バンダイ深掘コラム「夢・創造人」

2020年7月22日

Vol.10 WEBコンテンツプロデューサー<前編>~子どもの夢中を引き出す「ワンダースクール」とは~

「ワンダースクール」は"子どもたちの夢中を応援"をコンセプトに、バンダイが運営する子ども向け参加型投稿サイトだ。「授業」、「コンテスト」、「部活」など多彩なコンテンツを無料で提供している。子どもたちに、インターネット上でさまざまなことに挑戦してもらい、創造性を養ってほしいという願いから生まれた。
今回は、「ワンダースクール」の担当者であるメディア部 メディア戦略チームの戸松淳に話を聞いた。

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メディア部 戸松淳

勉強だけじゃない!
気軽に参加し、
創造性を高めるコンテンツに

ワンダースクールは他社との協業で2015年にスタートした。2017年からはバンダイのみで運営を行い、戸松自身は2018年から運営に携わっている。

“スクール”と名がつくものの、勉強や学習と言うよりも「小学生向けの総合雑誌」のようなメディアを目標としている。子どもの“夢中”を引き出すために、見て楽しむことができる面白いコンテンツを幅広く紹介している。また、バンダイの商品で遊ぶきっかけとなる場所や、子どもでも使える安心安全のコミュニティを作りたい、という理念を持っているとのこと。

ワンダースクールHP:
https://thewonder.it/

「ワンダースクール」は、動画で工作や実験などを学ぶことができる"授業"、ユーザーが作品を投稿する"コンテスト"、プログラミングやイラストの描き方などを学び、投稿もできる"部活"という大きな3つのコンテンツがある。

メインユーザーは小学生だが、現在は未就学児、中学生、高校生も参加している。授業はプログラミングの課題や算数クイズ、料理など遊びながら学べるものが中心。感覚としては「放課後」に近いと戸松は語った。部活というコンテンツがあるように、学校の後に楽しみながらさまざまな活動をする雰囲気だ。

ただ、「ワンダースクール」は子ども向けの視点だけでなく、親御さまへの視点も大事にしたいと戸松は語る。2020年から学校教育で始まった「プログラミング教育」、創意工夫を求められる「工作」など、子どもの学びに役立つコンテンツであることもきちんとアピールしているとのこと。

「ワンダースクール」ならではの特色として戸松は「コンテスト」を挙げる。常時15から20個ほどのコンテストが稼働しており、バンダイの商品に紐づくものだけでなく、外部の大手企業や官公庁にもご利用いただいている。ユーザーである子どもたちは積極的に作品を投稿している。提示したお題に対しどういった作品を出してくるか。創造性や技術だけでなく、ユーザーがいかに楽しんでいるか、コンテストの選考も戸松を中心としたスタッフが行っているが、幅広い観点で1つ1つ選んでいるとのこと。

作品に対して閲覧しているユーザーはSNSの「いいね」のような「ワンダーボタン」を押すことでその作品を応援できる。自分の作品がページに掲載され、ほかのユーザーからワンダーボタンが押されるのは、次の投稿の大きなモチベーションになっているようだ。ちなみに、ほかのユーザーが作品に対してアクションできるのはワンダーボタンのみ。コメントなどが投稿できてしまうとトラブルに繋がる場合もある。賛意が示せるワンダーボタンのみの安全なコミュニケーションの場を作り上げた。

「部活」は特集コーナーのようなイメージで、さまざまな情報を提供することでユーザーの創作意欲を刺激し、投稿しやすい環境を作る。YouTuberを起用して子どもたちの憧れである動画投稿の基礎を教えたり、「プラモデルのアレンジの仕方」の基礎を教えたりと、子どもたちの創造性を高める”窓口”を目指している。

ガンダムのプラモデル「ガンプラ」を子どもたちに手に取ってもらうことで、さらなる発展が期待できる。部活には「ガンダム部」もあり、挑戦しやすい「塗り絵」によるカラーリングコンテストの作品から、スミ入れや塗装まで施したガンプラ作品まで、コンテストに応じて幅広い投稿作品を観ることができる。

「ガンプラに関しては、世界のガンプラファンがガンプラを塗装したり、改造したりするコンテストが存在しています。でも『ワンダースクール』では、無改造の"素組み"や、部分塗装でも参加できる。初心者や若年層が参加して、ほかの人から「いいね」を押してもらえる場を提供しています」と戸松は語った。

「ワンダースクール」ではコンテンツを見たり、ワンダーボタンを押すなどさまざまなアクションで「ワンダーコイン」がもらえる。ワンダーコインを得ることで、ユーザーはマイページのカスタマイズや、アバターの飾り付けができるなど、SNSとしての楽しさも盛り込んでいる。

