を前提とした設計のレオス達が
ためらいなく水へ跳び込んでいくことに、ソウヤ達は動じない。

ラプト「よし、行けそうだぜ......!」
ギガトプス「パッチデータ様々であります!」

この日のために、レオス達は事前に海流の中でも動けるよう、
パッチデータをボーンフレームにインストールしていた。
あらかじめ水中での活動方法をインプットした特殊プログラムなら、
水に手足を取られることなく身動きが取れるはずだ。

ほどなくして、ジェットボートに設置されたモニターが起動する。
レオスの視界がそのままモニターに反映されるようになっており、
いまは海面から見たボートに乗るソウヤ達の姿が映っている。
ハンドサインを送ると、レオス達は水中へと身を潜らせた。
映像は問題なく続いている。大丈夫そうだ。

ソウヤ「みんな、通信は聞こえるかい?」

レオス『問題ないよソウヤくん』

レオスの声を先頭に、海に潜った全員が通信越しに応答する。
音声も問題なし。
ならば次に出す言葉は決まっていた。

ソウヤ「行くぞ、みんな!目標、獣甲屋の海底拠点!
報告によれば敵エンペラーギアとの接敵が予想される!任せたぞ、みんな......ッ!!」

こうして、レオス達は海底を目指して真下へと進み始める。
決戦の刻は、近い。


???「ヌハハ......また我が領域に小魚が紛れ込んだか」

ほの暗い海の底で嗤う声がある。
青く巨大なそのエンペラーギアの名はリヴァイアカイギアス。
その鋭い眼光は、上方向から来る複数の小さな影を確実に捉えていた。

カイギアス「数を揃えようと同じこと。皆、等しく私の渦に飲まれることだろうよ......ヌハハハハハハハハッ!!!」

EPISODE 53

TO BE CONTINUED...

EPISODE 52

張り詰めた空気に刺激されたキョウは、落ち着きなく辺りを見渡した。
ABF本部の作戦会議室にざっと100名を超える人間と、さらに多くのアニマギアが集まっている。

その中にはヤマトやコノエの姿もあり、アニマギアはガオーを始めとして
ムサシ、レオス、それに先日ガオーが出会った仲間も勢揃いしていた。
まさに総力戦の構えの中、壇上にはソウヤがスクリーンを背に神妙な面持ちで立っている。

ソウヤ「皆さんも既に知るとおり、獣甲屋の拠点が見つかりました——」

ソウヤが端末を操作すると、スクリーンに二枚の写真が表示される。
一枚は鮮明な写真で、森林の中に不自然にある大きなコンクリートの建造物。
もう一枚はノイズが走ったうえに光量も不十分な写真だったが、映り込んだ魚でなんとか水中であることが窺えた。

続いて、写真に被さるように地図が表示される。
赤い点が二つ、山奥と遠洋に打たれていた。

ソウヤ「位置はこの二箇所。ひとつは鹵獲(ろかく)したブレイズドラギアスのメモリーから、 もうひとつは遠洋に調査へ出ていたヴァリアブルシャークの部隊が犠牲を払って手に入れたものです」

犠牲を払って、というソウヤの報告にキョウは胸がざわついた。
ヴァリアブルシャークの部隊と聞いて、キョウの脳裏にレスキューの姿が思い浮かんだのだ。
しばらく会っていなかったが、彼は元気にしているだろうか。

ヤマト「先遣隊として数体のアニマギアが潜入を試みたが、いずれも作戦中に信号が途絶えている......。
セキュリティの高さから、どちらの施設も獣甲屋の重要施設と見て間違いないだろう」

ヤマトの言葉を受け、ソウヤが深く頷いた。

ソウヤ「度重なるテロ行為をこれ以上許してはいけない!
これから、我々ABFは両施設に同時突入する“二面作戦”を獣甲屋に仕掛けます!」

地図の上を塗りつぶすように、この場にいる全員分の顔写真が貼り付けられていく。
それらがやがて二つチームに割り振られるように仕分けされると、キョウは自分が山奥の施設に行くことを理解した。

ソウヤ「作戦は一時間後に決行!各自、チームごとのブリーフィングを行って下さい!」

ソウヤが言うと、作戦会議室の中で二つのグループに分かれる動きが生まれた。
キョウもまた作戦会議に臨むべく、いま一度チーム編成を確認すると、
ソウヤは遠洋チームに割り振られていることが分かった。
別働隊だ。

キョウ「ソウヤ兄ちゃん......」

共に戦うとばかり思っていたキョウは、思わず隣にいたコノエを見上げた。

コノエ「そんな不安そうな顔しちゃダメよ。もう、いまのキョウくんなら彼がいなくたって平気でしょ。
それにガオーがついてるじゃない」

コノエはキョウの頭をかるく撫でて、にこりと笑った。
その様子を見ていたソウヤが、キョウ達のもとに駆け寄ってくる。

ソウヤ「なにも一人で戦おうってワケじゃない。キョウだってそれは分かってたはずじゃないか」
キョウ「そうか......そうだよな!」
ガオー「オレがついてる、みんなもいる!絶対大丈夫だぜ!」
レオス「ボクもソウヤくんと全力で戦う。ガオーもキョウも、気をつけて」

キョウとソウヤが握手を交わす。
自分がソウヤの実力を信頼しているように、彼からの期待が背中を押してくれているようだった。

作戦会議室に異変が起きたのはその瞬間だった。
会議室の扉や通気口が同時に爆破され、直後に大量のデミナーガスが室内に流れ込んできたのだ。

ソウヤ「バカな!?ABFのセキュリティをどうやってかいくぐったんだ!?」
ヤマト「“奴ら”の仕業か......!」

ヤマトの視線を追えば、デミナーガスを先導するように、
FBSの輝きがブラッドステッカーに迸る何体かのアニマギアがいた。
それらは、すべて白い翼を持つ鳥型の機体。
ソニックイーグリットファントムである。

ヤマト「奴らの放つ妨害電波がここまで強力になっているとは......改良を重ねて更に出力を上げたか、ショウマ......!」

招かれざる客に全員がざわつく中、ファントムとデミナーガス達は部屋を包囲するように整列してみせる。
そして、先程までソウヤがいた壇上の机に一体のデミナーガスが立つと、後方の
スクリーンがノイズとともにジャックされていた。
映し出されたのは黒田ショウマだ。

EPISODE 52

黒田『やぁ。調子はどうかな、ABFの諸君』

黒田は部屋を一望するように視線を動かして続けた。

黒田『キミ達はどうやら僕の拠点を突き止めたようだが、なにぶんこちらも目標達成間近でね。
邪魔をされては困るのでこうして挨拶に来たというワケだ——』

彼が指を鳴らすと、街中の監視カメラの映像がスクリーンを埋め尽くした。
そこに映るのは、デミナーガスの群れが大挙して暴れ回る凄惨な光景だ。

黒田『遊びに来るならいつでも来たまえ。この状況を捨て置けるものならね』

それでは失礼する。
黒田が淡泊に、そして一方的に通信を打ち切ると、
会議室内のデミナーガスが先ほどの監視映像と同じように暴れ始めた。
ならば、と室内にいたアニマギアは全員が戦闘態勢に入り、瞬く間に会議室内は戦場の様相へと変貌していく。

ソウヤ「黒田が攻めてきたということは、残された時間はあまりないか......!」
キョウ「でも、こんな状況でどうやってアイツの所に行けば......ッ」

場が混沌を極める中、ガオーとレオスもデミナーガスの対応に追われ思うように動けないでいる。
しかし、彼らを助太刀するように一体のアニマギアがデミナーガスとの間に割って入ってきた。
それは二刀を自在に操る青き甲虫型アニマギア。
ムサシだ。

ムサシ「お前達は作戦の要だ......!デミナーガス共は俺達に任せて先に行け!!」
ガオー「でも、お前はどうするんだよ!サクラだって待ってるんだぜ!?」
ムサシ「——必ず追いつく」
ガオー「でも!」

キョウ「迷うなガオー!ムサシはオレ達のために決断してくれたんだ......ッ!」
ガオー「キョウ......ああ、わかった!待ってるぜムサシ!」
ソウヤ「道は僕とレオスでこじ開ける!僕達も行こう!」
レオス「了解......!」

EPISODE 52

こうして、混乱のABF本部からキョウ達は脱出し、それぞれの目的地へと駆けだした。
獣甲屋の暴走を止め、サクラを救い出すために。

ムサシ「......サクラは任せたぞ、みんな」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 51

ヴラドとニーに話を聞いてもらったガオーは、ABF本部を訪れていた。
ABFに身を置く者であるならば、今回の件や獣甲屋にまつわる情報に精通しているはずだ。

打倒獣甲屋という、ガオー達と志を同じくする者も多くいる。
そんな彼らの話を聞くことで、ガオーは先ほどヴラド達にもらった勇気をもっと大きなものにしようと考えたのだ。

???「あー、ひさしぶりー」
???「こんにちは、ガオー。ABFにお使いでも頼まれたのかね?」

そんな中、ABF本部の目の前でガオーは意外な顔を見つける。

ガオー「なんだなんだ、今日はプロ選手とよく会う日だな。お前達こそどうしてこんな所にいるんだ?」

バルクとフォータスの二人だ。
聞いてみれば、彼らは大会に乱入してきたドラギアスとの戦いを評価され、ABFにスカウトされたらしい。
顔見知りがABFにスカウトされたと聞いて、ガオーは誇らしい気持ちで自分がここにいる理由を話した。

バルク「なるほど。獣甲屋については私達も頭を悩ませているところでね。もうすぐ正式に報道されると思うが、ちょうど
先ほど遠洋の海底から獣甲屋の拠点が見つかったと報告が上がったのだよ」

ガオー「本当か!?」
フォータス「そーなんだよー。拠点制圧部隊を編成することになってね、いまABF全体がアタフタしてるところなのさ」
バルク「部隊編成の一環で私達は昔開発された試作アニマギアの捜索をしていたんだが、
そこにキミが現れたというワケだな」

これまでは敵にいいようにやられていた——守りの戦いを強いられていたというのが正直なところだろう。
しかしここにきて、獣甲屋の拠点がついに見つかった。
それはつまり、こちらが初めて獣甲屋に対して“攻め”の姿勢をとれるということだ。

ガオー「みんな、同じ気持ちなんだな......!」
バルク「そうだな。私達も皆、自分だけではなく他者のために戦う覚悟は決めているのだ。
テロ行為は即刻止めねばならない」
フォータス「ボクらアニマギアを使って悪いことをする奴なんて、放っておけないもん。
ガオーも同じ気持ちでいてくれて、ボク嬉しいよ」

確かに、自分は一人じゃない。ニーの言ったとおりだった。
オレ達ならきっと勝てる——あのキョウの言葉の真意も、いまなら100%理解できた。

???「............ム」

そんな折に、ガオー達に大きな影が覆い被さった。
振り返ると、巨大な機械の塊がいた。

ガオー「おわぁ!?びっくりした!!なんだなんだ!?」

パーツのスキマから覗く複雑に組み合わさったボーンフレームから察するに、“これ”も恐らくアニマギアなのだろう。
だが、サイズがあまりにもケタ違いだった。

EPISODE 51

フォータス「アステリオス先輩だぁ。こんにちはー」
ガオー「び、びっくりした......」
バルク「ははは。ガオーが驚くのも無理からぬことだな。こちらはアステリオスさん。
寡黙で恐ろしく強い歴戦の勇者だよ」

どうやら、過去の大会で無類の強さを発揮し、前人未踏の大会10連覇を果たした正真正銘の“ツワモノ”らしい。
見事殿堂入りを果たしたあとはABFの設立にたずさわり、現在に至るまで戦闘要員のトップを走り続けているという。

ガオー「ははぁ、すっげえ奴なんだな......なによりデカくてすげえ!」
バルク「私も、こうしてお会いするようになっても未だに信じられないな。まさに才能の塊としか言い様がない」

通常、アニマギアが自分の意志で動かせるパーツ数には個体差はあれど限界がある。
ここまでの巨体でありながら、駆動系やシステムになんの支障も出さずに活動していること自体が極めて稀なのだ。

バルク「それに、ただ大きくて強いだけではないぞ」
フォータス「そーそー。アステリオス先輩はすっごく優しいんだ。
事件の通報があれば誰よりも早く現場に駆け付ける、本物のヒーローなのさ」

アステリオス「ム......」
ガオー「お、おお?」
フォータス「照れるからあんまり褒めるな、だってさ」
ガオー「おお、おおー!なるほど!」

バルク「はは、奥ゆかしい方だろう?」
ガオー「とにかく良い奴だってのは伝わったぜ!オレはガオー!よろしくな、アステリオス!」
アステリオス「ム」

アステリオスは軽く首を下げて会釈すると、しっかりとした足取りで去って行った。

ガオー「いまのは?」
フォータス「よく励め、キミには期待しているぞガオー、だって。やるじゃんガオー」

歴戦の勇者に期待されている。
そう思うと、ガオーはいてもたってもいられなくなった。
はやく相棒の元に戻って、今日出会った皆の話をしたくなったのだ。
これから先、どんな運命が待っていようと大丈夫、そう思えたのだと。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 50

修復が終わったガオーは焦っていた。
調整まで終わらせた後に、マギア計画について聞かされたガオーは、
非人道的な黒田の計画に驚き、憤り、そして改めて実感する。

ガオー「今のオレじゃ、アイツには敵わねえ......みんなを助けられねえ......ッ!」

廃屋で相対した、フォールンジオギアスの圧倒的な力を見せつけられ、
いまの自分ではまったく歯が立たないことを本能的に察したのだ。

ならばと、ガオーは自分なりに考え、ヤマト博士に懇願した。
今の自分をより強くする方法はないか。
あるならば、迷わずそれを教えて欲しい、と。

ヤマトは躊躇いがちに「方法はある」とキョウとガオーに告げ、
とあるニックカウルをガオー達の前に持ち出した。
一ヶ月前に完成したとされる、エンペラーギア試作0号機≪カウンターシステム≫オメガギアスのエンペラーカウルだ。

EPISODE 50

しかし、オメガギアスのエンペラーカウルはガオーを受け入れなかった。
試しに肩のパーツを交換した瞬間、ガオーはあまりの苦しみに悲痛な叫びを上げるしかなかったのだ。
慌ててパーツを元に戻したが、しばらくのあいだ痛みは残り続けていた。

やはり、エンペラーカウルを通常のアニマギアがつけるにはあまりにも大きな障害があるようだ。

オメガギアスのパーツが適合しない。
その事実に研究所にいた誰もが意気消沈していたが、キョウだけは違かった。
復帰直後のガオーをいたわるように、キョウはいつもと変わらない元気な調子で言う。

キョウ「焦らず行こうぜ、ガオー。エンペラーカウルに頼らなくたって、
オレ達ならきっとフォールンにだって勝てるさ!」

その時の、どこか安心したようなキョウの顔が忘れられない。
自分だって、そう思いたかった。
だが、思い出せば思い出すほど、フォールンの圧倒的な実力に絶望してしまう自分をどうしても無視できない。
なにか方法がないか、諦めずに模索するためにもいまは一度冷静になる必要がある。

ガオー「......ちょっと一人にさせてくれ、キョウ」

だから、ガオーは頭を冷やすために一人街に繰り出した。
彼の側を離れるなんて、いままでほとんどなかったというのに。

???「あら、なに暗い顔してんのよガオー」
???「おや?見覚えのある顔だと思えばキミか、白獅子」

俯いていた顔を上げると、そこには懐かしい顔がいた。
ヴラドとニーだ。

EPISODE 50

ガオー「おお、お前達か!久しぶりだな」

ヴラドの大会での相変わらずの活躍はもちろんのこと、ニーの活躍の噂もガオーは聞き及んでいた。
ニーは模擬戦の後、めきめきと力を伸ばし、いまではヴラドと互角に渡り合う
大会常連のプロ選手として方々に引っ張りだこらしい。

ニー「キョウはいないの?あんた達いつも一緒にいるのに」

ガオー「......ああ、うん。いまはオレ一人だぜ」
ニー「ちょっとちょっと、ホントにどうしちゃったのよ!ガオーらしくないわよ!?」
ヴラド「どうやら、なにか思い詰めてるようだな」
ガオー「ちょっと、な」
ニー「ふーん。なら、あたし達が話聞くわよ?話せばスッキリするかも知れないし」

ガオーは一瞬頭を悩ませたが、結局これまでの経緯を話すことにした。
大会常連の実力者であるヴラドとニーならば、ガオーの悩みを分かって貰えると思ったからだ。

ガオー「——ってワケでよ。今すぐ強くならなきゃいけないんだ、オレは」
ヴラド「ふむ、なるほど。では」
ニー「あんたは口を閉じてなさいヴラド。どうせ脳筋なことしか言えないんだから」
ヴラド「......むう」

ニーはヴラドの言葉を遮るように前に出て、ガオーの額をコツンとつついてくる。

ニー「あんた達の抱える問題はわかったわ。でも、ガオーはちょっと頭が堅くなりすぎよ?
焦る気持ちは分かるけどね」
ガオー「ニー......」
ニー「暗い顔はやめなさい。サクラがそんなことになってるって聞かされたあたしも、同じ気持ちよ?」

でも、とニーは続ける。

ニー「あんたが一人で強くなる必要なんてないじゃない」
ガオー「......え?」
ニー「あたしだって一人で強くなったわけじゃないわ。ヴラドやライバルがいたからこそ、今のあたしがいるんだもの。
それにキョウが言ったのよね。“オレ達ならきっと勝てる”って」
ガオー「ああ、だからオレが強くならなきゃ、」
ニー「バカ。そうじゃないでしょ」

ニーは呆れたように肩を竦めた。

ニー「なにもあんた一人が戦う必要なんてどこにもないわ。オレ達っていうのは、
キョウとガオーだけのことじゃなくて仲間がいるってことよ」
ガオー「............!」

そうか、とガオーはニーに言われて初めて自分の視野が狭くなっていたことに気が付いた。

ニー「もっと周りを見なさい。そして頼りなさい。あんたが戦おうとしている敵は、
あんた一人でどうにかなる相手じゃないかも知れない。だけど、ガオーは一人じゃない。
たくさんの仲間がいる。声をかければ、きっと応えてくれるはずよ。
もちろん、私やヴラドだって力を貸すわ」

ガオー「本当か!?」
ニー「あったりまえじゃない。ね?ヴラド」
ヴラド「ああ、もちろんだ」
ニー「それに、ムサシやあんたにばっかりいい顔させてたまるかっての。
サクラと世界のピンチはあたしが救ってみせるわ!」
ガオー「恩に着るぜ、二人とも......!」

こうして、ガオーは自分には仲間がいることを再確認する。
それに、自分の呼びかけに応えてくれるアニマギアが他にもいるかもしれない......
そう考えると、先程までの憂鬱が吹き飛ぶように勇気がわいてきた。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 49

事故に巻き込まれたサクラは、四歳という未成熟な肉体ゆえに生命の危機に瀕していた。

迷う時間などなかった。
黒田の提案で、ヤマトは当時研究していた皇帝機試作六号であるオリジンイデアギアスの理論を応用し、
機械の身体にデータ化した紅葉サクラの意識を移植することを決めたのだ。

元の“被検体”の幼さ故に、自我をデータ化する上で複雑な行程を必要としなかったのも幸いし、
“実験”はあっけなく成功した。

ヤマト「......悪魔の所業だ。決して許される行いではない。
だが、私にはああするしかなかったんだ......」

妻に続けて娘まで失う苦しみに、耐えられるハズがなかった。

ヤマト「だから、私は舞台を降りなかった。サクラがアンドロイドであることを公表しない代わりに...
...サクラが人間として平和に過ごす時間を得る代償として、
私はエンペラーギアの開発に協力を続けてきたんだ」

紅葉サクラを守るために、黒田に協力してきたヤマトを、
この場にいる誰が責めることが出来るだろう。

ヤマト「そしてこれまでの十年間。サクラの身体をアップデートしながら、
人間として——娘として向き合い、育ててきたつもりだ」

それは、紅葉サクラは人間でありながら、機械の身体で過ごした時間の方が
圧倒的に長いことを示していた。

ヤマト「だが、そこを黒田につけ込まれたようだ」
コノエ「獣甲屋の真の目的はサクラちゃんだった......ってことですね」
そうだ、とヤマトは頷く。
人間として生まれ。
人間として過ごし。
機械の身体となっても、なお人間として育てられたがために。
紅葉サクラの中に芽生えた感情・知能・思考を司る総合プログラムである
≪アルターエゴ≫は、限りなく本物の人間と同じ構造を獲得した。

コノエ「つまり、ヒトの意識の完璧なデータ化......」
ヤマト「サクラの持つアルターエゴが成長するまで待っていたのだろう——
オリジンイデアギアスの元となる幻獣“イヴ”に相応しくなるまで」
キョウ「あの、ひとつ良いですか」

過去の話と技術的な話が複雑に絡み合う中、キョウは怖じ気づくことなくまっすぐ手を挙げた。

キョウ「サクラ姉ちゃんの抱える事情は分かりました。
黒田がなぜサクラ姉ちゃんにこだわっていたのかも、理解出来た気がします」

でも。

キョウ「その、オリジンイデアギアスって一体どんなエンペラーギアなんですか?」
ソウヤ「確かに、そこはハッキリさせておいた方が良いですね。
聞いたところ、そのエンペラーギアは獣甲屋の計画の中核を為す重要な存在でしょう」
キョウ「そのエンペラーギアが何者なのか。それが分からなきゃ、マギア計画も分からないままだ......」

マギア計画の構造を理解できなければ、オレ達は前に進めない。

キョウ「それじゃ、サクラ姉ちゃんを助けられない......ッ!」
ソウヤ「僕からもお願いします。教えてください、博士」

キミ達の言うとおりだ、とヤマトはモニターに書類を投影した。
それは、エンペラーギアの設計図だ。
アニマギアになったサクラと同じ型の白い機体が映し出されたのを確認して、ヤマトは言う。

ヤマト「オリジンイデアギアス。この機体の能力は、融合だ」
キョウ「融合......?」
ヤマト「ああ。このエンペラーギアは取り付いた生物の脊椎から電気信号を流す。
そうして大脳にアクセスし、取り憑いた生物の遺伝子情報を意図的に書き換える」
コノエ「遺伝情報のハッキングですって!?そんな、そんなことが......」

元をたどれば、それは病気や怪我で身体を動かせなくなった人を
サポートするために考案された能力だという。
しかし黒田はこの能力によって、人類をハッキングしようとしている。
そして、エンペラーギアの能力——“不死”を人体に獲得させるつもりなのだろう。

ヤマト「生命の進化(アップデート)——それこそが、黒田の話すマギア計画の全貌に違いない」

 

EPISODE 49

............。
......紅葉サクラ(わたし)は、冷たい床に寝かされている。
思えば、この身体になってから温度を感じるのは初めてだろうか。
原因は分からないけど、確かにアニマギアとなった紅葉サクラは床に横たわっていた。
身体は動かない。
視界は暗い。
いまわかる状況は、“白い私”に囲まれているっていうことくらいだ。

......ああ、ついに始まるんだな。

なんだか懐かしい気分になる。
これはそう、十年前に初めてアンドロイドとして起動したとき。
そして、数年後に自分が人間ではないと聞かされたときと同じだ。

多分、これから起こることはその時以上の、
想像も付かない何か恐ろしいことだ。
ならば覚悟を決めなければならない。
だって、キョウくん達は運命に立ち向かうためにきっと立ち上がるから。
アニマギアのみんなだって、一緒に戦うはずだ。
絶対にそうなると、彼らと過ごしてきた私だから分かる。

なら、私も恐くない。
これから起こることだって、きっと乗り越えられる。
私だって、運命と戦ってみせる。

............キョウくん。

こんな時に浮かぶのは、いつだって勇気をくれた彼の顔だ。

私、キョウくんに会えて本当に良かった。
キミと過ごした時間は、どれもかけがえのないものだったよ。
弟みたいな感じだったのに、あっという間に私を追い越して...
...って、こんな話前にもしたかな。

うん。

成長していくキミを邪魔したくないけど、ひとつだけお願い。

紅葉サクラは、もうキミと会えないかも知れないけれど。

いつまでも優しいキョウくんのままでいてね。

お願い、だよ。

......。

EPISODE 49

——紅葉サクラの意識は、ここで途絶えた。
この先の光景を知るのは、紅葉サクラをじっと見つめていた男。
黒田ショウマ、ただ一人だ。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 48

黒田が去った後、コジロウはコノエの尽力により
なんとか一命をとりとめたものの、意識は未だ戻っていない。
なにせ身体の10%近くが“削られ”倒れたのだ。
身体を修復したとしてもシステムに障害が起きていても不思議はないだろう。

ガオーとムサシも、コジロウほどではないが決して浅くはないダメージを負っていた。
コジロウとは別室でどちらも復旧処置を受けている最中である。

ゆえに、モミジテクニクスの所長室には張り詰めた空気が漂っていた。
紅葉ヤマト。
三梨コノエ。
飛騨ソウヤ。
そして、天草キョウ。
四人が一堂に会していながら、会話がないまま一時間ほどが経過している。
だが、しびれを切らしたように静寂を破ったのは、最年少のキョウだった。

キョウ「......っどうして、なにも教えて、くれなかった......んですか」

憔悴しきった表情でキョウはなんとか言葉を絞り出した。
すると、いままでの静けさはどこへやら、キョウの語調は強くなっていく。

キョウ「サクラ姉ちゃんのこと、なんで黙っていたんですか...
...特別なチカラがあるなんて言葉でごまかして!
サクラ姉ちゃんが狙われる理由がもっと前からハッキリしていたら、こんなことにならなかったんだ!」
ヤマト「......」
キョウ「そんなにオレ達が——サクラ姉ちゃんの友達が信用できませんでしたか!?」
ヤマト「......すまなかった」
キョウ「謝る相手はオレじゃなくてサクラ姉ちゃんだ!」

ソウヤ「キョウ、落ち着いてくれ」
キョウ「ソウヤ兄ちゃんも知らなかったんだろ!?サクラ姉ちゃんが人間じゃ」
ソウヤ「落ち着けと言ったんだ、キョウ!」

びくり、とキョウの肩が跳ねる。
ソウヤの顔には、怒りよりもむしろキョウを心配するような憂いの色が浮かんでいた。

ソウヤ「博士を責めても仕方ないだろう。僕だって話を聞いたときはショックだったよ...
...でも、悪いのはヤマト博士じゃない、獣甲屋だ。
それが分からないキョウじゃないよな」
キョウ「......ごめんなさい」

