バンダイ深掘コラム「夢・創造人」

2020年9月4日

Vol.11 バンダイCSRプロデューサー<後編>~企画担当時代の経験があるからこそ、今がある~

前回はプロダクトマネジメント部 品質マネジメントチームの岩村剛が中心に進める「出前授業」を紹介した。今回は岩村のバンダイでの経歴やCSRに対する考えについて掘り下げていきたい。 >>前編はこちら

プロダクトマネジメント部 岩村 剛

入社後からこれまでの歩み

岩村は1993年に、玩具の企画開発を志望してバンダイへ入社した。開発を1年間担当した後、仕入れ業務を5年間担当した。その際、生産工場とのパイプや企画開発チームとの連携など5年の間に得た信頼と経験から玩具の企画開発部門に配属され、プロモーション業務も含めてその後15年以上担当した。

岩村はもともとボードゲームが作りたくてバンダイ(幼少のころ「ボードゲームはバンダイ!」というCMが流れていたのを覚えていた)に入社したこともあり、企画開発部門では家族や友達など、複数人で楽しめるアナログゲームを中心に企画してきた。手応えを掴んだのは「ドンジャラ」。「ドンジャラ」はそれまでドラえもんを中心にファミリー向けのキャラクターの絵柄でシリーズ展開していたのだが、岩村は大学生をはじめとする大人の層で「ドンジャラ」が受け入れられていることに気づき、当時大人気のアイドルグループをドンジャラのモチーフにしたところ、大きなヒットにつながり、広い層に向けて「ドンジャラ」を販売拡大した。「泊まり込みで商品アイデアを出す会議で、ドンジャラが大人に売れないかなぁなんて雑談していた時に『このアイドルグループがドンジャラになったら売れるんじゃないですかね?』と提案してみました。そうしたら、その場にいた川口さん(現バンダイ代表取締役社長)がそれいいね!と背中を押してくれて…交渉がすごく大変でしたけど」と岩村は笑った。

ほかにも、アナログレコードを直径8cmのミニチュアサイズにした「8盤(エイトバン)レコード専用ポータブルプレーヤー」を企画開発した。当時はもちろん音楽再生媒体はCDに置き換わっていたのだが、懐かしの昭和時代の家電や家具、道具をミニチュア化した玩具がちょっとしたブームになっており、本物のアナログレコードで本当に音楽が聴ける大人の玩具は話題となった。「レコード盤のデザインを模した小さなCDは他社からすでに発売していたのですが、とにかくアナログレコードの音が好きで、なんとか本物にできないだろうかと、国内でも数少なくなったレコード製造会社の生産協力を得るため足繁く通ったり、レコード会社に原盤使用の許諾を交渉したりと、玩具という枠を超えた企画でしたね」と岩村は語った。

8盤レコード専用ポータブルプレーヤー
(2004年2月発売)

話題性はあったものの売れ行きのほうは苦戦したという。岩村も悩み、今後のプロモーションについて社内で打ち合わせをしている時、たまたま横のテーブルで別の打ち合わせで来社されていた、とある小売店の担当者が割って入るように会話に参加、「8盤レコードはこれからまだまだ売れます。少なくともうちでは売れています!」と熱い想いをぶつけてきたという。その言葉に岩村は勇気づけられたという。「結局あの後、思うような結果は出せなかったのですが、いただいたあの言葉は忘れられません、本当に感謝しています。今でも仕事で行き詰まった時はその言葉を思い出し自分を奮い立たせています。」という。

岩村は新しいことに意欲的に挑戦してきた。デジタルのアリの育成シミュレーションが楽しめる大人のための卓上型インテリア鑑賞トイ「ant’s life studio(アンツライフスタジオ)」や、スマートフォンのカメラをカードにかざすとカードの上にキャラクターが出現するAR技術を用いたカードバトルゲームなども手がけた。改めて「面白いことをしよう」という岩村の玩具への取り組みの姿勢が実感できる商品ばかりだ。

ant’s life studio (2006年11月発売)

環境問題への取り組みに
玩具開発経験が活きる

豊富な玩具開発の経歴を持った岩村は、前編でも紹介したとおり、現在はバンダイのCSRへの取り組みを社内へ推進し、社外に広く伝えるためのCSR広報活動を行っている。社内では3カ月に1度、バンダイやBANDAI SPIRITSをはじめとした主に玩具・ホビー商材を扱うユニットに属すグループ会社、部門の代表が集まって CSR活動や情報の共有を行う「トイホビーCSR推進会」を開催している。その分科会である「エコメダル委員会」では環境問題に向き合い、環境負荷低減を目指した商品づくりを促進させる「エコメダル認定制度」を設けている。
エコメダル認定制度とは、製品本体、パッケージ、取扱説明書に環境配慮された素材や設計の工夫を取り入れ、定めた基準をクリアすることで製品に認定されるバンダイをはじめとするトイホビーユニット独自の制度。エコメダル認定された製品には「エコメダル認定マーク」が与えられ、パッケージなどに記載することで消費者がより安心して購入できる。

