変身ベルトの設計は〈しくみ〉の提案から始まる

私は『仮面ライダー555(ファイズ)』の世代で、その変身ベルトがとても印象に残っています!

僕も一緒です。

ファイズ大好きです。

そうなんですね!なんだか嬉しいです。今日はまず、変身ベルトをどうやって設計なさっているのか、基本的な流れからお聞きしたいと思います。

最初に、番組を制作している東映さんとバンダイの企画担当者が打ち合わせをして、僕たち設計担当者に「こういうベルトを今回つくりたいんだけど、できますか?」と依頼が来るところから始まります。僕たちがこれまでのノウハウを活かしつつ新しい技術を使ったギミックなどを提案すると、それをもとに企画担当者が外部の会社と打ち合わせをして、ギミックを表現した絵を描いてもらいます。その絵を参考に今度は僕たちがCAD(設計システムソフト)で設計データをつくっていくわけです。簡単にいえば、そういう流れで変身ベルトができあがります。

設計に着手するまでにも、たくさんの工程があるんですね。設計の方がアイデアを提案することもあるのですか?

(変身ベルト『デザイアドライバー』を手に取りながら)これは提案したんじゃなかった?

企画担当者のつくりたいイメージを絵に描いていただくんですが、実際にカタチにした場合に「基板が入らない」「電池ボックスがちょっときつい」といった問題が起こらないか、初期の段階で僕たちが検討します。「ここを何ミリ大きくすれば入りますよ」などとこちらから提案して、それに合わせてデザインを変更していただくこともあるんです。

なるほど。

設計だからといって、企画担当者が考えるようなことを提案しちゃいけないわけでは全然なくて、子どもが欲しいと思えるものだったら、なんでも提案していいんです。

「発光ダイオードが発明された」「小型のICチップができた」など、最新の技術がおもちゃに取り込まれるケースもあると思うのですが、新しい技術についてはどんなふうに研究されているのでしょうか?

世の中にある新しい技術をおもちゃに活かせないか検討するプロジェクトがあるんです。さまざまなメーカーさんに「この技術はおもちゃに使えますか?」と問い合わせてリサーチしています。企画担当者から「こういうギミックは技術的に実現可能ですか?」とリクエストがくることも結構あるので、新しい遊びを実現できる特殊技術は自分たちで常に探していますね。

そうなんですね。設計のタイムスケジュールはどうなっているんでしょうか? 通年つくられているんですよね?

設計を始めてから発売まで約8か月ぐらいです。設計が2か月、工場がカタチにして調整する期間が2か月、量産する段階までいくのが2か月で、量産して店頭に並ぶまでに2か月で、合計8か月を要します。

同時並行で複数商品の設計を進めていくこともあります。今年の仮面ライダーを放映している時に、すでに次の仮面ライダーの設計をやっていたり…。

ベルトだけで8か月だと、武器なども含めると通年になりますね。

おもちゃをつくっていていいなと思ったのは、ほかの工業製品と比べると開発期間が短いことです。家電や自動車などでは設計から発売まで数年かかるものも多いですが、おもちゃは8か月程でお店に並ぶので、お客さまの声をすぐに聞けるのはいいですね。自分が携わった商品が発売されたら、SNSで反応を見ちゃいます(笑)。「楽しかった!」「おどろいた!」「感動した!」といった感想を見るととても嬉しいです。

SNSを見て一喜一憂しています(笑)。