子どもたちが夢中になって
「作品」を作れる環境

「ワンダースクール」は戸松を含めて数名の少人数のスタッフで運営している。週に2~3のコンテンツを更新する多忙な日々だが、既存のカテゴリーの中でコンテンツを追加していくだけでなく、新しい企画も積極的に始めている。

戸松自身が始めた企画は「パソコン部」と「プログラミング部」。プログラミング部は小学校におけるプログラミング授業の必修化に向けユーザーの興味の高まりに応じる形で2018年に立ち上げた。ここ最近アクセス数が増え、手応えを感じているという。パソコン部はスマホやタブレットの普及により、若年層のキーボード離れが進む一方、動画編集や、eスポーツなど、PCを使う要素と若年層の興味が重なる部分もあり、PCへの興味も高くなっているのではというのが戸松の考察だ。

「ワンダースクール」で子どもたちへコンテンツを提供する際、普通にやってしまうといかにも"勉強"を意識して固くなってしまう。いかに間口を広くしていくかがテーマとなる。分かりやすい授業やチュートリアル、参加しやすいコンテストの企画は意識している。具体的には動画は短めにして飽きさせない、プログラミングの題材にゲームを持ってきて、興味を惹かせるなど、意識して子どもの"好き"に寄り添うようにしている。

戸松自身が強く印象に残っている企画が「平成仮面ライダー20作品記念 FAN ART FESTIVAL」。未就学の子どもから、大人まで幅広い範囲のユーザーを対象としたイラストコンテストを行ったのだが、入賞作品は宮城県石巻市にある、「石ノ森萬画館」に展示された。

「web上で完結するのではなく、実際に施設に展示されるということでwebと現実の場所が繋がった、ということで、作品が展示されているのを見た時は感動しました」と戸松は語った。

「ワンダースクール」のなかでユーザーからの反響が強い、ほかのwebコンテンツの中でもあまり例がないのではないかと戸松が感じているのはやはり「コンテスト」だ。常にさまざまな題材で幅広く募集を行うこと、若年層を対象に積極的に募集することを心掛けている。

イラストや料理など、さまざまなコンテストが開催されている。
募集コンテスト一覧:

https://thewonder.it/fes/?refine=0&order=1

ユーザーが参加し、作品を発表し、ワンダーボタンで評価してもらう。このサイクルをユーザーが楽しんでいる。この実感が戸松自身の仕事のモチベーションにも繋がっている。どんな募集をしようか、どういった作品をユーザーに作ってもらうのかと、企画を常に考えている。

コンテストで選考する際は、戸松は「オリジナリティ」や「一生懸命さ」をポイントとしている。参加者のモチベーションを上げる作品、ユーザーの熱意を汲む作品を選考できるように心がけている。想いのこもった作品は、投稿時のタイトルやコメントからも伝わってくるという。

作品の応募数は右肩上がりで、閲覧数も多い。昨今の外出自粛の状況を鑑み、「ワンダースクール」側でも幅広いコンテンツの提供を心がけた。プリンターで出力できるペーパークラフトや家で楽しめる動画を提供したり、家から出ずに参加できるコンテストの企画を心がけたとのことだ。

「ワンダースクール」への思い

「ワンダースクール」の理念は、「子どもに学んで欲しい」というよりも、「創造性を向上させたい」という思いが強い。正解を求めるよりもアプローチや、考え方を広げる、楽しみながら自分なりの創造性を求めていく、そういった働きかけを中心にしていると戸松は語る。きっかけを提示し、遊び方を例として見せながら、ユーザーが作ったものをコンテストで盛り上げ、さまざまな方向性を取り上げていく。「君たちはどういうものを作りたい?」という問いかけを大事にしている。

「『ワンダースクール』という名前や、授業というコンテンツ名に引っ張られがちですが、今はコンテストが大きな柱になり、ユーザーが作品を発表し、閲覧者が応援していく。その応援に力を得て作品を作り、熱意がほかの人にも伝播していく。『ワンダースクール』はいまそういう存在になってきたという実感を持っています。そして認知が広がってきている実感も持っています」と戸松は語った。

その上で「安心・安全」を重視していると戸松は重ねて語った。スタッフが全投稿にきちんと目を通し、視聴者にとって安心して見られるコンテンツにするし、バナー広告など運営側が意図せず外部サイトに繋がってしまうような仕組みは設けない。バンダイとしてのイメージや、個人情報の保護なども気をつけている。ユーザーの交流もワンダーボタンのみ。このページ内のコンテンツは安心だ、というイメージをユーザーの保護者に持ってもらうための配慮をきちんとしているという。

最後にユーザーへのメッセージとして戸松は「『ワンダースクール』は、キャラクター関連に限らず、さまざまなコンテンツを扱っており、誰にでも何か興味を持ってもらえるコンテンツになっていると自負しています。ぜひ1度見てもらいたいです」と語りかけた。

©BANDAI
©創通・サンライズ
©2019 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

ワンダースクール公式サイト:https://thewonder.it/

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