キョウがヤマトに頭を下げると、ソウヤが頭を撫でてくる。
人の優しさに触れることで、冷静さを欠いていた自分を意識してしまう。
とても恥ずかしかった。

ヤマト「いや、どうかかしこまらないで欲しい。キョウくんの言うとおりだよ。
私が躊躇することなく、正しい情報共有をしていたら防げた問題がいくつもある」

糾弾されても仕方ない、とヤマトもまた頭を下げた。

ヤマト「情けないことに、私もこうなるまで目が覚めなかった。
......ようやく、決心がついたよ」

——どうか聞いて欲しい。
こうしてヤマトは、張り詰めながらも過去を懐かしむような口調で語り始めた。
すべての、始まりを。

ヤマト「私達は大学時代の仲間だったんだ。黒田と私、そしてアカネという女性がいてね。
三人で同じゼミに所属していた」

初めて黒田を目にしたとき、ヤマトはショックを受けたのをよく覚えている。
ヤマトが当時から研究していた二足歩行のアニマギアを、黒田は既に手にしていたのだ。

ヤマト「二足歩行のアニマギアを開発したのは確かに私だが、実現したのは彼の方が先だった。
あの時の衝撃といったらなかったな」

聞けば、それは子供の頃にカスタマイズで生まれたもので、
黒田自身が再現しようとしても決して出来ない奇跡と偶然の産物だったそうだ。
ゆえに、のちにヤマトが技術体系として確立するまで、
黒田の相棒は二足歩行のボーンフレームを持つ唯一のアニマギアだった。

ヤマト「......天才、と呼ぶにふさわしい男だったよ。もっとも、常人とはかけ離れた感性ゆえに、
幼少時代は孤独に過ごしたらしい」

だが、大学時代は違う。
二足歩行のアニマギアをきっかけに、黒田とヤマト、そして同じアニマギア研究者のアカネの三人が
打ち解けるのに大した時間は必要なかった。
それは、アニマギアを通して人類の未来を切り開く志を持った者同士だったから...
...かも知れない。
そしてその関係は、大学卒業後も続いていた。

ヤマト「しかし、私とアカネが結婚し、サクラが生まれて間もない頃だ。
アカネは病床に伏せって、そして逝った。あっという間の出来事だったが...
...その頃から、黒田の様子が変わったんだ」

取り憑かれたようにエンペラーギアの開発にのめりこんだ黒田は、ヤマトに協力を求めた。
仲間からの、人類の発展につながるという言葉。
当時のヤマトにそれを断る理由はない。
それに、エンペラーギアの開発に没頭している間は、アカネを失った悲しみを忘れることが出来た。

ヤマト「エンペラーギアの開発は難航した。幻獣をモデルにしたアニマギアを実現するには、
想像を絶するほどの高い壁が無数に存在していたんだ」

不毛な実験結果の繰り返しに心が折れかけていた頃、サクラは四歳になっていた。
順調に成長する娘を見て、ヤマトはアカネを失った悲しみに囚われず、前を向く決心を徐々に固めていく。
だからこそ、黒田に協力することを一度はやめようとしたのだ。

キョウ「やめようとした......って?」
ヤマト「やむを得ずエンペラーギアの開発をしなければならない理由が出来たのだよ」

それは、妻の死から立ち直れなかったからではない。
もっと別の重大な出来事が起きたからだ。

ヤマト「事件......いや、事故というべきか。
皇帝機試作十三号——フォールンジオギアスがラボ内で暴走を始めた」

EPISODE 48

その名前には聞き覚えがある。
黒田の命令で動いていたあのエンペラーギアのことだろう。

ヤマト「状況は凄惨を極めた。フォールンジオギアスの暴走によりラボは壊滅状態、そして——」

ヤマトは絞り出すように、か細い声で続けた。

ヤマト「——幼かったサクラが、事故に巻き込まれてしまったんだ」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 47

キョウはなんとか立ち上がりながら、胸部に大きく穴が空いたコジロウの身体を掬い上げる。
今にも輝きを失ってしまいそうなブレッドステッカー。
少しでも力の加減を間違えれば崩れてしまいそうな感触。
早くこの場を離れて適切な処置を施さなければ、コジロウは完全に事切れてしまうだろう。

キョウ「——ッ」

しかし、この場をすぐに離脱するかどうか、キョウは決断しきれないでいた。
なぜなら、目の前に敵がいるからだ。
大切な存在をキョウから奪い去ろうとそこに立つ、黒田ショウマという倒すべき敵が。

黒田「いまのキミは無力だ」
キョウ「......!」
黒田「辺りをみたまえ。戦う力などどこにも残されていない」

キョウのマフラーの中には、ムサシとの戦いで傷付いたガオーが。
掌の上には、胸を貫かれたコジロウが。
足下には、謎の力で吹き飛ばされたペンギオス達と、コジロウとの戦いで気を失ったムサシが。
黒田の言うとおり、この場にはもうキョウしか残されていなかった。

黒田「だというのに撤退することもなく、キョウくんは立ち尽くすばかりで、僕を恐い目で睨みつけている。
それもこれも、僕が紅葉サクラを連れ去ろうとしているから——
そうだろう?」

敵の言葉に返す言葉を持ち合わせないキョウは、ただ唇を噛んで俯いた。
なんとか、この場を切り抜けるにはどうすればいい?
どうすれば、みんなを助けられる?
どうすれば——

黒田「——どうすれば、なにも失わずにいられる?っていう顔をしているね」
キョウ「......は............?」

黒田があまりに的確に自分の心中を言い当てたことに、キョウは動揺の色を隠せなかった。

黒田「その迷い。その怒り。その悔しさ。すべて、すべてすべてすべて」

手に取るようにわかるよ、と。
煽るというよりは哀れむような声色で続ける黒田の表情は重く沈んでいた。

黒田「なぜなら、僕も“キミと同じ”だからだ、天草キョウくん」
キョウ「オレが......お前と......?」
黒田「そう、僕もかつて大切な存在を失った。アニマギアとは違う、本物の“命”を」

倒すべき敵の言葉だというのに、不思議なことにキョウは彼の話に耳を傾け始めている。
それほどまでに、黒田の様子は真に迫るモノがあった。
いいかい、キョウくん。
黒田は諭すような声で続ける。

黒田「我々は生命としてあまりにも不完全だ。
ちょっとしたキッカケであっけなく散ってしまうほど脆く、儚い」

ブラッドステッカーの恩恵により、僅かな光さえあれば活動が可能なアニマギアとは違う。
人間は生きていれば老い、病み、そしていずれ終わりを迎える。

黒田「僕は以前キミに聞いたね。大切にしていたモノを失った時、
人間はその先どうなるか興味はないか、と」
キョウ「......その答えがお前だっていうのか」
黒田「僕の存在はあくまで答えの一つさ。友の命が失われるというのは、
友が友でなくなるということだ。だから聞いたんだ」

親しい友が友でなくなるとき、キミなら果たしてどうするのか。
廃工場で質問された時の光景がフラッシュバックする。

黒田「もっとも、キョウくんは壊すことを選んだようだがね......
......とても、苦しかっただろう?」
キョウ「お前が......お前がバイスやシュバルツのことを語るな......ッ!!」
黒田「壊すというのはとても心苦しい。それが命無きアニマギアだとしても、キミの抱えた絶望は想像に難くない。
だからこそ、キミのようなヒトをこれ以上生まないために僕は戦っているんだよ」

これ以上大切な命を失わないために、僕はアニマギアという“道具”で未来を掴むことを望んだ。
失う哀しみを得ることのない、理想郷を実現するために。

黒田「故に、僕は『完全』と呼ぶに相応しい存在を求める。
≪マギア計画≫はそのために考案したんだ」
キョウ「マギア計画......?」
黒田「ああ、そうだ。計画が実現すれば、すべての人類は生命の理を超える——
人間が人間のまま不死の肉体を獲得し、平等に生き続けることになる」

そんなことのために、とはキョウは返せなかった。
黒田がやろうとしていることの本質が見抜けなかったからだ。

黒田「計画に必要な要素はたった二つ」

エンペラーギアの研究、すなわち究極の身体を作り上げること。
紅葉サクラの成長と回収、すなわちヒトの意識をデータ化し手に入れること。

黒田「特に二つ目は苦労した。完璧な人間の意志を持っていながら、
彼女は決して過剰に負の感情データをラーニングすることがなかったからね」

だがその問題も、今回の戦いが解決してくれた。

黒田「キミ達は本当によくやってくれた。これで心置きなく、人類生命の新たな進化を促し、
幸せをもたらすことが出来る......!」
キョウ「......正直、オレにはお前がやろうとしていることの半分も理解できないよ。
パッと聞いただけじゃ、そのマギア計画とやらは人間のためになるように聞こえる」

でも、とキョウは否定の言葉を紡ぐ。
キョウは自分の中にある違和感の正体に気付くことができたからだ。
黒田のいう甘い理想論(はなし)が、どうしても受け入れられない理由に。

キョウ「お前の話を聞いてハッキリした!人類の幸せだなんだって言ったって、
その幸せの中にサクラ姉ちゃんやアニマギアが含まれているか!?」
黒田「......」
キョウ「オレの友達が勘定に入っていない以上、オレはお前認めるわけにはいかない!
これ以上、お前のエゴにみんなを巻き込むな!!」

黒田「......ハハ。まぁ、最初から理解して貰えるとは期待していないさ。
ゆっくり考えてくれれば、キミも僕の考えが分かるようになると思う」
キョウ「ありえない......!」

黒田「まぁいい。天草キョウくん、どれだけ吠えたところでキミがココで出来ることなどなにもない。
我々の勝利は揺るがないんだ」
キョウ「ッ、待て黒田!」

黒田「待つ理由などない。せいぜい、そこの“お人形さん達”と仲良くしていたまえ。行くぞ、フォールン」

EPISODE 47

フォールンは無言で頷くと、赤いエネルギーの塊を胸から生み出した。
その塊は急速に黒田やフォールン自身、そしてサクラを飲み込む。
そして次の瞬間、塊が瞬時に収束し、黒田達ごと虚空へと消えてしまった。

キョウ「ちく、しょう......ちくしょう............ッ!」

ただ一人、廃屋に取り残されたキョウは、ぶつける先のない怒りに膝を突くことしか出来なかった。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 46

剣戟の音がその場に渦巻いていた。
本来、コジロウの顎パーツは後頭部に装着することで、索敵や探索を主な機能としたレーダーの役割を果たす。
この廃屋にコジロウが辿り着いたのも、レーダーを活用したためだ。

しかし、このパーツはある条件下でのみ、その性質を全く異なる物へと変化させる。
条件とはムサシのFBS発動。
そして性質とは、対ムサシに特化した戦闘システム《ルイン》の解放だ。
それは、デュアライズカブト真と紐付けられた武器の所有権を、
強制的にデュアライズスタッガーへと書き換え、奪い取るシステム。
即ち、対象武装の完全支配である。

コジロウ「しかしまぁ、旧型の武器を持ち出しているとはね......ッ!」

本来であれば、ルインは発動すれば一方的にこちらがムサシを鎮圧する切り札だ。
だが、今回のようにムサシが旧型の武器を用いているケースは、ルインの設計時には想定されていない。
ゆえに、ムサシの完全無力化には至らず、こうして剣と剣が激しくぶつかり合っている。

EPISODE 46

コジロウ「だけど、俺は勝つ!こちとら、アンタを止めるのに容赦はしねえって、とっくの昔に腹くくってるんだよ!」
ムサシ「ウ、オ、オオオオオオ......ッ!!」

コジロウは自分の意志を主張するように深く踏み込んだ。
大剣がムサシの胴元まで肉薄する。
とっさに受け止められたが、コジロウは受け止められた旧型の武器ごとムサシの身体を力任せに吹き飛ばした。

ムサシ「ガアアアアAAAAAッッ!?!?」
コジロウ「流石に元気がないね、ムサシちゃん......!」

ルインが展開した電磁フィールド内において、ムサシの出力は通常時の3%程にまで落とされる。
たった、3%だ。

ムサシ「WARRRRRRRRRRッッッ!!!!」

その状況下でも、ここまでムサシを戦闘へと掻き立て突き動かす。
どうしてそこまで、という言葉をコジロウは飲み込んだ。
この光景の痛々しさそのものが、まさしくFBSの恐ろしさを物語っていたからだ。

コジロウ「——いま、止めてやるッ!!」

時間が経つごとにFBSに飲まれ、動きの精細さを失ったムサシの隙を突くのは容易だった。
ムサシの突進を大剣の腹で受け、腕を絡め取るように円を描いて伏せさせる。

コジロウ「少し我慢してくれよ......!」

そして、コジロウはうつぶせのムサシの背に、大剣の柄の刃を背中に突き立てた。

EPISODE 46

直後、紫電の瞬くような輝きが接触部から生まれ、

ムサシ「アアアAAAあああ......あ、ああ......ッ、ッ——」

ムサシの意識がシャットダウンされた。
見れば、彼のブラッドステッカーからFBSの稲妻模様が消え去っていた。

コジロウ「しばらく眠ってな、ムサシちゃん」

FBSの収束を確認すると同時、コジロウのルインシステムが終わりを告げる。
使っていた武器が分解し、音を立てて廃屋の床に落ちていく。

サクラ「......終わった、の?」
コジロウ「大丈夫、生きてる」

コジロウは顎パーツを元の位置へと嵌め直しながら、不安そうなサクラをなだめるように続けた。

コジロウ「FBSをムサシちゃんの意識ごとシャットダウンしたんだ。
荒療治だけど、絶対目を覚ますぜ——安心せい、峰打ちじゃーなんつってね」
サクラ「そっか、よかった......」
コジロウ「それにしても驚いた。今更だけど、サクラちゃんってば本当にアニマギアの身体になってるんだ。
盗み聞きするつもりはなかったけど、話が聞こえて来たときは正直——」

ムサシとの戦闘は終わった。
ならば場の空気を和ませようと、いつもの軽い調子で話し始めた矢先だ。
音もなく、胸に衝撃が来た。

コジロウ「——な、......?」

見れば。
いつの間にか、胸に大きな穴が開いている、ではないか。

サクラ「コジロウ!?」
キョウ「サクラ姉ちゃん、危ない!!」
黒田「“僕ら”のことを忘れてないかな、キミ達」

堰を切ったように、三者三様の言葉が同時に入り乱れる。
そして。

EPISODE 46

キョウが気が付いたときには、すべてが遅かった。
本当に、あっという間の出来事だったのだ。
コジロウがその場に崩れ落ちると同時に、影のように現れた謎の黒いアニマギアがサクラを捕らえていた。
右手には赤いニックカウルのカケラが付着している。
コジロウの胸を貫いたのは、間違いなくあの黒いアニマギアだ。

黒田「獣甲屋の首魁を前に、少し気を緩めすぎたね」
キョウ「お前......ふざけるな......うわああ!?」
サクラ「キョウくん!!」

キョウが黒田に詰め寄ろうと駆け出すと、見えない力に押し出されるように勢いよく後ろへ飛ばされてしまった。
廃屋の壁に激突すると、遅れてムサシやコジロウ、ペンギオス達が次々と吹き飛ばされてくる。
キョウを除いて、すでに皆意識がない。

キョウ「全部、その黒い奴がやった......のか......ッ!?」
黒田「これでそちらの戦力はゼロ。これにてチェックメイトというワケだ」

黒田の声に合わせるように、黒いアニマギアがサクラと共に浮き上がる。

サクラ「離して!離してよ!!」
???「......イデアデバイスは回収した」
黒田「ああ。よくやった、フォールン」

フォールンと呼ばれたアニマギアが、サクラを連れて黒田の元へと飛んでいく。
すると、黒田はサクラを鉄製のケースへと押し込んだ。

キョウ「黒田、ショウマ......おま、え......!!」
黒田「キミ達の戦いは実に有意義だった——おかげで、最後のデータが揃ったよ」

黒田の声が、まるでキョウ達に敗北を告げる鐘のように重く響き渡った。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 45

コジロウという第三者の登場に、黒田が目を細めたのをキョウは見逃さなかった。
これも黒田の狙い通りなのだろうか、それとも——。

コジロウ「まったく、ホントに手間のかかる弟だわ」
ムサシ「コジロウ......キサマ、今更なにをシ、何をしに来たッ!」

その場を見守る誰もが息を飲む。
ムサシがコジロウに気取られている隙に、キョウはガオーを急いで回収した。
斬撃が刻まれた右腕だけではなく、全身に大きなダメージを負っている。
完敗だ。

キョウ「......休んでてくれ、ガオー」

傷ついたガオーを労るように、キョウは相棒をサクラと同じマフラーへと忍ばせた。

コジロウ「よ、っと」

乱入してきたコジロウが、軽い身のこなしで窓際から飛び降りる。
対するムサシは傷ついた肩を庇うそぶりもなく、コジロウの着地の隙を突くように地を蹴った。
電光石火のごとき突進。
瞬く間に、ムサシの剣がコジロウを捉えていた。
しかし、コジロウは来た斬撃を銃身でいなすように躱す。

コジロウ「おい......!そんなんじゃムサシちゃんの中のムラマサが泣いてるぜ......ッ!」
ムサシ「ッッッ!黙れ、黙れ黙れ黙れェ!!」

コジロウの体捌きは見事だ。
ムサシの連撃をすんでの所で見切り、決定打を受けないように立ち回っている。
だが、それ以上に暴走状態のムサシの剣筋は鋭かった。
徐々にコジロウの動きがムサシについて行けなくなっていく。

コジロウ「......すっかり暴れ馬になっちまって。FBSに身を任せるのはそんなに心地が良いかい」
ムサシ「ナンダとッ!」
コジロウ「わからないようなら教えてやる......ッ」

FBSを使えてしまうのはムラマサのパーツが使われているから。
FBSを使うのは、サクラが苦しんでいるから。
サクラが苦しんでるのはキョウやガオーという仲間がいるから。
そして、仲間に刃を向けられるのは。

コジロウ「サクラちゃんを守るためだからって?ッハ—
—テメェの暴れる理由に他人を使えて、さぞかし気分は晴れやかだろうって、そう聞いてんだよ兄弟!!」
ムサシ「だ、ま、れ、ェ、エエエエエエッ!!」

ついに、ムサシの剣がコジロウを完全に捉えた。
振り下ろされた二本の剣を、コジロウは二丁の銃を交差させて受け止めるが、そこまでだった。
鍔迫り合いのような格好で拮抗して見えたその状況は、ゆっくりと様相を変えていく。
ムサシのあまりの力の強さに、コジロウは膝を折って身体を沈めるしかない。

コジロウ「いい加減目ェ覚ませよ、ムサシちゃん。ムラマサを受け入れたアンタの器が、
そんなチンケなバグに支配されるほど小さいハズないだろ......!?」
ムサシ「コレがガガッ、俺の選んンンン選んだ道だ、コジロウ...
...行く手を阻むなら、まずはお前からキKILLる斬るッ!」
コジロウ「......手遅れかよ......ッ」

サクラ「——もうやめて、ムサシ!!」
キョウ「サクラ姉ちゃん!?」

いつの間にかマフラーから飛び出したサクラが、ムサシとコジロウの元へと駆けつける。
反射的に、ムサシの力が緩んだ。その隙を見て、コジロウが剣を押しのけて数歩下がる。

サクラ「ムサシ、正気に戻って!本当のアナタを......優しい自分を取り戻して......!」

駆け付けたサクラはコジロウの肩に手を添えて、まっすぐムサシを見つめていた。

ムサシ「本当の......俺......ぐ、ううううッ!?」
コジロウ「......下がってなよ、サクラちゃん」
サクラ「でも、」
コジロウ「“でも”も“だって”もないんだ、無駄なんだよ。いまのムサシちゃんはFBSに完全に支配されてる。
ああなった以上、“アレ”を止められるのは俺しかいないのさ」
サクラ「コジ、ロウ......?」

まぁ見てなって。
場に似つかわしくない軽い調子で宣言しながら、コジロウはサクラを自分の背中の方へと押しやる。

コジロウ「サクラちゃんにもムサシちゃんにも、悪いようにはしないサ」
ムサシ「コジロォ......ウ」
コジロウ「アンタを止めるのは俺だ、ムサシちゃん」

言って、コジロウはクワガタの顎をかたどったパーツを右手で取り外した。

コジロウ「元々、俺の役目は“万が一”ムサシちゃんが暴走したときのストッパーなんだ。
その責務、いま全(まっと)うさせて貰うぜ——」

そして、取り外した顎のパーツを後頭部へと取り付けた。

EPISODE 45

瞬間、コジロウの頭部を中心に電磁フィールドが球状に広がっていくのが見える。

ムサシ「な、ぁ、あああッ!?」
黒田「......ほう......!」

電磁フィールドに触れた途端、異変が起きたのはムサシ側だ。
ムサシに装備されていた武器が自分の意志をもったかのように、次々とムサシを離れ、コジロウの元へと飛んでいく。
その武器達が組み合わさり、コジロウの目の前で一つの形を作った。

EPISODE 45

コジロウ「——黙ってて悪いな、ムサシちゃん。俺、本当は剣(コッチ)の方が得意なのよ」

大剣を携えたコジロウの眼が、止めるべき兄弟をまっすぐに見据えて鋭く光った。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 44

ガオー「やめろムサシ!お前と戦う理由なんてどこにもねぇ!」
ムサシ「WARRRR......そちらにニニッなナくても俺にはあるッ!」
ムサシは翼のように展開した剣を次々と入れ替えて、ガオーを本気で倒しに来ていた。
その戦い方に、もはや以前のムサシの面影など残されていない。

ムサシ「WARRRRRRッ!!!!」
ガオー「話を聞いてくれ!!」
キョウ「ムサシの様子がおかしい......FBSの影響、なのか......!?」

肉食獣の狩りを思わせる獰猛な連撃。
幾重にも重なる太刀筋が、確実にガオーを追い詰めていた。

キョウ「答えろ黒田!お前、一体ムサシに何をしたッ!?」
黒田「ハハ......なにをした、ね。重ねて言うようだが、洗脳の類いは一切していない。
ちょいと背中を押してやっただけさ」
キョウ「背中......?」
黒田「そう、背中さ」

黒田が、先ほど投擲され足下に落ちたムサシの剣をひょいとつまんだ。
そして口端をいまいちど歪につりあげて微笑んでみせる。

黒田「紅葉サクラをネオギアスに連れてこさせたあと、
ムサシが何をしていたと思うかね?」

答えはね。

黒田「戦いさ。紅葉サクラを捜索する手段として、
彼は我々獣甲屋との全面戦争に臨んだんだよ」
キョウ「全面戦争......!?」

本気のムサシと、それをいなすだけで精一杯のガオーを尻目に、
黒田は語勢を緩めることなく続ける。

黒田「どうやら、彼に使われている暴走アニマギアの部品が帰巣本能を刺激したんだろう。
本能に導かれるままに、ムサシは手がかりもなく僕の拠点のひとつへと辿り着いた。
そしてそこにいるデミナーガスをはじめとした僕の駒を全滅させては、
紅葉サクラを求めて次の拠点へと向かう——そんな戦いを繰り返したんだ」

キョウ「ムサシが......一人でそんなことを......」

黒田「たかだかアニマギア一体に僕の拠点がいくつ陥落させられたと思う?
もう少しムサシのバグが遅かったら本当に致命傷になるところだったよ」

キョウ「バグ、だって......?」

黒田「ああ、そうだ。たった独りで大勢の敵と戦うために、FBSを酷使しすぎた彼は
思考回路に重大なバグが生じていた。
ムサシが僕の所に辿り着く頃には、
完全になぜ自分が戦っていたのかすら分からなくなっていたよ」

それでも、紅葉サクラのことだけは決して“見失わなかった”らしい。

黒田「僕はそんな彼をなだめるように招き入れ、そして教えてあげたんだよ」

紅葉サクラが人間ではなく、アンドロイドであることを。

キョウ「教えてあげた......って、どういう——」
黒田「——ああ、僕も驚いたよ。ヤマトの奴、護衛であるムサシにも
真実は告げていなかったんだ、とね」
キョウ「......ヤマト博士......!」
黒田「真実を知り、ショックを受けた彼の思考回路はあっけなく破綻した。
その結果、紅葉サクラの“尊厳を守る”ために、なによりも障害となったのは
キミたち二人ということになったらしい」
キョウ「な......!?」

ガオー「ぐあああッ!!」
黒田が一通り語り終えると、ムサシの一撃がついにガオーを捉えた。

EPISODE 44

吹き飛ばされZ(ツヴァイ)ギアモードとなっていたガオーの右腕から、
火花と煙が噴き出していた。

ムサシ「サクラの苦しみヲ思うと、俺は俺が情けナい」
ガオー「ム、ムサ、シ......」
ムサシ「そこの男に真実を聞かさレッ、聞かされたとき、
俺はサクラと過ごした日々の違和感に答えを得た気分ダッタ」

倒れて動けないガオーに、ムサシはゆっくりと剣を構えながら一歩ずつ歩み寄っていく。

ムサシ「なぜ、サクラは誰とも関わろうとせず、感情を殺し、気配を消して過ごしていたのか——」

首元でなにかがうごめく感覚がある。
キョウは、マフラーからサクラが恐る恐る顔を覗かせているのがわかった。

ムサシ「——彼女は、自分がアンドロイドだということを受け入れていたのだと分かった...
...だとイウのに!」

サクラは、キョウ達と出逢って変わってしまった。
アンドロイドである事実が、受け入れられなくなっていた。
自分が人間であるならば。
キョウ達と出遭って、内なる願いを抱いていたとしたら。

ムサシ「誰とも関わるべきではなかったンダ......俺も、サクラもッ!!」
サクラ「——違うよムサシ!!私は、キョウくん達と出会って良かったと思ってる!」

だが、サクラの声がムサシに届くことはなかった。

ムサシ「............俺はサクラを守るために生まれてきたアニマギアだ。
サクラを守ることに“迷い”などあってはならない」

まるで断頭台の刃のように、ムサシが高く剣を掲げて叫ぶ。

「たとえ仲間であるお前達を斬ることになろうと、迷ってナドいられならないンだッ!」
サクラ「やめて、ムサシ!!」
ムサシ「いま、俺が断ち切る......この刃が、お前らを破滅へと導くだろう——なアッ!?」

その時だ。
何発かの破裂音が廃屋に響き、同時にムサシの剣が弾かれた。
右肩には銃創が出来ている。
音がした方向——窓際に立つ一体のアニマギアに、その場にいる誰もが視線を向けていた。

EPISODE 44

コジロウ「ちょっとおイタが過ぎるぜ、ムサシちゃん」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 43

仰々しく武装したムサシは一切動くことなく黙って黒田の肩で佇んでいた。
なぜムサシがここにいるのか——否、いまは考えるよりも優先すべき事がある。

キョウ「サクラ姉ちゃん、ちょっとごめん」
サクラ「きゃっ!?」

キョウはサクラを黒田から隠すように、自分のマフラーの中に押し込んだ。
代わりに、肩に乗ったガオーがいつでも飛び出せるように、黒田へ向けてまっすぐと右腕を伸ばす。
臨戦態勢だ。

