バンダイ深掘コラム「夢・創造人」

2021年2月19日

Vol.16 「光るパジャマ」シリーズ企画人<前編>~「光ることに貪欲」、おやすみをエンターテインメントに~

今回のテーマは「光るパジャマ」。キャラクター商品としてイラストが描かれた衣料は定番であるが、この光るパジャマは光を吸収し、暗いところで光を放つ仕組みがある。
光ることで子どもが暗いところでも怖がらずに眠りにつけるように、また率先して寝る支度をしてもらうために背中を押せる商品になればという想いが込められ、そこにバンダイならではのエンターテインメント性がある。光るパジャマはどんな楽しさがあるのか?どのようなこだわりを込めているのか?キャラクター衣料や雑貨を扱うアパレル事業部で光るパジャマの企画を担当する福井菜摘に話を聞いた。
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アパレル事業部 福井菜摘

「光るパジャマ」シリーズとは

福井が担当する「光るパジャマ」とは、光を吸収し暗い場所で光る“蓄光塗料”を使った子ども向け衣服だ。「仮面ライダー」、「スーパー戦隊シリーズ」、「プリキュア」、「ウルトラマン」、「アンパンマン」などさまざまなキャラクターの商品が多数販売されている。

人は暗い場所が苦手だ。特に子どもにとって暗い場所は怖い。「光るパジャマ」は眠るときに暗くなる寝室が怖くなくなるようにという想いが込められており、明るい場所では見えないマークやキャラクターが浮き出たり、デザイン内の一部のキャラクターがピックアップされてカラーで光ったり、多彩な方法で驚きをもたらし、暗い場所での“変化”を楽しませてくれる。今年で13年目を迎える、ロングセラー商品となっている。

光るパジャマHP:
https://p-bandai.jp/apparel/hikarucp/

光り方は基本的に単色なのだが、「光るパジャマDX(デラックス)」はカラフルな絵が浮かび上がる。赤い光、青い光などカラーで光る蓄光塗料で光り方に変化がつけられる。構図、絵柄、光の演出など、さまざまなベクトルでキャラクターを表現することで、子どもに喜びと楽しさ、驚きをもたらすのだ。

光るパジャマDX(スーパー戦隊シリーズ)
https://p-bandai.jp/item/item-1000154755/

累計出荷数700万枚以上、
豊富なバリエーション

バンダイが作るパジャマに使用されるキャラクターのイラストは、ただ既存のものを貼り付けるだけでなく、そのパジャマに合ったものを厳選し、描き下ろしや新しい構図を使う。1つのキャラクターでもいろいろな見せ方ができるように開発側は工夫している。「プリキュア」の光るパジャマだけでも年間20種類以上の仕様・デザインが用意されている。

他のキャラクターや、光らない通常のパジャマも含めると、パジャマというカテゴリーだけで、1年で数百種類のアイテムが合計100万着以上発売される。春夏向けの吸汗速乾生地、秋冬向けの起毛素材、色違いなどバリエーションも多彩だ。

光るパジャマでは、暗いところでキャラクターの衣装のように光る「変身!光るパジャマ」、キラキラしたラメ素材を組み込んだ「寝ても覚めても光るパジャマ」など、デザインだけではなく形状や素材でもシリーズ内で光り方を変え、工夫を凝らしている。光るパジャマシリーズは2008年の発売から今までに累計出荷数が700万枚を突破しているという。

上:変身!光るパジャマ(仮面ライダーセイバー)、
下:寝ても覚めても光るパジャマ(仮面ライダーセイバー)

少子化とされている現代、キャラクター商品のパジャマを好まない家庭などもある中で、「子どもの3人に1人はバンダイのパジャマを着て欲しい」という目標を掲げ、アイデアやデザインに工夫を凝らし、お子さまや親御さまに楽しい商品を届けるため、日夜研究を重ねているのだ。

浮かび上がる絵、特定のキャラクターをピックアップ
……光の演出について

“光らせる工夫”について、もう少し踏み込んで話を聞いてみよう。蓄光塗料は、イラストの赤い部分や、黒い部分などの濃い色の上にプリントすると光が弱くなってしまう。このためキャラクターイラストの位置やサイズを考えて光る絵柄の場所をデザインする必要もある。