エコメダル認定マークの一例
<エコメダルとは>
https://www.bandai.co.jp/csrkids/ecomedal/

岩村は、環境配慮することは社会的に必要不可欠なことだと考えていたものの、玩具の企画、開発、設計、製造を行う事業部が率先して取り組まないことには何も進まない。
そこで環境配慮をしやすくするための3つの指針を立てて、2015年より事業部に働きかけた。その流れでエコメダル認定制度が2016年に生まれたのだ。

~3つの指針~
・環境に配慮することでコストダウンにもつながることを理解してもらう
・何をすれば環境配慮になるか共通認識となるルールを作る
・消費者に環境配慮していることを伝える方法を考える

「事業部にできるだけ負担をかけずに前向きに取り組める環境を作れるか、それがとても重要でした。各事業部代表に集まってもらい全員で考える協力体制と、自分自身の企画開発経験がなければとても難しかったと思う。」と岩村は語った。今では年間200点以上もの製品がエコメダル認定されている。

エコメダル認定製品の一例

「企画開発担当だったときは、目の前の担当商品に全力を注いでいました。CSRを担当するようになってから、バンダイはもちろんユニット全体を俯瞰的に見つめることができるようになりました。バンダイは社会からどのような役割を求められているか、企業ブランディングのために何をすべきかということを意識するようになりましたし、その感覚を会社全体で共有したいという気持ちを持つようになりました。」

企業が社会へ貢献するためには、働いている社員1人1人が社会貢献への意識・知識を持ち、自発的に取り組まなければ実現が難しいということが分かった。何よりCSRへ興味や関心を持ってもらう必要がある。そのためにはわかりやすく、面白く、楽しく伝えることが何よりも重要だと岩村は考えているという。

企画開発担当の頃に抱いていた、「誰かをあっと驚かせる面白いことをしよう」という岩村の思いは、今はバンダイのCSRを、いかに面白く社内外に伝えるか、という情熱につながっている。

商品から見えないところからもバンダイを好きになってほしい

仕事をするうえで大切にしていることを尋ねると、岩村は次のように語った。

「“どんなことでも好きになれる”ことが大事だと思っています。例えば、あるキャラクターが好きでバンダイに入社しても、ずっとそのキャラクターを扱う仕事に関われるかというと、そうではない。だから新しい環境、仕事においても好きになれるものを探す。好きになれる事って実はいっぱいあって、今私は出前授業をはじめとしたCSR活動にそれを見いだせています」。

事業部は商品でユーザーを楽しませるために努力している。そこに安全性や、使いやすさ、環境配慮、企業への信頼をどうもたらしていくかは、CSR活動こそがそれを支えてくれるものだ。

近年、商品の素材や、材質、デザインなどの安全基準を高めるような動きはあるが、バンダイの品質基準はそれ以上に厳しく、子どもたちへの安全に配慮している。時にはもの作りの大きなハードルやブレーキにもなりかねないが、それでも基準を厳守する、それがバンダイのスタンスだ。それはやはりバンダイの製品が子どもたちの未来を守らなくてはいけない責任があるからだ。

岩村は「出前授業」を通じて子どもたちに直接バンダイが取り組む製品における安全、安心の配慮も説明している。それは商品からは決して見えないが、バンダイ社員の子どもたちへの思いを知ってもらいたいからだ。

「私たちは子どもたちの未来を考えて授業を行なっています。授業を受けた子どもたちが将来バンダイに入社してくれるなら、とてもうれしいですね」と岩村は語った。それには継続させていくことこそが大事である。

その上で岩村自身が今も取り組んでおり、今後もずっと問い続けたいテーマは「子どもたちに玩具は絶対に必要である」というものだ。直感として強く持っているし、信じてはいるが、テーマは闇雲に信じるのでも、疑わないというものでもない。常に問い続け、考え、その考えを強くしていく答えを探さねばならない。「玩具はなぜ子どもたちに必要か、玩具は子供の成長に何をもたらすのか」ということをこれからも岩村は問い続け、研究していきたいと語った。

その上で岩村はこの文章を読んでいる人に向かい「商品からは見えない部分からも、バンダイを好きになってほしい」と語りかけた。

少々、概念や理念の方向が強くなってしまったが、子どもたちになぜバンダイが授業をするか、その根本の部分、岩村がこの仕事に情熱を傾ける理念はお分かりいただけたのではないだろうか。根っこのところで玩具会社が子どもたちに託しているもの、岩村をはじめ、バンダイの開発者がなぜ玩具開発に力を傾け、玩具を売り、そして子どもたちにそれらをアピールしているか、玩具は子どもの生活に必要不可欠であり、それが社会に、未来にどう貢献しているのか、改めて考えていきたいところだ。

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