黒田「久しぶりだね、天草キョウくん......元気にしていたかな」
キョウ「......なにしに来たんだ」

ムサシがあちら側についていることも気になったが、そもそも何故この場所に黒田がいるのか、それが問題だった。

キョウ「答えろ......!」
黒田「そう熱くならないでくれ。しかし疑問はもっともだ。恐らく聞きたいことがいくつかあるはずだろう。
よろしい、一つずつ説明しようか」

黒田は手にしていたメモ帳を懐にしまうと、人差し指を立てて続けた。

黒田「まず一つ。なぜ僕がここにいるのか。それはご想像の通りだと思うが、
そこの“イデアデバイス”——紅葉サクラを回収しに来た」
キョウ「イデア......デバイス......?」
黒田「おっと、慌てないでくれたまえ。回答は順番に、だ」

やけに演技がかった、勿体ぶるような男の口調に苛立つ。
黒田は焦るこちらを無視して二本目の指を立てる。

黒田「この場所が分かった理由だが、ッハハ。あまりに当然のことで答えるのも馬鹿馬鹿しいがね。
紅葉サクラのその身体を作ったのはこの僕なんだ。位置情報を送る発信器ぐらい組み込んであるさ」
ガオー「てめぇッ!!」

事もなげにいう黒田に、怒ったガオーが先走ってキョウの右腕から飛び出した。
火花と金属音が廃屋に響く。
ガオーの爪が、黒田の鼻先で止められていた。

ガオー「ムサシ!?」

ムサシの剣の腹が、ガオーの爪を受け止めていたのだ。

ガオー「どうして......ッ!」
ムサシ「............」
ガオー「黙ってねえで、なんとか言ってくれよ!どうしてそんな奴をお前が守るんだ!?」

EPISODE 43

EPISODE 43

着地するガオーとムサシ。
その光景を見下ろして、黒田は続く三つ目の指を立てた。

黒田「このデュアライズカブトがここにいる理由だが——」
ムサシ「俺は自分の意志でここにいる。邪魔をするな、ガオー」
黒田「——だ、そうだよ」

肩を竦める黒田に、キョウが声を張り上げた。

キョウ「お前、ムサシに一体なにを!」
黒田「勘違いしないでくれ。誓って言うが、僕は洗脳や思考回路への介入など一切していない。
正真正銘、彼は自分の意志でここにいるんだ...
...まぁ、偶然出遭った際に武装を貸し出すくらいのことはしたが」
キョウ「なんだって......!?」
ガオー「ふざけやがって、誰がそんなこと信じるかよ!......なっ!?」

ガオーの上段から、ムサシの両手に握られた二振りの剣が振り下ろされた。
ガオーはすんでの所で身を躱し、キョウの足下まで距離を取る。

ガオー「な、なにすんだよ!」

床に突き刺さった剣を引き抜きながら、ムサシは凄んだ。

ムサシ「お前達さえいなければサクラは......ッ!」
ガオー「お、オレ達がなにをしたっていうんだよ!?」
キョウ「ムサシは獣甲屋にさらわれたサクラ姉ちゃんを探しに行ったんだよな!?それがどうして——」
ムサシ「もはやお前達と交わす言葉などないッ!!」

ムサシのブラッドステッカーに異変が起きる。
FBS発動による右半身の稲妻模様が、わずかながらに左半身にも浸食を始めたのだ。

ムサシ「サクラを守るためならば——」

その様子を見た黒田が、ニヤリと口元を歪めたのをキョウは見逃さなかった。

ムサシ「——たとえお前達が相手であろうとも......俺は斬るッ!!」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 42

サクラ「紅葉サクラは、アンドロイド......なんだ」

真実を口にすれば後悔すると思っていたが、存外に自分が冷静でいることにサクラは気が付く。

——これは、いまでしか伝えらない言葉だから。

以前までは、同じ話をしても冗談としかとられなかったはずだ。
しかし、いまのサクラはアニマギアである。
そのことが話に真実味を与え、かつ自分の迷いを断ち切っているのかも知れなかった。

ガオー「アンドロイドってなんだ?」
サクラ「人間そっくりのロボット、ってこと」
ガオー「あー?つまり、サクラは人間そっくりの......って、えええーッ!?」

今回ばかりはガオーのリアクションも予想通りだ。
でも、誰かに驚かれても不思議と心に傷を負った感覚はなかった。
むしろスッキリした気分だ。
そういえば、一番伝えたかった相手はどんな顔をしているだろうかと、キョウの顔を見上げる。
すると、彼は涙をこらえるように天を仰いで、鼻をすすったあと微笑んで見せた。

キョウ「......ありがと、サクラ姉ちゃん」
サクラ「——え?」
キョウ「秘密を誰かに打ち明けるのって、勇気いるもんな」

ああ、そうか。
この少年は、きっと本当は声を上げて驚きたいはずだ。
そんなはずじゃないって、泣きたいはずだ。
もしかしたら、逃げ出したい想いもあるかも知れない。
だけど、その爆発しそうな感情をぐっとこらえて、キョウはサクラを気遣うことを優先したのだ。

——本当に、大人になっていくんだね。

人間とアンドロイドの決定的な差は、成長の有無だと思っている。
サクラは肉体的成長がない自分を、時に呪うことがあった。
それゆえに、戦いの中で大人になっていくキョウが、いつか自分を追い抜いて、
傍にいられなくのではないかと恐れていたのだ。
だけど、そんなことはとんだ取り越し苦労だったらしいと、キョウと話して安堵した。

サクラ「キョウくん。私のほうこそ、ありがとね」

こんな気持ちになるのは、彼と出会った時以来だ。
サクラが何者であろうと、どんな形に変わってしまったとしても。
いままでと同じように接してくれるキョウが、こんなにも頼もしい。

転居と転校の繰り返しに嫌気がさしていた、あの日々に突如現れた天草キョウという光は、
いまも変わらずサクラを照らしてくれていた。

だが、そんな柔らかな時間は長く続かない。

サクラ「あ......ぐぅ......ッ」
キョウ「サクラ姉ちゃん!?」

突如として、サクラの思考回路に激痛が走る。
たまらずキョウの手の上でうずくまると、すぐにサクラはこの頭痛の正体に思い至った。

サクラ「近くに......いる......ッ!!」

いま、鮮明に思い出した。
施設から抜け出す前のことだ。
自分の記憶が曖昧になる直前に、全く同じ痛みを味わっていた。

サクラ「私の中から、出て行って......ぐううっ」

キョウとの記憶を上書きするように、脳裏にとある人物の顔と声が強烈に浮かんでくる。
黒髪黒服の男。
獣甲屋の首魁。
サクラの意識をこの体(アニマギア)へと移した張本人。

???「驚いた。気合いだけで≪絶(イデア)≫を拒むのか」
サクラ「——黒田、ショウマ......!」
キョウ「なんだって......!?」

気付けば、黒田が廃屋の入り口で佇んでいる。

黒田「よほどその少年のことが大切と見えるね。
なるほど、意志がシステムを凌駕するテストケースとして記録しておくとしよう」

黒田はこともなげに手帳を取り出し、何かを書き込んでいる。
否。
一同の動揺を誘うのは、黒田の出現だけではなかった。
それよりも、なによりも。

サクラ「なんでアナタがそこにいるの......!?」

キョウも、ガオーも、ペンギオス達でさえ、黒田の肩に立つ一体のアニマギアを見て言葉を失っている。

サクラ「ムサシ......!!」

EPISODE 42

サクラの相棒である蒼いアニマギアが、鋭い眼光でこちらを睨み付けているような気がした。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 41

キョウ「———そう、だったんだ」

サクラは、胸の中で自分をあざ笑った。
“行方不明になった友達が、アニマギアの姿になって目の前に現れた”なんて荒唐無稽な話が、
我ながら馬鹿げていると思ったからだ。

ただ、自分を知る人間で真っ先に会いたかったのは彼だ。
他の誰でもない、天草キョウだからこそ、迷うことなく打ち明けることが出来るのだから。
すぐに信じてもらえるとは思っていない。
絶句が必然で、疑われるのも当然だろう。
しかし、続くキョウの言葉はサクラが予想していたものとは少し違っていた。

キョウ「ああ、だめだ、ごめん!」
サクラ「......え?」

キョウは頭をぶんぶんと横に激しく振ると、何故か両手を合わせてこちらに謝った。

サクラ「どうして謝るの......?」
キョウ「だってオレがこんな顔してたら、サクラ姉ちゃんがもっと困っちゃうじゃないか!」

そう言いながら彼は、歩み寄るなり屈んで手を差し伸べる。
乗って、と彼の瞳が言っていた。

キョウ「確かに驚いたけど、そんなのオレにとっては全然関係無いよ!」
サクラ「ちょ、ちょっと待って、私、アニマギアなんだよ......こんな話、信じてくれるの?」
キョウ「うん。だって、サクラ姉ちゃん本人なんだよね?」
サクラ「そうだけど、それなら、ほら!もっとこう『ええっ』とか『うわあ』とか、色々あるでしょ!」
キョウ「その姿になって辛いのは、そっちじゃないか。
そんなサクラ姉ちゃんが必死に伝えた言葉なら、オレは絶対に信じられる」
サクラ「———キョウくん......」

まさか言葉を失うのが自分の方だとは思いもよらなかった。
根負けしたように、サクラは差し伸べられた掌に歩を進める。
ゆっくりと持ち上げられると、いままで見てきた物よりも何倍も大きく見える彼の瞳に吸い込まれそうだった。
一寸法師や親指姫はこんな気持ちだったのだろうか。

キョウ「会えて良かった......ずっと探してたんだ」

その一言に、サクラは納得するしかない。
思えば、彼はいつも“こう”だった。
誰かの問題を真正面から受け止めた上で、決して差別や忖度をしない。
こういう、他者を決して軽んじない所に惹かれたからこそ——

サクラ「私も......会いたかった、よ」

——サクラも、最初に会うのは天草キョウだと決めたのではなかったか。
サバンナ帰りという属性に偏見を抱いた覚えはないが、キ
ョウが時折見せる器の大きさは環境に育てられたものに違いない。
そんな彼に救われたのは、これで何度目だろうか。
キョウだけではない。

ガオー「あのサクラがこんな小っちゃくなっちゃったのかぁ......なんだか親近感沸くぜ!」

キョウとは違うアプローチながらも、こちらを良い意味で気遣わないガオーの物言いがなんだかおかしくて、
サクラは吹き出すように笑い声をあげた。

サクラ「......あははっ、そうだね。ガオーがこんなにおっきく見えるの、新鮮かも」

EPISODE 41

ガオーもまた、サクラを救ってくれる大切な友人の一人だ。
自分の姿が変わっても、変わらずに受け入れてくれる二人の存在が、
自分にとってかけがえのないものだと再認識する。

サクラ「あのね、キョウくん」

だからこそ、彼らに聞いて欲しい話がある。
伝えなくてはいけない話が。

サクラ「......お父さんから、私について何か聞いてる?」
キョウ「えっと、確かサクラ姉ちゃんには——」
ガオー「——特別なチカラがある、って言ってたよな」

やっぱり、とサクラは頷いた。
思った通り、父はサクラのことを最後まで“隠し通す”つもりだったのだ。

サクラ「チカラ、か......ううん、本当はね、ちょっと違うんだよ」

そして、それが父なりの自分を守る方法だと理解しているからこそ、
サクラはいまからキョウ達に真実を話すことを心の内で懺悔した。

サクラ「あのね、私、本当は——」

——ごめんなさい、お父さん——

でも、こうなった以上。
そして、これ以上。

サクラ「アニマギア(この姿)になる、ずっと前から」

自分を必死に探してくれたこの二人に。

サクラ「キョウくんと出逢う、もっともっと前から」

嘘を吐き続けることなんて出来るはずがなかった。

サクラ「——人間じゃ、ないんだ」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 40

フェニックスネオギアスに紅葉サクラが連れ去られてから、早二ヶ月が経とうとしていた。

この短期間に、ゴウギアスとドラギアスという二体のエンペラーギアを撃破したことは
確かに喜ばしいニュースだ。
加えて、長年不在だったレオスが相棒である飛騨ソウヤの元に戻ってきたのも大きい。
打倒獣甲屋を掲げる者達にとって吉報が続く期間ではあった。

しかしそれらのニュースをもってしても、天草キョウの焦りを拭い去ることは出来なかった。

なにも周りが悠長に構えていたわけでもない。
ソウヤも。コノエも。ヤマトも。
サクラに関わっていた誰もが焦り、この二ヶ月のあいだ必死に捜索を続けている。
だがそれ以上にキョウは焦っていた。
それほどまでに、キョウは自分の知らぬ間にサクラが敵陣へと連れ去られたことが、
相当なショックだったのだ。

そんな折だ。
修理中のレオスから、獣甲屋の拠点の位置を覚えているという話が飛び出した。
あくまで複数ある拠点の一つだけだとは言うが、
行き詰まっていたキョウ達にとってこれ以上なく有益な情報である。

さらに興味深いのはそこで出逢った一体のアニマギアの話だ。
その施設で少女のような型のアニマギアが囚われていたらしい。
それが、写真で見た紅葉サクラと近しい雰囲気を持っていた—
—というのが脱出の手助けをしたレオスの所見である。

サクラと似ていて、獣甲屋に囚われていたという共通点。
それは、焦るキョウが走り出すなによりの理由になる。
キョウは周りの静止にかまうことなく、脇目も振らずモミジテクニクスを飛び出していた。
目的地は無論、レオスから聞いた獣甲屋の拠点だ。

ガオー「お、おい!キョウ、一人で飛び出して良かったのか!?」
キョウ「サクラ姉ちゃんが捕まってもう二ヶ月経つんだ!
たとえ少しでも、手がかりがあるなら動かなきゃ......!」

件のアニマギアがすでに脱出したあとだとしても、サクラにつながる何かが残っているかも知れない。
その可能性があればこそ、立ち止まる訳にはいかなかった。

ガオー「そうか......そうだよな!おっし、こうなりゃとことんだ!」

ガオーもキョウの気持ちを察しているからか、強く止めることはなく、むしろ協力的な態度だ。
ガオーが自分と同じ気持ちでいてくれる。
そのことが妙に嬉しくて、キョウの頭に昇っていた血がスッと引いていく。

キョウ「サンキュー、ガオー!早くサクラ姉ちゃんを見つけてみんなを驚かせような!」
ガオー「なんでお礼を言われたのかわっかんねーけど、みんなを驚かせるのは賛成だぜ!」

冷静さを取り戻したキョウは、ガオーと共に目的地へ急ぐ。
すると、道中にいた一体のペンギオスが、慌てた様子でガオーに声をかけてきた。

EPISODE 40

ペンギオス「ようやく見つけたゼ!キョウさん達を探してるアニマギアがいるんだヨ!」
ガオー「なんだってぇ?悪いけど、いまそれどころじゃねえんだけどな」
ペンギオス「そう邪険にしないでくれヨ。何日も前からチームペンギオスで匿ってんだからサ!」
キョウ「キミ達が匿ってるの?何日も前から?」
ペンギオス「そうそう!なんでも他の人には伝えずに、まずキョウさん達に会いたいんだって、
女の子みたいなアニマギアが無理いって聞かねえのヨ。あまりにもカワイイもんだからオレらも骨抜きでサ、
なんてえの?守りたくなるっていうか?そうだな——」

キョウ&ガオー「——女の子みたいなアニマギアだって!?」

ペンギオスに案内されて辿り着いたのは、キョウ達が住む街と隣町を隔てる河川敷のそばにある廃屋だった。
レオスが言っていた獣甲屋の拠点にも近い。
探していたアニマギアがそこにいると確信するには十分だった。

そして、数体のペンギオスに囲まれてたたずむそのアニマギアを見た瞬間、キョウは驚いた。
本当に、その姿が紅葉サクラに似ていたからだ。

EPISODE 40

驚きはそれだけにとどまらない。

???「......キョウくん、だよね?」
キョウ「ッ!その声、まさか——」

目の前のアニマギアの声が、聞き馴染んだ少女の声と全く同じだった。
ありえないと思っていても、キョウの直感が“間違いない”と告げている。

キョウ「——サクラ姉ちゃん......なの?」

サクラ「............うん、そうだよ。私、紅葉サクラだよ」

会いたかった。
そう告げる彼女の声は、とても喜んでいるようには聞こえない。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 39

ソウヤは泣き出したくなるのをぐっとこらえた。
自分を守ると言った“相棒”の想いに応えたい。
数え切れないほどの苦悩を背負ってきた彼の小さな背中に並ぶならば。
涙なんかよりも、もっとずっと相応しい表情があるはずだ——そう思った。

ソウヤ「......行くよ、レオス!」

だから立つ。
レオスに相応しい相棒になるために立ち上がったソウヤの目に迷いはない。
レオスは小さく頷くと、ソウヤの構えた掌の上になにも言わずに飛び乗った。
なつかしい、と思ったのはソウヤだけじゃないはずだ。
かつて一緒に戦っていた時は、いつだってレオスはこの体勢から飛びだしていたのだから。

レオス「うおおおおおおッ!」

掌から相棒がドラギアスに向かって飛翔した。
ただ黙って見ている敵ではない。近付くレオスに向かって何度も槍の先端から火球を吐き出していた。

ソウヤ「すごい......!」

レオスの背中のブースターが光る度に、目にも留まらぬ速度で直線的に移動していく。
稲妻のような軌跡を描きながら、レオスは的確に敵の火球を弾き飛ばした。

ドラギアス「オニキス、それが貴様本来の姿だというのなら失望したぞ。
破壊だけを求めた暴力の権化のような貴様はどこに行ったというのだ......ッ!」

しかしそれはドラギアスの術中にはまった結果らしい。
ドラギアスはレオスと同等か、それ以上の速度で宙を蹴り空を駆けた。

ドラギアス「あまりにもッ!ぬるいッッ!」

火球によって軌道を制限されたレオスに、
ドラギアスは自ら突っ込むことでレオスをはたき落として見せたのだ。
真っ逆さまにレオスが地面へと吸い込まれていく。

ソウヤ「ギガトプス!レオスを!」
ギガトプス「了解であります!!」

ソウヤの指示が飛ぶなり、ギガトプスは瞬時にタンクモードへと変形し、
地面に激突する寸前だったレオスを背中で受け止めた。

レオス「くそ!まだだッ!」
ソウヤ「レオス、待って!」

無理矢理立ち上がり、飛び出そうとしたレオスをソウヤが静止する。
止められた意図が分からなかったのか、レオスは強ばる身体のままソウヤを見上げた。

ソウヤ「流石はエンペラーギアだ。僕らだけじゃ勝つのは難しいよ——」
レオス「ソウヤ......くん......?」

進化し姿が変わったレオスといえど、エンペラーギアを前に相棒が勝つビジョンはソウヤには見えなかった。
しかしソウヤの瞳の奥には、むしろ希望に満ちた光が宿っている。
勝てないのに、なぜ。
そんな疑問に答えるように、ソウヤが言う。

ソウヤ「——でも、キミはもう一人じゃないんだ、レオス」

その言葉を証明する光景がソウヤの視線の先で生まれた。
宙に浮かぶドラギアスに、合体が解除された五体の小さなペンギオス達が果敢に突進していくのだ。
無論、ドラギアスはそれを容易く退けていくが、ペンギオス達は諦めることなく何度も繰り返し攻撃していく。

ドラギアス「なんだ貴様らぁ......雑魚どもが我らの一騎打ちを邪魔するなァ!」

ペンギオスA「残念ながらエンペラーギアのこだわりに付き合う道理はねえのヨ!」
ペンギオスB「こちとら街の平和を守るためなら手段を選ばねぇサ!」
ペンギオスC「たとえ合体が解けようと!オレらの身体は小さくても!」
ペンギオスD「忘れちゃならねえことが一つあるヨ!」
ペンギオスE「オレらは、誇り高きチームペンギオス!数で街を守る、正義の味方だってことサ!」

その叫びと同時に、敵の背後に新たに大量の影が現れた。ペンギオスだ。
一体一体は小さな影だが、それらは跳ねるように飛びかかりながら合体していく。
瞬く間に、四体のユナイトペンギオスがドラギアスを取り囲むように肉薄していた。

ペンギオスA「オレらも黙っちゃいられねえ!放熱は済んでるよなァみんな!?」
ペンギオスB〜E「おうよ!!」

啖呵を切った五体のペンギオスも、熱に充てられたように雄叫びを上げて再び合体した。

ユナイトペンギオス×5「エンペラーギアを確認。戦闘モードに移行します」
ドラギアス「——ッハハハハ!良いだろう、理解した!!!!
どうやら、貴様らまとめて我が炎に消し炭にされたいらしいなああああああッ!!!」

ユナイトペンギオスとドラギアスが激しい攻防を始めるのを、ソウヤはレオスと共に見ていた。

ソウヤ「もう一度言うよ。レオスはもう一人じゃないんだ。僕とキミの二人だけでもない。
共に戦う仲間が、こんなにもいる......!」
ギガトプス「私のことも覚えておいてほしいのでありますな!」
レオス「......みんなの想いに応えるために、ボクはどうすればいい。教えて、ソウヤくん」
ソウヤ「それをこれから僕と一緒に探すんだ。だから、その一歩を踏み出そう!」

EPISODE 39

ドラギアス「所詮は雑兵よなぁ!!」

ドラギアスは五対一の状況を物ともせず、その槍で軽々しくユナイトペンギオスをいなしていく。
だが。

ソウヤ「ペンギオス!!5秒でいい、ドラギアスの動きを止めてくれ!!!」
ユナイトペンギオス「命令を受諾。対象を捕縛します」

ソウヤの指示があってすぐ、ユナイトペンギオス達は攻撃を捨てた。
代わりに、その頑丈な肉体を壁にしてドラギアスを捕縛する。
宙を自由に飛び回っていたドラギアスが、大地に縫い付けられるように身動きを封じられていた。

ドラギアス「ええい!鬱陶、しい、ぞ......ッ!!」
ソウヤ「いまだ、レオス!!」
ドラギアス「なに、この状況で......!?」

ドラギアスの周囲はペンギオスが囲んでいる。攻撃する隙間などどこにもないはずだ。
否、一点だけある。

ドラギアス「上か......ッ!!」

そこに、中空から大地に向けて仰々しい銃口を構える黒獅子がいた。
右腕にギガトプスの装備を付けた、カスタマイズされたレオスだ。

ギガトプス「名付けて、レオス:ギガエクスターミネイションであります!!」

EPISODE 39

レオス「行くぞッ!!!」

レオスが射撃を開始すると同時、ユナイトペンギオス達はドラギアスを残して四散する。

ドラギアス「雑兵のパーツでカスタマイズしたところで、このエンペラーギアである我がやられるはずが...
...ぐううおおおおおッ!!??」

ドラギアスの予想を裏切るように、超高出力のレーザーとミサイルの雨が降り注いだ。

ソウヤ「今のレオスの出力と、ギガトプスの装備があれば......!」
レオス「うおおおおおおおおッ!!!」
ドラギアス「こ、の......く......認めんぞぉおおおおおおッ!!!」

レオスの一斉射撃が終わる頃、そこには戦闘不能となったドラギアスヘルが残っていた。

ドラギアス「みとめん......みとめん、ぞ......われ、は......」

あれだけの攻撃を受けて尚、消滅せずに意識すら保っていることにソウヤも驚いたが、
これ以上ドラギアスが暴れることはもうないだろう。
ソウヤだけでも、ギガトプスだけでも、ユナイトペンギオスだけでも為しえない。

レオスだけでも、決して到達できなかっただろう。
皆がいたからこそ、エンペラーギアに勝利できた事実を、この場にいる誰もが疑っていなかった。

ソウヤ「おかえり、レオス」

だから、もう一度飛騨ソウヤという相棒の手を取ることに、レオスも一切迷わなかった。

レオス「——うん、ただいま、ソウヤくん」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 38

自分を庇うように現れた人間。
ドラギアスヘルが放つ炎。それを背中で受ける少年を見て、オニキスの思考回路がわずかに揺らいだ。

——いつも“ボク”の前に現れる、この人間は誰だ。

不思議と、この人間を見ると頭が痛くなる。
なぜ、こんなにも心が引き裂かれそうになるのだろう。

なにも分からないまま、ただ目の前で炎に耐える人間を見つめることしか出来ない。
なにも分からない。
目の前の人間が誰なのか。
それどころか、自分は一体何者なのか。

——どうして、戦ってるんだっけ。

覚えているのは獣甲屋への憎しみだけだ。
理由などとうの昔に忘れ去ったが、その感情だけが心の奥深くに刻まれていた。

なぜ、自分が獣甲屋をこんなにも憎んでいたのか、その理由は一体何だっただろうか。
FBSの影響で記憶回路にバグを抱えて以来、過去のことをここまで鮮明に思い出すことなどなかった。

●●●「今度こそ、僕がキミを守る......レオス......!」

だが、この声が。
傷付きながらも“ボク”を守ろうとする、この少年の姿が。
オニキスのノイズがかかった思考を鮮明にしていく。
失われていた理由を、オニキスは取り戻そうとしていた。

オニキス「............守る」

かつても同じ言葉を耳にしたことを、彼は覚えている。

オニキス「誰が......いや......ボクが、言ったのか?ぐ......ッ」

守る。
その言葉をトリガーに、頭に激痛が走った。
優秀なアニマギア。優秀な司令塔。
二人がそんな風に呼ばれ出してから、間もなく現れたのが“黒い男”だ。

『............ス............レオス............ッ!』

獣甲屋を名乗るその男が連れてきた暴走アニマギアの大群に、当時の自分はまったく歯が立たなかった。
傷付き倒れる●●●を目の前に、自分もまた動くことが出来なかったのだ。
そうして、“ボク”は獣甲屋へと連れて行かれた。

薄暗い獣甲屋の施設で、黒い男が薄ら笑いを浮かべて言う。

『キミほどの優秀なアニマギアを探していた』

男の声を思い出す度に、頭痛がひどくなる。

『FBS(フォビドゥンビーストシステム)はまだ開発段階でね』

頭痛がひどくなれば、記憶が鮮明に蘇る。

『臨床実験が必要なんだが、並のアニマギアでは耐えられずに壊れていくばかりだ』

抜け落ちた大切な何かを。

『キミは、果たして無事でいられるかな』

この痛みが思い出させてくれる。

『●●●という少年が真に実力者であるならば。
恐らく、キミは素晴らしい結果を残すことだろうね』

............●●●?
●●●とは、誰だ。

●●●「キミがどんな姿になっても......キミが過去を失っても、
僕は絶対にキミを忘れない......僕は......僕だけは......!」

ずっと、キミの味方でいる。

炎を背に受けて、呼吸すらままならないはずだ。
だというのに、目の前の少年は涙を流しながら絞り出すように“ボク”に語りかけてくる。

この顔は、“ボク”が獣甲屋の暴走アニマギアに破壊されていった時と同じだ。
動けなくなった“ボク”が、黒い男に捕まった時に、涙を流していたあの“少年”だ。

EPISODE 38

オニキス「この少年は......キミは...誰なんだ......」

ドラギアスヘルが放つ炎の奔流が収まった頃、よろめいた少年が音を立てて倒れた。
しかし、彼の目は死んでいない。
起き上がる力も残っていない少年は、伏せたままドラギアスヘルを睨みつけている。

ドラギアス「なんだ...?その目は......崇高なる聖戦を愚弄するか、人間!」

ドラギアスはようやく炎がオニキスにあたっていないことに気付いた様子で、不服そうに右手の槍を振りかざした。

ドラギアス「良いだろう!ならばその首、オニキスの前に叩っ斬るとしようかぁあああッッ!!」

ドラギアスヘルが上空から急接近を始めると、オニキスの思考回路がオーバークロックを起こした。
異常なまでの思考速度が、周囲の光景をスローモーションに変えていく。

やめろ。
やめてくれ。
彼を傷つけるな。

縋る思いで周囲に目を向けた。
いつの間にか、ペンギオスの合体状態が解除されている。頼れる状態ではなかった。
ギガトプスもこちらに向かって駆けだしているが、ドラギアスの方が確実に速い。

オニキス「彼、を、傷つけ......るな......ぐああああっ!」

痛む。痛む。痛む。
記憶が蘇るにつれて——失ったモノを取り戻していくにつれて、
オニキスの頭痛は耐えがたいモノへと代わっていく。
すべてがゆっくりと進む光景の中で、オニキスの全身の回路が焼き切れそうな程に熱くなっていく。
FBSの反動、だろうか。
憎しみから来る内なる炎が、自我さえも吹き飛ばそうとする痛みとなってオニキスを苦しめる。
憎しみだけが、オニキスを動かす原動力。
だからこそ、そのツケがいま回ってきていた。

......違う............!