複数の色を使った豪華な「光るパジャマDX」では、「キャラクター全員をまとめて光らせるよりも、メインとなるキャラクターだけを大きく光らせた方が、インパクトが強い」といったチーム員の所感と歴代商品のアンケート結果から今の光り方に至っている。いくつかの歴代シリーズのプリキュアが一堂に会する豪華な絵柄が、暗いところではメインキャラクターだけが浮かび上がるなど、明るいときと暗い時の見え方をガラッと変えて、“驚き”を感じさせる工夫をしている。

勇気がでる!光るパジャマDX(プリキュアオールスターズ)
メインのキャラクターを際立たせている

年に2回、光るパジャマに関するユーザーアンケートを実施するのだが、この意見が大きな参考になる。のべ1,000名以上を対象にさまざまな光り方を提示し、感想を聞いているという。さらに販売実績による人気の研究などを重ねている。

福井のチームメンバーは全部で9名だが、皆で商品を囲み、フロア内の倉庫の中で電気を付けたり消したりして、暗い環境と明るい環境を何度も繰り返し、「光り方チェック」を頻繁に行なう。

「チェックするときに大切にしていることがあって、それは『光ったときにまず自分たちが感動するか』、『光ったときに何が光っているのかが、子どもたちにもしっかりと伝わるか』ということです。この2つだけは絶対に譲れませんし、ずっと大切にしていきたいです。」

キャラクター商品だからこそ品質と着心地にこだわる

キャンディ事業部のお菓子もそうだったが、「キャラクター商品だからといって、キャラクターというバリューに依存せず、キャラクターの世界観を最大限に生かしつつ、衣料品としての価値も上げるため、品質にとことんこだわりたい」という想いはアパレル事業部も強く持っている。もちろん、「光るパジャマ」だけでなく、全ての服にその想いは込められている。

品質面においては「綿混合率の高さ」にこだわっている。長い睡眠時間をお子さまが快適に過ごせるよう、デリケートな肌にも優しい「綿」を多く混合した生地にしている。そしてデザイン面においては、「トレンド感」も意識している。「今年はフリルよりカラフルなチュールの切り替えが良いようだ」、「肩の切り替えラインが下がっているドロップショルダーやボリューム袖のシルエットがトレンドだ」といった感じでデザインを決めている。しかし、あくまでパジャマのため、寝心地の良さが最優先。着たいと思ってもらうために見た目の可愛さも重視しながら、寝る際には邪魔にならないような仕様の工夫を凝らしている。

左:光るパジャマ(ヒーリングっど♥プリキュア)
右:変身パジャマ(ヒーリングっど♥プリキュア キュアアース)

新しい挑戦を常に続けるシリーズに!

新商品としては2月末からの新番組「トロピカル~ジュ!プリキュア」の「光る!2TOPSパジャマ」がある。番組の雰囲気に合わせて、元気で、トロピカルで、海の雰囲気も盛り込んだデザインだ。肩と裾の両方にフリルを盛り込むという豪華な仕様で、シリーズの最初の商品と言うことで特に力を入れているとのこと。

光る!2TOPSパジャマ(新番組 トロピカル~ジュ!プリキュア)
※半袖もセット販売

先に発売している「光るパジャマDX」は番組が切り替わる時期ということもあり、前シリーズの「ヒーリングっど♥プリキュア」から「トロピカル~ジュ!プリキュア」への“バトンタッチ”を印象づけている。前シリーズのキャラクターから新シリーズのキャラクターへのバトンタッチイラストをパジャマ柄に入れ込むのは初の試みだ。絵柄に関してはキャラクターの周囲にキラキラと単色の蓄光を散らすことで、よりキャラクターがカラフルに光ることを際立たせ、豪華に輝くようにしている。これまでの経験を活かした商品になっていると福井は語った。

光るパジャマDX(トロピカル~ジュ!プリキュア)
https://p-bandai.jp/item/item-1000154756/

ただ「子ども向けパジャマ」というジャンルである以上、子どもたちはいずれ“卒業”していく。限られた年齢の時に着てもらう「パジャマ」というジャンルの中で、なにか新しいことができないかと模索しているとのこと。まだ検討中の段階ではあるが今後に向けては「大人向け光るパジャマ」というテーマも視野に入れているという。

「私たちは日本一と言えるほど“パジャマを光らせることに貪欲に”商品づくりに情熱を注いでいる集団です。それがお子さまの感動や生活の一部で役立つことにつながればと思い、日々他にはないユニークなテーマに取り組んでいると自負しています。今後も光るパジャマに是非ご期待下さい!」ユーザーへのメッセージとして福井はこう語りかけた。

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