オニキス「......ボクが、失いたくなかったモノ......ッ!」

そうだ。
そんなモノが、一つだけあった筈だ。

こんな自分に残る、たった一つの大切なモノを忘れたくなかった。
だから記憶が鮮明になるにつれ増していくこの痛みに、
無意識の内に抗ってきたのではないのか。

オニキス「ボクが......ボクが守りたかったモノ......」

自分が戦う理由は、憎しみなんかじゃない。

オニキス「ソ......ソウ、ヤ............」

瞬間、あれほどまで苦しんでも思い出せなかった“彼”の名前を、“ボク”は自然と口にしていた。

オニキス「............ソウ...ヤ...く............!!」

その名前を口にした瞬間、目の前で傷つき倒れている“彼”は驚きの表情を浮かべた。

自分にとって大切な何かが目の前にあるに違いない。
しかし、どうしても思い出せない。

FBSのプログラムが思考回路へと激痛を与え、記憶の再生を邪魔していた。
彼を見る度に走るその痛みは、もはやオニキスの思考回路を崩壊させようとしている。

そしてオニキスが痛みに抗うその最中だ。
ドラギアスの槍に収束された爆炎が、今まさに“彼”に向けて放たれようとしていた。

オニキス「キミは...誰なんだ...ボクにとって......キミは...キミは......ッ!!」

この問いに対して“彼”は静かに微笑んだ。

●●●「レオス...僕は...ずっと...ずっとキミの友達だ...」
オニキス「............っ」

この優しく暖かい笑顔をどこかで見た記憶がある。

それは、まだ自分が生まれたばかりの頃。
自分を手にした少年の顔だ。

EPISODE 38

『僕の名前はソウヤ。今日からずっと友達でいようね、レオス!』

そうだ。
自分がどこで生まれ、どこで育ったのか。
誰と共に過ごしたのか。
どんな風に、過ごしてきたのか。

痛みを超えた先で、大切な少年の笑顔と失われていた記憶が鮮明に蘇っていく。
瞬間、オニキス——否、レオスのブラッドステッカーが、激しく明滅する輝きを放った。

コノエ『この光......ムラマサの時と同じ......!!?』

どうして思い出せなかったんだ。
決して忘れてはいけなかった、この記憶を。
自分にとって、誰が本当に大切な存在なのかを。

——ソウヤ......ああそうだ......彼だ......彼がボクの......!!!

しかし、激しい光を放つレオスを気にも止めずに、
ドラギアスはソウヤの命を奪おうと容赦なく炎を放った。

レオス「や、め、ろおおおおおおおおおおおおッ!!」
ドラギアス「な......ッ!?」

レオスが両腕に構えていた武器が瞬時に組み代わると、展開したブースターが蒼炎を吐き出す。
そのままドラギアスヘルに全速力で突っ込んだ、
激突した二体のアニマギアを中心に衝撃が走り、土煙があたりを覆い尽くす。

レオス「ごめん......キミをこんなに傷つけて......ボクはパートナー失格だ......でも」

その煙の中で、レオスは静かにソウヤの前で立っていた。

レオス「今度こそ、ボクがキミを守る......ソウヤくん!」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 37

度重なるエンペラーギアの出現に、ABFは以前から開発していたユナイトペンギオスを街中に配備していた。

大量の配備を容易にするために小さな個体とはなっているが、
有事の際には合体することでエンペラーギアと互角に渡り合うことの出来るアニマギアである。

その複雑な機構ゆえに開発が遅れていたが、キョウが回収していたライギアスのニックカウルを分析することで、
早期の実戦投入が可能となったらしい。

バイスとシュバルツの合体機構や効率よく電気エネルギーを攻撃に利用する技術は、
形を変えて平和を守るために使われていた。

ソウヤ「——それで、ペンギオスが配備された途端現れたのか、エンペラーギア!」

ユナイトペンギオスが黒いエンペラーギアと戦っているという報告を受けると、
ソウヤは素早く装備を調えて飛び出していた。
隣にはバスターギガラプトではなく、ペンギオスと同じく新型の青いアニマギアがいる。

ギガトプス「まったく、タイミングが良いのか悪いのか判断に悩むところですな!」

ラプトは現在コノエの手によってラボで調整を受けている。
その代わりに、テスト運用を兼ねて貸し出されたのがこのタンカーギガトプスだ。

ソウヤ「タイミングは良かった、というべきなんだろうね......僕らも急ごう!」
ギガトプス「了解であります!」

そして、現場へと到着したソウヤ達。
目の前でペンギオスと刃を交えているエンペラーギアを見て、ソウヤは驚きの声をあげる。

ソウヤ「あれは、ブレイズドラギアス......なのか!?」

思わず疑問形になったのも無理からぬことだ。
姿は確かにブレイズドラギアスヘルだったが、動き方がまるで違う。
スタジアムに現れた時は、荒々しくはあってもどこか気品が備わった戦い方だった。
だが今、ペンギオスに向かって繰り出されているのは、
まるで怒りを周囲に叩きつけるかのように暴れるだけの稚拙な攻撃だ。

ソウヤ「最近暴れていた噂の黒いアニマギアはドラギアスのことだったのか......!?」

ドラギアス「ウォオオオオアアア!!!邪魔だああああああッ!!」
ペンギオス「対象の攻撃力増加を検知。危険です。離れてください。危険です。離れてください」
ソウヤ「いけない!ギガトプス、ペンギオスの援護に回るんだ!」
ギガトプス「サー・イエッサー!!」

EPISODE 37

振りかぶったドラギアスヘルの槍を、ペンギオスが受け止める。
その隙にギガトプスが敵に射撃を浴びせると、ドラギアスヘルが硝煙を振り払って叫んだ。

ドラギアス「我が覇道を邪魔する狼藉者は貴様かぁああああああッ!?」

ペンギオスとギガトプスが互いに連携し合い、暴れるドラギアスをいなしながら戦いを繰り広げていく。
しかし2対1の状況でも敵が怯む様子はまったくなく、こちらも決定打が与えられないままでいた。
そんな折りに、ソウヤの端末にコノエからの緊急通信が繋げられた。

コノエ『ソウヤ君、大変だよ!そっちに急接近する敵性反応あり!
1体だけだけど、暴走してるみたい......多分、噂の黒いアニマギアだよ!』
ソウヤ「え!?でも黒いアニマギアはいま目の前に......うわ!」
ギガトプス「なにごとでありますか!?」

爆音とともに、突風のように駆け抜けた影がドラギアスヘルを横殴りに吹き飛ばした。

ドラギアスヘル「ハ、ハハハ!現れたか!!」
???「WARRRRRRRRRRッッ!!!!」

EPISODE 37

ソウヤ「オニキス......!!」

ソウヤは自然とその名を口にしていた。
黒いアニマギアは2足歩行型で、ソウヤの知る姿とはまるで違う。
だが、ソウヤは確実にそれがオニキスであることを感じ取った。
答え合わせをするように、ドラギアスヘルが黒いアニマギアに槍の先端を突きつけた。

ドラギアス「オニキスゥウウウ、探したぞ......!貴様と決着をつけなければ、
我は前に進めぬのだ......我が覇道のために!!!」
ギガトプス「ソウヤ殿、いったいどうすれば......!」

迷う暇はない。

ソウヤ「ギガトプス、全力でオニキスを援護だ!
コノエさん、ペンギオスの標的からオニキスを外せますか!?」
コノエ『おっけー、まっかせてー!』

更に展開する激しい攻防は、いまや超変則的な勢力争いに発展している。
いうなれば2vs1vs1。無差別に攻撃してくるドラギアスヘルとオニキス。
そしてドラギアスヘルを標的に動くペンギオスとギガトプス。
地面に次々と穴が空いていくが、そのほとんどがオニキスとドラギアスヘルの攻撃によるものだ。
その最中、ドラギアスヘルはオニキスが生んだ僅かな隙を見逃さなかった。

ドラギアス「時は満ちた!いまこそ、どちらが強いかハッキリするだろう!!オニキスゥウウ!!!」

ドラギアスヘルの槍が妖しく燦(きら)めき、先端から竜の吐息を思わせる轟炎が吹き出した。

コノエ『ソウヤくん!?』
ギガトプス「ソウヤ殿ォオオオオオオ!!」

それを見て固まるオニキスを庇うように、ソウヤが炎の前に立ち塞がっていた。
ソウヤ「今度こそ、僕がキミを守る......レオス......!」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 36

雨の中、人通りのない深夜の街を弱々しい足取りで進む。
目が覚めた後、自分を外に連れ出してくれたのは黒いアニマギアだった。
すぐに黒いアニマギアは姿を消したが、いまなら逃げられると駆け出したのが数時間前だ。

サクラ「......」

なぜだか大きく見える街。
いつもと違う光景の中、重い足を引き摺るように歩くのは、紅葉サクラだ。
14歳。
父は二足歩行アニマギア研究の第一人者である紅葉ヤマトで、母は既に亡くなっている。
自分のパートナーはデュアライズカブト。
ムサシと名付けた。

サクラ「......うん、大丈夫」

昔のことは思い出せる。
ひどい頭痛と共に、サクラは曖昧になりそうな自分の記憶を、何度も何度も確認していた。

サクラ「それなら」

もっと昔のことはどうだろう。
この街に越してきて間もなく、話しかけてきた男の子がいたはずだ。
名前は、

サクラ「天草、キョウくん」

そう、彼だ。
サクラが引っ越してくる直前にこの街に来たという、小学5年生の男の子。
自分がまるで弟みたいに思っている彼は、10歳までなんとアフリカのサバンナにいたらしい。
内向的な性格をしていたサクラだったが、その話を聞いてすぐに彼に興味を持った。

サクラ「キョウくんが興味を持っていたのは、私よりもムサシだったっけ」

彼はずっとアニマギアと友達になることを夢みていて、
私の傍にいたムサシを見るなり笑顔で話しかけてきたんだった。
そこからだ。
自分にとって、久々に楽しいと思える日々が過ごせるようになったのは。
彼にアニマギアの作り方や接し方を教える内に、一緒にSNSで遊ぶようになって、
なんとなく苦手に思っていたムサシが大切に思えるようになった。

サクラ「......うん、大丈夫。ちゃんと思い出せる」

それなら、最近の出来事はどうだ。
街で騒ぎが起きて、ギアティクス社に匿われた。
その後、突然現れた獣甲屋のエンペラーギア・フェニックスネオギアスに連れられて——

サクラ「............」

——ダメだ、そこまでしか思い出せない。
その後は確か、懐かしい顔を見た気がする。
両親とよく会っていた、黒髪の男の顔だ。
名前は出てこない。ただ、その人に会ったような気がする。

サクラ「でも、すぐに気を失っちゃった......んだよね」

記憶が途切れているという不安がサクラの体を冷たく震わせる。
こんなんじゃ、彼に......天草キョウに、怒られてしまうかも知れない。

サクラ「......キョウ、くん」

彼はすごい。
戦いを経て、彼がどんどん大人になっていくのが隣にいてよく分かった。
そんなキョウを見て、サクラは嬉しくなる一方で、焦りも感じている。
まだまだ先だと思っていた、天草キョウという男の子が紅葉サクラを追い越してしまう感覚を、
こんなに早く味わうだなんて。
私は弱い。
人とは違うことは重々承知していたけど、彼が大人になると感じる度に、
楽しかったあの日々が嘘になってしまうような気がして、ずっと恐かった。
でも、天草キョウはそんなサクラを見て笑うのだろう。
気にしすぎだ、って。

サクラ「会いたい、な......きゃっ」

足を滑らせて、大きく転倒した。
不思議と痛みはなかったが、とにかく身体が重い。
壁伝いに手を這わせ、なんとか体勢を立て直す。
その時、ガラス越しに雨に濡れる自分の姿を真正面から見つめた。

サクラ「......あ」

嗚呼。
そうだった。
自分がなぜ、獣甲屋に連れて行かれたのか。
理由は解っていたはず。
覚悟も出来ていたはずだった。

だけど。

アニマギアへと変貌した自分の姿を見て、サクラは言葉を失った。

EPISODE 36

涙は流せなかったが、代わりに雨がサクラの頬を濡らしていた。
冷たい、雨だった。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 35

ガオー「なんで、効かないんだよ......ッ!!」

電磁バリアを展開してからのゴウギアスは終始余裕の表情だ。
ガオーの攻撃は一切効かず、渾身で放つ二発目のマグナブレイカーも、
バリアによって無効化されてしまった。
これで、撃てるマグナブレイカーはあと一発のみ。

ゴウギアス「ほらほら、どうしたどうしたァ!」

ゴウギアスの猛攻をいなすことしか出来ず、反撃の糸口が見当たらない中、
キョウの肩を背後から叩く影があった。

キョウ「ヤマトさん!?」
ヤマト「良かった、間に合ったようだ...強い電磁波の影響で通信が出来なくてね」

その状況からエンペラーギアとの戦闘に入ったことを察知したヤマトは、
キョウをサポートするために直接駆けつけたと言った。

キョウ「ありがとうございます、Zギアモードでも歯が立たなくて...どうすれば...ッ」
ヤマト「まさか“あの”ゴウギアスとこんなに早く戦うことになるとは予想外だったよ...
...あのバリアはね——」

ヤマトは続ける。
——ゴウギアスは海外から技術提供を受けた特殊な機体で、
様々な皇帝機の技術が転用されているらしい。
特に、ライギアスをもとに設計された電磁バリアは強靱で、
外部から打ち破ることはほぼ不可能だと告げた。

キョウ「そんな、それじゃあ勝てないじゃないですか!」
ヤマト「いや、正確には打ち破れる。たった一つだけ方法があるが......現実的ではないんだよ」

その方法とは、バリアの対消滅だ。
電磁波のチャンネルを合わせたエネルギーをぶつけることで、
ゴウギアスのバリアを無力化することができるという。

ヤマト「つまり、ライギアスと同種の電磁波をぶつけることが出来れば、あるいは。
しかしライギアス亡き今、そんな手段は......」
キョウ「......ありますよ」

キョウは、ポケットの中にしまった物を静かに握りしめた。

ヤマト「それは...!!?」

“あの日”から持ち続けている、バイスとシュバルツのニックカウルだ。

キョウ「ガオー!カスタマイズだ!!」
ガオー「おうよ!!」

キョウの声に、ガオーがすぐに応じた。
キョウ達はすぐに瓦礫の影に身を隠し、ゴウギアスの攻撃をやりすごす。

ヤマト「ま、待てキョウくん!エンペラーギアはボーンフレームだけではなく、
ニックカウルにも幻獣のデータが入っているんだ!」

通常、アニマギアはボーンフレームに動物の本能や行動パターンがインストールされている。
しかし皇帝機と呼ばれるアニマギアは、ボーンフレームの動作を外側から細かく補正・補助する必要があるため、
幻獣のデータがフレームだけではなくニックカウルにもインストールされているのだ。

ヤマト「幻獣のデータは通常のアニマギアにとって毒にしかならない...
下手すれば暴走、最悪自壊してしまうんだぞッ!!」
キョウ「それでも、オレは......!」
ガオー「オレ達は......ッッ!」

キョウとガオーの想いは一つだ。
彼らは泣いていた。
それを止めるために、自分達が壊してしまった。
彼らは泣いていた。
その想いをバカにするゴウギアスを、放ってなんて置けない。

あの二人のために、戦わなきゃ行けないんだ。

それが、彼らのために出来る唯一の償いなのだから。

キョウ&ガオー「ぐ、う、あああああああああッ!!」

キョウがガオーの左腕に、ライギアスのパーツを嵌めた瞬間だった。
ガオーとキョウの体に激痛が走る。
それは、エンペラーギアが持つ計り知れないほど膨大なデータ量が、
ガオーのボーンフレームに流れ込んだからだ。
体中を駆け巡る、自我が崩壊しかける程の負荷と痛み。
あまりの苦痛に二人の声は枯れ、視界も白く薄れていく。

キョウ「......我慢できるよな、ガオー......!
あの二人に比べれば......こんなの......ッ!」
ガオー「ああ、オレ達がアイツらに与えた“痛み”は...
...こんなもんじゃなかったはずだ......ッ!」

......ごめんなさい......

次第に手放しそうになる意識の中で、見覚えのある背中が見えた気がした。

......ありがとう......

同時に、キョウとガオーだけに聞こえる声がある。

「ごめんなさい、キミ達をたくさん傷つけてしまって」

「ありがとう、僕らのために怒ってくれて」

「あの時、僕らを止めてくれたのが、キミ達で良かった」

「キミ達が......で、本当に良かった」

EPISODE 35

ゴウギアス「なんだぁ、勝手にくたばっちまったのか?」

ホント、情けねえな。
ゴウギアスが吐き捨てると同時、彼の眼前にガオーがいた。
白虎は、マグナブレイカーを振りかぶる白獅子を見て、冷静にバリアを展開する。

ゴウギアス「馬鹿の一つ覚えで......無駄だってのがわかんねぇか!?」
キョウ&ガオー「無駄じゃないッッッ!!」

見れば、ガオーが構えているのは右腕のマグナブレイカーだけではない。
左腕に、エメラルドグリーンの輝きを放つライギアスのパーツがある。

ゴウギアス「な...ッ!?エンペラーギアの力を制御した!?
ありえねぇ...テメェのような下等アニマギアが!?」

ガオーは容赦なくそれをバリアに叩き込んだ。

キョウ「ニックカウルに残る、バイスとシュバルツの想いが...オレ達に力を貸してくれた!」
ガオー「ゴウギアス!これはお前が嘲笑ったアイツらの力だ!!オレとキョウの“友達”のなぁッ!!!!」

だから、キョウ達は踏み込む。
二人の決意と、二人の友の想いが、ゴウギアスのバリアを粉々に打ち砕いた。

EPISODE 35

キョウ&ガオー「これが“オレ達”の、マグナブレイカーだぁああああああああッッ!!」
ゴウギアス「まさか、そんな...こんな雑魚どもに、エンペラーギアである俺が......ッ!?」

負けるはずがない!
その言葉を最後に、ゴウギアスはガオーのマグナブレイカーで砕かれていた。

ヤマト「キミ達には本当に驚かされた...キョウくん、ライギアスのパーツをつけたとき、
キミも苦しんでいたようだが...あとで一応検査させてくれないか」
キョウ「わかりました、でもオレなら大丈...夫......」
ヤマト「キョウくん?」
キョウ「ヤマトさん、あのアニマギア......」

EPISODE 35

キョウの声に視線をやると、砕かれたゴウギアスのパーツを回収する影がある。
金色に輝く頭部に、赤く光るバイザーが特徴的な白いアニマギアが、
回収を終えるとこちらには目もくれず、淡々と立ち去っていった。

ヤマト「......いまのは、まさか」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 34

バイフーゴウギアスの攻撃は苛烈だった。
ワイヤー付きミサイルと電撃による遠距離攻撃は、ガオーに近づく隙を与えてくれない。

ゴウギアス「——テメェ、マジか?ちょっと弱すぎやしねぇか」
ガオー「......野郎ッ!」

ゴウギアスの煽りにたまらず飛び出した。
ミサイルを掻い潜り、放たれた電撃を真正面から受けながらもガオーは白虎へと肉薄する。

ゴウギアス「根性だけは認めてやるよ。だがな」

ガオーの牙がゴウギアスに届く、その刹那。
ゴウギアスの身体に電気が迸り、目にも止まらぬ速度でガオーの視界から消えた。

ガオー「なにッ!?」
ゴウギアス「度胸・根性・気合い...そういった類のモンじゃ埋められねえほどの差が、
エンペラーギアと通常のアニマギアの間にはあるんだよ!」
キョウ「あれだけの距離を一瞬で...速いなんてレベルじゃない、気を付けろガオー!」
ゴウギアス「気を付ける暇なんて俺が与えると思ってんのか......!?」

再び雷が迸り、疾走した白虎の爪がガオーを幾度となく斬りつける。

ガオー「だ、がぁああッ!!」

遠くへと吹き飛ばされるガオーにキョウが駆け寄ると、ゴウギアスが鼻で笑った。

ゴウギアス「情けねえ...情けねえなぁ。テメーの弱さには呆れたよ。
だけどな、エンペラーギアでありながらそんなテメェに負けたライギアスはもっと情けねえ...
...同じ皇帝機として反吐が出るぜ......ッ!」
ガオー「情けねぇだと!?お前が......お前みたいな奴がアイツらを語るんじゃねえ!」
ゴウギアス「あァ?なんだ、皇帝機(ライギアス)とお友達気取りか?
ッハ、忘れたとは言わせねえぞ」

嘲笑と怒りが混ざった冷たい声でゴウギアスが叫ぶ。

ゴウギアス「お友達結構!だがその友達をぶっ壊したのは、
他でもないテメェだよなぁああアアアッッ!!」
ガオー「お、お、お、おまえ、よくも......ッ」

哈哈哈哈哈哈哈哈哈!!
遠くで高笑いするゴウギアスに、ガオーは怒りを露わに絶叫した。

ガオー「よくもぉおおおおおッ!!!」

獅子が叫びと共に飛び出そうとしたとき、キョウの手がガオーを引き留めた。

キョウ「ガオー、ちょっと落ち着いて!」
ガオー「これが落ち着いてられるか!バイスとシュバルツをあんな風に言われて...
黙ってられるほど俺は利口じゃあねええッ!!」
キョウ「だから落ち着いて!!オレだって怒ってる......怒ってるよ......ッッ」

キョウが握りしめた拳から血が滲んでいることに気付いたガオーは、言葉を失ってキョウを見上げた。

キョウ「でも、アイツに勝つには怒ってるだけじゃダメなんだ、一度冷静にならないと......!」

キョウの瞳に静かな炎が宿っている。
その炎の熱を感じ取ったガオーは、力強く咆吼した。

ガオー「俺はどうすればいい、キョウ......!」
キョウ「ガオー、オレの合図で動けるかな。作戦はこうだ——」
ガオー「——了解!」

強く頷いたガオーが飛び出す。
しかし敵に背を向けて。

キョウ「さっきの攻撃を見る限り、ゴウギアスの超スピードの移動距離の限界は
恐らく10から15メートル!その射程に入るな、ガオー!」
ゴウギアス「コソコソ作戦会議してるかと思いきや、出てきた策ってのがこれかぁ?
くだらねえ、逃げ回ってるだけじゃねえか!」

それにな、とゴウギアスは身をかがめ、ポッドを構えながら続ける。

ゴウギアス「どんだけ遠くに行こうが俺のミサイルが逃がしゃしねえよ!!」

放たれた爪型のミサイルは2発。どちらもガオーに狙いを定めて真っ直ぐに飛んでいった。

キョウ「いまだ!」
ガオー「う、お、おお、おおおおおおおッ!!」

直後、ガオーが最大出力でブースターを点火。
身を翻したガオーは飛んでくるミサイルとすれ違いながらゴウギアスへと突進する。
しかし、ゴウギアスは稲妻と共に超スピードでそれを避けた。

ゴウギアス「無駄だってのがわかんねぇかよ!」
キョウ「無駄じゃない——」

キョウが叫ぶと同時、ゴウギアスの背中のポッドが
先ほど発射した2基のミサイルをワイヤーで回収していた。

ゴウギアス「なにぃっ!?」

が、そのワイヤーに獅子が噛みついていた。
ミサイルが戻るよりも先にゴウギアスが移動したことによって、
ミサイルとゴウギアスを結んでいたワイヤーが急激に収縮したのだ。

キョウ「——そのワイヤーにガオーが噛みつけば、お前に追いつける!」

ワイヤーの収縮とブースターによって速度が乗ったガオーがゴウギアスへと再度突っ込む。

ガオー「マグナッッッ!!」

突進する過程で、ガオーがZ(ツヴァイ)ギアモードへと鮮やかに変形する。
右手に構えるのは、必殺の爪撃だ。

EPISODE 34

ガオー「ブレイカァアアアアアッッッ!!!!!!」

躊躇なくそれをゴウギアスに叩き込んだ。
獅子と白虎の間で閃光が激しく瞬いた。

キョウ「な......ッ!?」

だが、それだけだ。
球状に広がる電磁バリアが、ガオーのマグナブレイカーを完全に無力化していた。

ガオー「この電磁波は...!」

ああ、その通りだ。ゴウギアスが笑う。

ゴウギアス「この体には色んなエンペラーギアの技術が転用されてンだよ...
もちろん、ライギアスの能力も俺のものってワケだ!!」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 33

獣甲屋に協力していたというヤマト博士にも、彼らの本拠地は知らされていなかった。
引き続きサクラの捜索を続けるキョウ達に、
神出鬼没の黒いアニマギアが暴走しているという噂が舞い込んでくる。
噂のアニマギアが獣甲屋に繋がるかも知れないと考えたキョウは、
ガオーと共に市街地をパトロールしていた。
その最中、黄色い虎型のアニマギアがキョウ達の前に現れる。

EPISODE 33

???「おう、テメェらがエンペラーギアを倒したとかいう白いアニマギアだな?」
ガオー「誰だお前...つか、なんでエンペラーギアのこと知ってんだ」
キョウ「噂の黒いアニマギア......じゃないよな」
タイガオン「俺はタイガオンスロート。気軽にタイガオンで良い。んで、早速で悪ぃーんだけどよ」

タイガオンが四肢を折りたたみ、深く屈んだ姿勢になる。
直後、背中のポッドから二つの爪のような装備が勢いよく射出された。
狙いは曖昧だったが、二つの爪はキョウの頬を掠めながら後方に着弾する。

タイガオン「テメェらと闘ってみたくて仕方ねぇんだ!」

轟音と熱が瞬時に辺りを駆け抜けた。爆発だ。

キョウ「こんな街中で爆撃!?」

幸い、爆破に巻き込まれた通行人はいないらしい。
逃げ出す人やスマホで写真を撮る人々に、
キョウはすかさず「ここは危険です!逃げて!」と声を張り上げた。

キョウ「なんだって戦闘用アニマギアが単体で動いてるんだ!?」
ガオー「どこのアニマギアだか知らねぇが、お前が悪党って事ぁ一発で理解した!いくぜ、キョウ!」
キョウ「ああ!だけど、街に被害は極力出さないようにしなきゃ......ッ」
ガオー「分かってる!」
タイガオン「良いねぇ!オタクら、話が早くて最高だ!だけどよ!」

タイガオンが構えると、先ほど爆発したはずの爪が背中のポッドへと帰って行く。
見れば、タイガオンのポッドと爪の後端の間にあやしく光を反射する線がある。
ワイヤーが爪を巻き取っていた。

キョウ「爆発しても戻ってくるっていうのか......!」
タイガオン「街に被害が出ないように?哈哈哈(ハハハ)!
この俺相手にそんな余裕こいてる暇がねェってこと、スグに思い知るんじゃねーか、なァ!」

速い。
今度は爪型のミサイルを射出しながらタイガ自身がガオーに突進してきた。
両脇で生じた爆発はガオーの行動範囲を極端に制限しているが、

ガオー「おりゃあああッ!」

ならば正面衝突あるのみだ。
タイガオンとガオーが鍔(つば)迫り合いのように額(ひたい)同士を擦る。

ガオー「ミサイルで逃げ道を塞がなくてもなぁ!オレは逃げねぇんだよ!」
タイガオン「ほお、そりゃ気が合うねェ!」

攻撃を仕掛けたのは両者ほぼ同時だ。
ガオーの爪とタイガの牙が火花を散らしてぶつかり合う。
衝突の勢いで弾かれたのはガオーの方だった。

ガオー「(コイツ、オレよりパワーがたけぇ...ッ!!)」
タイガオン「なんだテメェその程度か!!?なぁオイ!!!」

間髪入れずにタイガオンがミサイルを撃つ。今度は直撃コースだ。
爆発する。

キョウ「ガオーをなめるなよ...!」
ガオー「うおおおおおおおッ!」

爆煙の中から飛び出したのは、Z(ツヴァイ)ギアモードへと変形したガオーだった。
タイガオンの横っ面に右手のマグナブレイカーを叩き込む。吹っ飛んだ。

キョウ&ガオー「どうだ!」
タイガオン「ハハハ...おもしれぇ攻撃持ってるみてぇだが...緩いな。緩くてかゆい。」

吹っ飛んだ先で崩した体勢を整えながら、タイガが笑っている。
手応えは確かにあったはずだが、ほとんど無傷だった。

ガオー「効いてねえのか......!?」
タイガオン「エンペラーギアを倒したってのはマグレだったみてーだなぁオイ」

いや、それとも。タイガが笑いながら続ける。

タイガオン「まぁ、不完全なままロールアウトされたライギアスが
雑魚だっただけってのもあるかもしれぇねけどなァ」
ガオー「ッ!?」
タイガオン「あんな力の制御もできねぇエンペエラーギアの面汚し、
さっさと壊しちまった方がテメェらのためだよなァ?ハハハ!」
キョウ「待て、バイスとシュバルツを知ってたのか!?」
タイガオン「ァあ?なんだ、察しの悪いガキだな」

そりゃあ知ってるよ。
黄から白へ。
笑うタイガオンのニックカウルが、激しい放電と共に体色を変えていく。

EPISODE 33

タイガオン「俺の名はタイガオンスロート......またの名をバイフーゴウギアス。
バチクソに最強のエンペラーギアって名乗れば、ちィとは察しが良くなるかい?」

まるで、バイスとシュバルツが合体したあの時の光景を再現しているようだった。

キョウ「白虎型のエンペラーギアになった...!?」
ガオー「なるほどな...いいぜ、獣甲屋って事なら容赦しねぇ!!」
タイガオン「一応、黒田の命令で来たんだが...
本音を言えば、ライギアス程度の雑魚を倒して良い気になってる奴が、
一体どんなツラしてんのか拝みたくてなァ!」

哈哈哈哈哈哈哈哈哈!!
奔り狂う雷光と共に、白虎の笑い声が響き渡った。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 32

キョウ「そんな......そんなこと、許して良かったんですか!?」
ヤマト「許すも何も、研究協力は脅されたわけではなく、私自身が提案したことなんだよ」
キョウ「......!」
ヤマト「恥ずかしながら、私もいち研究者としてエンペラーギアの設計というテーマに心が躍ってしまったんだ。
その中で、サクラを渡さないことだけが、私が自分を納得させるための精一杯の言い訳だった」

博士の話を聞いていたガオーは我慢がきかなくなったのか、ヤマトの目の前で短く吠えた。
それをコジロウが静かに制止する。

コジロウ「ガオーちゃん。物事ってのはそう単純じゃないんだよ」
ガオー「でもよぉ......!」
コジロウ「本能と希望が食い違うことなんて山ほどある。
博士はその狭間で、サクラちゃんの幸せを願って戦ってきたんだ」

ヤマト「なんにせよ、だ。獣甲屋と争ったところで、娘は幸せになれるはずがない...
...そう、思っていたのだがね。私が思う以上に、私は愚かだったようだ...」

どうやら獣甲屋の事情が変わったらしい。博士の視線は窓の外に投げられていた。

ヤマト「私ももう用済みだと言われた直後だったよ。知っての通り、奴らは娘を連れ去った。
これから獣甲屋は目標達成に向かって大きく動き出すだろう。すべて私の愚かさが招いた事態だ」
ガオー「——なら、話は早えよな!」
キョウ「ガオー...?」
ガオー「なんだよキョウ、察しが悪いな!奴らにとって用済みって言われたなら、
ヤマトも一緒に戦えるってことじゃねーか!」
キョウ「で、でもそれは」
ヤマト「いや、キョウくん。ガオーくんの言う通りだ。私も獣甲屋と戦うことを決めたんだ」

だからこそキミをここに呼んだ。ヤマトは続ける。

ヤマト「老いぼれの都合の良い話だと笑われても構わない。罪滅ぼしになるとも思っていない。
ただ、私はサクラに幸せであって欲しいから戦うと決めた」
ヤマト「本来であれば、大人として子供であるキミを戦いから退かせるべきだろう。
だが、獣甲屋に抗うためにはキミとガオーくんが持つ力......ギアブラストが必要なんだ」

ギアブラスト。
初めて聞く言葉だったが、キョウはすぐに何を指しているのか理解した。

キョウ「あの、金色に輝く力......ですよね」
ヤマト「そうだ。高レベルまで成長したアニマギアは、ボーンフレームに記憶された動物としての本能が
更なる『進化』を求め、限界を超えた力を発揮すると考えられていた」

キョウ「限界を超えた力......」
ヤマト「偶発的に発動したケースが過去に報告されてね。
その中では『発動時に人間とアニマギアが感覚を共有しているようだ』と記されている...
...が、発動条件を含め、どんな力なのか未だに詳細は解析されていない」

だが、とヤマトは続けた。

ヤマト「キョウくん達はそのギアブラストと思わしき力を発動させた......しかも二度。
これは単なる偶然じゃない......キミ達にその力を扱う“資格”があるんだ」

そしてギアブラストは、獣甲屋と戦うための鍵に他ならない。

ヤマト「我々の都合を押し付けてしまってすまない...どうか、私に力を貸してくれないか......!」
キョウ「......頭を上げてください、おじさん......いえ、ヤマトさん」
ヤマト「キョウくん...」
キョウ「止められたって、もうオレは逃げません。戦うと決めたのはオレたちも同じなんです。
サクラ姉ちゃんや、友達のために......みんなのために、獣甲屋をこのままにはしちゃダメなんだ......!」
ガオー「ああ!今更戦いをやめて隠れてろなんて言っても無駄だからな!」
キョウ「だから、それはオレのセリフですヤマトさん。どうか、オレたちのために力を貸してください!」
ヤマト「......ありがとう......本当に......ッ」

改めて頭を下げるヤマトの瞳が、潤んでいるようにキョウには見えた。

ヤマト「サクラを救うこと。それがなにより獣甲屋を止めることに繋がる。
私情抜きに、サクラの奪還が我々に課された最重要任務だ」
ガオー「なぁ」

ヤマトの話を遮るように、ガオーが首を傾げた。

ガオー「ヤマトが獣甲屋を手伝ってたっていうなら、
あの獣甲屋の首魁(しゅかい)?とかいう黒髪の男についても知ってんのか?」
ヤマト「......驚いた。キミたちはすでにアイツに会っていたのか」
キョウ「はい。バイスとシュバルツの案内で辿り着いた廃工場で」
ヤマト「アイツから、獣甲屋の目的やサクラについてなにか聞いたかい?」
キョウ「いいえ、そこまでは。出会ってすぐ、ライギアスとの戦いになりましたから...
...聞かせてくださいヤマトさん、あの男の目的って一体なんなんですか?」

ヤマトは深いため息をついて、素早くコンソールを操作した。
部屋中央の立体映像が切り替わる。キョウたちが出会ったあの男の顔が大きく映し出された。

EPISODE 32

ヤマト「彼の名前は黒田ショウマ——"究極の身体"を求めてエンペラーギアを製造し、
サクラを拐(かどわ)かした獣甲屋のトップ。我々が倒すべき男だ」

男の顔を見たキョウは、強く拳を握りしめる。
黒田ショウマ。
その名を確かに、胸の奥に刻みつけた。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 31

ライギアスとの戦いから数日後。
獣甲屋に連れ去られたサクラを、ソウヤを筆頭にABFが捜索している最中、
キョウはコノエにとある研究所へ来るよう呼び出されていた。
もちろん、ガオーも一緒だ。加えていまはコジロウも同行している。
ギアティクス社から遠く離れた山奥に居を構えたその研究所の看板には
「MOMIJI Technics」の文字が彫られている。

キョウ「もみじてくにくす......もみじって、サクラ姉ちゃんの苗字か?」
コジロウ「そうそう。ここはサクラちゃんのパパン......紅葉ヤマト博士が作った研究所だ」

キョウたちが研究所のエントランスで所在なさげに佇んでいると、奥の扉からコノエが歩いてきた。

コノエ「キョウ君。博士がお待ちだ、入ってきて」

彼女に言われるがまま廊下を進み、通された部屋の奥には一人の初老の男性がいた。

EPISODE 31

コノエ「博士。キョウ君を連れてきました」
ヤマト「ムサシはどうしたんだい?」
コノエ「すみません、ムサシ君はサクラ君を捜索すると数日前に出て行ったっきり反応が消えてて......」
ヤマト「そうか......まぁ彼なら下手なことはするまい。ありがとうコノエくん、少し下がっていてくれ」
コノエ「はい、失礼いたします」

コノエが部屋を出ると、ヤマトは柔らかな笑みを浮かべてキョウに語りかけた。

ヤマト「ここで会うのは初めてだね。お久しぶり、キョウくん、それにガオー」
キョウ「......久しぶり、です」

キョウとヤマトは面識がある。
サクラが街に越してきたあと、彼女と遊ぶようになってから何度か会うことがあった。
長い時間話をしたわけではないが、サクラから二足歩行型アニマギア開発の第一人者と聞いて、
当時は目を輝かせたものだ。
しかしいま、キョウはまったく別の理由で緊張していた。

キョウ「おじさん、オレ......サクラ姉ちゃんを......」
ヤマト「そう堅くならないで欲しい。サクラが連れて行かれたのはキミたちの責任じゃないんだ」

誰のせいでもない、と言いながらヤマトはコジロウを一瞥(いちべつ)して、少しだけ肩を落とした。

ヤマト「デュアライズスタッガー......どうやら、荷が勝ちすぎたようだな」
コジロウ「申し訳ありません。俺の不注意でした」
ヤマト「いいや、責めているわけじゃないんだ。サクラの件は誰のせいでもないんだよ...
...強いていえば、私自身の業という奴だ」

ヤマトは、何かを諦めたような虚しさを表情に浮かべて、キョウに向かって深く頭を下げた。

ヤマト「天草キョウくん。巻き込んでしまって、本当に申し訳ない」
キョウ「お、おじさん!?どうしたんですか急に!」
ヤマト「言葉の通りだ。キミを戦いに巻き込んだのも、
サクラが獣甲屋に連れて行かれたのも、すべて私に責(せめ)がある」

もう一度、彼はキョウに頭を下げてコンソールを叩く。
すると、部屋の中央にホログラフィックの立体映像が投影された。
そこにあるのは、キョウが今までに出会ったエンペラーギアの設計図だ。

ヤマト「見ての通りだ。私は今まで、獣甲屋の研究を僅かながら手伝っていたのだよ」
キョウ「え...?」
ガオー「嘘だろ!?」

言葉を失うキョウに、ヤマトは「主にエンペラーギアの設計の手伝いをね」とヤマトは続けた。

ヤマト「驚くのも無理はない。だが、私は確かに私の意思で、
獣甲屋の掲げる理想に準ずることを選んだ......サクラの幸せ、それだけのために」
キョウ「サクラ姉ちゃんの、幸せ......?」
ガオー「獣甲屋の奴らに手を貸すのがサクラのためになるって!?そんなことありえるのかよ!」
ヤマト「......なぜ、獣甲屋がサクラを狙うのか考えたことはあるかい?」
キョウ「それは......」
ガオー「心当たりなんてねえよな、キョウ!」

言葉を失ったキョウを見て、ヤマトは深く頷いた。

ヤマト「娘には......そうだな、特別な力がある、と言ったら突拍子もないだろうか」
ガオー「チカラ?」
ヤマト「そうだ。その力はアニマギアの在り方—
—そして世界の在り方を大きく変えてしまうかもしれない力だ」

獣甲屋はその力を利用するために彼女を狙っていた。

ヤマト「だが、私が研究に協力することでサクラの無事は保証された。
サクラの特別な力を使わなくても、獣甲屋が目標を達成できるような手助けをしていたというワケだ」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 30

コノエ「ムサシ君、これどうなってるのかな、ねぇ!?」

戦いが終わるや否や、ムサシを見たコノエが鼻息を荒くしながらまじまじと観察を始めた。

コノエ「言うなればFBSの半発動みたいな?出力を調整できるなんて話聞いたことないけど、
暴走せずにコントロール出来てるっぽいのはその恩恵なのかな......!!あっ」

いつの間にかムサシのボーンフレームがわずかな煙を吐き出して、
ブラッドステッカーが通常の状態へと切り替わっている。

コノエ「クールダウンしちゃったかぁ......半発動とはいえ、
やっぱ身体にかかる負担は大きいみたいだね......」
コジロウ「まぁまぁいいじゃないコノエちゃん。無事が一番って奴よ」
コノエ「そう、そうだよね......あ!そうだ、エンペラーギアのパーツ
回収しといた方が良いよね!回収回収~♪」
コジロウ「たくましいねぇ......」

肩を落としたと思いきや、すぐさま別の興味に心奪われたコノエをよそに、
コジロウがムサシの肩を軽く叩いた。

コジロウ「ほんっと、あんま心配かけさせんじゃないぜー、ムサシちゃん」
ムサシ「......すまない」
コジロウ「良いんだよ。無事が一番って言ったっしょ。はー、まったく手のかかる弟を持つと大変だわー」
ムサシ「待て、聞き捨てならないぞ。作られたのは俺の方が先だ。弟ならコジロウの方が妥当だろう」
コジロウ「え〜でもなんか俺の方が保護者っぽいし!俺がお兄ちゃんでしょ!」

EPISODE 30

サクラは、ムサシがこんな言い合いでムキになっているところを初めて見た。
そのことが妙におかしくて、気を緩めると笑いが吹き出しそうだった。

コノエ「きゃあああっ!?」

何事かと一同がコノエの方に振り返ると、そこには疑いたくなるような光景がある。

ネオギアス「......もう少しだった」
コノエ「みんな......っ」

無傷のフェニックスネオギアスがそこにいた。
問題はそれだけではない。
コノエが身動きを取れないように、幾つもの炎の輪が彼女を取り囲んで拘束している。

サクラ「こ、コノエさんを離して......っ」
ネオギアス「赤いの。貴様、我の能力を“再生”と読んでいたが、その推測は実に惜しい」

サクラに取り合うことなく、ネオギアスは言葉を紡ぐ。

ネオギアス「我が能力は“不死”。頭を砕かれようと、四肢を引き裂かれようと、
ボーンフレームその物が無事であれば必ず生き延びる
——生き延びてしまう。それがこのフェニックスネオギアスである」

不死鳥は心底つまらなそうに「忌々しい」と吐き捨てた。

ネオギアス「もう少しで滅びを得られた......こんな昂ぶりは生を受けてから感じたことがない。
大義であった、デュアライズカブト」

炎の輪が縮まる。
少しでも動けばコノエの服や身体に燃え移ってしまう、危うい状況だった。

ネオギアス「定命の者が、ここまで我を追い詰めるとはついぞ想像しなかったぞ」

さて。
あらかた話をして満足したのか、ネオギアスが首を傾げてサクラに向き直った。

ネオギアス「ヒトの子よ。我は主にこう命令されている。『紅葉サクラを無傷で連れてこい』とな」
コジロウ「......!アンタまさか!」
ネオギアス「そうだ......紅葉サクラ。我はその他の命を奪うことになんら抵抗はない」
サクラ「そん、な......!」
ムサシ「......外道がッ!」
ネオギアス「エンペラーギアに道を説く方がよほど道を外れていると、我は思うがね」

どうだヒトの子よ。ネオギアスは続ける。

ネオギアス「貴様が黙って我についてくれば事は荒立てぬ。
有り体に言えば、この者の命が惜しくば......ということだ。わかるな」
ムサシ「サクラ!耳を傾けるな!」
コジロウ「そうだぜサクラちゃん!ここはギアティクス社だぜ!?きっとすぐにABFの奴らが
......って、そうだった陽動作戦......!」

コジロウの言うとおり、対暴走アニマギアチームであるABFは
市街地で暴れている別のエンペラーギアの対処のため現場に急行している。
いまこの瞬間において、ギアティクス社はもぬけの殻だ。

サクラ「......わかった。ついていく」
ムサシ「サクラ!?」
サクラ「しょうがないよ。私が行かないと、みんなが危ない」

決意を宿した、しかし震えた声でサクラは続けた。

サクラ「お父さんや、飛騨くん......それに、キョウくんに伝えて。私は大丈夫だ、って」
コノエ「サクラ君......ごめん、私の不注意で...っ」
サクラ「良いんです、コノエさん。いつかこうなるような気がしてたから」

......連れてって、ネオギアス。
サクラがネオギアスに告げると、不死鳥は何も言わずにコノエを囲んでいた炎を解除した。
そして、サクラがネオギアスのもとに行くと、一瞬大きな炎が上がって——

ムサシ「......サクラぁああああーーーーーッッ!!」

——サクラの姿が、ネオギアスとともに忽然(こつぜん)と消えていた。
相棒である、ムサシを残したまま。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 29

ムサシ「ウオオ、ヲ、ヲヲ、WRRRR......」

ムサシの全身から火花が飛び、痙攣するように身もだえする彼の姿を見て、サクラは絶句した。
ネオギアスの炎を克服したと思いきや、いまではうめきながらもだえ苦しんでいる。

サクラ「コノエさん、どうしてムサシがFBS(暴走プログラム)を......!?」
コノエ「私にもわからないよ!だけど......」

サクラのもっともな疑問に「これはあくまで推測だよ」と、
コノエはばつが悪そうに重く口を開いた。

コノエ「博士がムサシ君を改造するとき、あのムラマサのパーツを使ったんだと思う...
...ムサシ君の希望でね」
サクラ「......ムラマサの、パーツを?」
コノエ「もちろん私は反対した。暴走アニマギアのパーツを使うには相応のリスクがある」

下手したら、ムサシ自身が暴走アニマギアになってしまう。まさに今、そうなろうとしている。
ネオギアスは一転、距離を取って様子見といった佇まいだ。
その敵に向かって、ムサシは金切り声を上げて威嚇している。
あれではまるで飢えた獣だ。

コノエ「だから私は、せめてFBSが発動しないようにロックをかけるよう提案した......はずなのに!」
サクラ「......ムサシ............!」
コジロウ「ムサシちゃん......俺に損な役回りを押しつけてくれるなよ......!」

見かねたコジロウが動き出そうとした、その時だった。

ネオギアス「——ムゥ。余興も終わりである、か」

不死鳥が動く。ネオギアスの翼から放たれる幾つもの火球が、容赦なくムサシに直撃した。
轟々と燃え盛る火柱が、吠える剣士の体を灼く。
先ほどのように、炎が体に吸い込まれることもない。

ムサシ「RRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!」
コノエ「ムサシ君!!」
コジロウ「兄弟!!!!!」
ネオギアス「昂ぶりも冷めた。なんと誠に退屈な幕よ。せめて安らかに滅べ」

終わった。
FBSを発動してしまったムサシを止めたのは、意外にも敵であるエンペラーギアだった。
暴走してしまった以上、あのままムサシが戦っていたとしても苦しむだけだった......と。
炎の中で暴れるムサシの影を眺める誰もがそう思っていた——

サクラ「まだ、終わってないよね、ムサシ......っ!」

——相棒(バディ)である、サクラを除いて。

サクラ「あなたがムラマサのパーツを使って欲しかった理由、私には分かってる!」

彼女の声を聞いた炎の影が、ピタリとその動きを止める。

サクラ「ムラマサも一緒に連れて行きたいんでしょう!?誰かを信じて戦える場所に!」

それは、ムサシが息絶えたからではない。

サクラ「なら、こんな所で倒れてちゃダメだよ!暴走なんか、しちゃダメなんだよ!」

炎の奥で瞳に宿った光を、サクラは見逃さなかった。

サクラ「いまも誰かを助けるために戦ってる—
—人間のことを信じて戦っているムサシなら大丈夫だって、私信じてるから!」

EPISODE 29

だから、勝って。

サクラの声に呼応するように、影が地を蹴った。
ムサシが炎の中から飛び出す。

ネオギアス「無傷......だと!?ありえな——」

——い。
遮られた不死鳥の言葉がそれ以上続くことは無かった。
炎の中から飛び出したムサシが、フェニックスネオギアスの体を斬ったのだ。

EPISODE 29

斬られたネオギアスはニックカウルが砕け、ボーンフレームもバラバラに散った。
不死鳥のパーツが地に落ちるのと、ムサシが着地したのはほぼ同時だった。
決着、していた。

ムサシ「ぐ......っ」

直後、ムサシが膝をついて倒れ込んだ。

サクラ「ムサシ!!」

駆け寄ったサクラが見たのは、様変わりした相棒の姿だった。
デュアライズカブト真として付け替えられたパーツだけではない。
ブラッドステッカーに迸る稲妻のような模様は、FBS発動の証だ。
しかし全身ではなく、その稲妻は彼の右半身のブラッドステッカーにのみ現れていた。
サクラが倒れたムサシを拾い上げると、ムサシは申し訳なさそうに視線を逸らして
「かたじけない」と口を開いた。

ムサシ「......サクラ。キミのおかげで俺は“戻って”こられた」

彼が意味の通じない叫びではなく、整然とした言葉を口にしたことで
サクラは安堵のため息を吐き出した。
暴走していない。
その事実が、サクラにとってはたまらなく嬉しかったのだ。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 28

一方的な戦いになるというネオギアスの予想は裏切られた。
そもそも向かってくる敵の得物が接近武器の時点で、
炎による中距離攻撃が主な手段である自分の相手になるわけがなかったハズなのだ。
その点で言えば、あの赤いクワガタの方がまだ“らしい”戦いになるだろう——と。

しかし実際はどうだ。

突如現れたこの剣士は、少なくとも即座に消し炭にされないだけの
——ネオギアスと刃を交わすだけの力がある。

コノエ「良かった、間に合ってたぁ......!」
サクラ「コノエさん!」

コノエ「サクラ君とコジロウ君が中庭で戦い始めたのが見えて、慌てて博士に連絡したんだけど、
そしたら既にムサシ君を向かわせてるって言ってたから......!」
サクラ「博士......って、お父さんが?」
コノエ「このところエンペラーギアが現れるようになったからって、
ムサシ君の改造に踏み切ったみたい。見たところ調子は良さそう、かな?」

やっちゃえムサシ君、と騒がしい声が聞こえてくる。
なるほど、あの“紅葉ヤマト”が手を加えたか。確かにこのアニマギアの調子は良い。
現にムサシの剣圧は自分の炎を掻き消し、こちらが炎を充填する前に攻撃を仕掛けてきていた。

ネオギアス「面白い」

相手を甘く見たことをネオギアスは僅かながらに恥じた。
それはムサシに対してだけではない。

コジロウ「俺もいるんだぜ、ダンナァ!」

コジロウの方も、ムサシが参戦してから勢いに乗っている。
絶妙なタイミングの射撃はネオギアスの視線を誘導し、ムサシの攻撃から気を逸らした。
矢面に立つ戦いよりも、裏方にまわる戦いの方がよほど性に合っていると見える。
見事なコンビネーションだ。

EPISODE 28

二体のアニマギアの連携を前に、ネオギアスの体は能力によって未だ無傷で済んでいた。
だが、このまま続ければ彼らがネオギアスの悲願を達成してくれるかもしれない
——そんな予感に思わず身震いした。

——“破壊してもらえる”。

ネオギアス「本当に、面白い......ッ!!」

主から命を受けている以上、いま壊れるわけには行かない。
ならばせめて、このひとときだけでもギリギリまで没頭しよう。
戦が楽しいのではない。破滅と隣り合わせなのが愉しくてたまらないのだ。
嗚呼。
こんな気持ちはいつぶりだろうか。
滅びを予感させてくれるほどの戦の機会など、もう訪れることはないと思っていた。
なればこそ。

ネオギアス「ギアを一つ上げるとしよう!」

フェニックスネオギアスというエンペラーギアは、好物は最後に取っておくタイプだ。
真正面から堂々と戦う者が、ネオギアスは嫌いではない。
だからネオギアスは身を翻し、急降下する。
速度を上げたネオギアスはコジロウへと突っ込んだ。

コジロウ「なッ!?」

肉薄したネオギアスはコジロウを押し倒し、爪で身動きを封じている。
次の瞬間、ネオギアスの翼から炎が噴き出した。

コジロウ「て、めぇ......!」
ネオギアス「狡賢(ずるがしこ)いガンマンにはご退場願おうか!」

噴き出した炎はコジロウの眼前に集束していく。
先に見せた火球で、このまま敵を灼きつくすつもりだった。

ムサシ「遅いッ!」

疾風。
そう呼ぶに相応しい速度で、今度はムサシがネオギアスに突進した。

コジロウ「助かったぜ、兄弟......!」
ムサシ「下がっていろコジロウ!コイツの攻撃はまだ終わっていない!」

敵が両の剣をいっぺんに振りかぶる。ネオギアスは反射的にその攻撃を翼でガードした。

ムサシ「このまま、決める!」
ネオギアス「ムゥ。それは悪手というものだ、青いの——」

好物を先に頂くことになるが、致し方ない。
ネオギアスは剣を受けた翼から炎を再度噴出させる。

ムサシ「ぐ、ぅ、お......!」

熱いだろう。熱いに違いない。
噴き出した炎はそのままムサシの体をすっぽりと包み込んでいた。
この熱に耐えうるアニマギアなど、自分をおいて他にあろうものか。

ネオギアス「——下ろすにはあまりにも惜しい幕であった......ッ!!」
ムサシ「ぉお、お、おおおおおおおおッッッ!!!!」

炎の中のムサシが咆吼する。
気が付けば、ネオギアスが放った炎はムサシの体へと吸収されるように消えていた。

ネオギアス「......なんだと?」

直後、ムサシのボーンフレームが軋みながら火花を散らし始めた。

コノエ「ちょ、ちょっと、そんなの聞いてないよ!?どうしてムサシ君にアレが......!」
サクラ「こ、コノエさん?どうしたんですか急に」
コノエ「どうしたもこうしたもないよ!あの反応を見るに、ムサシ君はいま、
FBS(暴走プログラム)を発動させようとしているんだ!」

EPISODE 28

ムサシ「使わせてもらうぞ...『ムラマサ』...ッ!!!」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 27

ネオギアスが充填する火球は時間の経過とともに大きくなっていく。
その炎はサクラの拳ほどのサイズだったはずだが、いまやサクラの頭部ほどにまで巨大化していた。

サクラ「コジロウ、なんとか“アレ”を止めて!」

止めなければ、とんでもないことになる。
自分達の命が危ういだけでは済まない。

サクラ「きっと、このビル全体が危ないことになっちゃう!」
コジロウ「はいはい、承りましたよ......っと!!」

サクラの一言でコジロウが飛び出す。2丁のライフルが狙うのは無論、ネオギアス本体だ。
先ほどの超連射と同じペースで弾丸を撃ち込んでいく。

コジロウ「フェニックスって名前から察するに、
アンタのエンペラーギアとしての能力は恐らく“再生”!」

連射を続けながらコジロウは続ける。
こちらの弾丸があたる度に、ネオギアスの体の表面に微弱な炎が迸った。
依然として、ダメージは与えられていない。

コジロウ「つまりこっちの攻撃で傷付いた瞬間、
アンタの体はすぐさま再生しちまう......と俺は読んだ!」
ネオギアス「ほう......であれば、どうする?」
コジロウ「そんだけのデケぇ攻撃を準備するにはリソースが必要なハズだ!
そう、再生能力が衰えるほどのエネルギーがッ!」

敵もアニマギアである以上、攻撃と防御はトレードオフのはずだ。
再生能力ほどの強力な防御性能であれば、攻撃を犠牲にしなければ成立しないはず。
その逆も然りだ。

コジロウ「ならば撃つ!いまの俺に出来るのは撃って撃って撃ちまくることだけ!」

コジロウの勢いが弾丸に乗ったのか、僅かにネオギアスのニックカウルに傷が入る。
瞬時に回復されはしたが、先程までの目に見えない速度での回復ではない。
このまま勢いを保てれば、いずれ勝機がやってくる......そうサクラとコジロウが確信したときだ。
ネオギアスがまたもや大地を震わせるうなり声を上げた。

ネオギアス「読みは良い。我が思うほど愚かではなかったようだ。
しかし我は言ったはずだな。貴様ごときに我が肉体は滅ぼせぬ——」

ネオギアスが、自ら作った火球の中に沈んでいく。
敵を狙ったコジロウの弾丸は、大きく膨れ上がった小さな太陽に阻まれた。
もう弾丸が届かない。

ネオギアス「——その道理が無い故に、と」

この状況で倒せる道理が無いと言われれば確かにその通りだ。
が、そんなのめちゃくちゃだ。あんな高温下に耐えうる機体が存在するなど、
見たことも聞いたこともない。
まるでお伽噺の怪物。
まるで規格外。

ネオギアス「それこそが、エンペラーギアである」
コジロウ「は......ハハハ......——」
サクラ「コジロウ......!」

死を目前に、自暴自棄に笑い出したようにしか見えないコジロウに、
かける言葉をサクラは持っていない。
あんなアニマギア、今まで見たことがなかった。
エンペラーギアと通常のアニマギアの圧倒的な力の差を見せつけられているようで、
そこに希望など見いだせるはずもない。
だからこそ、コジロウの笑いの意味をサクラは“誤解”してしまったのかも知れなかった。

ネオギアス「ムゥ。貴様、どこを見ている......?」

ネオギアスが抱いた疑問はもっともだ。
戦闘中で、しかも決着がつこうかというこの瞬間、
コジロウの視線はあろうことかまるで別の場所を見つめていたからだ。
正確には、ネオギアスの背後を。

コジロウ「——おせえんだよ、ムサシちゃん」

EPISODE 27

サクラ「ムサシ......!?」
サクラが驚くのも無理はない。
確かに、その視線の先には青いニックカウルに包んだカブトムシ型のアニマギアがいる。
しかし、コジロウがムサシと呼んだその機体はサクラが知る姿ではなかったのだ。
ムサシ「すまない、サクラ。遅くなった」

EPISODE 27

サクラ「本当にムサシなの!?でも、その姿って......!」
ムサシ「......話すと長くなるんだが」
コジロウ「ちょい待ち!俺になんか言うことあんじゃねーの?」
ムサシ「コジロウか。どうやら留守中、世話になったらしいな。一応感謝する」
コジロウ「一応て!素直じゃないねぇ〜ムサシちゃんは」

敵を挟んでの会話が盛り上がったところで、そのネオギアスは心底つまらなそうにため息を吐いた。

ネオギアス「新手か......まったく、つくづく我が主も間が悪い......ッ!」

ネオギアスの火球が標的を変える。
無論、ターゲットはムサシだ。
サクラが声を上げる間もなく、その凶弾は放たれた。

コジロウ「ヒュウ!やるねぇ......」

だが、その炎は届かない。
刹那の間に抜かれた二振りの剣が、ムサシの両の手に握られている。
理屈は分からないが、たしかにムサシはいま——。

ネオギアス「ムゥ......?」
コジロウ「反撃開始ってワケだなァ、兄弟!」

——確かに、迫る炎を両断して見せたのだ。

ムサシ「......いざ、尋常に!」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 26

コジロウ「だぁークッソ!ネオギアスつったか!?気持ちわりいよアンタ!」

コジロウが不満を爆発させたのは、戦闘が始まってからすぐのことだ。
トリッキーな動きでネオギアスの周囲を跳び回り、2丁のライフルで撃つ。
この動作を何度も繰り返すが、コジロウの攻撃が当のネオギアスに
なんらダメージを与えていないのだ。
最初のように炎が銃弾を消し炭にしているわけではない。
命中はしている。手応えもある。
だというのに、ネオギアスはまるで動じない。

コジロウ「どうなってんだよ、アンタのカラダは!」
ネオギアス「......少し痒いな」
コジロウ「ぷっつーん!言うに事欠きやがって......吠え面かかせてやんよ!」

コジロウがライフルを撃つ。
届かないなら届くまでと言わんばかりの攻撃は、
単発式とは思えない速度を持って連射された。まるでマシンガンだ。

EPISODE 26

ネオギアス「無駄だ」

しかし攻撃は無為に終わった。
ニックカウルはおろか、
ボーンフレームでさえ砕いてしまうほどの連射を持ってしても、
ネオギアスは依然として無傷のまま、不遜に佇んでいる。

コジロウ「まじでバケモンかよ......!」
ネオギアス「その通りだ」

敵の意外な反応に、サクラとコジロウは思わずたじろいだ。
ここに来て、ようやく会話らしい会話が成立したからだ。

ネオギアス「化物という形容は言い得て妙だ。なにせ、我がカラダは少々特殊なものでな」
コジロウ「......そのカラダってのが、エンペラーギアとしてのアンタの能力ってところか?」
ネオギアス「ムゥ。少々喋りすぎたか」

ネオギアスのニックカウルの節々から炎が噴き出した。
その火炎は、オーラのようにネオギアスに纏わり付いて離れない。

ネオギアス「赤いの。貴様ごときに我が肉体は滅ぼせぬよ——その道理が無い故に」

纏う炎は、ネオギアスのカラダを実寸以上に大きく見せていた。

ネオギアス「さて、定命の者よ。貴様には我がじきじきに救いを与えよう」
コジロウ「救いだって......?新品のニックカウルでも用意してくれんの?」
ネオギアス「壊(ころ)す、と言っているのだ」

喋っている間にも炎の勢いは増していく。
いまや、ネオギアスのカラダの10倍はあろうかという大きさにまで炎が燃え盛っている。

ネオギアス「なに、死ぬことはそう悪と言い切れたものではない。
痛みばかりの生にすがるより、よほど安らぎに満ちていることだろうよ」

その炎が球状に圧縮されていく。
小さな太陽の如く輝く赤い球体。加えてそれを放つのがエンペラーギアともなれば、
その攻撃の破壊力は想像に難くなかった。
その攻撃を受ければ、まず命はない。
この場にいる誰もがその予想を抱き、この先起こる事実として認識していた。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 25

サクラ「浮いて......る......?」

目の錯覚かと思ったが、どうやら違うらしい。
そのアニマギアは、鳥の形をしているというのに翼を羽ばたかせることなく、
妖しく浮遊して宙空に静止していた。

コジロウ「気をつけな、サクラちゃん。見りゃ分かるが“タダモン”じゃあないぜ、コイツ」

コジロウは一見リラックスしているが、
既に両手は足に携えた二丁のライフルをいつでも取り出せる位置にあった。
臨戦態勢だ。

鳥型アニマギア「——ムゥ。娘に付いている護衛はいないと聞いていたが......話が違うな」

鳥が言った「いないはずの護衛」とは恐らくムサシのことだろう。
彼が調整中と知っての発言だとすれば狙いは自分か、とサクラは瞬時に悟る。
つまり、この鳥はムラマサと同じ“獣甲屋”の手先というわけだ。

鳥型アニマギア「——我が名はフェニックスネオギアス。
不承不承ながら、エンペラーギアの一角を担っている」
サクラ「エンペラーギアですって!?」
ネオギアス「迎えに来たぞ、ヒトの子よ」

コジロウ「あっさり正体と目的バラしやがったな。
大方、ムサシちゃんがいねーところで甘い汁すすろうって魂胆なんだろうが、お生憎様。
いまは俺が姫様をまもるナイトやってんのヨ」

だから安心しなサクラちゃん。
コジロウが緊張感のない声と共に、二丁のライフルを構える。
このままこの場を彼に任せて屋内に入ろうかとも考えたが、
目の前の“敵”の狙いがサクラ自身である以上それは出来ない。
今こうしている間にも働き続けるギアティクス社に、
サクラが余計なパニックを持ち込めるはずがなかった。

サクラ「コジロウ......お願い、私と戦って......ッ」
コジロウ「いいねぇ、燃えるねぇその台詞。お安い御用さ!」

EPISODE 25

コジロウが銃を構えるなり、鳥は翼を広げて大仰に首を振った。

ネオギアス「まったく、我が主も詰めが甘い。人払いは完璧にして貰わないと困るというものだ——」

人払い。
そういえば、ネオギアスは単身堂々とギアティクス社に訪れた。
獣甲屋からすれば敵の総本山であるにも関わらず、だ。
いくらエンペラーギアといえど、ABFの制圧力を前にしてはひとたまりもないはず。
だが実際にネオギアスは来た。
まるで、ここの警備が手薄になるのを知っていたかのように。

サクラ「っ!まさか、街でいま起きてる事件は......!」
コジロウ「なるほど、陽動作戦ってコトね......随分と派手な罠に嵌めてくれるじゃねーの!」

恐らく二人の言葉に間違いはないのだろうが、ネオギアスは否定も肯定もしない。

コジロウ「おいおい、話聞いてんのかアンタ!」

先程から独り言のように自分の言葉を紡ぐだけで、
このエンペラーギアは会話をしようとしていなかった。
それが不快なのはサクラもコジロウも同じなのだろう。
しびれを切らしたようにコジロウが構えたライフルから一発の銃弾が放たれる。
しかしこちらの言葉と同様に、その弾丸は届かない。
ネオギアスに届く直前、遮るように迸った炎が銃弾を灼き尽くしたのだ。

ネオギアス「——我としても貴様の中身には大変興味がある。
ヒトの子よ、そこな赤い護衛をけしかけるというのなら、
強引にでも押し通らせて貰うぞ」

これから起こる戦いの激しさを予感させる激しい炎が、ネオギアスの全身を包んだ。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 24

時は少し遡る。
ユニコーンライギアスが市街地で暴れ始めた頃、
その事件を知らせる緊急ニュースがギアティクス社に舞い込んできた。
社内に来ていたサクラは、激しいアラートと共に慌ただしく動く職員達を眺めることしかできない。
そんな折りに、ソウヤがコノエに険しい表情で話しかけている様子が遠くに見えた。
何を話しているのかは聞こえないが、恐らくソウヤの緊急出動に関する要件だろう。
ギアティクス社にはABFと呼ばれる暴走アニマギア対策チームがあり、
ソウヤもそのメンバーに入っているからだ。
ライギアスが暴れている街は遠い。もはや一刻の猶予もないだろう。
そんなことを考えていると、コノエと話していたソウヤがこちらに駆けつけてきた。

ソウヤ「紅葉さん!悪いけど、僕も出動することになった。
ムサシはまだ調整が終わっていないし、キミはあまり街には近づかない方が良いと思う」

ムラマサとの戦闘後、想像以上に深手を負っていたムサシは、
現在ギアティクス社のラボで修復中だ。“代わり”がいるとはいえ、
確かにソウヤの言うとおり街に出るのは得策ではないだろう。
だが、ただ大人しく待っていられるサクラでもない。

サクラ「飛騨くん、私にもなにか出来ることってないかな」
ソウヤ「そうだね...そういえば、こんな状況なのにまだキョウと連絡が取れないんだ。
紅葉さんの方からなんとか彼に連絡してくれないかな」
サクラ「......わかった!ありがとう!」

ソウヤが与えてくれた役目はささやかなものだったが、なにも出来ないと言われるよりは遙かにマシだ。
ソウヤがギアティクス社を飛び出すのを見届けて、サクラは言われたとおりキョウへの連絡を試みようとする。

サクラ「っと、ここじゃ邪魔だよね」

対策チームが出動すると同時に社内のアラートは消えたが、いまだに他の職員は忙しなくしている。
迷惑をかけないよう、ビルの中庭にあるベンチへと移動した。

???「ちょいちょい!サクラちゃんさぁ、勝手に外出るのはNGっしょ?」
サクラ「......コジロウ」

軽い調子の言葉と共に、サクラの肩へ登ってきたのは赤いクワガタ型アニマギアだ。

EPISODE 24

サクラがコジロウと呼んだそのアニマギアは、肩を竦めながら小言を重ねた。

コジロウ「はやく中に戻るべ。オニーサンがついてっからさ」
サクラ「中庭ぐらい良いでしょ?別に危ないことしようってわけじゃないもん」
コジロウ「いやいや、そういう問題じゃねーのよ。俺はサクラちゃんの護衛なんだぜ?」

護衛。
物騒な響きが彼女に付きまとうようになったのは、
ムラマサを始めとする3体の暴走アニマギアに襲われたことが原因である。
元はパートナーがその役目を負うはずだったが、
いまはどうしても動けない状態であるムサシの“代わり”によこされたのが、
このお調子者のコジロウというワケだった。

コジロウ「屋外に出るって結構危険いっぱいなのよ。そこらへんわかってほしいなー」

加えてこの過保護っぷりである。妙に馴れ馴れしいくせに、
与えられた任務だけは忠実にこなそうとするこのアニマギアが、サクラは少し苦手だった。

コジロウ「それに、パパンに心配かけるのはサクラちゃんだって嫌っしょ」
サクラ「............」

返す言葉もない。
彼の言う「パパン」とは、即ちサクラの父である『紅葉ヤマト』のことを指しているからだ。
ふざけた呼び方をしてはいるが、コジロウは父がコノエを通じて
サクラのもとへと派遣されたアニマギアである。
つまりコジロウの言葉は、父の意志を意味しているとも言えた。

サクラ「——わかった、私の負け」
コジロウ「さっすがサクラちゃん!物わかりの良い娘さんになって
パパンもさぞ鼻が高いだろうね!それじゃまずは屋内へご案内~」

コジロウに言われるままサクラが中庭を後にしようと立ち上がる。
瞬間、背中に熱を感じると同時に視界が赤い光に照らされた。
後ろでなにかが燃えた、とサクラが理解するよりも速く、
コジロウがサクラの肩から飛び降りている。

コジロウ「なぁそこの鳥ちゃん。アンタ、俺の予想が間違ってなけりゃ招かれざる客って奴だよな?」

コジロウの声の先に、一体のアニマギアがいた。
サクラの目線よりも少し上を浮かぶように飛ぶそれは、
燃えるように赤いニックカウルを全身に纏った鳥型の機体だ。
その鳥のアニマギアは器用に小首を傾げると、大地が震えたような低い声で唸った。

EPISODE 24

TO BE CONTINUED...

EPISODE 23

ここは地獄だ。
ライギアスを追って市街地へと辿り着いたキョウ達の目に映る光景は、
そう思わせるほど凄惨な光景へと変わり果てていた。
デミナーガスの大群は次々と街のアニマギアを襲い、ライギアスの雷撃は建物を蹂躙していく。
破壊に燃え盛る街を、人々が必死に逃げ回っていた。

キョウ「——————ッ」

あまりの非現実的な光景に言葉を失うキョウ。
それに対し、ガオーはキョウの指示を待つことなく飛び出した。

ガオー「やめろォーー!」

獅子の爪がデミナーガスの群れを引き裂いていく。その先にいるのは、

ガオー「“お前ら”だってこんなこと、したくないハズだろ!?」

ライギアスだ。
エンペラーギアという事実にも怯むことなく、ガオーは跳びかかった。

ライギアス「■■■■■■■■————ッッ!」
ガオー「があああああああああっ!!」

一角獣の咆吼とともに放たれる雷撃が獅子を貫く。

キョウ「が、ガオー!?」

キョウが慌てて相棒の元へと駆けつける。
ガオーの右半身のニックカウルが砕け、ボーンフレームが剥き出しになっていた。

ガオー「キョウ、ごめん、オレ......」
キョウ「喋らなくていい!待ってて、いますぐ別のニックカウルを......あっ」

少年の手に握られていたのは、コノエとソウヤから受け取っていた新型のニックカウル。
手持ちのパーツはこれしかない。
だが、これを使ったらガオーは戦闘用アニマギアになるという事実に、キョウの思考がストップした。

キョウ「......」
バース「危ねぇ!!」

傷付いたガオーと新型ニックカウルを手にしたまま動けなくなるキョウに、デミナーガスが襲い来る。
そこを間一髪でバースがデミナーガスを追い払った。しかし相手は大群だ。
すぐに新たな暴走アニマギアがキョウ達を取り囲んだ。

バース「俺一人じゃ限界がある、隙を見て逃げてくれ!」

バースの叫びはキョウに届いていない。
その代わり、少年の脳裏にはパーツを渡された時の記憶が蘇っていた。

(キョウくんにもラプトのような『戦闘用ニックカウル』が必要だと思ってね)

戦闘用。その言葉が、自分にはひどく恐ろしく聞こえた。
だから。

(オレはやっぱり今のガオーで戦ってみる事にするよ)

だって。

(こんな戦闘用のニックカウルをつけたら、なんかもうガオーと
今までの日々が送れなくなるような気がして......)

だが、実際はどうだ。
友達だった2体のアニマギアは街を破壊し、傷付いた相棒が手の中で力なく横たわっている。
これが、キョウの望んだ『今までの日々』なのか?
そんなハズはない。こんなの、自分が望んだ日常なんかじゃない。
なら、この非日常を引き起こしたのは誰だ。
あの黒い服の男か?
それともシュバルツとバイスか?

違う。

キョウ「......オレだ......ッ!」

すべて、自分の甘さが招いた結果だ。
今までの日々を壊したのは他の誰でもないキョウ自身だ。

ガオー「キョウ......?」
キョウ「ガオー、ごめん......オレ、友達失格だ......!」

新しい姿になったガオーが、友達ではなくなってしまう気がした。
だけどそれは違う。
ガオーはいつだって友達のはずなのに、キョウは変化を恐れた。

キョウ「もしかしたらガオーがガオーじゃなくなっちゃうかも知れない
——そんな風にお前を信じられなかったから、オレは“コイツ”から逃げていたんだ......」

キョウの手が、丁寧にガオーのニックカウルを交換していく。

キョウ「でももう迷わない。オレは、ガオーと一緒に戦う!」

EPISODE 23

——ガレオストライカーZ(ツヴァイ)。
新たな姿を手に入れたガオーが、キョウの手の中で力強く頷いた。

バース「お前ら、いいからこっちを手伝って......うおお!?」

バースが驚くのも無理からぬ事だ。キョウの手の平から飛びだしたガオーZが、
限界出力のブースターで縦横無尽に動き回り、周囲のデミナーガス達を一瞬にして無力化したのだ。

ライギアス「■■■■■■■■■ッッ!」

頭上でライギアスが轟き叫ぶ。
すると、キョウ達の周りにいくつもの雷が落ちた。
それに身を竦ませることなく、キョウ達は倒すべき友達を見上げた。

ガオー「キョウ!あの声!」
キョウ「ああ、泣いてる......バイスとシュバルツが、止めてくれって叫んでる!」

相手が友達だからこそ、迷わない。
ライギアスを止める。
それが、キョウやガオーが彼らに出来るせめてもの——。

キョウ「行こう、ガオー!」

少年に応えるように獅子が征く。
ライギアスの雷撃は激しさを増す一方だ。それらをギリギリで躱し、
ガオーZはブースターでの飛行をしながら叫んだ。

ガオー「うおおおおおおおおおおおッ!!!!」

叫びはガレオストライカーZに眠るもう一つの姿を呼び覚ます。
獣から、より人に近しい姿——Zギアモードへと、ガオーZが変形していた。

EPISODE 23

ライギアス「■■■■■■■■ッッ!!」

対するライギアスは、肉薄するガオーZを止めるために幾重もの雷で電磁バリアを展開した。
ガオーZの牙が、寸でのところで阻まれる。至近距離でありながら、こちらの攻撃が通らなくなってしまった。
だが、ガオーZは怯まなかった。

ガオー「つれぇよな......苦しいよな......分かるんだよ......お前達の悲痛も......キョウの覚悟も——」
キョウ「ガオー......!」

ガオーZの言葉に、キョウはぐっと拳を握りしめた。

ガオー「——『友達』だからな...ッ!!ああそうだ...だから...オレはッッ!!!!!」

キョウの視界と思考が、いままでとは比べものにならないほどクリアになっていく。
直後、ガオーZのニックカウルが金色の輝きを放っていた。

EPISODE 23

キョウ&ガオー「マグナッ!!!!!!!!!!」

二人が叫ぶと、ガオーZの右腕の内部で金属音が響いた。
まるで、撃鉄を起こすかのような重たい音だった。

キョウ&ガオー「ブレイカアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!!」

一閃。
絶大な破壊力を持つマグナブレイカーは、ユニコーンライギアスを内部から
木っ端微塵に吹き飛ばしたのだった。

優しい雨が、静かに市街地の火を鎮火していく。
遠方で被害を聞きつけたソウヤが現場に辿り着く頃には、すでに決着がついた後だった。
戦いの激しさを物語っている瓦礫の山の中心に、傘も差さずに佇む一人の少年の姿がある。

ソウヤ「......キョウ、か?」

キョウが、ガレオストライカーZと共に立っていた。
ソウヤの声に振り向くと、キョウは破損したライギアスのパーツを強く握りしめて言った。

キョウ「こないだはごめん......ソウヤ兄ちゃん。オレ、もう迷わないから」

キョウの瞳に涙はない。
友を砕いた自分に、涙を流す資格なんてない。

キョウ「オレ、戦うよ——獣甲屋を、このままにしちゃいけない」

そして街の火が消え去る頃、雨が降り止んだ。
雲の切れ間から見える太陽が、キョウの心を燃やしていた。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 22

地図アプリに示された座標をたよりに廃工場へと辿り着いたキョウ達。
壊れたシャッターの隙間に体を滑り込ませると、埃臭い鈍色の空間が広がっていた。

バイス「なんか......オバケでも出そうだよ......」
ガオー「昼間からオバケが出るもんかよ!な、キョウ!」
キョウ「いまはオバケよりも暴走アニマギアに注意だぞ、みんな」
シュバルツ「まあ確かに薄暗いし、オバケ的な雰囲気はあるけどね。それになんだか見覚えが——」
バース「おい、あそこ見て見ろ。なんか光ってねぇか?」

バースが指し示した方向を見れば、確かにモニターの画面がいくつか点灯している。
すでに廃棄されたはずの工場に電気が通っていることを不審に思いながらも、
デミナーガスの手がかりを探しに来た以上、見て見ぬ振りは出来ない。
周囲を警戒しつつキョウ達はモニターへと近付いた。
そのモニターに表示されていたのは大量の文字列だ。それも、知らない単語ではない。

キョウ「Forbidden Beast SystemにEmperor GEAR......これって......!?」
???「獣甲屋の研究施設へようこそ」

突然の背後からの声に、慌てて振り向くキョウ達。
そこには一人の男が微笑みを浮かべて立っていた。
喪服のような黒い服に身を包んだ、長髪の男だった。

男「キミならココに来ると思っていた。会いたかったよ——天草キョウくん」
キョウ「その声......!」

聞き覚えのある声に、キョウの背筋が凍り付く。
間違いない。確かに、大会の会場でドラギアスに語りかけていた声と同じものだ。
それはつまり、

男「察しが良いね。そう、僕が獣甲屋の首魁さ」
ガオー「お前が......!?」

いきなり現れた黒幕に怯むことなく、キョウ達はすぐさま臨戦態勢を整える。
しかし、男はそれらを意に介することなく話を続けた。

男「キョウくん、キミに大切なものはあるかい?」
キョウ「——なん、だって?」
男「人には誰しも大切なモノがある。無論、この僕にもだ」
キョウ「なにが言いたい!」
男「なぁキョウくん。大切にしていたものを失った時、人間はその先どうなるか興味はないか?」

そう問いかける男は、懐からスイッチを取り出す。
嫌な予感に、考えるまでもなくキョウとガオーはそのスイッチに飛びかかっていた。

男「親しい友が友でなくなるとき、キミなら果たしてどうするのかな——」

しかし、キョウの手が届くよりも早く、男の手はスイッチを押していた。
その瞬間だ。

シュバルツ「GGGGGEEEEEEEEEEEEEE!!!」
バイス「AAAAAARRRRRRRRRRRRRR!!!!」

白と黒のアニマギアが、それぞれの悲痛な叫びと共に次々と分解され、
1体の新たな機体へと姿を変えた。頭に一本の角を生やした、馬のようなアニマギアだ。

EPISODE 22

男「——エンペラーギア・ユニコーンライギアス。あの2体が合体した本当の姿さ」
ガオー「シュバルツとバイスがエンペラーギアだってのか!?」
ライギアス「■■■■■■■■■■■ッッ!!」

鼓膜が破れそうになるほどの音量でライギアスが咆吼した途端、
激しい放電現象が巻き起こり、辺りの機械が次々に爆発していく。その声に呼応するように、
工場の至る所からデミナーガスが現れ、ライギアスのもとに集まってくる。

男「行け」

男のシンプルな命令に、デミナーガスとライギアスはキョウ達が阻止する間もなく
工場の壁に穴を開け、次々と飛びだしていった。

男「あのエンペラーギアに積んだAIは、合体時の意識の統合に些か問題を抱えていてね。
自我と呼べる物は吹き飛び、衝動のままにすべてを破壊するだろう」

バース「あんなやべぇ奴らが街に飛び出したらマズイどころじゃすまねえぞ......!」
男「キミの答えに期待しているよ、キョウくん」

もう話は終わった、と男がキョウ達に背中を向けて歩き出す。
その背中に、キョウは慌てて声を投げかけた。

キョウ「ま、待て!お前にはまだ聞きたいことが——」
バース「それどころじゃねえだろバカ!アイツらを止めに行かねえと!」
ガオー「キョウ......!」
キョウ「......くそおッ!」

黒幕を前にしながらなにも出来なかった自分への怒りを精一杯抑えながら、
キョウはガオー達と共に市街地へと走り出した。
ライギアス——変わり果てた2体の友達、バイスとシュバルツを止めるために。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 21

バイスとシュバルツと出会ってから二週間程が経過し、
キョウ達が辿り着いた先は、人間が殆ど住んでいない荒廃した街であった。

ここには数多くの野良アニマギアが生息しており、
情報屋のワニ型アニマギア「バース」もここを住処にしているという。

キョウ「あれから調べた情報によると、ここにバースがいる筈なんだけど...」

街を探索する中で、ガオーは一体のワニ型アニマギアを発見する。

ガオー「おい、そこのゴミ山にいるワニ。お前がバースってアニマギアか?」

ワニ型アニマギア「あぁ!?ゴミじゃねぇ!ジャンク品!!全部商品なの!!」

シュバルツ「情報屋を営むアニマギアを探してるんだが、キミのことかい?」。

EPISODE 21

バース「そうよ、俺がバースだ。ガキ共がなんの用だ。」

キョウは「シュバルツとバイスの出自」と「近頃、大量発生しているデミナーガス」に
関する情報を知っていないかバースに聞いてみる。

バースは、シュバルツとバイスに関する情報は持っていなかったが、
デミナーガスが「とある廃工場」を中心に発生している事を知っていた。

キョウ「その廃工場ってどこにあるの?」

バース「知りたいか?でも、その情報は有料だ。
フフフ...そうだな、ガレオストライカーのニックカウルを半分くれるなら話してやってもいいが...」

何かに気づいたバイスは、キョウからスマホを借り、開いた地図アプリを使って座標を示す。

バイス「は、廃工場ってここかな...?」

バース「なんで知ってんの...?」

キョウ「バイスとシュバルツが目覚めた時にいた「廃工場」と同じ場所ってこと?」

シュバルツ「どうやらそうみたいだ...」

ガオー「行ってみようぜ!他にアテもないしな!」

廃工場へ向かう事を決めたキョウ達。
しかし、バースはそれを引き止めようとする。

バース「ちょちょちょ待て待て!!たぶんだが、その廃工場...ロクな場所じゃねぇぞ...!
ガキ達が行くには危なすぎる...!」

ガオー「心配すんな!オレ達つえーからな!エンペラーギアとだって戦ったことあるんだぞ!」

バース「エンペラーギアって...なんて危なっかしいヤツらだ...仕方ねぇ、ガキのお守りも大人の仕事だ。
この俺も一緒に向かうとしよう。」

ガオー「え?いいよ別に来なくても。」

世話焼きなバースも同行することとなり、
キョウ達は唯一の手がかりである「廃工場」へ向かうのであった。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 20

ここ数日、謎のコブラ型アニマギア「デミナーガス」の大群が各地に出没する事案が多発していた。

EPISODE 20

これが獣甲屋のアニマギアであると推測したキョウは、独断で調査を始めており、
その中で「デミナーガス」が、2体の「ウマ型アニマギア」を襲撃している現場に遭遇する。

キョウとガオーは、その場にいたデミナーガスの大群を撃退。
ウマ型アニマギア2体を救出したのであった。

EPISODE 20

キョウ「大丈夫...!?ケガはない?」

黒色のウマ型アニマギア「ありがとう...なんとか軽傷で済んだよ。ボクの名前はシュバルツ。」

白色のウマ型アニマギア「ボ、ボクは弟のバイス...助かりました...」

ガオー「お前ら、なんで襲われてたんだ?」

バイスとシュバルツの事情を聞く限り、彼らは自分の出自に関する記憶や情報を一切持っておらず、
気づいた時には、見知らぬ廃工場の前でデミナーガスに襲われていたという。

バイスとシュバルツは、デミナーガスの大群に追われる日々を過ごしていた中で、
自分達の出自に関する情報を探っており、情報屋を営むアニマギア「バース」の存在を知った。

デミナーガスに関する情報を調べていたキョウとガオーは、
「バース」を探す予定だった彼らに同行する事を決めた。

キョウ「よし、オレとガオーも一緒に行くよ。でも、今日はもう遅いし一緒にオレの家に帰ろうか。」

シュバルツ「見ず知らずのボク達を...?いいのか...?」

ガオー「まぁ悪そうなやつらには見えないしな。遠慮すんな。」

バイス「うぅ...ありがとう...キョウくん、ガオーくん...」

デミナーガスに追われる日々で疲労しきっていたバイスとシュバルツは、
キョウとガオーの言葉に心の底から救われたのだった。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 19

エンペラーギア・ブレイズドラギアスとの戦いから一ヶ月が経った。

組織「獣甲屋」の存在が少しづつ明確になってきた事により、
キョウとガオーは、以前よりも緊張感が張りつめた特訓の日々を送っていた。

そんなある日、ソウヤとコノエの元に呼び出されたキョウとガオーはギアティクス社へ向かう。

キョウ「ソウヤ兄ちゃん、コノエさん。どうしたの?急に呼び出したりなんかして。」

コノエ「フフフ、よく来てくれたね。今日は少年に素敵なプレゼントを与えよう!」

自信満々のコノエは、自ら開発した新型のニックカウルを、キョウ達に披露する。

EPISODE 19

ガオー「うわ、すげぇ!オレじゃん!オレの新しいニックカウルじゃん!」

キョウ「これ、ガレオストライカーの新型!?凄い!いつの間に!!」

コノエ「そう!ライオン型アニマギアの第一人者である三梨コノエが開発した次世代機!
名付けて『ガレオストライカーZ(ツヴァイ)』だ!」

ガオー「へぇー!長いから『ガオーZ (ゼット)』な!」

新しいライオン型ニックカウルに夢中となったキョウとガオーは楽しそうに盛り上がる。
そんな二人の笑っている姿を久々に見たソウヤは少し安心するのであった。

コノエ「とまぁ、前置きはともかく...これから激化するであろう獣甲屋との戦いに備えて、
キョウくんにもラプトのような『戦闘用ニックカウル』が必要だと思ってね。」

キョウ「戦闘用...?」

コノエ「そう、ガレオストライカーZは対エンペラーギア戦も視野に入れた戦闘用アニマギアだ。
フレキシブルブースターによる機動力の大幅な向上は勿論。
なんと二足歩行への変形機能も搭載しており、右腕の必殺武器は極めて強力だが音声認識が必要で...」

マシンスペックを延々と説明し始めるコノエ。
それを聞く限り、ガオーZは従来のアニマギアとは比べ物にならない程の強力なスペックを持っている。

それはまさしく「戦うための存在」と呼べる性能であった。

キョウ「えっと...ごめん、コノエさん。凄い新型ニックカウルだけど...
オレはやっぱり今のガオーで戦ってみる事にするよ。」

コノエは、危険を伴う戦いに挑むキョウを心配し、強力な新型ニックカウルを用意した。
しかし、予想をしていなかったキョウからの言葉に、コノエは戸惑い始める。
その様子を見ていたソウヤは二人の会話に割り込んだ。

ソウヤ「あれからもキョウとガオーが毎日欠かさず特訓を続けている事は僕も知っている。
しかし、ドラギアスのような奴がこの先も現れた場合、今のガオーのスペックでは対抗する事が難しい。」

キョウ「大丈夫だよ。こないだみたいに金色に輝く力を発揮できれば。」

ソウヤ「発動条件が不確かな力に頼っては駄目だ。ハッキリ言うが、
これはキョウとガオーの命の危険にも関わってくる問題だ。最善の装備で獣甲屋との戦いに挑むべきだ。」

キョウ「分かってるよ!でも、こんな戦闘用のニックカウルをつけたら...
なんかもうガオーと今までのような日々が送れなくなるような気がして...」

その言葉を受けたソウヤは「自分がキョウ達を戦いに巻き込んだ」事実を改めて思い出す。

ソウヤはパートナーを失った8年前から、獣甲屋の打倒に全てを費やしてきた。

しかし、キョウ達は違う。
今最も優先するべきは、彼とパートナーの「変わらぬ日々」を守る事なのだ。

ソウヤ「そうだな...すまなかった。パートナーとの平穏な日々を守る事は何よりも大切だ...
なら、もうこの戦いからは身を引くんだ。」

キョウ「いや、そうじゃなくて...!今のままのガオーと一緒にオレは獣甲屋と戦う!」

ソウヤ「無理だ。恐らく、獣甲屋が保有しているエンペラーギアは一体だけじゃない。
今の力のままではいつガオーを...大切な存在を失ってもおかしくは無いんだ...」

かつて獣甲屋の襲撃を受け、パートナーを失っているソウヤだからこそ、
その言葉の重みはキョウにも十分に理解できた。

ソウヤ「キョウには、僕のようにはなってほしくないんだ...」

それから沈黙が続く中、ガオーは不安そうにキョウを見つめていた。

キョウ「コノエさん、ソウヤ兄ちゃん...困らせるようなこと言ってごめん...
新型のニックカウルは受け取るよ。でも...少し考える時間がほしい...」

ソウヤの言葉を聞き入れる事ができなかったキョウは、
ガオーを連れて研究室を後にしたのだった。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 18

意識が朦朧とする。

さっきまでの記憶が無い。

感じるのは崩壊した身体に走る激痛と、何処か懐かしい温もりだった。

ムラマサ「あぁ...負けちまったか...なんだっけお前...ムサシだっけか...やるじゃねぇかよ...」

涙を流すサクラの腕の中で抱かれたムラマサは、目の前のムサシに語りかけた。

ムサシ「お前を...救い出したかった...それなのに俺は...」

ムサシの剣によって、ニックカウルの胸部(コア)に致命傷を負ったムラマサは、
既に機能停止する寸前であった。

サクラ「コノエさん...お願い...この子...助けて...」

既に修復不可能な状態まで全身が溶解し、ダメージを負ったムラマサを見たコノエは、
悲しい表情を隠すように首を横に振った。

ムラマサ「アビスとファントムは...逃げたか...カカ、しょうもねぇヤツらだ...でもまぁ、勘弁してやってくれ...」

ムサシ「俺が...俺がもっと強ければ...最初に会った時に...お前達を止めれた...」

ムラマサ「なんだそら...散々ヒデェ目に遭わされた相手によ...真面目だねぇ...
同じデュアライズカブトでもこうも違うか...」

ムサシ「そうだ...同じだ...俺もお前も...ただのアニマギアだ。こんな事のために生まれた訳ではない...」

ムラマサ「カカ、どうだかな...ま、俺が言った事は冗談なんかじぇねぇ...お前にゃ...キツい未来が...待ってる...」

ムサシ「もうよせ...喋るな...」

ムラマサ「いや...なんかよ...すげぇ久々に...心が落ち着いたっつうか...懐かしい気分なんだ...」

これまでは常に憎しみに囚われていたムラマサであったが、
今は不思議と冷静さを取り戻していた。

コノエ「(ブラッドステッカーの稲妻模様が消えている...?)」

EPISODE 18

ムラマサ「お前もよ...誰かを信じすぎるなよ...じゃねぇと...壊れちまう...カカ...何言ってンだろな...俺ぁよ...まぁ...
同型機の...馴染...ミ...ッて...ヤ...っ.........」

ムサシ「ムラマサ...!!ムラマサッ!!!」

サクラ「そんな...」

ムラマサの亡骸に、サクラの涙が零れ落ちる。

ムサシ「俺は...俺は...」

救いたかった者の亡骸と、大切な少女の涙を目の前にし、
自分の「非力」さを痛感したムサシはその場を立ち尽くす。

強くなりたいと願ったあの日、この日まで友と共に鍛錬を続けてきた。

しかし、届かなかった。

自分はまだ、この少女を守れない。

自分の力では守れない。

誰も守れない。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 17

ソウヤの作戦には従わず、独断で戦い続けるオニキス。
しかし、ソウヤの指示により、他のアニマギア達はオニキスの援護に徹する事で、
ドラギアス ヘルと互角の戦いを繰り広げていた。

バルク「オニキス、噂以上の性能だ...彼が来ただけでここまで戦況が変わるとは...!」

ソウヤ「オニキスは機動力の制御が得意ではない。
行動の後に生じる彼の一瞬を隙をカバーするために、僕の合図に合わせて皆んなは援護を頼む。」

ドラギアス ヘル「やるではないか、流石は飛騨ソウヤ。
オニキス...いや、「レオス」の事はよく熟知しているといったところか!」

オニキス「レオス...!?ク...ッッ!!」

その名を耳にした瞬間、思考回路に激痛が走り始めたオニキスは、
もがき苦しむように、その場に倒れ込んだ。

ソウヤ「っっ!!聞くな!オニキス!」

ドラギアス ヘル「脆いな!!もらったぁ!!!」

隙をついたドラギアス ヘルは槍を突き立てた突進を仕掛けてきた。
しかし、その槍はオニキスを庇ったヴラドの胴体に深く突き刺さるのであった。

ガオー「ヴラドッ!!!」

ソウヤ「ヴラド卿!!!」

ヴラド「事情は知らぬが...人の弱みを揺すって勝利を掴むとは...品性の欠片も無いな、皇帝機よ。」

ドラギアス ヘル「フハハ、その「弱み」があるから弱者なのだ。
いいか、飛騨ソウヤ。そいつは...オニキスはもはや貴様の「元相棒」ではない。」

ソウヤ「やめろ...!!」

キョウ「元相棒...?オニキスが...?」

ドラギアス ヘル「そうだ、この男は、8年前に我ら獣甲屋からの襲撃を受け、
ガレオストライカータイプの相棒を奪われている。
ククク、それに記憶回路が破壊されるまで改造を施されたのが「オニキス」という訳だ。」

その言葉に一同が静まり返る中、
ドラギアス ヘルは8年前に起きた出来事を語り始める。

かつて、獣甲屋はアニマギアの性能を限界以上に引き出す機能
「FBS(フォビドゥンビーストシステム)」の開発を進めていた。

しかし、FBSによって強制的に能力を限界突破されたアニマギアは、
全身がオーバーヒートを引き起こし、記憶と思考回路にも絶大な負荷がかかる危険を伴っていた。

システムを完成させるため、
実験に耐えうる強固な精神を持ったアニマギアを探していた獣甲屋は、
当時、極めて高い領域まで成長していたソウヤのパートナーを強奪したのであった。

キョウ「ウソだろ...だから...ソウヤ兄ちゃんはずっと...8年間も獣甲屋の後を追っていたのか...?」

ラプト「ああ、ソウヤは獣甲屋を壊滅させるため...
オニキスを元に戻す方法を探すために戦ってきた...命懸けでな...」

ドラギアス ヘル「貴様ら「失敗作」のおかげでFBSは完成され、この力は我が物となった!!
感謝するぞ!!!有象無象の獣達よ!!!」

ドラギアス ヘルの無慈悲な言葉に激しい怒りを覚えたキョウとガオーは静かに打ち震える。

ガオー「負けられねぇ...」

キョウ「自分達のために...誰かの絆を引き裂き...」

ガオー「人とアニマギアの心まで踏みにじる奴には...」

キョウ&ガオー「「お前のような奴にはッ!!!」」

EPISODE 17

その時、ガオーのニックカウルが黄金に輝き始めた。

ソウヤ「これは...!?」

キョウ&ガオー「「ドラギアス...お前だけは絶対に許さないッッ!!」」

ドラギアス ヘル「小賢しい!今さら何をしようと...」

その瞬間、視覚できない程の光の如き速さで飛びかかったガオーは、
ドラギアス ヘルの右腕を噛み千切ったのであった。

ドラギアス ヘル「(こいつ...いつのまに俺の右腕を!!?)」

キョウ&ガオー「「終わりだ!!ドラギアス!!!!!」」

ガオーが次の攻撃に転じようとした瞬間、会場内のスピーカーから聞き慣れない男の声が鳴り始める。

???「そこまでだよ。帰って来なさい、ドラギアス。FBSには制限時間がある。
それに、武器(みぎうで)を失ったお前では、今の彼らには勝てないよ。」

ソウヤ「こ...この声...」

ドラギアス ヘル「ふざけるな!武器など無くとも、我が炎だけで十分だ!」

???「お前は「持ち主」は私だよ。分かるよね、ドラギアス。」

ドラギアス ヘル「...ッ!!!」

その言葉を聞いた瞬間、ドラギアス ヘルの様子は一変し、
速やかにその場を立ち去ったのであった。

ヴラド「(皇帝機が命令に従った...?)」

ソウヤ「お前は...あの時の男か...!」

???「久しぶりだね、ソウヤ君。」

ソウヤ「...ッ!!!何処にいるんだッ!!!今すぐお前を倒しに行ってやるッ!!!」

???「安心してくれ。いつか必ず会いに行くよ。キミ達に...サクラにもね。」

キョウ「サクラ姉ちゃんに...!?どうして...!!?」

謎の男は意味深な言葉を残し、それ以降はスピーカーから音声が聞こえる事はなかった。

戦いを終えたアニマギア達は、各々の関係者に回収され、修理に運ばれていった。
キョウもコノエに電話し、サクラの無事を聞いて一安心する。

そして、キョウが気づいた時には、オニキスは既にその場から立ち去っていた。

キョウ「ソウヤ兄ちゃん...さっきの話...」

悲しげな表情で遠くを見つめていたソウヤは、無理をして微笑みながらキョウに振り返る。

ソウヤ「ああ、本当だ。オニキス...いや、彼は本名は「レオス」。
僕の最初のパートナーだったアニマギアだ。」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 16

力が更に増大したドラギアス ヘルとの闘いにキョウ達が苦戦する中、突如として一匹の黒獅子が姿を現す。

ソウヤ「オニキス...!?」

オニキス「近づくな...お前を見ていると何故だか頭が痛くなる...」

以前の戦いで遭遇した時のように思考回路に痛みが走るオニキスは
ソウヤとの距離を取り、ドラギアスだけを睨みつける。

ドラギアス ヘル「ハハハハハハハ!!!オニキス!!!貴様まで来てくれたか!!!!
最高だ!!!!僥倖である!!!飛騨ソウヤに加え、貴様とまで闘えるとは!!!」

キョウ「暴走アニマギアがいる所に姿を現すってコノエさんが言ってたけど...本当だったのか...!」

ガオー「なんだっていい!オニキス、お前との決着はこの後だ!足引っ張んなよ!」

オニキス「ボクは獣甲屋のアニマギアを全て倒す。それだけだ。」

強力な助っ人を得たキョウ達は、ドラギアス ヘルを倒すために再び立ち向かうのであった。

一方、コノエ達の救援によって、
サクラ達と暴走アニマギア達の戦いは形成が逆転していた。

アビス「ど、どうしようムラマサ!こいつら前よりも強くなってるよ!」

ギロ「ギャハハ!元からつぇーんだよバカが!3対3なら負ける訳ねぇだろ!」

イーグ「それに以前よりも身体が軽い。
これも修理の際に、コノエ博士の調整(メンテナンス)を受けたおかげです。」

暴走アニマギア3体は既に激しく損傷しており、
立ち上がる力を振り絞るのも精一杯な状態であった。

ムラマサ「クソが...組織に強化された俺が...こんなハズが...こんなハズがねぇんだ...!」

コノエ「組織からの改造を受けた暴走アニマギアの性能は確かに強力だ。
しかし、無理に引き上げられた力がカウルとフレームにかける負荷は絶大...
長時間の戦闘には身体が耐えられないんだよ。」

コノエの言う通り、暴走アニマギア達が負っていたのは戦いのダメージだけではなく、
限界以上に引き出された力を使い続けた身体がオーバーヒートを起こし始めていた。

ムサシ「ムラマサ...もう止めにしよう。俺達が...お前達を元に戻す方法を必ず探し出す...だから...」

ムラマサ「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ...!!元に戻すとか...一緒に来いだとか...そんな事ができるか!!
許せねぇ...許せねぇって言ってんだよ...!俺の中に刻まれた何かが...!お前ら人間を許せねぇってなぁ!!!」

ムラマサは改造の影響で古い記憶が欠落していたが、
過去に刻まれた「人への憎しみ」の感情だけが心の奥深くに残り続けていた。

怒り狂うムラマサに、サクラは悲しげな表情で手を差し伸べる。

サクラ「私もムサシも、もうキミの手を絶対に離さない...だから一緒に...」

過去の記憶の殆どを失っていたが、たった一つだけ覚えている光景があった。

ムラマサ「そうだ...その表情(カオ)だ...!よく知ってるぜ...俺達を見下しやがる、そのカオだけはなぁぁぁ!!」

激情したムラマサは凄まじい殺意を露わにし、サクラに飛びかかる。

ギロ「危ねぇ!嬢ちゃん!」

ギロが咄嗟に放ったビームがムラマサに直撃する。

ムサシ「...ッ!!!!」

ビームは、既に半壊状態だったニックカウルを貫き、
ボーンフレームのコアパーツである胸部にまで命中していた。

ムラマサ(あぁ...またしくじったか...あの時も...今も.........あの時...あの時...?)

落下している最中、ムラマサの心の中で何かが引っかかり、
長らく忘れていた、かつてのパートナーとの「別れの記憶」が脳裏に鮮明に浮かび上がっていく。

EPISODE 16

ずっと一緒にいるって約束したのに

ムラマサ(ガキの頃の約束なんざ信じるな)

待ってよ

ムラマサ(みっともねぇからやめとけ)

置いてかないでよ

ムラマサ(やめろって言ってんだろ)

お願い

ムラマサ(やめろ)

何でも言うこと聞くから

ムラマサ(もうやめてくれ)

だから

ムラマサ(頼むから)

捨てないで

ムラマサ(捨てないで)

ムラマサ「0\qwewr;do-e0-29290woelerp!!!!!!!」

突如、発狂したムラマサは、全身のブラッドステッカーから凶々しい光を放出し、
ニックカウルとボーンフレームが溶解し始める。

イーグ「なんだ!!?」

ムラマサは地面に着地した即座、目の前のサクラに再び襲いかかる。

ムサシ「サクラァァァッッ!!!!!!!」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 15

ソウヤの指揮の元に戦う、キョウとアニマギア達。
この場にいるアニマギア達の特性を瞬時に理解したソウヤは、
戦いの中でアニマギア同士のニックカウルの交換を的確に指示し、ドラギアスを着実に追い詰めていた。

キョウ「これが...ソウヤ兄ちゃんの本気の力...!」

バルク「それにバスターギガラプトは軍事目的で開発された戦闘用アニマギアだ。
まさに戦うために生まれてきたと言っても過言ではない。」

激化する戦闘の中で、ソウヤは目を細めながらドラギアスを見つめ、
何かを思い出したかのように呟く。

ソウヤ「エンペラーギア...伝説上の生物をモデルに開発されたアニマギアのシリーズ。
話には聞いた事がる。高すぎる戦闘能力が危険視されて、開発途中で設計図が全て廃棄されたと。
そんな代物をなぜ獣甲屋が...?」

ドラギアス「小僧...いや、飛騨ソウヤにラプト!噂以上だ!
我は貴様らのような戦士と闘える事を待ち望んでいたぞ!!」

生まれて初めて自分を窮地に追い込む「強者」に出会えた喜びに打ち震えるドラギアス。

ドラギアス「ついに俺の全力を受け止めるに相応しい者に出会えた...!!
もはや、あの男からの任務などどうでもよい...!!俺は今この一瞬のために生まれてきた!!」

ソウヤ「みんな距離を取れ!何かがくる...!」

ドラギアス「見せてやろう...我にのみ許された禁断の力を...」

(Forbidden Beast System Start-up)

全身から黒炎を放つと共に、ドラギアスのニックカウルは漆黒に染まり上がり、
ブラッドステッカーが稲妻のような模様に歪み始める。

EPISODE 15

キョウ「暴走アニマギア化した...!!?」

ソウヤ「自ら暴走プログラムを起動した...?いや...暴走状態の力をコントロールできるのか...
なるほど...そういう事か...暴走アニマギアはお前のようなヤツを生み出すために研究された存在という訳だな。」

ドラギアス「如何にも。これは元より「暴走」させるためのプログラムなどではない。
アニマギアの性能を限界以上に引き上げる機能だ。暴走アニマギアと呼ばれる弱者共は、
このプログラムを制御できずにバグを起こした「失敗作」にすぎん。」

ソウヤ「失敗...作...!?お前の...お前のような...お前のようなヤツのために...!!!
一体どれだけのアニマギアが傷ついてきたと思ってるんだ!!!!!!」

ラプト「落ち着け、ソウヤ...と格好つけたい所だが...かまわねぇ!
今日はキレるのも無理ねぇからな!やるぞソウヤ!!」

ソウヤ「ああ、ラプト!やっと...やっと掴んだ...!お前たち組織...獣甲屋の尻尾を...!!」

ソウヤは、キョウとアニマギア達に指示を下し、
ラプトとガオーを先頭に新たな陣形を組み始める。

キョウ「ガオー!ここで確かめよう。オレ達が今、どこまで強くなれたのか。」

ガオー「おうよ、キョウ!決着をつけるぜ、ドラギアス!!」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 14

コノエがサクラの救援に向かっていた一方で、
試合会場での異常事態を聞きつけたソウヤは、キョウの元に駆けつけていた。

ソウヤ「大丈夫か!キョウ!」

キョウ「ソウヤ兄ちゃん!サクラ姉ちゃんは...!」

ソウヤ「紅葉さんなら大丈夫だ。
コノエさんが修理を終えたギロとイーグを呼んで駆けつけてくれている。」

ドラギアス「ほぉ...お前が飛騨ソウヤか...たしか、我らが『獣甲屋』に仇なす愚か者だったな。」

ソウヤ「獣甲屋...それがお前たち『組織』の名前か。」

ドラギアス「話には聞いているぞ。『報復』のために我らの後を何年間も付け回している小僧だとな。
フフ...それよりもオニキスの調子はどうだ?」

ソウヤ「黙れ。あの男がどこにいるかだけ教えろ。」

ドラギアス「あの男も酷なヤツよ...今よりも幼い頃の貴様からアニマギアを強奪するとは...」

ソウヤ「黙れ。」

ドラギアス「そのアニマギアに...崩壊寸前まで改造を...フフ...ハハハハハ!」

ソウヤ「黙れッッ!!!!」

普段は穏やかな性格のソウヤがいつになく殺気立っており、
その様子を見ていたキョウは困惑していた。

キョウ「ソウヤ兄ちゃん...?」

ドラギアス「なんだ、知らぬのか?オニキスという暴走アニマギアがいるだろう。アレは元はこいつの...」

その時、ラプトの背面のバスターキャノンから発射された銃撃が
ドラギアスの口を封じるかのように命中する。

ラプト「なんだお前さん、闘いよりも『お喋り』のほうが好みか?
...さっさとかかってこいよ。本物のギアバトルを教えてやる。」

ソウヤ「ラプト...!」

ドラギアス「貴様ぁぁ...!!!」

激昂したドラギアスが周囲に炎を撒き散らし、ラプト達に襲いかかってくる。

ヴラド「指揮は任せたぞ、飛騨ソウヤ。」

ソウヤ「あぁ、わかった。」

ヴラド「今日の私は運が良い。勇猛な少年と白獅子に出会い、その師匠である貴殿と共闘できるとはな。
勝機は見えてきた。ゆくぞ、皆の者!!」

EPISODE 14

TO BE CONTINUED...

EPISODE 13

燃え盛る会場内で、ドラゴン型を相手にキョウは4体のアニマギア達と共に立ち向かっていた。

しかし、ドラゴン型が広範囲に放つ炎と、
炎を噴射した推進力から生み出される圧倒的なパワーとスピードに全く為す術がない状況であった。

バルク「何者なんだ彼は...!私達とはスペックが...強さの次元が違う...!」

フォータス「うぇぇ〜熱いよ〜」

ドラギアス「当然だ。我こそがエンペラーギア1号機。貴様ら下等アニマギアとは根本からして違う存在なのだ。」

ガオー「火ぃ出されたくらいでビビんなお前ら!こいつが何処の誰だろうと必ず倒す!!」

ヴラド「フフ、白獅子の言う通りだ。今は耐え凌ぎ、たとえ僅かでも勝機を見つ出す。無いなら生み出すのだ!」

4体ともに全身のニックカウルが損傷しつつも、
ドラギアスの猛攻に屈することなく、再び立ち向かうのであった。

一方、ムサシは暴走アニマギア3体による襲撃に苦戦を強いられており、絶体絶命の窮地に陥っていた。

サクラ「もうやめて!何処にでも行くから...これ以上ムサシを...」

ムサシ「クッ...俺の事はいい...逃げろ、サクラ...!」

ムラマサ「そんなに大事かよ、その小娘が。テメェらみたいなのを見てるとなぁ...一番イライラするんだよ...!」

ボロボロになり、膝をつきながらも、ムサシは立ち上がろうと力を振り絞る。

ムサシ「お前には...なかったのか...?」

ムラマサ「あぁ?」

ムサシ「いや、あった筈だ...かつてお前にも...誰かを大切に思う気持ちが...」

ムラマサ「テメェ...なに言ってやがる...」

ムサシ「お前達の心まで改造し、陥れたヤツらに捻じ曲げられたままでいいのか!!
そんな事...かつての自分が望んでいたのか!!」

アビス「.........。」

ムサシ「取り戻せ、本当の自分を...俺が戦うべき相手はお前達じゃない...!」

ファントム「.........。」

ムラマサ「なんだそれ...あぁ...あーあ...もういいか。なんかもう全部どうでもいいわ。
お前も小娘もブッ壊して終いだ。やるぞ、アビス、ファントム。」

かつてない静かな殺意を纏った暴走アニマギア3体がムサシへにじり寄る

サクラ「誰か...誰か助けて...!!」

ムサシ「(俺に...もっと力があれば...)」

その時、高速で飛行するワシ型アニマギアと、
ビームによる射撃を行うザリガニ型アニマギアがムサシの前に降り立つ。

ファントム「お、お前達は...!!」

EPISODE 13

コノエ「遅くなってすまなかったね。その代わり、強力な助っ人を連れてこれたよ。」

サクラ「コノエさん!」

イーグ「久しぶりですね、ムサシとサクラさん。暴走アニマギアの方々も...
その節は随分とお世話になりました。」

ギロ「あぁ...待たせたな、暴走なんとか共...!ようやくお礼しにきてやったぜッ!!」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 12

既に会場では、ヴラドとガオーの激闘が繰り広げられており、
ヴラドは、想定以上に高いガオーのポテンシャルを褒め称えながら戦っていた。

ヴラド「これ程とはな...!家畜にしたいな、白獅子!!」
ガオー「か、かち...!?ふざけんな!!」

圧倒的な戦闘経験をもつヴラドの実力に翻弄されるガオー。
しかし、深く突き刺さした剣を引き抜こうとするヴラドの一瞬の隙を見て、
ガオーは全力で突進を加える。

ブースターを最大出力で放出したガオーは、
そのスピードを利用して、ヴラドをフィールドの外壁に叩きつけようとしていた。

キョウ「よせ、ガオー!衝突の反動でお前まで...!!」

ヴラド「だが、それだけのスピードであれば、私のニックカウルを砕けるかもしれん...!
その捨て身の覚悟...見せてみろ、白獅子!」

ガオー「ガオオォォォォォォォォォ!!!」

しかし、ガオーとヴラドが外壁に激突しようとする瞬間、
突如、赤い炎が会場の全体に降り注ぎ爆発を起こす。

キョウ達が上空を見上げると、そこには紅いアニマギアが、
光り輝く翼を広げていた。

EPISODE 12

キョウ「ド、ドラゴン...?」

ドラゴン型「この大会で勝ち残ったアニマギアの強奪が任務であったが...
実にくだらん。このような弱者の戯れ合い、もはや見るに堪えぬ。」

爆風によって吹き飛ばされたガオーとヴラドは壁の衝突を免れたが、
ガオーはニックカルに激しくダメージを負っていた。

ガオー「いったぁ...誰だお前!!バトルの邪魔すんじゃねぇ!!」

ドラゴン型「我が名は皇帝機...エンペラーギア。ブレイズドラギアス。」

その時、キョウの中で異様な寒気が走る。

キョウ「エンペラーギア...!?」

ドラギアスには言葉にし難い威圧感があり、
今までに会ったアニマギアとは何かが違う。

キョウは今よりも幼い頃、生まれ育った地で獰猛な肉食動物を目の前にして
恐怖した事があり、それに近い感覚を覚えていた。

ヴラド「このような無粋なアニマギアは存じていないが...なにやら良くない客人のようだ。
ここを去れ、少年、白獅子。私の駄々に付き合ってくれた事を感謝する。」

燃え盛る会場の中で、避難し始める観客と共に
大会出場選手もこの場を立ち去るようにアナウンスが流れ始める。

ガオー「冗談じゃねぇ、こんな半端な真似ができるか!キョウ、替えのニックカウルあるよな!」

キョウ「あ、ああ...!もちろんだ!!」

キョウはガオーのニックカウルを交換し、
応急処置ではあるが、戦闘を再開できる状態にセッティングする。

そして、その場にバルクとフォータスのチームが救援に駆けつけ、
ドラギアスを止めるために、皆で立ち向かう事を決意するのであった。

バルク「ヴラド卿と私達のセコンド団体も援護に回る。
キョウくん、キミは危ないと感じたら逃げるんだ。」

フォータス「お礼はガオーの爪パーツでいいよ。」

ガオー「ハハ、お前が根性見せたらな!フォータス!」

ドラギアス「弱者共が。つくづく虫酸が走る。
良いだろう...貴様らの戯れ合いには殺意が湧いていた所だ。
4体まとめて「闘い」を教えてやる...!」

TO BE CONTINUED...

EPISODE 11

キョウとガオーがヴラドとの試合を始めようとする一方、
サクラとムサシは会場の外で、
暴走アニマギア「ムラマサ」「アビス」「ファントム」の3体と対峙していたのであった。

サクラ「どうしてこんな場所にアナタたちが...」

ファントム「貴様らが『組織』と呼ぶ者達からの命令だ。」

アビス「ムサシちゃんスクラップにされたくなかったら、ボク達についてきてよ。」

訳を説明する事もなく、サクラを連行しようとする暴走アニマギア達。

以前、コノエから暴走アニマギアの出自を聞いた事があったムサシは、
ムラマサ、アビス、ファントムを止めるために立ち向かう。

ムサシ「お前達の過去は知っている。人に捨てられ...迫害され...
組織に思考回路を狂わされたアニマギアだとな。
あまりに酷い話だ...だとするなら俺と共にこい。
人間も悪人だけではない事を知るべきだ。」

ムラマサ「あぁ??こないだボコられた相手に同情か??
カカカッ、戯言ほざいてんじゃねぇ。
哀れんでんのは、俺ら様よ。
その女にいつか捨てられる事も知らずにいるテメェをなぁ。」

ムサシ「くだらん事を言ってないで、こんな事はやめろ。
生憎、妄言を聞く耳は持ち合わせていない。」

ムラマサ「カカカッ、呑気でいいなぁペット共は。嫌でも分かるさ...お前も...いつか必ずな...」

3体同時に襲いかかってくる暴走アニマギアに、戦闘を余儀なくされるムサシ。

ムサシ「逃げろ、サクラ!」

しかし、ムサシを置いて逃げる事ができないサクラは、キョウ達に救援を求めようとするが、
ファントムに搭載された電波妨害装置により、電話と通信を遮断されていた。

二人の様子を見て、邪悪な笑い声を上げる3体の暴走アニマギアが、
容赦なくムサシに襲いかかるのであった。

EPISODE 11

TO BE CONTINUED...

EPISODE 10

バルク&フォータスとの激闘を制したのは、キョウとサクラ達のチームであった。

その後も、ソウヤとコノエによるフォローのおかげもあり、
順調にトーナメントを勝ち進むキョウ達は、ついに決勝戦まで昇り詰めていた。

しかし、休憩時間の合間に席を外したサクラとムサシが、
試合開始時刻になっても戻って来ず、電話も繋がらなくなってしまった。

決勝戦よりも、サクラの事が心配なキョウは、
会場内で大会を辞退する事を表明するのであった。

しかし、決勝戦の相手であるコウモリ型アニマギアの
「ヴラドリリアーク(通称:ヴラド)」がリングの上に立ち、
キョウの決断に対して異論を唱える。

ヴラド「一人欠けた程度で、そう判断を焦る事はない...
そこの少年と白獅子は、あの飛騨ソウヤが鍛え上げた猛者と聞く。
そんな者共を目の前にしているのだ。
いくら気高さを信条としている私でも、些か駄々を捏ねたくなる。」

キョウ「何が言いたい...」

ヴラド「私は一騎打ちを所望しているのだ、少年。」

EPISODE 10

ヴラドの発言に会場内が騒めくが、
タッグマッチ形式の当大会のレギュレーションに反したギアバトルとなり、
正式な試合と認められる事はない。
これはヴラドがキョウとガオーの実力に強い興味があったのと同時に、
決勝試合を楽しみにしていた観客への配慮でもあった。

しかし、キョウは試合よりもサクラの身の安全を確かめる事が
最優先である事に変わりはない事を伝える。

ヴラド「他者を想うキミの心情は承知の上だ。
しかし白獅子よ、キミは違うのだろう。
骨(ボーンフレーム)の髄にまで記憶された闘争本能が...
今の自分(ちから)を確かめたいと叫んでいる筈だ。」

ガオーにとってもサクラは大切な友人であり、
試合をしている状況ではない事は分かっていた。
しかし、目の前にいる強敵との戦いを望む
動物的本能に狩られている自分が心の中にいる事も本当であった。

ガオー「バカ言うんじゃねぇ...サクラが優先だ、キョウ。」

キョウとガオーの様子を見かねたコノエは、
サクラの捜索を自分とソウヤ達で行うと提案。
ソウヤも試合を行う事をキョウに勧める。

ソウヤ「確かめたいんだろ、キョウも。
自分が本当に強くなれたのか。だったら前に進むんだ。」

観客席からも試合を望む声が鳴り響く中、
その言葉を受け、自分の気持ちに思い悩むキョウ。
そして、どこか不安気な眼差しを向けるガオーに向かって、
キョウは返事をするのであった。

キョウ「確かめよう、ガオー。オレ達が今、どこまで来れたのか。」
ガオー「キョウ...!あぁ...負ける訳がない!今のオレと!お前ならッ!」

真っ直ぐな眼差しと言葉を交わすキョウとガオー。

二人の闘争心に再び熱が宿り、
客席からの喝采が鳴り響く中で、最後の試合が始まろうとしていた。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 09

キョウとサクラは特訓を終え、ついに大会の日を迎えた。

今回の大会はタッグトーナメント形式で開催されるため、キョウはサクラとのペアで出場し、
ソウヤとコノエは、セコンドとして二人のサポートに努める事となった。

事前に行われた予選を勝ち抜いていたキョウとサクラの一回戦目の相手は
ゴリラ型アニマギアの「コングバルクラッシャー(通称:バルク)」と
カメ型の「アーモリーフォータス(通称:フォータス)」のペア。

EPISODE 09

バルクとフォータスは、数多くの大会で実績を残しているプロ選手であり、
競技層のアニマギアの大半は特定のパートナーを持たず、
複数の人間の団体によるセコンドで運用されている。

そして今まさに、会場では2対2によるギアバトルが大歓声の中で繰り広げられてた。

フォータス「欲しかったんだよなぁ...デュアライズカブトの剣。
ねーねーボクの持ってる武器と交換しようよ。」
ムサシ「き、緊張感の無いヤツだ...その首とだったら交換してやる。」

ムサシはカスタマイズによって強化されたスピードを活かして、相手の攻撃を巧みに回避し、
ヒットアンドアウェイによる戦法でダメージを与え続けていたが、
フォータスの重硬なニックカウルを突破する程のパワーに欠けており苦戦していた。

一方、その横ではナノ合金同士が激突し合う音が鳴り響いており、
ガオーとバルクによる激しい肉弾戦が熾烈を極めていた。

ガオー「すげぇ馬鹿力だなゴリラ...!さすがにボーンフレームに響くぜ...!」
バルク「そういうキミは両肩のシールドを活用した防御体勢に至るまでの動作が素早い。
パーツの特性を活かした良いカスタマイズだが...それほどのスピードを出す分、
スタミナの消耗も激しいようだね。」

優れた頭脳を持つバルクは、戦いの中でガオーの性能を冷静に分析し、
着実に攻略法を導き出そうとしていた。
どちらか一方を戦闘不能にせねば、この戦況を打開できないと判断したキョウとサクラは、
ガオーとムサシに事前に用意していた指示を出す。

指示を聞いたガオーは節々に装着された「刃」を取り外し、
ムサシは隠し持っていた「十字の形をしたパーツ」に、その「刃」を装着する事で
大型の「手裏剣」を完成させた。

サクラ「甲羅の右側中央にダメージが蓄積されている部分がある!そこを狙って!」

ムサシがフルパワーで投げつけた手裏剣の直撃を受けたフォータスのニックカウルは砕け散り、
ボーンフレームから「戦闘続行不可能」の音声アナウンスが流れ始める。

バルク「息の合った良いチームだ。残念ながら、私達には無いものだね。
フォータス、キミの大切な武装を借りるよ?いいかい?」

フォータス「ふぁい...がんばってねバルク...」

バルクは大きな腕で、足元に四散したニックカウルから武装を拾い、
自身のボーンフレームに装着し始める。

キョウ「最後まで油断するな!ガオー!ムサシ!」

鋼鉄の獣達が睨み合う中、
一回戦目は佳境に入ろうとしていた。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 08

大会まで残り二週間。
コノエの提案により、海で合宿訓練を行う事になった。

特訓の休憩中に、海で遊ぶガオーを写真撮影しようとしたキョウであったが、
誤ってガオーが海に転落してしまう。

溺れているガオーを助けてくれたのは、
この海の救助隊に配備されたヴァリアブルシャーク「レスキュー」というアニマギアだった。

レスキューには、同じヴァリアブルシャークの兄「ハンター」がおり、
かつては同じ救助隊だった兄が、脱隊した後に野良アニマギアとなり、
近頃この海で迷惑行為を続けている事に悩んでいた。

それを知ったキョウとガオーは、救助隊から水中用ニックカウルを借り、
ハンターを止めるためにレスキューと共に海へ向かう。

そして、ハンターを止めるための戦いでレスキューは敗れてしまうが、
特訓の成果を活かしたガオーによって勝利を収める。

EPISODE 08

戦いの後、ハンターが「綺麗な海を汚している人間を退治する」ために戦っていた真実を知り、
やはり救助隊に戻るように説得を試みるが...

「黒色」と「孤独」を愛するハンターの拗らせた性格は一筋縄ではいかず、
救助隊の赤色のニックカウルを断固拒否する事を伝え、その場を去ってしまった。

しかし、初めて兄と全力で戦えた事によって、
兄の事を少しだけ知る事ができたレスキューは、
なんとなく嬉しそうにハンターを見送るのであった。

それから暫くして...海で人助けをする
黒いサメ型アニマギアが噂になったとか...ならなかったとか...

TO BE CONTINUED...

EPISODE 07

ソウヤの指導の元、キョウとガオーは、
研究施設に配備された「デュアライズカブト アーミータイプ」との
スパーリングを行う日々を続けていた。

その裏で、サクラとムサシは、コノエの研究を手伝う形で
新型アニマギア「デヴィジョンニードル(通称:ニー)」との模擬戦を行なっていた。

二人が基礎技術を習得できたと判断したソウヤは、
キョウ達に実戦の経験を積んでもらうため、
来月に開催されるイベント内で行われるギアバトルの大会への出場を提案する。

大会への出場を喜んで快諾したキョウとサクラ。

その後、二人はソウヤのパートナーの「ラプト」との模擬戦の中で、
ガオーは耐久性の低さが、ムサシは機動力の低さが弱点である事を指摘される。

EPISODE 07

弱点をカバーするため、キョウとサクラは、
コノエからヴォルガとニーのニックカウルを貰い受け、
ガオーとムサシを大会仕様にカスタマイズするのであった。

大会まで残り一ヶ月...キョウ達の特訓は続く。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 06

向かった研究施設でソウヤに紹介されたのは、
ガレオストライカーの開発者「三梨 コノエ」という女性と、
そのパートナーの「ヴォルガ」であった。

コノエは以前より、SNSを通じてキョウとガオーの事を知っていたため、
キョウと直接会えた事に喜ぶ。

EPISODE 06

ギロとイーグの修理が進む中、ソウヤとコノエから
推測される『組織』の目的をキョウ達は聞かされる。

それは、ギロとイーグのような優秀なアニマギアを強奪し、
より優れた性能のアニマギアを生み出すために実験と改造を行うという
非人道的なものであった。
そして、過去にソウヤもパートナーを一体奪われた事があった。

暴走アニマギアは、その実験の中で生まれた存在であり、
組織によって、他者のアニマギアを強奪するために運用されていた。

しかし「オニキス」だけは、戦闘時以外は自我が保たれているようで、
自身を改造した組織と敵対しており、暴走アニマギアを倒すために各地に出没し、
ソウヤも過去に何度か遭遇したことがあった。

その事を聞かされたキョウとサクラは、大きなショックと怒りを覚え、
『組織』を打倒するために、ソウヤに協力する事を約束する。

そして、キョウとガオーは強くなるために、
日本代表選手であるソウヤに、自分達の師匠になってもらうよう申し出る。

キョウ達の「アニマギア達を守るため強くなりたい」という
気持ちを受け入れたソウヤは、それを快諾し、
ギアバトルの特訓を始めるのであった。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 05

「オニキス...!」

ムラマサは黒いガレオストライカーをそう呼んだ。
目にも留まらぬ速さでアビスとファントムを蹴散らしたオニキス。

現状の戦力では、オニキスには太刀打ちできないと感知した
暴走アニマギア3体はその場を離脱する。

しかし、激しい戦闘の中で、自身を制御できないまでの興奮状態となり
暴走していたオニキスは、ガオーにも襲いかかってしまう。

オニキスの絶大な戦闘力に為す術もなく、ガオーが完膚なきまでに圧倒されている中、
遠方からの援護射撃がオニキスに直撃する。

ガオーを援護したのは、事態を耳にして、
その場に駆けつけてきた一人の青年と、ヴェロキラプトル型のアニマギアであった。

EPISODE 05

青年と対峙した途端に、オニキスは何故か激しい頭痛で苦しみ始め、
その場を退散するのであった。

サクラは、青年がギアバトル世界大会の
日本代表選手「飛騨 ソウヤ」である事に気づく。

ソウヤは暴走アニマギアを作っている、ある『組織』の正体を追い続けており、
そのために戦っている事をキョウ達に伝える。

傷ついたギロとイーグを修理するため、
ソウヤは自分の知り合いがいるアニマギアの研究施設へ向かう事を勧める。
キョウとサクラ達はそれに同行するのであった。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 04

何者かの手によって凶暴な状態に改造されたアニマギアが
各地に出没し、被害を生み出している事が社会問題となっていた。

それらは全て、獰猛な性格にプログラムが改変され、
ボーンフレームに記録された闘争本能を極限まで引き出されており、
ニックカウルの出力のリミッターが解除されている状態であった。

ある日、キョウとサクラ達が目の前にしたのは、
無惨にも傷つけられたギロとイーグ達の姿だった。

その犯人が、その場にいた「ムラマサ」「アビス」「ファントム」と名乗る
3体の暴走アニマギアである事が判明する。

大切な友達を傷つけられた事が許せないキョウとサクラは、
暴走アニマギアに立ち向かう。

しかし、3対2という不利な戦況に
防戦一方となるガオーとムサシ。

このままではガオーとムサシが「破壊」されてしまう。

だが、絶体絶命となったその状況に、
一体のアニマギアが駆けつけた。

「黒い...ガレオストライカー...!?」

EPISODE 04

TO BE CONTINUED...

EPISODE 03

夏休み真っ最中のキョウとサクラは、
近所で開催されていた花火大会へ一緒に行く約束をしていた。

キョウが待ち合わせ場所に到着するなり、
サクラは、キョウの浴衣姿を少し微笑みながら見つめる。

サクラ「キョウくん、浴衣でもマフラーつけるんだね」

キョウは、野生動物の調査をする父の仕事の都合上、熱帯で生まれ育ったため...
というのも不思議な理由だが、日本に帰郷してからは少しだけ寒がりな所があった。

ガオー「あ、サクラが林檎飴もってる!ねぇキョウ!オレも欲しい!」
キョウ「いいけど、アニマギアはお菓子とか食べないだろー」

キョウにおねだりするガオーの様子を見て、大人びた性格のムサシはやれやれと呆れ果てる。
しかし、ムサシが右手に何か持っている事にガオーは気づいた。

ガオー「いや、お前だってチョコバナナ持ってんじゃねーか!」

吠えるガオーを無視して「そんな事より花火が始まるぞ」と皆を誘導し始めるムサシ。
そのやりとりを笑いながら見守るキョウとサクラ。

いつもと変わらない他愛のないやりとりの中、夜空には大きな花火が広がった。

EPISODE 03

花火を見て楽しそうにはしゃぐキョウとガオー。
その姿を見つめながらサクラは心の中で望んでいた。

いつまでも...みんなと変わらぬ日々を過ごせますように...と。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 02

元気で明るい性格の少年「天草 キョウ」と、そのパートナーであるアニマギアの「ガオー」。
そして、数年前にキョウの隣の家に引っ越してきた少女「紅葉 サクラ」と
パートナーの「ムサシ」は、自分達の日常を撮影した写真を
SNSにアップする遊びを楽しんでいた。

EPISODE 02 EPISODE 02

今日は、とあるアニマギア2体とギアバトルをするために、
近所のカフェで友人達と待ち合わせをしていた。

その2体とは、この近辺では強豪として有名なアニマギア、
血気盛んでバトル好きなアームズギロテッカーの「ギロ」と
自由気ままでマイペースなソニックイーグリットの「イーグ」という。

少年少女とアニマギア達は仲が良く、
変わらぬ日々を楽しく過ごしていた。

そんな日々が、ずっと当たり前のように続いていくのだと、
その頃のキョウは何も疑う事はなかった。

TO BE CONTINUED...

EPISODE 01

20XX年。スポーツの祭典が開かれる中、
新しい次世代型ホビーが発表された...。
新世代バディホビー『アニマギア』。

EPISODE 01

アニマギアは
あらゆる生物の動きが記憶された
超可動汎用フレームの「ボーンフレーム」、
ナノ合金から生成された
アニマギアの装甲「ニックカウル」、
太陽光をアニマギアのエネルギーに変換する
コンバートフィルム「ブラッドステッカー」
の3つのギアを組み合わせて楽しむ
新感覚ホビー。

EPISODE 01

ボーンフレームには
動物の本能を記録したAiが組み込まれており、
アニマギアと人間は
コミュニケーションをとる事ができる。
子供達はそのアニマギアとの絆を深め、
デジタル社会の手助けをしてもらったり、
友達として一緒に過ごしたり、
またアニマギア同士でバトルをして
楽しんでいた...。

EPISODE 01

アニマギアは爆発的に普及し、
デジタル社会で無くてはならない
存在となった。

TO BE CONTINUED...